JS技術開発情報メール№160「よく見かける下水道用語」掲載 禁無断転載 “PAC” JS 技術開発情報メール No.158 で”PPP/PFI”を取上げましたが、今回は同じく P で始まる アルファベット三文字の”PAC”を取上げます。 閉鎖性水域における水質改善を目的として、各地の下水処理場では、窒素・リンの除去 を目的とした高度処理の導入や、既設反応タンクの運用方法の工夫によって窒素やリン除 去を行なっています。リンについての計画放流水質が定められている場合には、水処理方 式に生物学的、もしくは同時凝集によるリン除去方法を選択することになります。さらに、 生物学的リン除去方法を導入していてもバックアップのために凝集剤添加設備を設置する のが一般的です。 下水処理におけるリン除去のための凝集剤には、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄) 、 ポリ塩化アルミニウム(PAC)などが一般的に使用されます。凝集剤中に含まれる鉄やアル ミニウムなどの金属イオンと、水中のリン酸イオンが以下の式のように反応して、難溶性 の沈殿を形成します。 Fe 3+ + PO43- → FePO4↓ Al 3+ + PO43- → AlPO4↓ これにより、水中からリンが取り除かれるという仕組みです。 数ある凝集剤のうち、PAC は 1960 年代に日本で発明され、浄水プロセスにおける凝集沈 殿処理に使用され始めてから、近年では多くの下水処理場でも使用されている凝集剤です。 ところで、PAC は Polyaluminium chloride の略で、化学式は [Al2(OH)n・Cl6-n]m(ただし 1≦n≦5, m≦10) と表記されます。ちなみに、水処理用として市販されている PAC は、塩基度(=n/6)が 0.45 ~0.65(JWWA 規格:水道用ポリ塩化アルミニウム JWWA K154:2005)で、これよりも塩基 度の高いものは制汗剤の原料として用いられるようです。 なお、近年はあまり使用されないようですが、同じアルミニウム系凝集剤である硫酸ア ルミニウム(硫酸バン土)の化学式は、 Al2(SO4)3・nH2O と書かれます。一般に凝集剤を添加すると水中のアルカリ度が消費されるのですが、構造 式を比較すると分かるように、PAC 自身がアルカリ(OH-)を放出しますので、硫酸バン土 よりもアルカリ度の消費が小さいという特徴があります。 (水処理技術開発課) Copyright©2015 日本下水道事業団技術戦略部
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