説明場面における相手の理解度の 認知がジェスチャー表出に与える影響 文学部心理学専攻4回生 1613070211-6 岡田 怜佳 ◆先行研究 • 大坊(1998) ・・・ジェスチャーは, 言語的コミュニケーションを補足・強 調するのに有効的である • 荒川・鈴木(2006) ・・・一部の近言語的特徴(声の大きさ, テンポ, 抑揚 …etc)とジェスチャー頻度との間には関係がある. ジェスチャーは言葉以上に「分かりやすさ」をもち, 発話との間に密接な関係をもっている ◆疑問・目的 先行研究では, 話し手側の要因とジェスチャーとの関係 に着目したものが多い ⇒しかし, 会話は「話し手」と「聞き手」がいてはじめて成り 立つものなので, 聞き手との関係や, 聞き手の反応・態 度によっても話し方は変化するのではないか? ?友人同士の関係において, 「相手が自分の話をどの 程度理解しているのか」という理解度の認知がジェス チャー表出頻度にどのような影響を与えるのかを検討 ◆仮説 • 「聞き手が話を理解していない」と認知した場合、説明者 のジェスチャー頻度が高くなるのではないか 頻度の差だけでなく, ジェスチャーの質(大きい, 激しい, ゆっくり…)に差が出る可能性も • ジェスチャーが言葉以上に「分かりやすさ」をもつという 先行研究から, ジェスチャーを多く用いた参加者は, 自 分の説明に対する評価(相手に分かりやすく伝えられた かどうか)も高くなるのではないか ◆方法 実験参加者 同性の友人同士2人1組からなる大学生3組。全員女性で、 平均年齢は20.3歳。 (聞き手の理解度を操作するため, 一方の参加者を 事前に呼び出してサクラとしての指導をした) 実験室の状況 荒川・鈴木(2006)の先行研究に ならう(右図) 刺激映像 アニメ「SNOOPY」の, 会話が少 なく動きが多い場面2~3分 http://www.snoopy.co.jp/clubhouse/wallpaper/ 手続き ・課題・・・ビデオ映像の説明課題 ・説明者・・・何も知らない参加者 ・聞き手・・・サクラとして指導を受けた, もう一方の参加者 「相手の説明をよく理解し, 納得している」行動 「相手の説明に理解できない部分がある」行動 説明者は映像の文脈について簡単な説明を受けた後, ヘッドホンをして映像課題を見た 2) 視聴後, 説明者は聞き手に対して映像の内容を詳細に 説明した 3) 各課題終了ごとに, 参加者・協力者に質問紙の回答を もとめる 1) 質問紙の内容 • • 「相手は自分の説明をよく理解してくれた」, 「相手の 反応を気にしながら話した」等の項目への回答 「説明中, より正確に伝わるように工夫したことはある か」, 「説明中の相手について, なにか感じたことはある か」等の自由記述 相手のどんな反応・動作・態度を見ていて, そこから 感じたことをどのように自分の説明行動に影響させ たのかという情報を得る ◆結果①:ジェスチャー表出頻度 回/分 12 10 8 6 理解度高群 4 理解度低群 2 0 ビート 表象的ジェスチャー Figure 2 ビートと表象的ジェスチャー頻度の平均値 ビート・・・発話に同期したジェスチャーの中で、言語内容に関係した 動きや形などの情報を含んでいない単調な動作 表象的ジェスチャー・・・発話に同期したジェスチャーの中で、言語内 容に関係した動きや形などの情報を含んでいるジェスチャー ◆結果②: 参加者(説明者)の質問紙項目別の得点 5 4 ( 得 点 点 ) 3 高群 低群 2 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 項目番号 Figure 3 参加者の得点の平均値 10 11 12 13 14 ◆結果③: 協力者の質問紙項目別の得点 5 4 ( 得 点 点 ) 3 高群 低群 2 1 1 2 3 4 5 6 7 項目番号 Figure 4 協力者の得点の平均値 8 9 10 11 ◆考察①: 参加者の質問紙項目の回答から • 「相手に伝えるために努力した」という項目に高得点をつけ た人は、意識的にジェスチャーを用いたとする項目にも高 い得点をつけていた。 大坊(1998)の示した「ジェスチャーは言葉以上に分かりや すいもの」という概念は、自然と意識・実行されている。 • • 相手に伝えるための自分の努力よりも、相手が理解し ていたかどうかの認知の方が、説明者自身の評価に強 く影響するのでは? 説明場面においては、相手の反応を気にしながら話し 方を変化させており、相手が理解していないと認知する ことでその傾向は強くなる。 考察②:協力者について • 質問紙の回答より・・・聞き手から見ても、説明者の話し 方は聞き手の影響を受けているように感じられていた。 問題点 協力者の、「あまり理解できない」という態度 が少し極端すぎたかも。普段との態度の違い に、「わざと分からないふりをしているのかも」 と感じた参加者が1人いた。 聞き手は参加者の友人でない方が良 かったのでは? ◆反省点と課題 • • • 参加者不足 (十分な人数が集められず、分析ができなかった) 実験協力者と参加者の関係性の見直し (友人同士よりも、未知の人物の方が良い? 「協力者」が「サクラ」だと気付かせない方法を。) 今回の結果は容易に予想できるものだといえるので、卒 業論文に向けて先行文献の研究を進め、より明確な目 的をもって計画を練り直す必要がある。 ◆参考・引用文献 • • • • • • 荒川歩 2003 身振りに対する態度が身振りの産出量の個人差に与える 影響 日本性格心理学会大会発表論文集, 12, 134-135. 荒川歩・鈴木直人 2006 ジェスチャーは会話スタイルの一部か?―発話 の近言語的特徴とジェスチャー頻度との関係およびその性差― 対人社会 心理学研究, 6, 57-64. 磯友輝子 2001 話し手の非言語行動が「話の上手さ」認知に与える影響 ―発話に伴うジェスチャーに注目して― 対人社会心理学研究, 1, 133146. 大坊郁夫 1998 しぐさのコミュニケーション―人は親しみをどう伝えあう か― サイエンス社 喜多壮太郎 2000 ひとはなぜジェスチャーをするのか 認知科学, 7, 9-21. 吉岡啓介・堀毛一也 2007 説明場面におけるジェスチャー表出の個人 差の規定因について 日本パーソナリティ心理学会大会発表論文集, 16, 168-169.
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