Kerr時空における 輻射反作用

会議報告
th
9 Capra Ranch Meeting
on Radiation Reaction
University of Wisconsin Milwaukee.
June 9-14, 2006
天体核研究室
D1 雁津克彦
会議概要
• 重力波←一般相対論によって予言
直接検出は未だなされていない!
• 検出されれば・・・
強い重力場での重力理論の検証
透過力を生かした新たな領域の観測
(初期宇宙、天体内部)
• 現在、すでに地上重力波干渉計が稼働している
重力波検出に向けて
• 次世代の重力波検出器 LISA, DECIGO BBO
人工衛星をつかって宇宙に干渉計を打ち上げる
• Target: 大質量BH(~104-6太陽質量)
+コンパクト天体(~100-2太陽質量)の連星系
• イベントレート・・・年に数回程度
J. R. Gair, et al., Class. Quant. Grav. 21, S1595 (2004)
http://lisa.jpl.nasa.gov
重力波検出に向けて
• 重力波は弱い!!
検出には正確な理論波形が必要
(特に位相について)
• 重力波輻射の反作用で軌道は測地線からずれる
• 輻射反作用を考慮した理論波形を用意する必要がある
当会議は、重力波輻射反作用の世界的な会議
アメリカ、日本、カナダ、イギリス、などから出席
Detweiler, Whiting, Poisson氏などこの分野の中心的
人物が参加
我々の発表
• 大質量ブラックホール+コンパクト天体連星
• この連星系の軌道が、重力波によってどのように変化す
るかを調べる。
BHは一般に回転している
• Kerrの軌道は測地線であっても
非常に複雑
このような複雑な軌道が輻射反作
用でどう変化するかを研究した。
コンパクト天体は質点とみなす
断熱近似での計算
大質量BH+コンパクト天体の連星系では断熱近似が有効
1) 軌道を測地線で近似する
断熱近似とは
2) 輻射反作用の効果を長時間平均する
大質量BH+コンパクト天体の場合
/   1
第0近似として断熱近似
輻射反作用の時間スケール~ M
M


• Kerrの測地線←3つの運動の定数
エネルギーE, 角運動量Lz, カーター定数C
2
2
Lx  Ly に相当→軌道傾斜角を決める
!軌道の変化=E,Lz,Cの変化に置き換わる!
E,Lの変化は重力波のフラックスからわかる、でもCの変化は不明
重力波の持ち去る
コンパクト天体の
エネルギーの変化率 エネルギーフラックス
コンパクト天体の
角運動量変化率
重力波の持ち去る
角運動量フラックス
Z ln,mr ,nは無限遠での重力波の振幅
• Cの変化は直接自己力を計算して求める(大変)
• 最近までCの変化を計算することができなかった
• ところが最近断熱近似の下で簡単な公式が見つかった
Sago, Tanaka, Hikida, Nakano, PTP. 114, 509 (2005).
dC
 2 a 2 E cos2 
dt
dE
 2 L cot2 
dt
n 
dL
nr , n
2 
Z
l
,m
nr , n
dt

l , m , nr , n
m
コンパクト天体のカーター定数の変化率
カーター定数も無限遠での重力波の振幅(計算が簡単)から求まる
2
Formulation
無限遠での重力波の振幅 Z ln,m,n が求まれば軌道変化が計算できる
r

数値的計算
解析的計算
結果を式で得られる(応用性が高い、任意の軌道)
精度良い計算が可能
数値計算と相補的
!E,Lに加えてCに対しても初めて解析計算を行った!
Teukolsky方程式 (Kerrでの重力波の式)
2階微分演算子→D4
波動関数(Weyl)↑
 T ←Source項
(コンパクト天体の軌道から計
算)
Post-Newton近似 v2=M/r0<<1
これらの近似の下で
離心率が小さい e<<1
解析的に計算可能
r0
r0
近日点 1  e , 遠日点 1  e ,
我々の計算は軌道傾斜角に
関して一切近似しない
軌道傾斜角
L2
Y 
 cos2 i,
2
(C  L )
2
結果 (v5, e2のオーダーまで)
結果 (v, e, Y)
de
1 dv
8
 ev 8 (1  ),
 v (1  ),
dt
v dt
di
  qv11 sin i (1  ),
dt
iは軌道傾斜角
• v … 増加 v2  M / r0 , → r0… 減少
• e … 減少 (→0).
• i … q>0 (co-rotating) 増加? q<0 (counter-rotating) 減少?
• しかし iの発展はv, eの発展に比べてv3 higher
軌道変化から重力波の振動数変化を計算
Kerr 円軌道では、二重振動になっている
z軸方向の振動の周期と、x-y平面
での振動数が異なり、これら二つ
の振動モードの重ね合わせ。
z
y
x
まとめ
• 断熱近似の下で軌道の発展を解析的に計算す
ることに成功
• 特にCarter定数の進化を追うことができた
• 任意の軌道傾斜角での発展を知ることもできた
• 振動は二重振動になっている
会議では、断熱近似を行わない場合の自己
力の効果が、どの程度観測に影響するかが
議論を呼んだ
会議の方向性と収穫
• 非断熱的な効果が果たしてどれだけ効くのか?
• 二次の摂動の解決
• 我々の計算の次数を上げることで十分な精度に
到達できるか?(収束性)
• 会議の雰囲気としてはまだまだ観測開始までに
解決すべことが多い(参加者の間で意見も統一
されていない)
→今後の研究でこれらを明らかにする