「老い」の意識形成 50代~60代男性の事例研究から 政策メディア研究科博士課程1年 権永詞 [email protected] 研究の背景(1) 老人が社会問題化することで 「老い」「老人」に対する意識が形成 ・1970年代の老人ブーム ・有吉佐和子『恍惚の人』 研究の背景(2) ■高齢者研究の推移 ・社会問題の対象としての「老人」の社会化 ⇒対象は社会の中の老人という集団の分析(役 割喪失、年齢規範など)から個人のエイジン グ(ライフコース・アプローチ)へと変容 老いの意識形成 ■老いの意識形成はどのように行われるのか? ⇒【仮説】老いの意識は社会制度、言説、身近な他者 への参照によって構築される 調査対象 【じゃおクラブ】 • 神奈川県在住の男性を対象とし た地域活動団体 • 1991年に神奈川県の生活クラブ 生協の「活力社会プロジェクト (地域男性組織化の検討チー ム)」を母体として設立 • 設立時の会員数54名は、2002 年時点で150名。全体の63%が 今回の調査対象 • 調査方法:アンケート調査及び聞 き取り調査 じゃおクラブの年齢構成 1% 1% 2% 5% 9% 14% 19% 15% 34% 40~45 46~50 51~55 56~60 61~65 66~70 71~75 76~80 81以上 発表のポイント ①「老い」を避けるのではなく、受け入れようと する傾向 ②意識的、主体的な活動を求める傾向 ③意識的、主体的な活動を行わない人を「老い た」と評価する傾向 ④この調査から見える男性の「老い」 ①「老い」を受け入れようとする傾向 「老い」に対する態度 「積極的に受け入れる」と「特に意味はない」が合わせて78% ⇒90年代以降、従来の「老い」を回避しようとする傾向が変化 【 質問21】 あなたにとって「 老い」 とはどのような意味を持つもので すか( 総合) 計 商連 じゃお 0% 20% 40% 積極的に受け入れていくべきもの 特に意味はない 無回答 60% 80% できるだけ遠ざけたいもの その他 100% ②意識的、主体的な活動を求める傾向 【 質問22】 老いを考えるときに何を重要だと考えていますか( 総 合) 計 商連 じゃお 0% 20% 心身の充実 特にない 40% 60% 身近な人との関係 その他 80% 100% 社会の中での立場 「老いといってもねえ、肉体的なものと精神的なものとあると思うんですよね、 肉体的なものっていうのはこれはどうしようもないんですね、まあ元気な人も 勿論いるんだけども、いろんな面で肉体的に衰えてくというは、それはどうし ようもないことなんだよね。それともう一つは気持ちの面、精神的な面でね、 これは、それこそ自分の考え方ひとつだと思うんだよね。若くとも年寄りみた いな感じの人もいるし、かなり年をとっても若々しい人もいるしね。」 (54歳男性) ③活動的でない人を「老いた」と評価する傾向 「たまにね、道を歩いてるとノロノロ歩いている年寄りがいるでしょ。駅の階段とか。 こっちが通ろうとしても中々進めないじゃない。そういう時は邪魔だなと思うんですよ。 今まで、歩くんでも身体を鍛えるんでも何でもできたのにね、やらないで身体が動か なくなってきたんだったら、せめて端を歩けと思うことがありますよ。」 (男性:58歳) 「何でもいいからね、やればいいと思うんですよ。毎日歩くんでもいいし、趣味を やるのでもいいし、とにかく何かやればいいと思うのね。だけど何もしない。そう いうのは老いちゃってると思いますよ」 (男性:58歳) 調査結果からの分析(1) 男性の「老い」に対する意識が活動へと向かう傾向 12% 自営業者 家族従業者 雇用者 -「じゃおクラブでも男性だけど何でだと思い ますか?」 18% 「女性の方がもう地域で活動してるからじゃ ないの。男はしてないから、そういうのを作ら ざるをえない。女性は私らが会社にいってる あいだに、もう地域の活動をやってる人はやっ てるわけですよ。だから改めてそういう会を作 る必要がないっていうか、もうできちゃってる わけですよね。男はそういうのがないからじゃ あ作ろうかなって作ったり、男だけっていって 募集したりするんでしょうねえ。」 70% • 全就業者の80%が雇用者、 50~60代では70% 調査結果からの分析(1) 男性の「老い」に対する意識が活動へと向かう傾向 「長寿社会文化協会が行っている活動 は、高齢者の方々を地域社会へとデ ビューさせることのお手伝いです。特 に対象となっているのは、60~65歳の 元気で高学歴、都市型サラリーマン出 身者の方々で、彼らはもともと地域社 会に接触の少ない方々ですから。そ れまでの仕事の経験などを生かした ボランティア活動を地域社会の中で行 うことで、それが生きがいへと繋がっ ていくことを考えています。といいいま すのも意識調査などから、収入よりも 社会に役立つと認められたいという傾 向が強く、そのためにボランティア活 動が最適であると考えられるからで す。」 (社団法人長寿社会文化協会 ) 地域活動に漠然とし た関心があったから じゃおクラブに入会した目的 8 1 じゃおクラブで行っ ている活動内容に 参加したかったから 中高年の問題に関 心があったから 17 33 18 21 定年退職後の活動 場所が欲しかったか ら 何か新しいことを始 めたかったから 特に目的はなかっ た まとめ 形成される「老い」への意識 意識的、主体的活動へと向かう男性の「老い」 ■「老い」の受け入れ ⇒身体的変化の不可避性 ■「老い」の拒否 ⇒主体性の維持による 「老いた」状態の回避 単に歳をとった人としての 「高齢者」 主体性を失い依存的な 「老人」
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