支援と支援計画についての理解

支援と支援計画についての理解
支援計画については、一般的には、ケアプランと
いったかたちで呼ばれることが多い。介護保険にお
ける高齢者の施設では施設介護サービス計画、施設
のケアワーカーが作成する個別援助計画・ケアマネ
ジャーが作成する居宅介護サービス計画・ヘルパー
が作成する訪問介護計画・障がい者の施設などで作
成される個別支援計画等、支援計画はサービスの種
類や職によりいろいろな呼び方がある。
1. 支援をするということの意味
人は誰でも自分の望む生活がある。私たちは、この望む生活を意識的にせよ無意識的に
せよ満たすことができるよう志向しており、日々、心や体を働かせている。この「望む生
活の実現とその充足」は私たちが「自分らしくある」ということを意味する。しかし、老
い、病、心身の障がいなどにより日常生活に支障(困難)を生じると、自分らしくあると
いうことが難しくなる。このような場合、私たちが自分らしくあり続けようとすれば、誰
かの支援が必要となる。
私たちは、歴史のなかで「私たちの生活を幸せなものにしたい」という個々の思いを「平
和と安全、人々の幸せを希求した国民の総意に基づく自由権や人権思想」というかたちで
一般化し体系(憲法・法律等)づけを図ってきた。それは、人間の歴史や文化の諸連鎖の
なかで、生活を営む上での重要な要素となっている。人間尊重の思想は、私たち個々が希
求する「幸福追求」を共有化したものであり、私たちにとって普遍性をもつものである。
私たちが自分らしくあり続けるために支援をすることは、歴史の過程で勝ち得てきた人権
思想の上にその基礎をおいている。
支援をするということの意味は、「個人の生活困難(支援)を社会の仕組みのなかで“い
かに”支援していくかという意味で、人権を中核とする社会的な価値を実現する」という
視点と、それを実現するための「専門職の有する価値・専門的知識・専門的技術をもって
行なわれる支援活動の展開方法」という2つの視点でとらえることができる。
2. 支援における枠組み
支援は、人間関係を基盤として利用者の思いや願いを受け止め、その人の自己実現を目
指して支援が行なわれる。利用者の情報が十分把握されていないことや判断の不十分さ、
支援の方向性の誤り、内容の不適切さ等は、利用者を不幸な方向へ導くことにもなる。従
って、支援者がどのような関わりをするかにより、その生活は大きく影響を受けることに
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なる。
支援の過程は、生活上の問題や課題を明確にし、解決あるいは支援するための方法を計
画し、実施・評価するための一連の思考過程である。
支援における枠組みを以下に示す。
①
日常生活に支障(困難)を生じている人を対象としている。
②
個々の自己実現のための1つの役割・機能を担っている。
③
支援者と利用者との直接の人間関係を基盤とする。
④
支援者と利用者の時間経過による両者変容による利用者の生活の創造である。
⑤
支援者の利用者の全人的理解と支援者の価値観とを融合させながら専門的知識や
技術をもって実施される。
⑥
支援者の意図的な活動である。
⑦
社会の仕組みのなかでの支援である。
⑧
人権を中核とする社会的価値の実現である。
⑨
一人ひとりが望む『良い生活』『よい人生』と呼び得るような生き方を実現する。
⑩
よりよい支援実践を達成させるためのプロセスである。
⑪
アセスメントは専門的知識に基づき客観的(同業他者からの合意が得られるよう
なもの)でなければならい。
⑫
目標とするところの根拠をあきらかにする思考過程がきわめて重要である。
⑬
日常的に私達が行っている問題解決過程の福祉実践場面での応用である。
⑭
支援過程は、福祉実践における一つの方法論である。
3. 支援の過程
図1に示しているが、支援過程を区分けすると以下の7つの区分に分けられる。
1) 相談
最初の入り口での相談は、以後の支援関係の成立にとって重要な意味をもつ。利用者は、
常に考えていることや感じていることを全て支援者に話してくれるわけではない。相手と
の関係性の中で、自分の内面をどこまで話すか考えながら対応している。従って、支援者
は、利用者が本音を語ってくれるような信頼関係を出来るだけ早くつくる努力をしなけれ
ばならない。
2) アセスメント
アセスメントは、情報収集と情報の分析に分けられる。どのような情報が必要で、情報
をどのように集めるのか、その情報にどのような意味があるのかを考えながら情報を集め
る必要がある。また、集めた情報は、科学的、多面的、総合的に分析されなければならな
い。情報の収集(利用者の理解と需要)に漏れが無いようにアセスメントシート等を活用
する。
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3) 目標の設定
情報の分析により生活ニーズが明らかになる。どれを優先するのか、利用者の要望を聞
き、実施可能なものや必要性の高いものから目標の設定を行なう。関係する支援者と情報
の共有化を図ることで、支援の統一性を図るといったことも必要となる。
4) 支援計画の作成
計画の作成にあたっては、利用者が望む生活が実現できるように長期目標や短期目標を
設定する。計画の内容はより具体的なものでなければならず、支援者や利用者本人が実施
可能なものでなければならない。また、作成にあったっては、利用者や家族の意見に沿っ
たものでなくてはならず、期間を決め、実施後の結果を予測しておくことが結果の評価を
する上で重要となる。
5) 計画の実施
支援計画に基づき、目的の遂行のため支援者が意図的に関わっていく。意図的に関わら
なければどうなるのか、絶えず考えながらサービスの提供に取り組む必要がある。また、
支援に関わる者は、チームとしてそれぞれの役割と責任をもって計画を実施していく。
6) モニタリング
支援が計画通り行なわれているか、また問題はないか、その経過を絶えず見守っていか
なければならない。利用者の状況が変わったり、計画通り実施できないような状況が生じ
て、計画を進めることが無理な場合には、中止や見直しを行なわなければならない。
7) 評価
支援計画を実施してみてどうであったか、結果として予測した結果が得られたかどうか、
また課題や問題がどこにあったか等評価し、次につなげる。
図1 支援の過程
4. 意図的(意識的)に関わるということ
支援過程の特徴としては、利用者の望む生活の実現に向けて、自己決定を尊重しながら
支援計画に基づき専門的知識や技術をもとに必要な場面で意図的(意識的)に関わるとこ
ろにある。支援者が計画性もなく目的をもたず、漫然と関わっていても利用者の望む生活
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の実現にはつながっていかない。
図2は支援過程における意図的(意識的)関わりとその意義の図である。支援者が意図
的に関わらなかった場合と関わった場合の利用者の望む生活と時間の経過との関係をベク
トルで示したイメージ図である。実線が意図的に関わった場合で、破線が意図的にかかわ
らなかった場合である。
①は支援者が意図的に関わらなければ、心身機能・身体構造、活動や参加といったこと
において現状維持の状態にあるが、意識的にかかわることによって課題が改善され、利用
者にとってより良き方向、より利用者が望む生活に近づいていく図である。②は支援者が
意図点に関わらなければ、利用者が望む生活からかけ離れていく図であるが、意図的に関
わることによって現状の生活が維持されている図である。③も支援者が意図点に関わらな
ければ、利用者が望む生活からかけ離れていく図であるが、意図的に関わることによって
利用者の望む生活からかけ離れることが最小限にくい止められている。
このように、支援過程では支援者が意図的に関わるということが利用者の望む生活の実
現にとって重要な意味をもつ。意図的に関わらなければどうなるのか、意図的に関わるこ
とによりどうなっていくのかといったことについては、利用者に関しての情報の収集(利
用者の理解と需要)、その分析と判断といったアセスメントにかかっている。
図2
支援過程における意図的(意識的)関わりとその意義
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