学力と人間力を育てる学習環境 市川伸一(東京大学教育学研究 科) 2015/9/30 学力をどうとらえるか 測りやすい力 学んだ力 学ぶ力 知識 (狭義の)技能 測りにくい力 読解力,論述力 討論力,批判的思考力 問題解決力,追究力 学習意欲,知的好奇心 学習計画力,学習方法 集中力,持続力 (教わる,教え合う,学び合うときの) コミュニケーション力 情報の保存・加工 理解 入 力 情 報 表現 記憶・思考 知 識 内的リソース 道具・他者 外的リソース 出 力 情 報 いま求められる学力向上策 知識を生かして探究する活動を 「習得」と「探究」の学習サイクル 家庭学習を含めた学習スキルの育成 学習方法をとりあげた授業 「教えて考えさせる授業」を基調に 「教えずに考えさせる授業」との対比 授業外学習支援の充実 学習相談室、放課後学習チューター 授業外学習ポイント制度 (人間力戦略研究会報告書) 学習の2サイクルのバランスとリンク 疑問 予習 共有 表現 授 業 復習 定着 習得サイクル 触発 追究 探究サイクル 学習法講座:英単語学習法を探る 対象:中3~高2 (東京大学附属中等教育学校) 実施時期:2000年8月(1日約90分、4回) 市販の単語集(旺文社「ターゲットシリーズ」の1400/1100) 単語の記憶方略(対連合学習 vs 関連づけ方略) 苦手単語集中法の体験 分類作業を通じての記憶法の経験 動詞の活用型による分類/動詞から名詞への派生語 いろいろな英単語記憶法の紹介 関連づけ法/構成要素法/英語交じり日本文/etc. 2015/9/30 学習ゼミナール:教えることを通して学ぶ 対象:中2 (文京区でDMにより公募) 実施時期:2001年8月(1日約50分、全18時間中4時間) 単元:順列と組合せ 「人に教えるつもりで説明する」ことの意味 わかっていない箇所の発見/コミュニケーション力 「テキストや授業の解説がわからない」という状態をつくる 小グループでの教え合い/アシスタントからの指導 小学生にもわかるような表現で説明 応用問題の解説:あとから見てわかるようなメモを残す まとめの問題:組合せの求め方の意味的理解 2015/9/30 教えずに考えさせる授業 新しい学習事項 授業の流れ 既習内容 問題提示 自力(協同)解決 確認(まとめ) ドリルまたは発展 教えて考えさせる授業 新しい学習事項 授業の流れ 既習内容 教師からの説明 理解の確認 発展課題 自己評価活動 認知カウンセリングと学習相談 情報処理的人間観とカウンセリング・マインド を融合させた個別相談・指導 活動の場 東大の学習相談室 研究者、学生、現職教員 日本語教育インストラクター 認知カウンセリング・ゼミ 学校の学習相談室:保健室の学習版 将来的には 教育センター、図書館、児童館 学校における学習相談の動き 学校における試みとして 東大附属中等教育学校、品川区立荏原三中 草加市立松江中、大田区立入新井第一小 自治体の事業として 大阪府:学びんぐサポート事業 国の支援による事業 放課後学習チューター(03年度から実施) 常駐の学習支援相談への拡大(04年度予定) 「学力」から「人間力」へ 伝統的な教育の理想像 教科を極めた自己実現者 学者、芸術家、スポーツ選手、・・・ 健全な生活を営んでいる「一般市民」をモデルに 教育によって何を育てるのか 「学問=学習=学力=学校」 から 「人間として社会の中でよりよく生きようとする力」へ 2015/9/30 文化生活 学習スキル 批判的思考 メディア・リテラシー 投票行動 人権 教科学習 コミュニケーション・スキル 社会政策 社会的スキル 協同的問題解決 福祉 紛争と平和 市民生活 環境 エネルギー 社会参加 犯罪・非行 悪徳勧誘 職業理解 職場見学 職業体験 消費者教育 人間力形成のモデル 職業生活 さまざまな授業外学習支援活動 教科学習 文化・社会活動 学 校 補習,(個別指導) 部活動 家 庭 親・兄弟等の指導 家族での活動 民 間 塾,家庭教師,通信教育 習いごと,スポーツクラブ 教育相談 生徒向け講座,イベント 自治体 地 域 地域サークル活動 任意団体 ボーイスカウト,YMCA等 文化施設 イベント 大 学 (個別指導,学習講座)(生徒向け講座,イベント) さまざまな学習環境の長所・短所 学校教育 (授業・補習・部活等) ○義務教育は、すべての子どもが受けられる ○高校も、公立ならば費用はあまりかからない ○成績・卒業が、進学・就職の社会的評価につながる ●児童・生徒に内容選択の自由が少ない ●補習・部活は、学校に所属している生徒しか参加できない 民間教育 (塾・習い事等) ○多様な内容・レベルから選択できる ●家庭に経済力がないと受けにくい ●商業ベースにのる内容に限定されがち 地域教育 (自治体・市民団体・大学・民間企業等) ○多様なプログラムが提供される ○生徒は、自由、自発的に参加でき、費用も安い ●もともと意欲が高い子どもだけになりがち 授業外学習ポイント制度 地域で行う超・選択学習/学びのスタンプラリー 自治体、市民団体、NPO、民間企業、大学、地域の施設等が 教育プログラムを教育委員会に登録 学校を通じて、児童・生徒に紹介 分野としては、 教科学習/文化・スポーツ/市民生活/職業理解 年間40ポイントほどを最低ラインに 進学先・就職先等に、自己申告制でアピール 2015/9/30 参考図書紹介 これからの教育のあり方 開かれた学びへの出発ー21世紀の学校の役割ー (金子書房) 学力低下論争 (ちくま新書) 学力から人間力へ (市川編、教育出版) 心理学から見た学習のしくみとスキル(中学・高校生向け) 心理学から学習をみなおす (岩波高校生セミナー) 勉強法が変わる本ー心理学からのアドバイスー (岩波ジュニア新書) 認知カウンセリング 学習を支える認知カウンセリング 認知カウンセリングから見た学習方法の相談と指導 (上記2冊とも、市川編、ブレーン出版)
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