堆積学

堆 積 学
Sedimentology (& Stratigraphy)
地球惑星科学科2年目講義(選択2単位)
レジュメ
Sedimentology & Stratigraphy
0.はじめに
-『地層』の基礎的概念
地層学(Stratigraphy):
広い意味での,『地層(strata, stratum)』全般に関する学.
“地層”とはなにか?
定義: 『地球表層部でシート状(板状)に形成された,
固体物質からなる平面的な(他と区別しうる)ユニット』
stratum の語源:
sterno (Latin): to spread (flat) (平らに)ひろがる
* 固体物質
--- 通常は砂や泥などの『砕屑物質』であるが...
岩石でも,生物でも,ゴミでも,なんでも良い.
# 最初から固体でなくても良い. 例:溶岩・岩塩...
* 砕屑物質(sediments): 地球表層部の固体物質の
分解によって生じるもの.
# sediments: sedimentum (Latin): a settling(定着)
Sedimentology & Stratigraphy
『 地 層 』 は , 地 球 表 層 部 で 形 成 さ れ る 地 質 体 ( geologic
body)の中でもっとも典型的・普遍的なものである.
# 地質体:地球科学的プロセスで形成された物体・シス
テム
-> spreadする...
つまり,
重力の支配下で形成され
たものであるということが,
地層の基本的な性格を理
解する時のポイントになる.
Sedimentology & Stratigraphy
*地層と“本(book)”とのアナロジー
“A montibus ad maria una cum sedimentis”
= From mountains toward the sea,
along with sediments ??....
Sedimentology & Stratigraphy
地層の見える崖と“本”とは,単にみかけの形態としても似て
いる部分も無いわけではないが,本質的に見ると...
地層と“本”との共通点
・ページに情報が記録されている.
情報の形態は多様
(=“文字”だけではない).
・ページの順番に意味がある.
・ページにいくつかのまとまり
(章)がある.
・必ずしも最初から
全部読まれるわけではない.
地層と“本”との相違点
・“ページ”一枚一枚の厚さと
内部構造にも意味がある.
・めくることのできないページもある.
・ページとページとの間に普遍的な
情報欠損・欠落がある.
・ページは一定の順番で作成され,
その順番は変更されていない
(製本されていない).
・本自体の変形(折れ曲がり)や
破壊(割れ・ずれ)がある.
Sedimentology & Stratigraphy
もっとも身近な“地層”(のアナロジー)
その1-雪の“地層”
雪解け時の積雪の断面には,地層と非常に良く似た構造が
観察される.例えば...
1.連続性の良い積層構造.
降雪等の条件の均一性.
2.成層・縞状構造.
天候変化.降雪量の変化(リズム).
3.メカニズムによる内部構造の変化.
自然降雪.除雪による堆積.
4.イベントの記録.
融雪・除雪作業...など
規模の違いは当然あるが,このような類似性は,両者の形成メカ
ニズムが似通ったものであることを示している.
しかし,全体のシステムとしてはかなり単純(降って積もって溶
ける,だけ?).
Sedimentology & Stratigraphy
もっとも身近な“地層”(のアナロジー) その2-ゴミ埋め立
て場
供給源
運搬
形成システムの全体はかな
り複雑で,雪の“地層”よりも,
地球科学的な実際の地層に似
通った点が多い.しかしその
“地層”の形態や構造がどう
なっているかは...普通,
我々には見ることができない.
淘汰
供給源
運搬
淘汰
定着
“ 地層”
供給源
1.ゴミのもとになる材料(とその在り場所).
(供給源岩
石)
2.ゴミになる.
3.ゴミとして収集・分別され,運ばれる.
(風化・分解)
(一次移動・
運搬・淘汰)
4.さまざまな処理を受け,形を変える.
(二次移動・運搬・
Sedimentology & Stratigraphy
地層学が持つ,人間社会に対する有用性
近代的な地質学の発達史
年代
1669
1695
1769
1775
1788
1807
1815
1825
1830
1835
1841
1859
1859
1875
1877
1878
1885
事項
人
地層累重の法則
ノアの洪水説
蒸気機関の発明(・改良)
水成論
堆積作用.斉一論
Geological Society of London 設立
イギリスの地質図.地層同定の法則
フランスの地質図.
斉一論
地質系統(Silurian System など)の命名
地質時代(新生代など)の命名
地向斜造山論
進化論
アルプス山脈の成因論
東大理学部地質学科設立
万国地質学会議(パリ)
日本の地質構造の総括
Steno, N.
Woodward, J.など
J. Watt
Werner, A.
Hutton, J.
-
Smith, W.
Blaumont
Lyell, C.
Murchison, R.
Phillips, J.
Hall, J.
Darwin, C.
Suess, E.
-
-
Naumann, E.
・産業革命と地質学の発展
(18世紀後半~19世紀中盤)
→ 地質学=地層学だった.
石炭産業との関連性.
石炭=地層.
Sedimentology & Stratigraphy
地層学が持つ,人間社会に対する有用性(続き)
・資源探査 -とくに堆積岩と密接に関連するもの
石油・堆積性鉱床(石炭・ウランなど)
・環境問題
直接の関わり:
ゴミ処理・地下水汚染
間接的な関り: 地球温暖化...
・自然災害の予知・予測のためのベース
例:『豊浜トンネル崩落事故』と地層学
・地球的な過去の事件や歴史に対する知的興味
地球外天体の衝突による生物の集団絶滅
.....
プレートテクトニクスと大陸移動