スライド 1

食の安心・安全システムとは
鹿児島大学教授(獣医公衆衛生学)
岡本 嘉六
慶祝
2004/3/1
食の安心・安全フォーラム
――― 農場から食卓までの安全管理 ―――
主催: 鹿児島大学地域共同研究センター
かごしま産学官交流研究会
全米フードマーケティング協会、
食品安全性問題研究会
平成16年度 獣医師生涯研修事業
HACCP手法研修用教材
「基礎編」
企画・出版
社団法人
「採卵鶏編」
「肉養鶏編」
日本獣医師会
「養豚編」
「肉牛編」
「乳用牛編」
食品の安全性確保に関するシステム構築
改革なくして成長なし 慶 第38回定期総会
鹿児島大学農学部獣医学科 岡本嘉六
祝 鹿児島県獣医師会
2003年5月23日
「安全性」を巡る情況の変化
「食品安全基本法」、「食品安全委員会」の問題点
米国の「食品安全確保システム」
食品衛生法に「ハイリスク集団の規定」を設ける必要性
第三者認証による安全性保証システムの構築
畜産物生産衛生指導体制整備事業(1996-2001)
畜産物生産衛生管理体制整備事業(2002-2004)
7月18日 近畿・中四国地区 「畜産物安全性確保のためのセミナー」
主催: エバルスアグロテック(株)
8月27日 「農場段階における食の安全性の確保」
主催: 宮崎県西・北諸地区豚病対策連絡協議会研修会
11月13日 「人畜共通感染症の制御および食の安全性の確保」 主催: 佐賀県獣医師会
11月25日 「畜産物安全性確保のためのセミナー」 主催: 広島県獣医師会
「安全性」を巡る情況の変化
死亡事故が激減しているのに、
かつてなかった騒動を繰り返すのは何故か?
生産過程が見えない
ハイリスク集団の比重が増加
都市と農村の乖離
農産物の自由化(1994)
高齢化(絶対数)
少子化(希少価値)
「食農教育」、トレーサビリティー 食品衛生法に健康弱者を規定する
二つの要素を同時並行的に解決しないと、抜本対策とはならない
食の安全性: カイワレからBSEまで
「○○がアブナイ!」、「××は危険だ!」といった情報を、
誰から聞きましたか? お母さんですか? おばあさんです
か? それは信用していいのですか?
「○○さんは××で死んだ」という身近な出来事で、どの程
度「食中毒」がありましたか? 「急性毒性」
「〇〇を食べたら癌になる」、「××を食べたら高血圧にな
る」、「△△を食べたら糖尿病になる」などの情報を、あなた
は本当に実践できますか? 何を食べたらいいのですか?
「慢性毒性」
あなたの情報源がテレビや新聞などのマスメディアだとしたら、それこ
そ「アブナイ!」のではないでしょうか? 我が国に特有の不幸な現実
ですが、マスコミにも、ピンからキリまであります。
「たかり屋評論家」がいう「消費者と生産者の対置」ではなく、
生産もすれば消費もする現実の「生活者」の立場で
2004年 2月20日 大阪高裁控訴審判決: 国の全面敗訴、カイワレ協会の勝利
2003年 5月21日
慶祝: カイワレ大根東京高裁判決
鹿児島大学農学部獣医公衆衛生学教室 岡本嘉六
カイワレ大根の無実の罪が晴れました。昨年の大阪地裁判決に続
いて、今回の東京高裁判決は、「疑わしきは罰せず」という法の原則
を貫いたものであり、民主主義の原則が復権したものであります。あ
らぬ疑惑をかけて村八分にするような、この間の風潮に警鐘を鳴ら
すものであり、「消費者の知る権利」を「錦の御旗」にして日本農業潰
しを当然のこととしてきたマスメディアも同時に裁かれていることを銘
記すべきです。
「これで一儲け」というタカリ屋評論家と「これで視聴率アップを」と
いうマスメディアが、噂話が大好きな庶民を煽り立てる構図は、変
わらないのだろうか?
国内発生時に在庫牛を全て処分するよう煽り立てたマスメディアは、米国での
BSE発生については「牛丼チェーンは在庫牛を何時まで持ちこたえられるか」と繰
り返し報道し、牛丼メニューの終了イベントを大々的に報じた。マスメディアが報じ
る「安全・安心」が一貫性を欠いたものであり、デタラメであることはこれで明らかな
のだが・・・。
モラル・ハザード
「京都で第三例の疑いが出ましたが、農場からの通報が遅れ、匿名
電話で判ったことについてどう思われますか?」という電話がマスメ
ディアからあった。「何を言っても、どうせ、真意を伝えてくれないから、
コメントしない」と断ったが、「風評被害を抑えるために、是非」という
から、先ず、「通報遅れ」を強いているのはマスメディアであることを説
明した。
近隣農場が移動禁止となり出荷できないだけでなく、周辺全域の需
要が落ち込むことを考えると、「そうでないかもしれない」ことを期待し
て経過観察期間が延びることもある。当該農場だけで収まらないこと
に悩み、「通報遅れ」を起こさせているのは、他ならぬマスメディアで
あることを書いてください。
「農家ではなく、あなたがモラル・ハザードを起こしていることに気づ
くべきだ。農家より先に、マスメディアがモラル・ハザードを起こしてい
るんだ!」と電話を切った。
安全性問題を社会的騒乱の種にしてきたマスメディアは、
謝罪の真似事もできない「猿軍団」以下の存在である。
生活者の視点
ヒトへの健康危害評価は、経験主義的な方法や生理学と関連した実
験研究法による量的科学分析だけでなく、WTO上級委員会の言葉で
言えば、「人々が生き、働き、死んでいく現実の世界に実在し
ている人間社会における危険性(リスク)」を包括しなくてはなら
ない。
(家畜へのホルモン剤使用を巡る米国ーEU間の牛肉紛争)
「消費者(わたし食べるヒト)」と「生産者(あなた作るヒト)」に国民を分
断するような意見は、基本的に間違っている。自給自足生活から分業
社会へと発展した現在、全ての国民は消費者であると同時に生産者で
もあり、意図的に切り離してしまうことは、現実を見ていない。
生産もすれば消費もする「生活者」が、それぞれの
生産活動を正当に評価することが分業社会の基盤
であり、それを破壊するために「消費者の立場」を主
張する「たかり屋評論家」は社会のダニである。
「農場から食卓まで」の
一連のフードチェーンに関わる法システムの整備
畜産物の安全性に関る主な法令を挙げると、
農水省所轄: 家畜伝染病予防法、飼料の安全性の確保及び品質
の改善に関する法律、動物用医薬品の使用の規制に関する省令、
農薬取締法
厚生労働省所轄: と畜場法、食鳥処理の事業の規制及び食鳥検
査に関する法律、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、食品
衛生法
両省の法令は多いが、流通過程の安全性確保に係る法令は皆
無である。保管や輸送の温度管理すら規制がなく、専ら商品寿命を
考慮する業者の判断に任されている。また、安全性に関る基礎知識
を義務教育に取り入れることもきわめて不十分である。こうした法制
面の欠陥が、繰り返される「食材バッシング」の温床となっている。
米国の法システム
検証:「農場から食卓まで
(From farm to table)」の意味すること
第44回九州ブロック家畜保健衛生業績発表会 2003年2月14日
1.日本の進むべき道: 何を、どう、変えなくてはならない
のか?
・ 「食品安全基本法」、「食品安全委員会」は、「食品衛生
法」の枠組みをどのように変えようとするのか?
2.米国の経験から何を学び、何を採り入れるべきか?
・ 米国におけるHACCPの効果は上がっているのか?
・ それと関連する「食品安全確保システム」を米国はどの
ように構築してきたか?
3.日本にHACCPシステムがなぜ必要か、それを採り入れ
るには、どのような工夫が必要なのか?
2.米国の経験から何を学び、何を採り入れるべきか?
・ 米国におけるHACCPの効果は上がっているのか?
・ それと関連する「食品安全確保システム」を米国はどの
ように構築してきたか?
President's Food Safety Initiative
大統領直轄 食品安全委員会
1/1997 年頭教書
危険性解析に基づく政策立案組織
The federal government, in concert with state and local
governments, industry and academia, are conducting
research, risk assessments, and cost-benefit analyses to
determine how foodborne illnesses occur and can be prevented
or controlled in the most efficient and cost-effective manner.
どのようにして食中毒が起きるのか、どうしたら最も効果的でしかも
対費用効果があげられるのかについて、産官学協力により、研究、危
険性査定、対費用効果の解析をする。
FOOD SAFETY FROM FARM TO TABLE: A NATIONAL FOOD
SAFETY INITIATIVE REPORT TO THE PRESIDENT MAY 1997
Executive
要約 Summary
A New
Interagency Strategy to Prevent Foodborne Disease
食品媒介疾患を予防するための、省庁を跨る新たな戦略
Foodborne
Illness:
A Significant Public-Health Problem
食中毒:
重要な公衆衛生問題
Sources
of Foodborne Contamination
食中毒菌の汚染源
The Current
System for Protecting Food
食物汚染を防ぐ現在のシステム
The Food-Safety
System Must Be Prepared for the 21st Century
食物安全システムは21世紀に向けて準備すべき
Immediate
Actions to Improve Food Safety
食物安全を改良する即座の動作
A New
Early-Warning System for Foodborne Disease Surveillance
食品媒介疾患監視のための新たな早期警戒システム
Interstate
Outbreak ContainmentFDA、CDC(HHSの)、USDA、およびEPA
and Response Coordination
州を跨る汚染と連携管理
Risk リスクアセスメント
Assessment
Research
研究
Improving
Inspections and Compliance
食品検査体制の改善
Education
教育
A Blueprint
for a Better Food-Safety System
食品安全システム改善の青写真
Appendix
A -食品安全委員会活動のための概算要求:
Budget Request for Food-Safety Initiative Activities:
FY98
付録AFY98
Appendix
B -病原微生物
Microbial Pathogens
付録B-
President's Council on Food Safety
大統領直轄 食品安全評議会
日本がやったこと
似て非なる組織
Charter 憲章 1998年12月16日
Article
I: Purpose.
第一条:
目的
米国: 委員会 → 評議会
日本: 閣僚会議 → 委員会
Article
II:
Membership
第二条: 組織
囲碁で手順を間違えば、生きる大石も死ぬ!
次の役職者をもって評議会を構成する。
The following individuals shall be members of the Council:
農務長官
Secretary of Agriculture,
関連省庁の次官級による包
商務長官
Secretary of Commerce,
保健・福祉長官
Secretary of Health and Human括的方針を検討する組織が、
Services,
環境保護庁の行政官
Administrator of the Environmental今、必要とされている
Protection Agency,
行政管理予算庁総官
Director of the Office of Management and Budget,
科学技術担当大統領補佐官/科学技術政策局総官
Assistant to the President for Science and Technology/Director of
the Office of Science and Technology Policy,
内政担当大統領補佐官、そして
Assistant to the President for Domestic Policy, and
政府改革国家委員会総官
Director of the National Partnership for Reinventing Government.
United States Food Safety System
March 3, 2000
I. Synthesis:
United States Food Safety System
Ⅰ.
統合体: The
米国食品安全機構(システム):立法、司法、
行政のそれぞれの任務を遂行できる連携・協議機関
Ⅱ.
米国食品安全機構(システム)
II. United
States Food Safety System
C.新しい技術、製品、および問題への対処に係る措置
序論
Introduction農場から食卓までの安全性という目標を達成する上で、
連邦政府は一部の役割を果たすにすぎません。連邦政府
A.法と施行規則
A. Laws And
Implementing Regulations
は、州および地方機関、ならびに第三者機関と連携し、食
B.
Risk
Analysis
And the U.S.'s Precautionary Approach
B.危険性解析と米国の予防措置
品安全対策を促進し、産業界と消費者の食品安全活動の
1. Risk
Analysis
推進を手助けします。
1.危険性解析
米国は、食品安全に基本的な役割を果たす第三者機関
2.
Precautionary
Approach
2.予防措置
および当事者として規則に基づく産業界を認知します。法
C. Dealing
With New Technologies, Products, and
C.新しい技術、製品、および問題への対処に係る措置
制度は、規則に定められた安全性事項に適合している食
Responding
to Problems
品を製造するためにある。政府の役割は、適切な基準を
D. Transparency
D.透明性
設けること、産業界がそれらの基準とその他の食品安全
規則に適合していることを認証するために必要なことを定
E.
System
Accountability
E.システム責任
めることである。 ・・・・・
2.米国の経験から何を学び、何を採り入れるべきか?
・ 米国におけるHACCPの効果は上がっているのか?
・ それと関連する「食品安全確保システム」を米国はどの
ように構築してきたか?
「米国ではHACCPの実施により食中毒はなくなっ
た」、「日本では生産者や加工業者が儲けに走って
安全対策を講じないため、米国に遅れをとってい
る」かのように宣伝される「食材バッシングの嵐」を
冷ますため、今回は米国における「農場から食卓
まで」の最末端の状況をみてみたい。
私は、「10万人当り罹患率」を物指しとして比べ、
日本の衛生水準が米国より低いとは思わない。
「養豚の友」 第2回原稿
Foodborne-disease outbreaks reported to CDC
January 1, 1990 through March 15, 2002 1
農場や食肉センターにHACCPを導入
することで汚染は軽減したが、食中毒事
故数は減っていない。生産・処理・加工
段階での努力の成果が生かせないのは
1: As reported by state health departments through the Foodborne Disease Outbreak
Surveillance System.
何故か! 消費者教育の重要性を示す。
*Preliminary data; not all states have completed reporting.
食文化・食習慣
生焼けハンバーガー(pink hamburgers)を好む: 34%
高所得(>=$60,000) 45% > 低所得(<$60,000) 30%
大卒以上 38% > 高卒以下 25%
他の人種 36% > 黒人 12%
カリフォルニアとコネチカット州 43% > 他の州 27%
半熟卵を好む: 18%
オレゴン州 23 % > 他の州 16%
未殺菌生乳を好む: 1.5 %
スペイン系 4.9 % > 他の人種 1.4%
FoodNet Presentations
High-Risk Food Consumption, handling,
and Preparation Practices of Adults in
the FoodNet Sites, 1996-1997
取材人数: 7493人
取材方法: 電話
実施時期: 96 年7月-97年6月
Rallying the Troops to Fight Food-Borne Illness
食品媒介性疾患との戦いに向けた組織の再編成
by Audrey Hingley , FDA Consumer magazine (November-December 1997)
Food Safety Misconceptions 食品の安全性についての誤解
"People don't see food safety problems as related to their personal
「人々は、自分自身の食品取扱いと関連した安全性の問
food handling practices," says Alan Levy, Ph.D., a statistician and
題について理解していない」と、FDAの「食品の安全性と
chief of the consumer studies branch in FDA's Center for Food
栄養センター」消費者研究室長
アラン博士は言う。
Safety and Applied Nutrition.
"Consumers have major misconceptions regarding food-borne
「消費者は食品媒介性疾患について大きな誤解をもっている。大
illness. Most people think food prepared at home is safer than
半の人は、レストランの食事よりも家庭で用意した食事がより安全
restaurant food although food safety experts say the opposite is true.
であると思っているが、安全性の専門家は正反対であると言って
They
also think food-borne illnesses are mild. If people don't see
いる。また、大半の人は食品媒介性疾患などたいしたことはないと
food-borne illnesses as a real problem, they will be less likely to
思っている。人々が食品媒介性疾患を現実問題として理解しない
change their behavior."
限り、自身の行動を変えようとはしないだろう。」
"Two concepts are important--alerting
people to the risks, and
「二つの考えが重要である:
人々にリスクを警告するこ
assuring
people," he says.
と、人々を安心させること」と彼は言う。
SCHOOL-BASED EDUCATION
学校を拠点とした教育
Research Report Guides Planning of Food Safety Education for Children
子供のための食品安全教育計画についての研究報告書
The report, titled USDA/FDA Education Initiatives: Evaluating the
Placement of Food Safety Education in Schools, found that food safety
education
was viewed by education experts as an important topic for
食品安全教育は、現時点では高度の優先事項ではないが、
students
to study, though not a high priority issue at present. The
生徒が学ぶべき重要な課題である、と教育専門家が総括し
research indicated that science would be the most effective subject area
た。食品安全教育のため、科学が最も効果的な学業領域
and that middle and high school would be the most appropriate grade
であり、中学・高校が最も適した学業水準にある。
levels
for food safety education.
戦後の学校給食制度により栄養士が配置され、栄養学については
学校教育の中で教育されてきたが、衛生学に関しては「保健・体育」で
若干触れられるものの、食品衛生学となると教育スタッフすらいない。
昨今の食材バッシングの中で、食品衛生学について全く教育を
受けていないメディアの方々が俄か勉強で補充した断片的知識を
振りかざし、同様に食品衛生学を知らない主婦の方々が右往左往す
る構図は、学校教育の改善・充実によって正さなくてはならない。
Bringing the Farm-to-Table Food Safety Initiative to Classrooms Nationwide
全国的に、農場から食卓までの食品安全活動を教室に持ち込むこと
FDA
is collaborating with
USDA and the全米科学教員連盟
National Science Teachers
食品医薬品局
農務省
食品医薬品局は、農務省および全米科学教員連盟と連
Association
to develop a new food science supplemental curriculum
携して、中学生・高校生向けの新しい食品科学補助カリ
aimed at middle and high school students. The project incorporates
キュラムを開発した。このカリキュラムでは、科学を基礎
the farm-to-table, production-consumption chain in a science-based
とする教育プログラムに、農場から食卓まで、生産から
education
program.
消費までの流れを組み入れた。
食品媒介疾患を予防するための、省庁を跨る新たな戦略
連携管理
「食品安全基本法」を立案する際、新たな「お目付役」を設
けるようなことではいけない。省庁の壁を超え、既存の勢
力をどのように結集して、有効な活動が展開できるかを先
ず検討し、そのための司令部をどうするかである。
FDA Foodborne Illness Education Information Center
The Healthy School Meals Resource System
Isolates from human sources
9歳以下の小児と
60歳以上の高齢者が
全体の45%を占める
ハイリスク
集団への
重点対策
10,581
33.4%
安全の価格
より安全な高付加
価値商品の開発
3,584 第三者認証
11.3% による安全
性保証シス
テムの構築
食品衛生法には、ハイリスク集団の規定がなく、
健康成人を含めた一律の対策しか採れない
食中毒に罹りやすく、しかも重度の健康障害に陥り
やすい健康弱者への重点対策が必要!
健康弱者向けの、安全性がより高い「食品供給シ
ステム」の構築が肝要!
そのために、護送船団方式から自己責任への転換
1. 生産・製造業者が講ずる安全性対策費を価格
に上乗せできるようにする
2. 生産・製造業者の安全性対策が確実に実行さ
れていることを保証するシステムが必要
3. 自分の健康状態に見合った安全性を選択でき
るための、消費者教育
リスクアナリシスの考え方と法・機構 (2003)
誰にとっての安全か?
オーストラリア・ニュージーランドの食品規格コード(Standard 3.1.1)で
は、次のように規定している。
消費者の義務・責任
「安全で適切な食品の意味
(1) 安全基準は、その食品が製造された目的に応じて適切かつ合
理的に消費される条件下で満たされる。
(2) 大多数の人には影響がなく、アレルギーや過敏体質をもった人
だけに現れる危害があってもその食品が安全でないとは言わない。
(以下略)」
また、米国の食品規格コード(1-2.44 Definitions)では、高感受性集
団(Highly susceptible population)を次の2群に分けている。
高感受性集団
(44)高感受性集団とは、次の理由で、一般集団の人より食品媒介性
疾患に罹りやすい人をいう。
就学前児童、老人
(i)免疫低下者、就学前児童、老人。
(ii)デイケア施設、腎臓透析センター、病院または療養所、看護付老
人ホームなどの健康管理または補助生活を受けている人。
国際食品微生物規格委員会
食品のリスクは個々人の健康状態によって異なっており、
全ての人に一律に「安全」を保障することは不可能である。
基礎疾患をもった方は、自己責任で防備することが肝要
であり、そのための衛生教育が急がれる。
特異体質の方を含めて健康危害のないことを求めるの
は、安全性の問題を混乱させるだけである。
議論の場では「100%安全」と同様に「全ての人に安全」という主
張が繰り返される。このことは、現在の食品衛生法の中に明示
されていないことによるものであり、消費段階で自己防衛すべき
問題までを一律規制の対象とすべきとの意見が出されるのは、安全
性について大きな誤解が広がっていることを示している。
日本の法令ではそうした区分がないために、健康弱者が
享受すべき特別な安全対策を実施できなくしている。
最も安価なリスクの低減方法
「破壊検査」しかないものについて「100%フリー」はあり得
ないことを周知させることが最も重要である。
同一ロットの食材を原因と推定した食中毒事故で、ロットのごく一部
でのみ発症があったり、発症率に大きな偏りがある事実について、
日本ではほとんど無視されているが、米国では流通過程における
細菌の増殖に基づくと判断している。 細菌の増殖に好適な水分活
性、pH、蛋白質を備えている食肉、卵、乳製品、海産物などを潜在
的危害性食品(Ptentially Hazardous Food)と規定 し、それらの輸
送・保管中の所定管理項目についての記録を2年間保存することを
義務付けている。たとえば、最も重要な輸送・保管中の温度につい
ては、殻付卵で7.2℃以下とすることが数年前定められた。
『食品輸送衛生法』など社会システム上の不備を是正す
ることが大切だ 。「100%フリー」の幻想を振りまくことによ
る流通業界や消費者の油断こそ食中毒のリスクを高め、
食材バッシングを続けさせる根源である。
対費用効果を踏まえた農場から食卓までの安全性確保
消費段階で管理できる危害までを生産段階で制御する必要はない。
「全ての人にとって安全でなければならない」という
護送船団方式ではなく、「個々人の選択による安全
性の確保」へと梶を切る必要がある。
生産・流通段階でのリスク管理
「安全性向上の努力はしたが、値段が据え置かれたため倒産した」と
いう実施に伴う不安は消せない。消費者が安全性に対価を払うシステ
ムができていないからである。現在進めている「トレーサビリティー」も、
多額の税金を投入することで賄われており、消費者が負担するという
話はない。こうした護送船団方式を変えない限り、生産業や流通業は
「生産・流通段階でのリスク管理」
は、「個々人の選択による安全性の確保」という対価
を払う社会構造改革によって推進される。
安心して乗り出せない。
健康弱者
ハイリスク集団
自主衛生管理
免疫低下者(HIV,糖尿病、癌)
高度の安全性 = 付加価値
子供、老人、妊婦、病弱者
第三者認証
に対する特別措置
HACCP
一般健康成人
衛生教育
(食肉処理場・食品工場)
農場でのQAP
法律による規制
一般的衛生管理
一般衛生基準
(PP;Prerequisite Program)
適性製造基準
(GMP;Good Manufacturing Practice)
衛生標準作業手順
(SSOP;Sanitation Standard Operation Procedure)
食品の安全性に関わる社会システム
衛生基準
営業許可
営業停止
良
好
な
関
係
を
築
く
た
め
の
、
保
証
シ
ス
テ
ム
コ
ス
ト
を
価
格
に
上
乗
せ
し
、
生
産
者
と
消
費
者
の
衛
生
対
官策
吏財
・
税源
金が
増な
にい
よ一
り律
消規
費制
者は
負生
担産
も者
重の
く破
な綻
る、
農畜水産物流通の国際化の進行と国際基準 (1999)
ー グローバル・スタンダードとは ー
危険性の管理(マネジメント)
は、生産者が査定で提起され
た管理措置と管理基準が実施
可能なものであるか否かを検
討し、可能となれば実行し定期
点検等の監視体制をとる役割
危険性の査定(アセスメント)は、
各方面の専門家によって、実験や
調査に基づく科学的根拠から当
該物質によってヒトで起きる健康
被害を予測し、100万人に1人程
度の確率に抑え込むための管理
措置と管理基準を策定する役割
危険性の情報交換(コミュニケーション)は、査定と管理の連
携が円滑にいくようにする企画・立案、組織化、進行の調整、
成果の評価を行う危険性解析における第三者的存在であり、
生産者と消費者の情報交換も担う役割
九州
九州農政局
九州農試
九州農政局
食品衛生問題の解決に獣医療が果たすべき役割
検査官としての役割にとどまらず、21世紀の食
の問題について、包括的指針を提示すること
地方化の時代を切り開くために
全国一律ではなく、より高度なサービスを提供する
道産食品安全確保特別対策事業費(HACCP推進事業)
保健 福祉部
実施期間(始期)11 年~13 年(期限)
関係課・関係事業:水産林務部水産経営課、農政部酪農畜産課・
流通対策課、経済部地域産業課、総合企画部経済企画室
環境生活部消費生活課
予算額(千円):平成11 年度 13,383
「北海道だからできる」と言い訳せず、
「九州は一つ」でやってみようではないか!
食品事業者を格付け評価 全国初、北海道が導入
北海道では、平成11年7月に「北海道食品安全協議会」を設置し、安全で健康的
な食環境づくりのための諸施策、特にHACCPに基づく自主衛生管理の導入推進
について検討を始め、平成14年3月に、協議会から「HACCP導入促進に関する
試案」の中で、評価基準となる141のチェック項目からなる「評価調書」が示されま
した。
「評価調書」を策定するに当たっては、次の点が留意されました。
① 事業者が自主的に取り組みやすいように、基本的なものからチェック項目を設 し 、徐々
に高いレベルを目指すように、項目を設定する。
② HACCPを導入するためには、その土台として、手洗いの徹底や調理機器の洗浄消毒な
ど一般的衛生管理の取り組みが重要なため、一般的衛生管理事項に重点を置いた評価基
準とする。
③ ハード、ソフト両面で判断し、なるべく人的、資金的負担をかけない基準とする。
段階
評価
7以上:☆☆☆☆
6 :☆☆☆
5 :☆☆
4 :☆
3 :
1~2:
1未満:
HACCPに基づいた高度な自主管理を実施しています。
HACCPに基づいた自主管理に積極的に取り組んでいます。
HACCPに基づいた自主管理に取り組んでいます。
自主管理ができておりHACCPに基づいた取り組みが可能です。
自主管理に積極的に取り組んでいます。
自主管理に取り組み始めました。
製品の「安全性」格付け
もう少し努力しましょう。
食品の安全性確保に関するシステム構築
改革なくして成長なし 慶 中四国地区
鹿児島大学農学部獣医学科 岡本嘉六
祝 農場HACCP研修会
「安全性」を巡る情況の変化
「たかり屋評論家」に抗し、
生活者の視点の確立を
「食材バッシング」の始まり
「食品安全基本法」、「食品安全委員会」の問題点
米国: 委員会 → 評議会
日本: 閣僚会議 → 委員会
囲碁で手順を間違えば、生きる大石も死ぬ!
米国の「食品安全確保システム」
「農場から食卓まで」のHACCPと
「小学生から大人まで」の消費者教育
食品衛生法に「ハイリスク集団の規定」を設ける必要性
より安全な高付加価値商品の開発
第三者認証による安全性保証システムの構築
コストに見合った安全
畜産物生産衛生指導体制整備事業(1996-2001)
畜産物生産衛生管理体制整備事業(2002-2004)
HACCPに基づく
衛生管理手法の導入