第3回福島県立医科大学整形外科・病診連携の会 膝関節疾患における病診連携 福島県立医科大学整形外科学講座 小林 秀男 本講演の内容 • • • • 当科膝関節外来への紹介状況 紹介患者の疾患割合 疾患別の治療法 今後の展望 当科膝関節外来への紹介状況 H23.9.1~H24.8.31 95件/年 29.4% 紹介患者の疾患割合 紹介No1疾患 変形性膝関節症 変形性膝関節症 関節軟骨の磨耗・損傷 ↓ “変形性関節症” Osteoarthritis ( OA) 原因 • 肥満 • • • • 加齢 女性 ケガ その他 日本全国で800万人が罹患 右変形性膝関節症 大腿骨 膝蓋骨 脛骨 骨棘形成・関節軟骨の消失・関節面の象牙化 レントゲン所見 関節裂隙の狭小化 → 軟骨の磨耗 周辺:骨棘・骨硬化 → 変形 保存療法 ・運動療法(パンフレットを用いて指導) ・装具療法 膝装具(sleeve type, hinge type) 足底板 ・薬物療法 ・関節内注射療法 ヒアルロン酸ナトリウム ステロイド 人工膝関節置換術 (TKA: total knee arthroplasty) • 適応 – 末期の変形性膝関節症や関節リウマチ – 保存療法が効果のない痛み、歩行障害 ※軽度の変形なら –高位脛骨骨切り術 (HTO : high tibial osteotomy) –単顆型人工膝関節置換術 (UKA : unicompartmental knee arthroplasty) TKAでは正確な設置が重要 ⇒当院ではナビゲーションを使用 (コンピューター支援手術) 術中風景 ナビゲーションシステム • 正確なインプラント設置を術中に確認しながら 可能 • 比較的早期にシステムには慣れる • 経験が少ない術者の教育として有効 • 高価である点が問題 • 施設が限定される (県内では大学病院と公立藤田総合病院のみ導入) リハビリ • 歩行訓練 歩行器⇒杖 • ROM訓練の励行(ベッドサイドで) • 筋力訓練(ベッドサイドで) 約3週間で退院⇒対側の膝が悪い場合は紹介 医や近医へ紹介し、保存療法の継続(ヒアル ロン酸ナトリウムの関節内注射など) 大学病院でのフォローアップ 術後6週・3ヶ月・6ヶ月・9ヶ月・1年・2年・・・・ 合併症 • 手術部位感染(SSI) : 1~2% 抗菌薬投与:手術開始24時間で終了 • 深部静脈血栓症・肺塞栓:予防が大切 – 抗凝固薬(アリクストラ・クレキサン・リクシアナ) – 弾性ストッキング – 足関節自動運動の励行、早期離床 ⇒フォロー中に上記が疑われる 場合、早めに連絡紹介を HTO/UKAの適応 Ideal indication (Rossi. 2010)-ISAKOSHTO HTO or UKA UKA Age 65歳以下 55~65歳 55歳以上 活動性 高い 比較的高い 低い BMI 30未満 30未満 30未満 Alignment 5-15° 5-10° 0-5° ROM 5度以下の屈 5度以下の屈 5度以下の屈 曲拘縮and 屈 曲拘縮and 屈 曲拘縮and 屈 曲120°以上 曲100°以上 曲90°以上 当科におけるOW-HTOの適応 • • • • • • 活動性が高く年齢は70歳未満 FTAが185度以下 FTの内側コンパートメントに症状が限局 BMI 30以下 ACL残存膝 屈曲拘縮15度以下 OW-HTO (TomoFix) FTA 185度 PFOAなし FTA 170度 矯正角目標 FTA 170度 %MA 62.5% (Fujisawa point) リハビリ(TomoFix) • 外固定なし • 術翌日よりROM訓練・SLR訓練 • 術後1週 1/2P.W.B. • 術後2週 F.W.B. • 術後3週で退院 ⇒早期の退院が可能 単顆型人工膝関節置換術(UKA) リハビリ(UKA) • 歩行訓練 歩行器⇒杖 • ROM訓練の励行(ベッドサイドで) • 筋力訓練(ベッドサイドで) と基本的にはTKAに準ずる 約3週間で退院⇒対側の膝が悪い場合は紹介 医や近医へ紹介し、保存療法の継続(ヒアル ロン酸ナトリウムの関節内注射など) 大学病院でのフォローアップ 術後6週・3ヶ月・6ヶ月・9ヶ月・1年・2年・・・・ 紹介No.2疾患 前十字靱帯損傷 膝前十字靭帯 • 前十字靭帯 (ACL ) anterior cruciate ligament 関節鏡所見 正常のACL 断裂したACL ・ 主な症状はスポーツ時の膝くずれ感 ・ 自然治癒は極めて稀で,スポーツ復帰 には手術が必要になることが多い. 24 ACL再建術の手術適応 ・スポーツ活動の継続を希望する ・日常生活上不安定感が強い ちなみに… 放置したままスポーツを継続した場合 5年後には80%以上の症例で半月板損傷を来す ⇒関節症性変化の進行 活動性の低い患者でも内外反が強い膝や関節弛緩 がある場合は関節症性変化を来しやすい 膝専門医に紹介を 鏡視下膝前十字靭帯再建後 術中 1年経過時 26 ACL再建術 -メディカルリハビリテーション- 保護期(~6W) • 荷重歩行訓練 • 関節可動域訓練 トレーニング期(6W~3M) • 筋力増強 • 基本動作の習得 • 水中歩行・ランニング 27 ACL再建術 -アスレチックリハビリテーション- 復帰前期(3~6M) • ダッシュ・ジャンプ・ストップ • サイド・クロスオーバーステップ • 競技特有の動作の習得 競技復帰期(6M~) • 段階的な競技復帰 (個人練習→対人プレーへ) 筋力が患健比で80%以上回復し ていることが条件 28 合併症 • 感染:チェック項目 痛み、発赤、浸出、血液検査 • DVT:チェック項目 腫脹、ホーマン徴候 • 再断裂やゆるみ:(リハビリスケジュールを守 らない) 対策:リハビリスケジュールを理解してもらう 紹介No.3疾患 膝蓋骨脱臼 膝蓋骨脱臼 • 急性膝蓋骨脱臼の平均年間発生率は10万 人中5.8人(Nomura E, 2007) • 内側膝蓋大腿靱帯(medial patellofemoral ligament: MPFL)は膝蓋骨内側安定化機構の 中で最も強度が高く内側の50~60%の制動性 を担っている(Conlan T, 1993) 膝蓋骨脱臼の分類 • 反復性膝蓋骨脱臼:1回の膝蓋骨脱臼により主に 膝蓋骨内側の不安定が生じ、膝の捻挫や屈伸動作 で膝蓋骨の脱臼や亜脱臼を繰り返したり、脱臼不安 感を生じる病態 • 習慣性膝蓋骨脱臼:ある膝の角度で膝蓋骨が脱臼 する病態。多くは屈曲を増すと脱臼する • 恒久性膝蓋骨脱臼:屈曲角度に関わらず膝蓋骨が 脱臼する病態 • 先天性膝蓋骨脱臼:生下時から膝蓋骨が大腿骨滑 車部から逸脱している病態 MPFL再建術の適応 • 2回以上の膝蓋骨脱臼を来した反復性膝蓋 骨脱臼例でスポーツ中および日常生活動作 での不安定感が継続するもの MPFL再建術 • 反復性膝蓋骨脱臼に対して再建術を行う。 • MPFL再建術を受けた62.3%が女性であり、 平均年齢は23.4歳 当科では… 2007年~現在まで 25例に施行 再脱臼なし 平均年齢:21歳 レントゲン写真 術前 術後 合併症(Fisher B. 2010) • • • • • 大腿四頭筋の機能障害:31% Apprehension test陽性:20.6% 可動域制限:18.1% 亜脱臼・再脱臼 膝蓋骨骨折(膝蓋骨に骨孔を開ける方法) など リハビリ • 急性期:ROM訓練開始は手術翌日~2週間ま でに多く、2週間~3週間でFWB • 12週でスポーツ復帰させるリハビリテーション メニューが大半を占める。 • 当科でも同様に手術翌日から可動域訓練、 ニーブレースをつけて歩行開始。 • 安静度はフリーだが、ニーブレースを着用し ないと膝崩れが起きるため転倒に注意する。 今後の展望 • 膝OAの保存療法は、診療所での加療を勧める • 人工膝関節の感染は、適切な抗菌薬使用や外 科的デブリドマンが必要なため、すぐに紹介を! • 人工膝関節のゆるみもBone stockが豊富なうち に一度紹介を! 保存療法・リハビリ 診療所 手術 市中病院 大学病院 膝関節外来担当医師 ご清聴有り難うございました
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