小田先生とブラックホール はくちょう座X-1 (Cyg X-1) 1915:アインシュタインの一般相対論 1930年代:シュワルツシルド解→ブラックホール しかし理論家の机上の空論にとどまっていた Swan Song:Cyg X-1 の速いX線変動の発見 ゆっくりスキャンするUhuruの視 野を横切る Cyg X-1 MITによるロケット観測 10秒 Oda et al. ApJL 166, L1 (1971) Rappaport et al. (1971) 20秒 Cyg X-1 の正体を追い詰める ◆Oda et al. (1971); Uhuruによる速いX線変動の発見 ◆Miyamoto et al. (1971); すだれコリメータを用いた気球観測で、 Cyg X-1 の位置を数分角に追い込む。 ◆Hjellming & Wade (1971), Braes & Miley (1971); X線で決めた位 置に電波源が出現。その位置にOB型の超巨星 HDE226868が あった。 ◆Webster & Murdin (1972) ; および Bolton (1972); HDE226868が 5.6d 分光連星であることを発見、ドップラー測定から、X線源は >9M0であることを示す。 ◆Mason et al. (1974); X線でも 5.6日周期で吸収が増える時期が ある → 同定は間違いなし。 1975頃には、Cyg X-1 をBHとみなす考えが市民権をえた。 内之浦にて、1975年頃 1977年頃、小田先生の伊豆の別荘にて 小田克郎 牧島 村上 田原 小田夫人 関(鈴木)悦子 小田先生 レビュー論文 Cyg X-1 / A Candidate of the Black Hole Oda, M., Space Science Reviews 20, 757 (1977) 1. 光学ドップラーからCyg X-1の質量は > 9 M0 でBH と推測される が、議論の抜け道は残る → Dotani et al. (1997) で解決 2. 主星からの星風がBHに捕獲され、降着円盤が形成される。 → 現 在でも正しい描像 3. スペクトルと強度に、2つの準安定な状態。しかしソフト状態のデー タが乏しい。→ Dotani et al. (1997) で解決 4. X線強度は秒〜ミリ秒で準周期的に振る舞うようだ。→ 1985年の QPOの発見や、宮本スクールの仕事を予見 5. 変動はショットの重ね合わせ。ショットの物理的な意味は?ショット に伴うスペクトル変化は? →根来さんの仕事 6. なぜ Cyg X-1 はランダム変動を示し、それは降着円盤のどんな物 理を反映するのか?→ 未解決 7. 他に似た系は? → Majima et al. (1984) のGX339-4で解決 1月 ☆「はくちょう」によ る GX339-4の観測 →新たなBHC 3–6 keV counts low/hard state high/soft state 前島, 牧島, 松岡, 小川原, 小田, 土井, 田原 Hardness ratio ApJ 285, 712 (1984) 100% low/hard state low/hard state 10% 変動率関数 パワー スペクトル 1% high/soft state 0.01 0.1 1 Frequency (Hz) 10 0.01 0.1 1 Bin width (sec) 10 100 その後の発展(〜1990年代半ばま で) ◆ ソフト状態の超軟スペクトル(GX339-4, LMC X-3, GS2000+25; 田中、満田、海老沢、堂谷、蓬茨、牧 島、..) 標準降着円盤の放射モデルで良く合う。 円盤の内縁半径は一定で、3Rsとみなせるので、X線 データからBH質量が推定できる。 ◆ X線の速いランダム変動 (Cyg X-1, GX339-4, GS200+25; 宮本、北本、根来、寺田、嶺重、..) 変動のパワースペクトルは特徴的な形をもつ。 異なるエネルギーバンドの間には、周波数に依存し た「位相遅れ」がある。 変動の様子は、スペクトルの状態と相関する。 BH候補天体の爆発的増加 〜1995以前 108 質 量 6 ( 10 太 陽 4 比 10 ) 102 100 〜1995以後 銀河中心の巨大BH 銀河中心の巨大BH (数百〜数千個) (数百〜数千個) 中質量BH (数十個) 恒星質量BH(数十個) 恒星質量BH 天の川銀河 近傍銀河 ガンマ線 バースト? X線で見た銀河の例。 明るく光る点の多 くはBH候補天体。 遠方宇宙 初期宇宙 さまざまな環境にさまざまなBHが実在するらしい 500 題名に “Black Hole” を含む論文 数 新しい発展 400 300 200 100 0 50 30 20 Oda et al. (71) 40 Abstractに “Cyg” と “black hole”を 含む論文数 論文電子化 10 0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 新しい発展 (1990年代後半〜) ◆BHの実在証拠 水メーザーによる巨大BHの確証(三好 et al. 95) 活動銀河核の鉄ラインの広がり(田中、井上、..) ◆BHの形成過程の理解 ガンマ線バーストは初期宇宙でのBH形成を見ている? 銀河中心BHの質量∝銀河バルジ質量(ハッブル望遠 鏡) ◆新種のBH候補の発見 M82の中の中質量BH(鶴、松本宏、松下聡、..) 近傍銀河のULX(牧島、水野、久保田、嶺重、渡会.. ) ◆BHへの降着とエネルギー放出 ジェットをもつBH連星(マイクロクエーサー)の発見。 標準降着円盤の破れ(久保田、嶺重、渡会、水野、..) ショットに伴うスペクトルの変化(根来、..) 代表的なBH論文のcitation 200 三好 et al. 95 水メーザー 150 宮本 et al. 91 ランダム変動 100 小田 et al. 71 50 0 田中+ 柴崎 (96) レビュー 1972 1976 1980 牧島 et al. 86 標準降着円盤 1984 1988 1992 牧島et al. ULX (‘00) 1996 松本+鶴 2000 M82 (‘01) BHへの物質降着とエネルギー放出 ジェット エネルギー放出 とジェット形成 (hν≫mpc2 ) 物質流入 とX線放射 (hν≦mec2 ) X線 エネルギー転換 とガンマ線 放射 ( hν~mpc2 ) 降着円盤 ガンマ線 事象の地平線 不可視領域 時空の特異点 ブラックホール 重 力 ポ テ ン シ ャ ル まとめ • 小田先生の想像力に満ちた卓見により、ブラック ホールの実証的研究が始まった。 • 日本はその中で、つねに中心的な貢献を続けて来た。 • いまブラックホールの研究は第2の黄金時代を迎え ており、我々は一層の努力をしたい。 相対論的効果にもとづいたBHの証拠 BHの回転の証拠 銀河中心の巨大BHのできかた ガンマ線バーストとBHの関係
© Copyright 2024 ExpyDoc