2006年2月2日 女性的ファッションとジェンダーの関係 ー平等主義的性役割態度とジェンダー・ アイデンティティを比較してー 02E385 田中厚江 1.はじめに • 女性のファッションの多様化 – フェミニン(女性的)なものからマニッシュ(男性的)なもの までさまざま • 被服に関する、社会・心理的着用目的 – ・自己の確認・強化・変容機能 ・情報伝達機能 ・社会的相互作用の促進・抑制機能 2.問題意識 • 男性的なファッションや女性的なファッション をする女性の被服の着装目的は何か? ・男女平等主義という考え方(情報伝達) ・自己の性の受容(自己の確認) 3.ジェンダーとは • ジェンダー(gender)とは、男らしさ女らしさと いった社会的・文化的からみた性差(神山, 1999)。ジェンダーは以下の3つの側面に分 類できる(飯野,1984)。 – 認知的側面・・・平等主義的性役割態度 – 行動的側面・・・性役割の実現度、実行度 – 自己概念的側面・・・ジェンダー・アイデンティティ 4.平等主義的性役割態度とは • 平等主義:それぞれ個人としての男女の平等 を信じること。(鈴木,1991) • 性役割態度:性役割に対して一貫して好意的 もしくは非好意的に反応する学習した傾向。 (鈴木,1991) 5.ジェンダー・アイデンティティとは • ジェンダーアイデンティティ:男性にとって「男 としての自分らしい生き方」を意味し、女性に とっては「女としての自分らしい生き方」を意 味する。言い換えれば、自己の性を受容した 上で成り立つ自我アイデンティティ。(土肥, 1999) 6.ジェンダーを表すファッション • 従来、ジェンダーは、被服のシンボリックな特 徴、あるいはシンボリックな被服品目そのも のから表示されてきた。(神山,1999) – 男らしい被服品目・・・ネクタイ、スーツ – 女らしい被服品目・・・スカート、ハイヒール 7.研究目的 • 性役割を好意的に受け止めるか、非行為的 に受け止めるかという個人的価値観はファッ ションに影響を与えるかどうかを検討する。 • ジェンダー・アイデンティティの確立(自己の 性の受容)はファッションに影響を与えるかに ついて検討する。 8.仮説 【仮説1】 平等主義的な女性は、伝統主義な女性に比 べ、女性的なファッションをしない。 【仮説2】 自己の性の受容度が高い女性は、受容度 が低い女性に比べて、女性的なファッション をする。 9.調査方法① • 調査期日 2005年11月21日~30日 • 調査対象 香川大学経済学部の女子学生 135名と中国短期大学英語コミュニケーショ ン学科の女子学生68名を対象に、授業中に 質問紙を配布により実施。有効回答数183 名。対象者の年齢は18歳~27歳。 10.調査方法② • 調査項目 ファッションに関するアンケート (20項目、80点満点)を作成し、鈴木 (1987;1991;1994)の平等主義的性役割 態度スケール短縮版(15項目、75点満点)と 土肥(1996)のジェンダー・アイデンティティ 尺度の下位尺度である女性用尺度の性の受 容項目(10項目、40点満点)を使用した。 11.結果① • SPSSによる相関の結果 ジェンダー・ア ジェンダー・ ジェンダー・ イデンティティ アイデンティティ アイデンティティ 0.39 フェミニン フェミニン -0.256 -0.123 平等主義 平等主義 12.結果② • SPSSによる偏相関の結果 ジェンダー・ア ジェンダー・ イデンティティ アイデンティティ 0.3788 フェミニン フェミニン -0.256 -0.0247 平等主義 平等主義 13.結果③ 【仮説1】 相関係数は-0.123となったが、偏相関の結 果、-0.0247となりみせかけの相関だという ことがわかった。よって、仮説1は立証されず、 個人の平等主義的性役割態度は女性的な ファッションをするかしないかに影響を与えな いということがわかった。 14.結果④ 【仮説2】 相関係数は0.39(**)となり、また偏相関の 結果も0.378となったので、低い正の相関関 係があることがわかった。よって、仮説2は立 証され、自己の性の受容度は、女性的な ファッションをするかしないかに影響を与える ということがわかった。 15.結果⑤ • ジェンダー・アイデンティティ尺度(カテゴリー 化したもの)を従属変数とし、ファッションに関 するアンケート20項目を説明変数として、関 連性を把握するためにCATDAPによる分析 を行った。結果、9つの項目に関連が見られ た。 • 9つの項目においてクロス表を作成し、カイ二 条検定を行った。 17.考察① • なぜ、男女平等主義という考え方は、ファッ ションに影響を与えないのか? • その他の要因が大きい – – – – 身体的コンプレックス 金銭的問題 親の影響 彼氏の有無 18.考察② • ジェンダー・アイデンティティ(自己の性の受 容度)がファッションに影響を与えるのはなぜ か? • 自分の性を受けとめず、男に生まれたかった と考える人は、スカートやワンピースを好んで 着ることはない。 19.考察③ • 平等主義的性役割態度とジェンダー・アイデ ンティティが負の相関関係になったのはなぜ か? • フェミニンなファッションをし、昔ながらの結婚 観や職業観をもつ「お嫁系」女性の存在。 20.考察④ • CATDAPの結果から何が言えるか? • ジェンダー度が高い女性ほどフェミニンな ファッションをし、逆にスニーカーを履くなどの ラフな格好はしない。 • 自己の性を受けとめている女性は、大人の女 性であり、大人の女性のイメージであるファッ ションが好まれる。 21.結論 • 女性がフェミニンなファッションをするかどうか は、個人の考え方や価値観は影響せず、大 人の女性に成熟しているかが影響する。また、 この女性たちには、大人の女性を連想させる ファッションが好まれる。 • マーケティングにおいて、彼女たちが求める 大人の女性像を知り、それをファッションとし て実現させていくことが重要であると考える。
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