全国医学部・歯学部が 参加する共用試験とは -わが国

全国医学部・歯学部が参加す
る共用試験とは
-わが国の医療者教育の方向性-
東京慈恵会医科大学
医学教育研究室
福島 統
2003年11月14日 MINCS-UH
今日、お話させていただくこと
1.
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4.
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共用試験とは
共用試験の特徴
医学・歯学教育の責任
評価としての共用試験
共用試験導入までの流れ
共用試験ではできないこと
共用試験とは
共用試験の正式名称

「臨床実習開始前の
学生評価のための
共用試験システム」
CBT (Computer-Based Testing)
 OSCE (Objective Structured Clinical
Examination)

医学教育の構造
1年生~4年生
5年生・6年生
臨床実習前教育期間
Pre-clerkship education
period
臨床実習教育期間
Clerkship education
period
↑
↑
共用試験
国家試験
臨床実習教育
病棟・外来での実習教育の形態
1.
見学型臨床実習
2.
模擬診療型臨床実習
3.
診療参加型臨床実習
診療参加型臨床実習とは
1.
2.
3.
医学生は指導医の監督のもとに
診療チームの一員として
実際の患者診療に従事する。
そのため、一定の医行為が許容されるだけで
なく、医学生にも患者診療への責任が生じるこ
ととなる。
学習の効果
教える
体験する
討論する
レポートを書く
視聴覚
講義を聞く
80~90%
70%
50%
30%
10~20%
5%
診療参加型臨床実習を実施するには
1.
2.
病棟、外来での患者さんの安全確保(学生自
身の能力と指導医の監視体制)
学生が高い学びを得るための準備状況(学生
の学習準備状況)
臨床実習前教育とは
1.
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4.
患者こそ最高の師 (患者さんから学ぶ)
患者・家族の安全性
責任感
チームワーキング能力
→ 臨床実習に必要な基本的知識、基本的技能、
基本的態度を身につける
臨床実習開始前の学生評価

その学生が、患者さんの協力を得て、臨床医学
を学ぶことができますか?

CBT: 基本的知識と問題解決能力を
OSCE: 基本的技能と基本的態度を評価する。


患者さんにとって安全で、学生にとって学びの多
い臨床実習を行うために。
共用試験の特徴
共用試験CBTの出題問題の流れ
1.
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参加大学に試験問題作成を依頼する。
共用試験実施機構で全問題を査読し、ブラッ
シュアップを行う。
試験問題プールを作る。
コンピュータを使って学生にランダム出題する。
出題した全問題を解答データを踏まえ、再検証
する(問題評価)。
正式な問題プールに登録する。
共用試験OSCEでの外部評価者制度
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3.
共通課題、共通評価表、共通マニュアル(全国
の大学の協力で作成)でのOSCEの実施
各大学で実施されるOSCEには、必ず、「外部
評価者」が学生評価に加わる。
評点データを解析する。
→ 外部試験官の導入
共用試験の特徴
教育者≠評価者
今までの高等教育
4.
私が教え、
私が試験問題を作り、
私が採点し、
私が学生の合否を決めるのだ!
→
教育の密室性
1.
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共用試験OSCEでは、
1.
2.
私たちの大学が手塩にかけて育てている学生
を
どうして、他の学校の知らない先生が評価する
のだ!
共用試験システムとは

我が国の高等教育ではじめての「Peer review system」
①教育者≠評価者
②全国医学部・歯学部の連合体(共用試験実
施機構)が運営・実施する
③全国医学部・歯学部が英知を集めて試験問題や
OSCE課題を作る
④学生の評点データを統計学的に解析する
⑤我が国の医学・歯学教育のレベルを向上させるた
めに
教育者≠評価者

教育者は学生にプロダクトを作る。

評価者が学生にプロダクトができているかどうか
を判定する。

教育者の責任を明確にする。

医学・歯学教育の社会的責任を果たす。
医学・歯学教育の責任
-学生と大学の責任-
医学・歯学教育の資源
1.
教育経費
2.
ご遺体
3.
患者さんとご家族
教育経費(慈恵医大を例に)
一人の医学生に1年間で1,500万円の教育経
費がかかる(私立医科大学協会)。
 慈恵医大の場合:年間約36億円の経常費補助
金を交付されている
(36億円÷600名=600万円)
 授業料:6年間で2,250万円
(2,250万円÷6年=375万円
 1,500-600-375=525万円は慈恵医大病
院の医療収入から出している。

ご遺体(解剖学実習を例に)

献体者ご自身の気持ちとご家族の気持ち
病棟での患者さん



医療面接での心理・社会的背景を話していただ
き、
全身を診察させていただき、
学生が学ぶことを許して下さっている。
医学・歯学教育を支えているもの


税金
多くの人たちの好意
→ 学生には学ぶ責任があり、大学には学生を育
てる責任がある。
21世紀における医学・歯学教
育の改善方策について
-学部教育の再構築のため
に-
平成13年3月27日
医学・歯学教育の在り方に関する
調査研究協力者会議 報告
「各医科大学(医学部)の関係者へ


本会議で提案させていただいた、・・・(中略)・・・
などについては、来年度中(平成13年度)には
早急に学内において改善のための検討を進め、
再来年度(平成14年度)のカリキュラムには着実
に反映していただくことを・・・・。
社会経済が大きく変革を遂げていく中で、その速
度に応じた医学教育の改革を進めていかなけれ
ば医科大学にとって未来はやってこない・・・。
「医学生へ」


教育内容や方法が改善されても、受ける側の医
学生の意識改革が進まなければ、成果はありえ
ない。
自宅での予習を含めた自学・自習による幅広い
勉学の成果に対する期待がある。・・・・学外での
貴重な自学・自習時間が、アルバイトなどに浪費
されるような状態では、この改革の成功はありえ
ない。
「国民の皆様へ」


良い医師・歯科医師を養成することは、社会的
使命であり国民だれもが望むところである。良い
医師・歯科医師を養成するためには、どのように
素晴らしいカリキュラムや教育体制の整備がそ
ろっていてもそれだけでは不十分で、医学生が
数多くの臨床経験を積むことが必要不可欠であ
る。
すなわち、良い医師・歯科医師の養成は、臨床
実習を通じて患者中心の医療を医学生・歯学生
が体得してはじめて実のあるものとなる。
評価としての共用試験
評価とは

学生へのメッセージ

フィードバック

能力判定(Competence)
共用試験CBTでの新形式問題

順次回答型2連問形式

順次回答4連問形式

多選択肢型2連問形式

多選択肢型4連問形式
順次回答型2連問形式
順次回答型4連問形式
多選択肢型2連問形式
多選択肢型4連問形式
新形式問題の意義

1.
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3.
4.
順次回答型4連問形式とは、
医療面接
身体診察
検査データ解釈
病態
→ 臨床推論能力
共用試験OSCEの方向性
1.
2.
臨床実習開始前での医療面接ステーションの
設置
将来的には、シミュレータを用いての課題を検
討する。
評価とは・・・・・

Evaluation is the driving force behind the
curriculum.

It determines the real curriculum objectives
and what students “really” learn.

The quickest way to change student learning
is to change the assessment system.
評価としての共用試験
1.
2.
3.
Real patients の前に、十分なPaper patients
での臨床推論トレーニングを!
Real patients の前に、十分なシミュレータでの
実技トレーニングを!
Real patients の前に、十分なコミュニケーショ
ンのトレーニングを!
共用試験導入までの流れ
年表
1983年:AAMC GPEPレポート(Acad. Med. 1984)
1985年:医学教育の改善に関する調査研究協力者会議(主査:阿部正
和)の設置
1987年:同上最終まとめ
1991年:臨床実習検討委員会最終報告(委員長:前川 正)
1993年:GMC Tomorrow’s Doctors
AAMC ACME-TRI
1996年:21世紀医学・医療懇談会第1次報告
1998年:AAMC MSOP
1999年:21世紀医学・医療懇談会第4次報告
GMC Implementing Tomorrow’s Doctors
2001年:21世紀における医学・歯学教育の改善方策について
2002年:GMC Tomorrow’s Doctors
共用試験第1回トライアル開始
21世紀における医学・歯学教
育の改善方策について
-学部教育の再構築のため
に-
平成13年3月27日
医学・歯学教育の在り方に関する
調査研究協力者会議 報告
共用試験ではできないこと
共用試験ではできないこと
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学習環境の提供
学生一人ひとりにフォーカスを当てたフィード
バック
学生の人間としての成長
時間軸での学生評価
→ 大学ができること
大学の責任
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2.
社会に対して: 能力のある医療者を社会に送
り出す。
学生個人に対して: 専門職業職者としての幸
せをつかむ。
これからの医療者教育

Knowledge から Competence 、そして
Capability へ