領域1 領域性(テリトリアリティ)とは何か 政治地理学の理論と方法論 第6週 領域性概念 上田元(1986)による整理 国際法理論:属地主義(cf.属人主義) 動物行動学:なわばり行動 空間分析→人間・人間集団の領域的行動 動物行動学的アナロジー 行動地理学的概念を補足=帰属意識概念との結 合 空間内での人間の相互作用と帰属意識の集合性 を「相同」する過ち(Raffestin) 実証主義的研究の限界も暗示 Sackによる領域性研究 領域性の理論と歴史を提示(Sack 1986) 人間の空間行動の歴史的起源・普遍性 アメリカ先住民の土地利用とヨーロッパ人入植(領 域性の非行使と行使) 家庭・職場での領域性 領域性の定義 地理的な区域(area)を画定しそこへの管理を主張 することによって、人々、現象、そして関係に影響を 及ぼしたり、それらを管理しようとする個人あるい は集団の試み 領域性の意義(三つの基本的特徴) 区域による定義ないし分類の様式を含む (classification)。 境界を活用した伝達の様式を含む (communication)。 区域およびその内部にある事物へのアクセス、ない しそれらを制約することによって範域外部の事物へ のアクセスをコントロールする(enforcement)。 ↓ 歴史上のどのような社会にも確認される。 先行研究の特徴 人間の領域性に関する研究の不備 「領域性」を「空間的」から区別できていない。 領域性の研究であるにもかかわらず、そう概念化 できていない(ゾーニング、土地所有権、政治的主 権等)。 人間の領域的行動を狭義にしか析出できていない (個人的空間に限定)。 領域性と地理学 空間分析において空間と行動との相互関係(領域 性)が後景に退いている。 地理学の研究対象としての事業所、農場、都市は 空間内の場所や位置であるが、社会的な規則・規 制があるがゆえにその場所を占めている。 人間とその活動は領域性、すなわち区域をめぐる 管理の諸様式なしに空間内に間隙を見出すことは できない。 領域性は社会関係と深く結びついて(社会的に構 築されて)いるので、距離の論理よりも複雑である。 領域性は権力がとる主たる空間的な様式である。 歴史地理学的系譜 領域性と政治地理学 ジョンストン(2002)による整理 Ardrey(1969 ):遺伝的行動特徴 Sack(1986):支配に関する人間の戦略 Smith(1986):アイデンティティ、防衛、刺激を強め るための戦略 国家の領域性 主権行使としての暴力の独占=監視と戦争 国家の三つの役割(Clark and Dear 1984) 社会の運営方法に関する社会的合意の確保 →国家による資本主義の安定性維持=法の支配・軍事力 資本主義繁栄のためのインフラ創出 →物質的インフラ整備と投資環境の整備 社会的従属集団の福祉保証 →国内における富の再配分(国家助成教育・医療) 領域性としてのナショナリズム 国家イデオロギーのキャンペーン(山崎2001参照) ネーションと領域の整合関係⇔国民国家の理想 集合的アイデンティティ形成の(不可欠ではないが)有効な 戦略(Yamazaki2003参照) 国家内の領域的な容器 地方政府システム 領域のヒエラルキー=統治の戦略 地方政府の細分化 ティボーの議論(山崎1999参照) 居住選択機会の制約→ゾーニングによるセグリゲーション (排他的)ゾーニング =建前:公衆衛生と治安の維持・改善、実態:住民の社会 経済的特徴を守る(領域的戦略) 自己と他者(境界論) 領域性の結果=社会の分割 →個人や社会の行動に重大な帰結(cf.上田 1986、Yamazaki2003) 領域の形成・維持・強化とアイデンティティ・ポ リティクス(理論的研究中心) 分断されたコミュニティと紛争 →実証研究の余地(領域性による場所の物 理的構築)
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