体重コントロール不良者に対する体 重増加適正化への取り組み ○ 青柳直樹(1)弥富秀江(1)蒲池桂子(2)冨田兵衛(1)(3) 優人クリニック(1) 女子栄養大学(2) 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科(3) 【目的】 • コンプライアンス不良による過度の体重増 加は心不全をはじめとした様々な合併症、 透析中の血圧低下等の要因となり、透析 患者のQOLを著しく阻害する。当院では月 1回行なわれているカンファレンスにおい て、2005年4月より前月の体重増加率、当 月の検査結果を振り返り、それらを元に全 患者に対し指導を行った。 その効果について報告する。 【方法】 • 毎月食事チェック表を配布し(表1)栄養士より 透析中にベッドサイドにて食事指導を行った。 • 体重増加率(中2日5.5%以下、中1日4%以下) 血液検査結果の院内目標値(表2参照)を設定 した。 • 前期採血後にカンファレンスシート(表3)を作 成しK、P、Ca、Ca×P積、Ht、Kt/v、平均体重 増加率等について順位付けを行なった。 ーカンファレンスの内容よりー • 体重コントロール不良者に対し、穿刺担当 者及びその日のリーダーが各患者へ問題 点を話し、注意を促した(その他のスタッフ は患者からの質問が無ければ、体重増加、 血液検査結果等についての指導は行わな い事とした)。 • 翌月初めに前月のレポート(表3)を全患者 に渡した。 【対象】 • 2005年4月及び2006年4月において当院にて 週3回の透析を行なっていた50名 性別 男性 40名 糖尿病有無 有 14名 尿量/day 無 24名 女性10名 無 36名 有26名(475ml ±387.6ml /day) 透析歴 年齢 70.9±65.7ヶ月 63.92±12.97歳 2005年4月時点、目標体重増加率未達成者 における2006年4月時体重増加率比較 8 12 ※※※p<0.0001 10 体 重 増 加 率 (%) ※※※ 体 重 6 増 加 率 4 (%) 8 6 4 2 2 0 0 2005 2006 2005 2006 2005年4月時点、目標体重増加率達成者に おける2006年4月時体重増加率比較 8 6 体 7 重 増 6 加 率 5 (%) 体 5 重 増 加 4 率 (%) 3 4 3 n.s. 2 2 1 1 0 0 2005 2006 2005 2006 無尿者体重増加率(中2日) ※※ 体重増加率(%) ※※p<0.05 7 6 5 4 3 2 1 0 2005年 2006年 体重増加率(中2日) ※※ 体重増加(%) ※※p<0.05 6 5 4 3 2 1 0 2005 2006 体重増加率(中1日) 体重増加(%) n.s. 4 3 2 1 0 2005 2006 生理食塩水投与回数 n.s. 回/人×1透析セッション 0.12 0.1 0.08 0.06 0.04 0.02 0 2005 2006 下肢挙上回数 ※ 回/人×1透析セッション ※ p<0.001 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 2005 2006 ドライウェイト迄達しなかった回数 ※ ※ p<0.001 回/人×1透析セッション 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 2005 2006 薬剤・高張液投与回数 回/人×1透析セッション ※ ※p<0.001 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 2005 2006 ※使用薬剤 グリセオール200ml、エホチール注射液、カルチコール注射液8.5%、10%Nacl、 リズミック錠、ドプス、ツムラ68 使用薬剤 10%Nacl、グリセオール、エホチール注射液、リズミック錠、ドプス、ツムラ68 (複数使用あり) (複数使用あり) 透析中処置回数 8 回数/1人あたり1ヶ月 7 6 2005年4月 2006年4月 5 4 3 2 1 0 生食補液 除水低下 下肢挙上 薬(注射含む) ※使用薬剤 グリセオール200ml、エホチール注射液、カルチコール注射液8.5%、10%Nacl、 リズミック錠、ドプス、ツムラ68 (複数使用あり) A氏 男性 64歳 <原疾患> 腎硬化症 <病歴> 1998年腎硬化症により腹膜透析導入 2004年8月体重コントロール不良、血圧上昇、 下肢浮腫、心肥大、透析効率低下の為血液透 析導入 <合併症> シャント狭窄症、慢性関節リウマチ <その他> 無尿、車にて通院、妻と二人暮らし、透析後仕 事あり、行動的、前向きな性格 A氏体重増加率及びalb値推移 8 (g/dl) 1 Alb 中二日 中一日 7 Alb値 6 5 4 3 体 重 増 加 率 (%) 2 0 5月 年 06 20 3月 年 06 20 1月 年 06 20 月 11 年 05 20 9月 年 05 20 7月 年 05 20 5月 年 05 20 3月 年 05 20 1月 年 05 20 12 10 8 生食投与 除水低下 下肢挙上 6 回/月 A氏透析中処置回数 (2005年1月~) 14 4 2 0 5月 年 06 20 4月 年 06 20 3月 年 06 20 2月 年 06 20 1月 年 06 月 20 12 年 05 月 20 11 年 05 月 20 10 年 05 20 9月 年 05 20 8月 年 05 20 7月 年 05 20 6月 年 05 20 5月 年 05 20 4月 年 05 20 3月 年 05 20 2月 年 05 20 1月 年 05 20 ※2005年3月より透析開始前リズミック1錠内服中 【考察】 • カンファレンスはスタッフ内での活発な 意見交換及び情報共有の場となり、統 一性を持った患者指導へつながった。 • 体重増加率の順位付けは患者さんが 自身の現況を知る上で役立った。 • 透析間体重増加の低下は、透析中の 処置回数の低減につながり、スタッフ業 務にゆとりがでると考えられた。 • 透析間体重を低下させる事で透析中や 自宅での血圧低下、筋肉痙攣、倦怠感 などの様々な症状が軽減され、患者さ んの良質なQOLにつながった。 • 今回の取り組みで、多くの患者さんで体 重増加率の低減化が図れたが依然とし て体重増加率が目標値を超える患者さ んもいるので、更に引き続き取り組んで いきたい。又患者さんにとって大変デリ ケートな問題でもある為指導には細心 の注意を図り、更なる患者さんとの信頼 関係の構築に努めていきたい。 目標体重増加率非達成者割合 (中2日5.5%、中1日4%以下) 非達成率(%) 中2日 中1日 60 50 40 30 20 10 0 5月 年 06 20 3月 年 06 20 1月 年 06 20 月 11 年 05 20 9月 年 05 20 7月 年 05 20 5月 年 05 20 3月 年 05 20 1月 年 05 20 以上終わり ーグラフ1、2よりー • 中2日での体重増加率の比較で有意差は 認められたが、中1日の体重増加率では有 意差は認められなかった。これは体重増 加率の比較的低い群で前年に比べ体重増 加が大きかった為であった。しかしながら それらの群の多くは目標値の4%以下であ り適正体重増加であった。 • 体重増加率の高い群でも中2日ではほぼ 全員が前年の体重増加率を下回っていた。 しかし中1日では逆に体重増加率が前年を 上回っている患者さんもいた。 ーグラフ3~6よりー • グラフ3の結果から透析開始時のドライウェイ ト迄の除水量設定は前年に比べ多くなり、透 析中の除水量の設定変更(低下)は前年に比 べ大きく減少した。 • グラフ4の結果では有意差は認められなかっ たがこれは透析中の生食補液回数自体は減 少したが、生食の補液人数が増加した為で あった。 • グラフ5、6の結果はいずれも有意差が認めら れた。 <症例>A氏に対する指導・考察 • 体重増加率は常に上位にランクされ透析 中、帰宅後の血圧低下、著しい倦怠感が あった。 • 循環栄養指導により体重増加の原因が と理解した為それらの是正を促し、体重増 加率について説明したところ、妻の協力、 本人の努力により体重増加が著しく減少し た。又体重増加の大きい頃にみられた症 状は消失し、透析中の処置回数も減少し た。 体重増加率推移 増加率(%) 体重増加率推移中2日 12 10 8 6 4 2 0 2005 増加率(%) 2006 体重増加率推移中1日 8 7 6 5 4 3 2 1 0 2005 2006 体重増加率、Ca×P積相関 80 70 60 Ca×P積 50 40 30 20 y = 2.3285x + 32.967 2 R = 0.1376 10 0 0 2 4 6 体重増加率中2日(%) 8 10 12 2005年4月体重増加率・P値相関 10.0 y = 0.129x + 4.6345 R 2 = 0.0356 8.0 P値(mg/dl) 6.0 4.0 2.0 0.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 体重増加率中2日(%) 10.0 12.0
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