Network Economics (2) コンテスタビリティ理論

Network Economics
(2)
コンテスタビリティ理論
理論編
京都大学 経済学研究科
依田高典
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第1節 公益事業規制
直接規制
経済的規制:自然独占と情報非対称性
参入退出・価格・投資・
社会的規制:安全・健康・環境
自然独占(図):規模の経済性
厚生の損失と市場の失敗
限界費用価格設定:社会的最善
平均費用価格設定:社会的次善
2部料金設定:社会的最善
政府の失敗
X非効率性/AJ効果/レントシーキング
デムゼッツの免許権の競りの理論
2
P
Pm
Pac
AC
Pmc
MC
MR
Qm
Qac
Qmc
Q
自然独占産業
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第2節 コンテスタビリティ理論
2.1 コンテスタビリティ命題
神の見えざる手の弱定理 (B&P&W 1982)
自然独占産業でもコンテスタブル市場では社会厚生
上望ましい資源配分が実現
完全コンテスタブル市場
(1)費用・需要の同質性
(2)埋没費用ゼロ
(3)価格変更の時間ラグ
(4)消費変更の即時性
持続可能な産業構造2つのケース
需給均衡/市場退出がないこと/市場参入がないこと
パレート最適なケースとラムゼー次善なケース(図)
4
P
P
Pac
Pmc
Q1 Q2
Q3
パレート最適なケース
Q
Q1
ラムゼー次善なケース
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Q
2.2 コンテスタビリティ命題の含意
伝統的理論との差異
(1)完全競争理論の独占や寡占への一般化
(2)寡占理論の均衡構造は特殊、コンテスタビリティの均衡構
造は潜在的競争圧力だけに依存
(3)自然独占といえども次善
(4)産業構造の内生的決定
ベイリー女史のベンチマーク論
航空産業はコンテスタブル
ハーバード学派的規制は不必要
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第3節 コンテスタビリティ理論の批判的検討
3.1 均衡の存在の問題
整数問題
産業産出量を企業数で割り切れるか
クリーム・スキミング
多数財における破滅的競争
C(1)=6, C(2)=8, C(3)=13において、
C(3)<C(1)+C(2)<3C(1)
しかし、C(2)<(2/3)C(3)
3種類の財全てを作るより、2種類の財を作る方が安
上がり
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3.2 本質論的批判
コンテスタビリティとは目に見える敵との戦い
ボーモル達の理論は「超自由参入」条件
参入概念の矛盾
自由参入:参入企業が既存企業を全て取って代わる
絶対参入:既存企業が参入企業に報復しない
埋没費用ゼロ → 全ての費用可変的(規模の経済性一
定) → 規模の経済性の概念に矛盾
スペンスの指摘:規模の経済性の3条件
(1)埋没費用ゼロ(2)保蔵が効かない(3)生産の時間
(1)だけでは不十分
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3.3 頑健性批判
戦略的相互依存の脆弱性
ベルトラン価格競争か、クールノー数量競争かで異
なる結論
コンテスタブル市場の仮定の非頑健性
反応ラグ(T)/埋没費用(S)(図)
完全コンテスタブル市場:T>0&S=0
非コンテスタブル市場:T=0&S>0
不完全コンテスタブル市場:T>0&S>0
埋没費用がゼロでない場合、急速に価格が上昇
反応ラグが存在しない場合、急速に価格が上昇
費用・需要条件の等質性にも、同様の非頑健性
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P0(S)
Pm
P0(S)
A
B
Cß
0 S1
S2
埋没費用と参入阻止価格
Pm
S
Cß
0 T1
T2
T
反応ラグと参入阻止価格
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3.4 実証的批判
1980年代初期、米国航空産業で肯定的研究
価格と競争相手の有無には差がない
その後は、否定的結論が続出
航空運賃のような市場成果と市場集中度は正の相関
航空運賃・余剰のような市場成果と競争相手の有無
は正の相関
1980年代後期には、ハブ&スポークの市場支配力の実証
に力点が移行
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何故鎮圧されたか
静学的効率性よりも動学的効率性
潜在的競争よりも顕在的競争
自然独占性のみならず、公的必需性
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