研究テーマ: 状況・状態把握技術

第7回
命題論理
1
知識表現の種類と特徴-7
述語論理(predicate calculus, logic)
知識を記号の式として数学的に表現
cf)述語: 真偽判定可能な叙述
例) (∀X)(elephant(X) → color(X, gray))



理論的基盤が保証されている
導出原理(resolution principle)による推論
人間の持つ曖昧性を組み込むことが困難
2
数理論理学 ←哲学
論理式により近似された人間の思考の言語的側面と,
世界を代数モデルで近似した世界モデルとの関係を分析
命題論理:
数理論理学の
基本的な枠組み
対象:
恒真命題・
恒偽命題
世界がどこまで記述できるか? どのような推論が実現できるか?
3
基本的な概念 -1
論理式: 自然言語の文に相当
 意味論
論理式とモデルがどのように対応付けられるか
を規定
 統語論
論理式がどのようにして構成されるか(どのよう
な記号列が論理式として許容されるか)を規定
-命題記号
-論理的接続詞: ∧(AND),∨(OR),¬(NOT),≡
-複合命題
4
基本的な概念 -2

意味論
1) 意味領域を規定
真理値{0,1} 1:真(true) 0:偽(false)
2) 意味写像を規定
統語論で規定された論理式を
意味領域のオブジェクトに対応付け
論理定数 T(意味値1に固定),F(意味値0に固定)
3)
意味写像に自由度を持たせる
~ 異なる意味写像は,文脈・状況を反映
5
定理証明の方法

意味論的アプローチ
意味論による論理式の意味定義に基づき,与え
られた論理式の恒真性を直接的に証明
~論理的帰結 α|=β

証明論的アプローチ
意味論に直接言及せず,論理式の変換操作だ
けによって恒真性を示す手法
~証明 α|-β
6
基本的な概念 -3

健全(sound):
証明論的方法で恒真性を示した命題が,常に,
意味論的にも恒真性を保証されている場合
α|-β → α|=β
完全(complete):
意味論的に恒真の論理式が与えられた場合,

それが恒真であることを導く論理式操作(証明論
的手法)が常に存在する場合
α|=β → α|-β
複雑な論理体系~ 健全だが不完全
7
命題論理を用いた論証例:問題
「明日,雨でなければハイキングに行く」
「明日,雨であれば水族館に行く」
「ハイキング,水族館に行くことは遊びに行くこと」
→ 「明日は遊びに行く」
8
命題論理を用いた論証例:方式
・R:「明日は雨である」
・H:「明日はハイキングに行く」
・A:「明日は水族館に行く」
・X:「明日は遊びに行く」
前提)
・ ¬R → H
・R → A
・(H → X) ∧ (A
結論)
X
→
X)
9
命題論理の体系: 統語論
命題記号: 定義命題を表すために用いる記号
論理式:
1.
命題記号は論理式
2.
Gが論理式なら,¬ Gも論理式
3.
G, Hが論理式なら,
G ∨ H, G ∧ H, G → H, G≡H
も論理式
リテラル: 命題記号またはその否定
10
命題論理の体系: 意味論
命題論理式Fの解釈I [F]I:
Fの中に出現する命題記号Aiの真理値{0,1}への割り当て方
Fが命題記号Gのとき, [F]I =[G]I
2.
F= ¬Gのとき,[F]I =[¬G]I =1-[G]I
3.
Fが複合命題式の場合は,真理値表により
決定
FはIのもとで真:
論理式F,解釈Iに対し, [F]I =1
Fは恒真:
全ての解釈Iに対し, [F]I =1
1.
11
複合命題の真理値表
一致
12
等価命題
13
節形式

素(原子)命題:
述語記号と項から構成さ
れる命題

リテラル(literal):
素命題、または素命題
の否定

節(clause):リテラル、またはリテラルの選言
・連言標準形: G1∧ G2∧ ・・∧Gn
・選言標準形: G1∨ G2 ∨ ・・∨Gn
14
節形式への変換(等価変換)
1.
2.
3.
P → Qを¬P∨Qに、
A≡Bを(¬A∨B)∧(¬B∨A)に変換
否定記号の括り出し: ¬(¬A)=A
¬(A∧B)= (¬A∨¬B)
¬(A∨B)= (¬A∧¬B)
分配法則を用いて、母式を選言の連言結合形
に変換:
(A∧B)∨(B∧C)=(A∨B)∧ (B∨C)∧B∧(A∨C)
P∨(Q∧R)=(P∨Q)∧(P∨R)
P∧(Q ∨ R)=(P∧Q)∨(P∧R)
15
意味論的アプローチ


真理値表の利用
全ての解釈(2n)について真となっているかを
真理値表で確認
Quineのアルゴリズム
全ての解釈を場合分けにより系統的に調査
例)(¬P∧¬Q ∧R)∨(¬P∧Q)∨P∨¬R∨¬U
の恒真性?
16
例)の真理値表による解法
16通り
17
例)のQuineのアルゴリズムによる解法
18
証明論的アプローチ
命題の恒真(偽)性を,公理(axiom) αと
推論規則(inference rule)により導出
定理F: 以下を満足するSが存在
1.
FはSの最後の命題論理式
2.
Sのどの命題論理式も,公理αであるか,
それより前の命題論理式から推論規則の一つ
を用いて導かれるかのいずれか
S: Fの証明
α|- F
健全かつ完全であることを証明しておかねば
ならない
19
証明論的アプローチの手法-1

論理式の変形
20
等価変換の例
21
証明論的アプローチの手法-2

自然演繹法(Gentzen)
与えられた命題論理式と以下の3つの公理を
起点とし,証明を積み重ねることにより,
定理証明を実施
Γ:任意の命題論理式の集合,A,B:任意の命題論
理式
1.
仮言公理: Γ, A |- A
2.
仮定の導入: Γ |- B → Γ, A |- B
3.
仮定の除去: Γ, A |- B, Γ, ¬A |- B →
Γ |- B
22
自然演繹法の具体例
仮言公理
∨導入
仮言公理
∨導入
仮定除去
23
証明論的アプローチの手法-3

Davis-Putnum法:
以下の4つの規則を再帰的に使ってSの
充足不能(恒偽)性を証明
1.トートロジー(いかなる解釈のもとでも真とな
る表現)規則: 無関係部分の除去
2.1リテラル規則: 融合原理
3.純粋(その否定がどの節にも現れない)リテ
ラル規則: 無関係部分の除去
4.分割規則: 融合原理
24
Davis-Putnum法の適用例
(P ∨ Q ∨ ¬R) ∧ (P ∨ ¬Q ) ∧ ¬P ∧R ∧ U :
前提
(Q ∨ ¬R) ∧ ¬Q ∧R ∧ U : ¬Pに関する1リテラル規則
¬R∧ R
∧U :
¬Qに関する1リテラル規則
F ∧ U : Rに関する1リテラル規則
→ 充足不能
25
第8回 命題論理
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融合原理 (mechanical theorem proving method)
任意の2つの節C1,C2に対して,C1がリ
テラルLを含み,C2が¬Lを含むとき,C1
からLを除いた部分とC2から¬Lを除いた
部分を合せて作った節を融合節Cと呼ぶ.
このCはC1とC2の論理的帰結である.
~ Davis-Putnum法における
1リテラル規則の拡張
26
第8回 命題論理
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節の融合の具体例
27
第8回 命題論理
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命題論理の体系:原理
原理: 公理系に推論規則を適用して定理を導く
 完全性定理(completeness theorem):
定理は全て恒真であり,その逆も成立
← 公理は恒真式であり,推論規則は健全
 公理系の無矛盾性(consistency):
いかなる論理式Pに対しても,Pと¬Pが同時に証
明可能となることはない
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