アマルティヤ・センの「財とその利用」 I. 財、その特性と機能 p21~p22 特性 =財がもつ望ましい性質・利用。 ある財を持つ個人は、その財だけではなく、 財の特性・利用を支配できるはず。 質問:「財」は様々であるから、何が「財」として捉えたらよ いか?何が財であるかをどのように決めるか? 1 アマルティヤ・センの「財とその利用」 財の機能とそれで成就しうること(効用) 1. 財を持ったら ⇒ 財の機能を成就しようとする 2. 機能を実現したら ⇒ 効用を生み出す であるから、財とその特性による実現できる 機能は最も大事である。 2 アマルティヤ・センの「財とその利用」 「機能」の定義 P23 bi= fi(c(xi )) とは... f=機能 c=財 x=財の束 b=個人の財の機能を成就した状態。 財による実現した(財の)機能 は、 個人が持っている財の諸特性を利用しつつある 方法(“パターン”) であろう。 3 4 アマルティヤ・センの「財」とその利用1 1.財の機能とその評価(=測定) 上述の b (財の機能を成就した状態) に評価つけるのは、 その機能、つまり財による行為の達成(“成就”)の良さを決める。 4 アマルティヤ・センの「財とその利用」 効用に伴うはず「幸福」の定義 ui=hi(fi )c(xi )) とは... h=「幸福」(現在の満足度) 個人の幸福 は、 財の様々な特性を利用する方法が実現する (つまり、財の機能から効用に変換したからの) 幸福 であろう。 5 アマルティヤ・センの「財とその利用」 最後に、、、三つの注意・疑問 1. 幸福の「測度」は、財の機能を効用することに相当しない時がある 2. 「小さな工場」としての世帯(「家計」) 「機能のうちの多くのもの(例えばマラリアにかからないでいる こと)は、家計内におけるとも同程度には、その外部にお いても(例えば伝染病撲滅の公共政策によって)『生産さ れ』ているのである。」(p27‐28) 3. 生き方に完備な順序・ランクをつけるよりも、部分的順序の構 造を受けいられる 6 アマルティヤ・センの「財」とその利用3 3.「自由度」の評価とその困難 p26~p27 私益を最大化する財の特性を一つ選択できる自由 があろう。 しかし、貧困地域又は政治的・社会的な難儀のある 地域にいる個人の利用可能性が低下している場 合、前と同じ(財の)特性を選択できたとしても、 「自由度」は低い。 7 8 アマルティヤ・センの「財」とその利用2 2.「潜在能力」 財の機能と効用を選択する権・「自由度」を利用できる のは、「潜在能力」 と呼ばれる。 8 アマルティヤ・セン 「効用、欲望、幸福」 効用に基づくアプローチその1:「選択論」 ある社会における福祉を検討する際、 「選択肢」や「自由選択」の有無が大切。 •が、福祉を、選択対象の最善化で説明すると、 問題点が残る:「選択の背後にある動機」が質的に 異なる:ただの味覚、他人への義務、同情、 慈善、懸命などの動機が存在する。 即ち、「選択」は個人の福祉の順序付け だけではない。 9 アマルティヤ・セン 「効用、欲望、幸福」 効用アプローチの利点 1 ・「効用」アプローチは功利、功利主義とは違い、 人の物理的な条件又は自己評価への関心を寄せる。 ・人の「福祉」を人の「豊かさ」と混同しない。 ・人間の「福祉」状態を個人の所有と混同しない。 ・財貨よりも人間に関心を寄せる。 ・人間の物質的な条件や入手できる情報の質などを 10 福祉を測定する時に考慮する。 アマルティヤ・セン 「効用、欲望、幸福」 • 効用に基づくアプローチその2:幸福アプローチか、欲望 充足アプローチか 経済学によると「福祉」を検討するためには、 ある人又は共同体が幸福であるかどうかという疑問が有効 であるが、残る問題点もある: 1.「幸福」の客観的な測定・測度が困難 2.幸福に関する自己評価には主観性が入るため、他の人や地域に 当てはめることができない 3.「欲望が充足された」ことは幸福に相当しない・幸福を伴わないこと も考えられる。すると、欲望が充足されていない場合にも 幸福が福祉の問題への取りかかりとなるかどうか。 11 アマルティヤ・セン 「効用、欲望、幸福」 効用に基づくアプローチその2(幸福アプローチか、欲望充 足アプローチか) 残される問題点 その2 ~ この2つのアプローチが無視する重要点: ・上記のアプローチ二つとも、個人の精神的な態度に基づい ているから、その主観性を超えられるかどうか。 ・個人の自己評価、つまり自分の生活を他の生活より高い価 値をつける知的活動にも基づいている。 12 アマルティヤ・セン 「効用、欲望、幸福」 福祉への「幸福アプローチ」や「欲望の充足アプローチ」が 残す問題点 (続き) ・個人の物理的な条件を無視する ・個人の自らの評価を無視する ・自分の状態を「評価付ける」活動は「欲望を満たす」とは別 であるから同じものであるように測定・評価ができない ・現状を現実的に見ると、自分の欲望を調整することも可能 ・評価の対象を獲得できない場合の「苦痛」度だけで その評価が分かる・測定できることにはならない ・「生存のために「窮状」を耐える・甘受することもあるから13 アマルティヤ・セン 「効用、欲望、幸福」 効用アプローチが残す問題点(「欠陥」)~つづき ・個人間では、(自分の)幸福順位であれ、欲望充足 順位であれ、他人よりも衣食住に欠けているにも関 わらず、小規模の欲望が「充足」されている、幸福で ある自己評価をつける個人もいる。 が、この場合、現実に「福祉水準が高い」として 客観的に見なすことは出来ない。 14
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