企業における賃金格差の要因 と問題点

企業における賃金格差の要因
と問題点
Oyokawa.h
Sasada.k
Nakamoto.r
Hirano.t
全体の流れ
所得格差
⇒ 仮説;
各経済主体の行動・構造の変化によるもの
↓
各経済主体別(企業・家計・政府)
に分けて考察
⇒ 所得格差があることにより、経済成長はできるが
所得格差が経済成長を妨げてしまう問題は全く
ないのだろうか? (→問題点)
フローチャート
〈理論的位置づけ〉
企業の利潤分配
完全分配定理
↓
〈現状分析〉
労働分配率(賃金・雇用機会)の低下
↓
↓
↓
歴史的 ・ 構造的 ・ 制度的 要因
↓
労働面;労働者の賃金・雇用を切迫し、賃金格差拡大
⇔資本面;資本分配率上昇の傾向であるが、その効率性に
関しては低迷
⇒問題点(経済成長妨げる企業行動・構造要因)を提示する
問題点(結論)
企業の行動、構造の変化によって、所得格差
は拡大してきたものと考えられる。
企業は効率的行動をしており、労働への分配
(賃金、雇用機会)を減らし、労働以外の資本へ
の投入を重視している。その労働分配を減らした
ため、所得格差を拡大させたと考える。
しかし、資本の効率が低迷している。今後資本
を効率的に投入し、経済成長するためには企業
はどう行動したらよいのだろうか。
1.企業収益と分配
1-1.理論的位置づけと現状
1-2.労働分配率と企業収益
1-3.労働分配率とジニ係数
完全分配定理
長期供給関数
Y=F(L,K)のケース
完全分配定理
⇒ 企業利潤は各生産要素に過不足なく
各限界生産性に応じて完全に分配しつくされる
労働分配率と企業収益
企業収益の状況
4
3.5
3
2
1.5
1
営業利益率
経常利益率
0.5
出所)法人企業統計年報
20
04
20
02
20
00
19
98
19
96
19
94
19
92
19
90
19
88
19
86
19
84
19
82
0
19
80
(%)
2.5
出所) 法人企業統計年報
20
04
20
02
20
00
19
98
19
96
19
94
19
92
19
90
19
88
19
86
19
84
19
82
19
80
(%)
資本分配率の推移
資 本 分 配 率 (r K/ P Y )
40
30
20
10
0
労働分配率の推移
76
74
72
70
68
66
64
62
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
(%)
労 働 分 配 率 (w L / P Y)
出所)法人企業統計年報、内閣府『経済財政白書』を参考
20
04
20
02
20
00
19
98
19
96
19
94
19
92
19
90
19
88
19
86
19
84
19
82
%
19
80
企業収益と負債
有利子負債率
7
6
5
4
3
2
1
0
出所)法人企業統計年報、有利子負債率=有利子負債÷経常利益
労働分配率とジニ係数
20
01
19
98
19
95
19
92
19
89
労働分配率
19
86
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
19
83
(%)
労 働 分 配 率 とジ ニ 係 数 (4 指 標 平 均 )(前 年 比 × 1 0 0 〕
ジニ係数(4指標平
均)
出所) 法人企業統計年報、内閣府「月例経済報告(2005)」
4指標は、所得再分配調査(当初所得も含む)、全国消費実態調査、家計調査
考察
企業収益 増加
⇔ 労働分配率の低下
↓
賃金が抑えられ、長期的な雇用機会が損なわれる
↓
家計所得の減少
↓
所得格差(ジニ係数の増加)
2. 労働分配率の低下要因
2-1. 歴史的要因
2-2. 構造的要因
2-3. 制度的要因
2-1. 歴史的要因
2-1-1. バブル崩壊と労働者
2-1-2. 労働者発言力の低下
バブル崩壊と労働者
過剰な雇用
↓
銀行からの圧力⇒ リストラ
⇒減量経営
↓
労働組合組織率の低下
平均賃金改定額の低下
⇒ 春闘のスピルオーバー効果の低下
↓
労働分配率 低下
出所) 総務省
年
20
02
20
01
20
00
19
99
19
98
19
97
19
96
19
95
19
94
19
93
19
92
19
91
19
90
(%)
労働組合組織率の推移
労働組合組織率
11.5
11
10.5
10
9.5
9
8.5
平均賃金改定額の推移
20,000
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
産業計
鉱業
建設業
製造業
19
90
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
20
00
20
01
20
02
20
03
20
04
20
05
(単位;円)
産業別1人当たり平均賃金の改定額の推移
(年)
電気・
ガス・
熱供給・
水道業
出所)厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」
2-2.構造的要因
2-3-1. 雇用システムの変化
2-3-2. 情報化と高齢化
業種別雇用動向(4業種)
雇用の動向(前年比;就業形態計と4業種)
10.0
0.0
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
20
00
20
01
20
02
20
03
20
04
20
05
20
06
(%)
5.0
-5.0
-10.0
-15.0
(年)
出所)厚生労働省
就業形態計
製造業
鉱業
建設業
電気・ガス・熱供給・水道業
雇用システムと情報化
減量経営(固定費用削減)
↓
雇用や賃金のフレキシビィリティを高める
情報化 ⇒
↓
情報技術の進展に伴い、熟練労働者が行って
いた作業が簡略化され、非熟練労働者(非正規
雇用者)が行えるようになり、非正規雇用への労
働需要が増え、全体的に労働分配コストを低下
させた (→賃金格差)
雇用システムと高齢化
減量経営(固定費用削減)
↓
雇用や賃金のフレキシビィリティを高める
高齢化 ⇒
↓
年功制の見直し
成果給へ
→ 年功制の下で、労働者の高齢化によって、生
産性以上に賃金を支給している企業があるとす
ると、そうした状況下では成果給の導入が企業
全体の人件費削減の抑制につながる
2-3. 制度的要因
2-3-1. 政府の制度改正
2-3-2. 制度改正に伴う企業行動
政府の制度改正
○ 雇用に関する制度改正
雇用形態の多様化に対応するための環境整備が進め
られた。
期間を定めた有期労働契約について、労働契約期間
の上限を原則として1年から3年へ延長したほか、労働者
派遣についても、1999年に幾つかの例外を除き適用対
象業務の原則自由化が行われ、その後、製造業務への
適用が拡大されるなどの改正が行われた。
出所) 内閣府『経済財政白書』
制度改正に伴う行動の変化
○理論的考察(Game理論)
Escalatorの左右
2
一方(政府)が効率的な
行動をとるならば、もう一
方(企業)は効率的な行動
をしないと両者の利得は”
0”
右
左
1
右
1 , 1 0 , 0
左
0 , 0 1 , 1
制度改正に伴う企業行動の考察
⇒現行の政府の制度と、企業行動には制度的補
完性が働くと考えられる
制度的補完性
→経済システムがサブシステムの集合体とすると
き、あるサブシステムが他のサブシステムの機
能を支える補完的性質。
効率性重視の各主体の行動が行われている
3.資本投入の効率性
出所) 法人企業統計年報
20
04
20
02
20
00
19
98
19
96
19
94
19
92
19
90
19
88
19
86
19
84
19
82
19
80
(%)
ROA
RO A (Π/ K)の推移
10
8
6
4
2
0
ROAの分解
ROAの低迷要因とは…
ROA(Π/K)
= 売上高利益率(Π/Y)
×
資本回転率(Y/K)
20
04
20
02
20
00
19
98
19
96
19
94
19
92
19
90
19
88
19
86
19
84
19
82
19
80
売上高利益率
売上高利益率(Π/ Y)
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
0
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
資本回転率(資本生産性)
資 本 回 転 率 (Y/ K)
2
1.5
1
0.5
0
考察
資本への分配 増 → いまだ低迷
↓
資本回転率(資本生産性)の低迷による影響
↓
企業の資本が非効率となっている
全体の考察
労働分配 減
↓
賃金格差
⇒
資本への投入
↓
資本効率(資本生産性) 低迷
↓
経済成長の低下
⇒労働への分配を減らし、資本への分配を重視する企業行動
↓
所得格差を拡大させ、資本効率が低迷し、
経済成長を阻害させている
問題点(結論)
企業の行動や構造の変化によって、所得格差
は拡大してきたものと考えられる。
企業は効率的行動をしており、労働への分配
(賃金、雇用機会)を減らし、資本の収益性を重視
している。その労働分配を減らしたため、所得格
差を拡大させたと考える。
しかし、資本の効率が低迷している。今後資本
を効率的に投入し、経済成長するためには企業
はどう行動したらよいのだろうか
参考文献
 青木昌彦(1995)『経済システムの進化と多元性』東洋経







済新報社
菊澤研宗(2006)『組織の経済学入門-新制度派経済学
アプローチ』有斐閣
藪下史郎(2006)『非対称情報の経済学』光文社新書,p
150-179
宮本光晴(2004)『企業システムの経済学』新世社
日本銀行ワーキングペーパーシリーズ各種
経済産業研究所ディスカッションペーパーシリーズ各種
財務総合政策研究所フィナンシャル・レビュー各種
内閣府『経済財政白書』
参考文献
 みずほ銀行(2004,10) 『みずほ日銀インサイ
ト』
 澄田知子 (2004,10)『内閣府今週の指標』 企
画・経済対策担当参事官付
 笹木義次(2005,10) 『藍沢証券投資リサーチセ
ンター発表資料』
 田中隆之(2002)『現代経済ーバブルとポスト・バ
ブルの軌跡』日本評論社