GPSと応用技術 第6回研究会 March 19, 2004 電離層遅延のGPSに対する影響 坂井 丈泰 (電子航法研究所) [email protected] March 2004 Sakai, ENRI Contents Page 1 (1) 衛星航法システムに対する電離層の影響 (2) 日本付近における電離層遅延誤差の様相 – 低磁気緯度地域に属する日本では、どの程度の電離層遅延があるか (3) GPSの場合の補正方式 – 1周波ユーザ:モデル方式、ディファレンシャルGPS – 2周波ユーザ:直接補正 (4) SBAS方式の電離層遅延補正とその性能評価 – 日本も開発中のSBASによる補正能力 (5) 衛星航法システムの動向と電離層補正 – GPS近代化計画、Galileo計画の進展に伴う補正能力の改善可能性 – 2周波SBASの検討状況 March 2004 Sakai, ENRI Page 2 GPSの構成 • 24衛星(6軌道面、高度約2万km) – 実際は28衛星が稼動中 – 軌道傾斜角55度、周期11:58 • 標準測位サービス(SPS):軍民共用 – L1(1575.42MHz):C/Aコード (1.023Mcps) • 精密測位サービス(PPS):軍用 – L2(1227.6MHz):P/Yコード(10.23Mcps) • スペクトラム拡散:CDMA、測距 – 衛星のPRN番号(1~37):拡散コード (FAA HP) • 航法メッセージ(50bps):軌道情報 • 1978~ Block I プロトタイプ 1989~ Block II/IIA 実用型(SA機能あり) 1997~ Block IIR 衛星間リンク、Autonav March 2004 Sakai, ENRI Page 3 高層大気圏の構造 1000 900 800 高度 km 700 人工衛星 600 500 400 密度 気温 300 電離層 熱圏 流星 中間圏 成層圏 200 100 0 気温 K 密度 kg/m3 300 10-14 1000 1 対流圏 オーロラ March 2004 Sakai, ENRI Page 4 GPSの誤差要因 衛星クロック誤差 太陽光線 衛星軌道情報の誤差 電離層 電離層遅延(~100m) 周波数に依存 高度250~400km程度 対流圏遅延(~20m) 対流圏 マルチパス 高度7km程度まで March 2004 Sakai, ENRI Page 5 電離層を利用していた時代 電離層 数1000km以上の 遠方まで到達する ロラン・オメガなど • ロランやオメガなどの双曲線航法システムでは、LF(100kHz) あるいはVLF(10kHz)帯の無線信号を利用した。 • 大地と電離層の間を導波管のように伝搬する。 March 2004 Sakai, ENRI Page 6 GPSの測距信号 航法メッセージ (50bps) ×20460 20ms(5996km) PNコード (1.023Mcps) ×1540 978ns(293m) 搬送波 (1575.42MHz) 位相反転 0.635ns(19.03cm) 送信波 = 航法メッセージ(±1)×PNコード(±1)×搬送波 March 2004 Sakai, ENRI Page 7 電離層中での電波伝搬 電波の伝搬 A B (a) 群速度 伝搬時間 t Vg = x/t < c (b) 波数 n 波長 l 位相速度 Vp = fx/n > c 距離 x 屈折率≠1の部分 March 2004 Sakai, ENRI Page 8 観測値への影響 コード擬似距離 (L1) 真距離 クロック 対流圏遅延 rL1(t;i,j) = R(t;i,j) + b(t;i) + B(t;j) + T(t;i,j) + I(t;i,j) L1周波数での遅延量 (L2) rL2(t;i,j) = R(t;i,j) + b(t;i) + B(t;j) + T(t;i,j) + g I(t;i,j) g = fL12 / fL22 搬送波位相 (L1) fL1(t;i,j) = R(t;i,j) + b(t;i) + B(t;j) + T(t;i,j) + NL1(i,j) - I(t;i,j) (L2) fL2(t;i,j) = R(t;i,j) + b(t;i) + B(t;j) + T(t;i,j) + NL2(i,j) – g I(t;i,j) 遅延量 I= 40.3 40.3 TEC = c f2 c f2 s N(x) dl LOS N(x): (電離層)電子密度 March 2004 Sakai, ENRI 電離層遅延の例 Page 9 Vertical Delay, m 20 磁気緯度 51.3 Magadan 26.6 Mitaka 10 0 14.5 Ishigaki 24 48 Local Time past 5/28/03 00:00, h • 電離層活動が活発だった時期の例。 • 垂直遅延量に換算してある。 March 2004 Sakai, ENRI Page 10 電離層遅延の分布例(ピーク時) 50 5/29/2003 05:40UTC 20 18 16 14 Latitude, deg 40 10 8 30 6 4 2 20 120 130 Longitude, deg 140 150 0 Delay, m 12 March 2004 Sakai, ENRI 空間相関(静穏時) Page 11 March 2004 Sakai, ENRI 空間相関(磁気嵐時) Page 12 March 2004 Sakai, ENRI 電離層遅延の補正 Page 13 電離層の一般的性質 • 高度250~400km付近に分布する(E層、F層)。 • 昼夜で高度や厚さ、密度が大きく変化する(昼は低くて濃い)。 • 支配的要因は地方時刻・磁気緯度で、一般には数1000kmにおよぶ空間相関 がある。 • 電波伝搬経路上の自由電子の総数により遅延量が決まる。 • 太陽フレアなどにより磁気嵐が発生すると活動が激しくなり、遅延量とそのばら つきが特に大きくなる。 電離層遅延の補正方法 (1) GPS単独測位:磁気緯度と地方時の関数として補正。 (2) LADGPS(狭域DGPS):近くにある基準局での実測値を使用。 (3) WADGPS(広域DGPS):電離層遅延量の分布を放送。 (4) 2周波受信機:周波数による遅延量の差を利用して補正。 March 2004 Sakai, ENRI Page 14 電離層遅延補正 (1) 1周波受信機(普通の受信機) • コサインモデルで補正(ピークは14:00LT、夜間は5ns。 • 補正精度はそれほど良くない(RMS誤差で半減程度)。 (2) ディファレンシャルGPS(移動体応用) 5ns • 基準局における測定値により補正。 14:00 • よく補正できる。基準局が遠いと精度低下。 (3) 2周波受信機(科学観測・測量用) • 電離層遅延量の周波数依存性を利用して直接補正。 • よく補正できる。受信機の周波数間バイアス (IFB)が問題(~数m)。 遅延量 I= 40.3 40.3 TEC = c f2 c f2 s 電離層 N(x) dl LOS ユーザ 基準局 March 2004 Sakai, ENRI Page 15 コサインモデルによる補正 Wakkanai (MLAT=36.4) 15 10 0 Ishigaki (MLAT=14.5) 20 Peak Delay, m Vertical Delay, m 20 石垣島 10 5 -60 10 稚内 -30 0 30 60 Magnetic Latitude, deg 0 12 24 36 48 60 72 84 Local Time past 10/29 00:00, h • 電離層活動が活発だった時期の例(垂直遅延量に換算)。 • 磁気緯度の違いによる遅延量の差がうまく反映されていない。 March 2004 Sakai, ENRI Page 16 GPS地上セグメント COLORADO SPRINGS GAITHERSBURG HAWAII CAPE CANAVERAL ASCENSION DIEGO GARCIA KWAJALEIN MCS (Garrett, USAFより) • MCS 1局+バックアップMCS: 全体制御、航法メッセージ生成 • Monitor Station(MS) 6局(うち1局はMCS内): L1/L2測距、航法メッセージ受信 • Ground Antenna(GA) 4局: コマンド・データ送信用 March 2004 Sakai, ENRI Page 17 測位誤差モデル 測位誤差モデルの例 誤差要因 衛星軌道 衛星クロック 電離層遅延 対流圏遅延 マルチパス 受信機・その他 測距誤差 バイアス成分(m) 2.1 2.0 4.0 0.5 1.0 0.5 ランダム成分(m) 0.0 0.7 0.5 0.5 1.0 0.2 5.1 水平測位誤差(HDOP=2.0) 垂直測位誤差(VDOP=2.5) 1.4 合計(m) 2.1 2.1 4.0 0.7 1.4 0.5 5.3 10.6 13.3 米軍による規定(民間用標準測位サービス) 全世界平均(95%) 最悪(95%) 水平方向 13 m 36 m 垂直方向 22 m 77 m March 2004 Sakai, ENRI ディファレンシャルGPS Page 18 • GPSの誤差要因の多くは空間的な相関 があるから、離れた地点間でも測距誤差 は似ている。 • 位置がわかっている基準局で測距誤差 を求め、この誤差情報を移動局に送信、 移動局側で補正する。 基準局と同じ 測定誤差 移動局 測定誤差 基準局から誤差情報を送信 誤差要因 衛星軌道 衛星クロック 電離層遅延 対流圏遅延 マルチパス 受信機雑音 • ディファレンシャル補正の精度は移動局 ー基準局間の距離(基線長)に依存。 基準局 補正の可否 ○ ◎ ○ △ × × • 基準局受信機に加え、無線リンクなどが 必要。 備考 長基線では精度低下 よく補正できる 活動が激しいと精度低下 高度差に注意 むしろ増加 むしろ増加 March 2004 Sakai, ENRI ユーザ測位誤差の例(水平) B地点 A地点 単独測位 A地点(那覇) DGPS A地点(那覇) 基準局:B地点 (奄美大島) A-B間:300km Page 19 March 2004 Sakai, ENRI ユーザ測位誤差の例(垂直) B地点 A地点 単独測位 A地点(那覇) DGPS A地点(那覇) 基準局:B地点 (奄美大島) A-B間:300km Page 20 March 2004 Sakai, ENRI IPP間距離と補正後残差 Page 21 March 2004 Sakai, ENRI Page 22 2周波受信機 民間用L1波(1575.42MHz) 軍用L2波(1227.6MHz) • GPS衛星は、民間用L1波に加え、軍用にL2波も放送している。 名称 周波数(MHz) L1 1575.42 L2 1227.6 コード C/Aコード P/Yコード P/Yコード コード速度(Mcps) 1.023 10.23 10.23 用途 民間用 軍用 軍用 • PコードのメッセージはYコードで暗号化されているが、Pコード自体は知られ ており、Pコードにより距離を測定することができる。 • 2周波数を利用することで電離層遅延補正が良好にできるようになり、測位精 度(特に垂直方向)が向上する。 March 2004 Sakai, ENRI 2周波数の利用による効果 Page 23 20 測位誤差(北方向), m 1周波受信機 • L2波に乗せられているP/Yコードは 民間用のC/Aコードよりもチップ速度 が速いため、測距精度が良くなる。 0 -20 -20 • ところが、L2波はL1より6dBだけ電 力が小さく、結局精度はそれほど変 わらない。 2周波受信機 0 測位誤差(東方向), m 20 • 2周波数の利用により、電離層遅延 誤差をうまく補正できる効果が大き い。 March 2004 Sakai, ENRI Page 24 WADGPS方式による補正 補正方式の基本的考え方 • 垂直遅延量を位置の関数として放送する。 • ユーザ側で補間、垂直→スラント変換をする。 • 高度を固定した薄膜モデルを使用。 Vertical delay Slant delay 方式設計の際の制約 • モニタ局における観測データから、任意のユー ザ位置で有効な補正情報を作成。 – モニタ局の密度と幾何学的配置 IPP 仰角 E 電離層 高度 H • 移動体航法用途の場合: – 低仰角(~5度)まで対応しなければならない – データ伝送容量に制約がある Slant delay = 傾斜係数 * vertical delay – リアルタイム性が要求される – インテグリティ(完全性)が要求され、補正精 度に関する情報も提供しなければならない March 2004 Sakai, ENRI Page 25 測位精度とインテグリティ 測位精度(accuracy) • 航法システムの提供する位置情報の絶対精度。95%値などで代表。 • 信頼性・安全性には直結しない。システムのパフォーマンスに影響。 • ディファレンシャル補正情報は、測位精度を改善するためのもの。 インテグリティ(integrity;完全性) 測位精度 • 位置情報が正確である性質、あるいは保証。不 正確な場合に警報を出す能力。 • 安全性に直接影響する。 • インテグリティを確保するには、ユーザ位置にお ける現実の測位誤差を(航空用途の場合は110-7の信頼水準で)推定できければならない。 • 測位誤差の平均値やRMS値は問題ではない。 最悪ケースが問題となる。 • 電離層遅延補正では、補正残差が関係する。 測位誤差 インテグリティに関係 March 2004 Sakai, ENRI 開発中のSBAS Page 26 (R. Fuller, Stanford Univ.) March 2004 Sakai, ENRI SBAS方式の電離層遅延補正 60 Latitude, N 45 30 30 15 Page 27 • 広域補強システム(WADGPS) では、大陸規模の広域にわたっ て有効な補正値が必要。 • 5度×5度の格子点(IGP)におけ る補正値が放送される。 • ユーザは、各衛星から到来する 測距信号の電離層通過点(IPP) を求め、その位置の補正値と補 正精度を内挿により求める。 • 補正精度は、モニタ局の配置に 依存する。 IGP 0 0 120 150 Longitude, E 180 IGP IPP March 2004 Sakai, ENRI ユーザ受信機の内挿処理 IGP2 Page 28 IGP1 IPP ypp IGP3 IGP4 xpp DIPP = xppyppDIGP1+(1-xpp)yppDIGP2+(1-xpp)(1-ypp)DIGP3+xpp(1-ypp)DIGP4 • IPP位置における電離層遅延量は、周囲のIGPの垂直遅延 量から双一次補間により求める。 • 補正精度を表すGIVE値についても同様に補間する。 March 2004 Sakai, ENRI Page 29 垂直→傾斜変換 6 Obliquity Factor H=100km 4 Slant delay H=350km Vertical delay 2 H=1000km 0 仰角 E 15 30 電離層 高度 H 45 Satellite Elevation, deg • SBASが放送するのは垂直遅延量なので、これを衛 星の仰角に基づいて視線方向の遅延量に換算する。 • 換算のための関数も規格で定められている。 傾斜係数 = slant / vertical March 2004 Sakai, ENRI Page 30 SBASメッセージ(1) プリアンブル 8ビット メッセージタイプ 6ビット データ領域 212ビット CRCコード 24ビット 250ビット メッセージ タイプ 内 容 更新間隔 (秒) メッセージ タイプ 6 17 GEOアルマナック 300 300 内 容 更新間隔 (秒) 0 テストモード(使用不可) 1 PRNマスク情報 120 18 IGPマスク情報 高速補正(FC+UDRE) 60 24 高速補正・長期補正 6 インテグリティ情報(UDRE) 6 25 長期補正 120 7 高速補正の劣化係数 120 26 電離層遅延補正(+GIVE) 300 9 GEO航法メッセージ 120 27 SBASサービスメッセージ 300 10 劣化係数 120 28 クロック・軌道情報共分散 120 12 SBAS時刻情報 300 63 NULLメッセージ 2~5 6 — March 2004 Sakai, ENRI Page 31 SBASメッセージ(2) 補正の種類 記 号 ビット数 分解能 補正範囲 高速補正 FC 12 0.125 m ±256 m 長期補正(衛星位置) δx, δy, δz 11 0.125 m ±128 m 長期補正(衛星速度) δx, δy, δz 8 2–11 m/s ±0.0625 m/s 電離層遅延補正 Vertical Delay Estimate 9 0.125 m 63.875 m ビット内容 FC劣化係数 UDRE GIVE URA(静止衛星) 0 0 mm/s2 0.0520 m2 0.0084 m2 2m 1 0.05 mm/s2 0.0924 m2 0.0333 m2 2.8 m 2 0.09 mm/s2 0.1444 m2 0.0749 m2 4m 3 0.12 mm/s2 0.2830 m2 0.1331 m2 5.7 m : : : : : 13 3.30 mm/s2 2078.695 m2 20.787 m2 2048 m 14 4.60 mm/s2 Not Monitored 187.0826 m2 4096 m 15 5.80 mm/s2 Don’t Use Not Monitored Don’t Use March 2004 Sakai, ENRI 補正残差の要因(1) Page 32 (1) 遅延量測定誤差 モニタ局における電離層遅延量の測定誤差。マルチパスお よびキャリアスムージングのほか、2周波受信機を利用するた め周波数間バイアスも問題。 (2) サンプル不足 ユーザ位置における電離層遅延の補正精度は、モニタ局ネ ットワークの密度に左右される。MSASは国内6局。 (3) 薄膜近似による誤差 高度方向の分布がある現実の電離層を厚さのない薄膜で近 似していることによる誤差。 March 2004 Sakai, ENRI 補正残差の要因(2) Page 33 (4) 電離層高度 SBASでは350kmに固定するが、実際には季節や時間帯に よって大きく変化する。高度が違うとIPPの位置も変わる。 (5) 水平方向モデル 現行方式は5度メッシュの平面補間。これ以上の細かい変動 は補正できない。 (6) 時間分解能 現状では、少なくとも5分以下の間隔で補正メッセージが放 送される。これより速い変動は補正できない。 (7) 量子化誤差 現行メッセージでは0.125m単位。 March 2004 Sakai, ENRI 薄膜平面モデル方式の評価 Page 34 • 補正方式として今のところ一般的な、薄膜平面モデル方式に よる、日本付近における補正能力の評価を試みる。 • GEONET(国土地理院)およびIGSの観測データ(合計28局) より、次の期間の電離層遅延量データを作成した。 (期間I) 電離層活動は静穏(2003年7月8~9日) (期間II) 強い磁気嵐が発生(2003年10月29~31日) • 観測データからモニタ局として想定する6局分を抽出し、これ に基づいて平面フィッティングによる補正値を求め、評価局で 観測した遅延量と比較して残差を求める。 • 移動体航法用を想定し、仰角マスク = 5度とした。 • 補間次数は0~2次を試した。 March 2004 Sakai, ENRI Page 35 観測局の配置 60 GEONET(国土地理院) IGSネットワーク Latitude, N 45 • GEONET 22地点に加えて、 45 周辺国のIGSサイト 6地点を利用。 30 • すべて2周波GPS受信機により、30 秒間隔で常時連続観測。 • 磁気緯度は石垣島で14.5度。 30 • 28局を用いた理由:受信機の周波 数間バイアスをうまく推定するため。 MLAT 15 120 135 150 Longitude, E 165 March 2004 Sakai, ENRI Page 36 電離層遅延量の分布例 MSASモニタ局(6局) 全局(28局) • 10月末の磁気嵐の際のピーク時の電離層遅延量分布。 • 背景は全局分データを適当に補間したもの。 March 2004 Sakai, ENRI Page 37 評価方法 モニタ局が観測したIPP Top View 評価局が観測したIPP R 評価局が観測したIPPを 評価対象とする 2次曲面フィッティング (パラメータ6個) Side View 残差 電離層遅延 距離R以内のモニタ局のIPPを集め、 フィッティングパラメータを決める (モニタ局のIPPのみを使用) 平面フィッティング (パラメータ3個) • 全エポック、すべてのIPPについて評価し、RMS値を求める。 • 評価対象IPPの条件:4象限すべてにデータがあること。 March 2004 Sakai, ENRI Page 38 モニタ局・評価局の配置 45 30 30 Latitude, N Latitude, N 45 30 30 MLAT MLAT 15 120 135 Longitude, E 内側7局 150 15 120 モニタ局位置 評価局位置 135 Longitude, E 外側8局 150 March 2004 Sakai, ENRI 静穏時:0次フィッティング 補正残差(内側7局) Page 39 補正残差(外側8局) March 2004 Sakai, ENRI 静穏時:1次フィッティング 補正残差(内側7局) Page 40 補正残差(外側8局) March 2004 Sakai, ENRI 静穏時:2次フィッティング 補正残差(内側7局) Page 41 補正残差(外側8局) March 2004 Sakai, ENRI 磁気嵐時:0次フィッティング 補正残差(内側7局) Page 42 補正残差(外側8局) March 2004 Sakai, ENRI 磁気嵐時:1次フィッティング 補正残差(内側7局) Page 43 補正残差(外側8局) March 2004 Sakai, ENRI 磁気嵐時:2次フィッティング 補正残差(内側7局) Page 44 補正残差(外側8局) March 2004 Sakai, ENRI Page 45 フィッティング残差 時期 静穏時 磁気嵐時 次数 パラメータ 評価対象 個数 0 1 1 3 2 6 0 1 1 3 2 6 IN OUT IN OUT IN OUT IN OUT IN OUT IN OUT RMS 0.418 0.439 0.361 0.422 0.364 0.428 0.964 0.984 0.543 0.567 0.479 0.568 残差 (m) 最小 -1.457 -1.281 -1.528 -1.967 -1.660 -1.846 -2.780 -2.338 -3.345 -5.178 -3.212 -5.310 最大 2.026 2.128 1.300 1.497 1.321 1.655 11.66 13.97 5.682 7.652 5.520 8.697 評価された IPP数 72.9 % 43.3 % 68.9 % 40.7 % March 2004 Sakai, ENRI 近代化計画(Modernization) Page 46 • SA解除(2000年5月) • Block IIR-M(2004/12~):第二民間周波数(L2=1227.6MHz) – 航空用ARNSバンド外:民間航空用途には使えない – 科学観測、測量など(ただし、すでにP/Yコードは使用している) – IOC 2008、FOC 2010 • Block IIF(2006~):第三民間周波数(L5=1176.45MHz) – Safety-of-Life ApplicationもOK(民間航空含む) – 航空用DME(960~1215MHz)などとの干渉あり – IOC 2012、FOC 2014 • Block III(2010?~):次世代型GPS • MS増設:NIMA局を利用(6局) • MCS増設:Alternate MCS(西海岸に設置) March 2004 Sakai, ENRI 測距信号の増加 現行システム 第2民間周波数 導入後 第3民間周波数 導入後 民間用に10.23Mcpsの信号 Page 47 March 2004 Sakai, ENRI Galileo計画 Page 48 • 1999年にEUが計画を発表:最初から軍用ではない • 30衛星(3軌道面、高度23600km) • ユーザに応じたサービス – – – – OS(Open Service) GPS SPSに相当、無料 CS(Commercial Service) 有料の商用サービス、暗号化 SoL(Safety-of-Life Service) 民間航空など PRS(Public Regulated Service) 政府機関向け • E1(1589.5MHz)+E2(1561MHz): OS/CS/SoL/PRS E6(1260~1300MHz): CS/PRS E5a(1176MHz)+E5b(1201.5MHz): OS/SoL/CS(E5b) • 2005打上げ開始、2006 IOC、2008 FOC March 2004 Sakai, ENRI 電離層遅延補正へのインパクト Page 49 測距信号の増加 • 電離層遅延補正が直接可能:補正精度の向上。 • パワー増加:低仰角でパワー不足だった衛星も受信可能となる。 – ディファレンシャルGPS:ユーザとの共通衛星が増える。 – SBAS:IPPが増え、補正能力が向上する。 • 干渉の可能性も増える:ロバストネスについては要対策。 衛星の増加 • DOPの改善効果:GDOP 3.8(GPSのみ) → 2.1(GPS+Galileo) • ブロッキングに強くなる:平均衛星数 7.7(GPSのみ) → 17.5 • 基準局では、IPPが大幅に増える。 – ディファレンシャルGPS:データ伝送量が増える。 – SBAS:ユーザ受信機は無修正(1周波GPS)でも補正精度向上。 March 2004 Sakai, ENRI SBASの動向(1) Page 50 • WAAS FOCは2007頃を予定。 – IOCは2003年7月。静止衛星2機、25のモニタ局。 – 静止衛星3機、モニタ局を34以上に増加(カナダ、メキシコ含む)。 – 非精密進入までサポート。CAT-I精密進入は対象外。 • EGNOSは本年中に試験運用開始を予定。MSASは来年以降。 – いずれも低磁気緯度地域をカバレッジ内に含む。 – CAT-I精密進入は想定していない。 • CAT-I精密進入の主要なハードルは電離層遅延誤差。 – – – – 当初は楽観視していたが、90年代末に主要な問題として認識された。 補正残差をどこまで(しかも確実に)抑え込めるかが課題。 薄膜平面モデルの見直しも含めて検討中。 Krigingは有力だが、なお有効性を検証中。 March 2004 Sakai, ENRI SBASの動向(2) Page 51 • スレットモデル(threat model) – WAASで、インテグリティ水準10-7を実現するために作成。 – 収集したデータに基づいて、考えうる最悪ケースを想定。WAAS IOCま でで最悪の磁気嵐は2000年7月のもの。 – しかし、2003年10月にはさらに厳しい状況があった。 – 電離層の挙動は地域毎に異なるため、MSASには日本版が必要。 • 2周波SBASの検討作業が進行中。 – – – – SBASで2周波という場合、L1+L5を指す。 RTCAがL5 WAASの規格化作業中。Galileoも考慮。 主要なメリット:耐干渉性と電離層遅延補正。 しかし、GPS L5はIOC 2012、FOC 2014の予定。 March 2004 Sakai, ENRI なお残る課題 Page 52 • シンチレーション(scintillation) – 低磁気緯度地域を中心に、電離層電子密度が急に変動する現象。 – 空間スケールが小さいため、モニタ局ネットワークで捉えきれない。 – 補正残差の不確定性を小さくできない。 • 周波数間バイアス(チャネル間バイアス) – 衛星および受信機のハードウェアに起因するバイアス誤差。 – 推定・除去アルゴリズムについて、さらに検討の余地がある。 • サイクルスリップ – 搬送波位相測定値に含まれる整数単位のジャンプ。 – 信号が増えるとサイクルスリップの発生確率も上がる。 – キャリアスムージングでも問題。 March 2004 Sakai, ENRI Conclusion Page 53 • 衛星航法システムでは、電離層伝搬遅延は大きな問題。 – 通常時はそれほど問題ではないが、磁気嵐の際などに補正しにく い誤差となる。 – 移動体航法では、補正残差に関する情報も必要。 – 従来は比較的楽観視されてきた。最近ではむしろ主要な問題。 • 日本は低磁気緯度地域に属するため、電離層遅延が大きい。 – 日本における電離層遅延の状況は必ずしも明らかではない。 – 電離層の挙動は地域毎に異なるため、日本用のモデルが必要。 – 国土地理院のGEONETは有効な観測手段。 • 2周波の測距信号が使えるようになっても、なお課題が残る。 – シンチレーション、周波数間バイアス、サイクルスリップ、など。
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