外科合併症基準 -Clavian-Dindo分類-

片山真史,小泉哲,大坪毅人
2014.02.17
 JCOG術中・術後合併症基準の作成経緯
2005.6月→2011.9月
 Clavien-Dindo分類

 JCOG術後合併症規準

消化器外科領域のAE term, grading

JCOG#1では,1998年に米国NCI#2が公表した共通毒性規準
NCI-CTC v2.0(NCI-CommonToxicity Criteria )の日本語訳
(第1版1999年4月, 第2版2001年12月)を,有害事象評価に使
用.
 手術を含む臨床試験における有害事象の評価に必要な術
中・術後合併症の多くが,NCI-CTC v2.0に含まれおらず.

JCOG外科委員会では「JCOG術中・術後合併症規準」(案)を
作成し, 一部の試験で試用を始めていた.
#1. JCOG Japan Clinical Oncology Group:日本臨床腫瘍研究グループ
#2. 米国NCI National Cancer Institute:アメリカ国立がん研究所

2003年,NCI-CTC v2.0がCTCAE v3.0(Common
Terminology Criteria for Adverse Events)に改訂.
 手術関連の有害事象項目が大幅に追加.
 「JCOG術中・術後合併症規準」(案)で挙げていた項目は
ほぼCTCAE v3.0で網羅.

JCOG外科委員会ではCTCAE v3.0を踏まえて「JCOG術中・
術後合併症規準」(案)の大幅な見直しを行い,「JCOG術中・
術後合併症規準」として完成.

2009年,CTCAEv3.0がCTCAE v4.0に改訂
 外科合併症に関して,適切な有害事象名(AE term)が存
在しないcaseや,gradingが困難なcaseあり.
NCI CTCAEとは別に・・・
 2004年,術後合併症に特化した外科合併症規準がDaniel
Dindoらにより提案され( Clavien-Dindo分類),手術手技
の臨床試験で頻用されるようになってきた.

Clavien-Dindo分類に対応した術後合併症規準「JCOG術後
合併症規準(Clavien-Dindo分類)」を作成.
Dindo D, Demartines N, Clavien PA.
Classification of surgical complications: A New Proposal With
Evaluation in a Cohort of 6336 Patients and Results of a Survey.
Ann Surg 2004; 240: 205-13

特徴
 有害事象ごとにgradingの規準が決められているのではな
く,共通の大まかなgradingの方針のみが決められている

問題点

AE termが決められていない



同じ有害事象に対して試験間で異なるAE termが用いら
れる可能性がある
大まかな目安だけでgradingが困難な項目がある
術中合併症には対応していない
20011.9月
Clavien-Dindo分類に対応した術後合併症規準「JCOG
術後合併症規準(Clavien-Dindo分類)」を作成.

Clavien-Dindo分類の原著をもとに,AE termの共通化,
gradingの詳細の共通化を行った術後合併症規準.

注意点
 主に術後早期合併症に関連する有害事象に対して使用.
 「術後早期」とは,原則として初回退院まで.
JCOG試験においてCTCAE v4.0と併用にて使用開始されたばかり
であり,当面はCTCAE v4.0との併用に限る.
(JCOG外科合併右症基準小委員会)


正常な術後経過からの逸脱で,薬物療法,または外科的治
療,内視鏡的治療,IVRによる治療を要さないもの.
 制吐薬,解熱薬,鎮痛薬,利尿薬による治療,電解質補
充,理学療法は必要とする治療に含めない.
 ベッドサイドでの創感染の開放はGradeⅠとする.
麻痺性イレウス:緩下剤以外の内科的治療や経静脈的栄養管理
を要さない.
 膵液瘻:術後3日目以後のドレーン廃液アミラーゼ値が施設基準
値の3倍以上だが,治療を要さない(既存のドレーンによるドレ
ナージのみ).(ISGPF classification GradeA)


消化管縫合不全:経口造影剤検査やドレーン造影でわずかな瘻
孔を認めるのみ(既存のドレーンによるドレナージのみ)

制吐薬,解熱薬,鎮痛薬,利尿薬以外の薬物療法を要する.
輸血および中心静脈栄養を要する場合を含む.
 治療的抗菌薬投与を要するもの.

胸水・腹水:利尿薬などの内科的治療を要するもの→GradeⅡ.

外科的治療,内科的治療,IVRによる治療を要する.

GradeⅢa:全身麻酔での治療を要さない.
 画像ガイド下での局所麻酔下治療一般(穿刺ドレナー
ジ),既存のドレーン交換やイレウス管挿入を含む.
胆嚢炎:局所麻酔下での治療を要する(PTGBDなど).
 消化管吻合部狭窄:バルーン拡張,ステント留置,磁石法.


GradeⅢb:全身麻酔下での治療を要する.
 全身麻酔下での再手術(手術内容は問わない).


GradeⅣ:準集中治療室/ICU管理を要する,生命を脅かす
合併症(中枢神経系の合併症を含む).

GradeⅣa:かつ,単一の臓器不全(透析を含む).
 敗血症,複数の臓器不全.

GradeⅣb:かつ,多臓器不全.
 人工呼吸器管理を要する肺障害:CHDFを要する腎障害
など1つの臓器不全.
GradeⅤ:死亡



胸部食道癌の診断で胸腔鏡下腹腔鏡下食道亜全摘術を施行.
POD3,呼吸苦,SpO2低下を認め,胸部XPで右中下肺野に
無気肺を指摘.ネブライザーや去痰薬投与を行ったが,十
分な改善が得られず,RRで鎮静薬の経静脈投与を行い気管
支鏡による喀痰吸引を行い改善を得た.
JCOG合併症基準のAE termおよびgradingを述べよ.

気管支鏡による喀痰吸引は内視鏡的治療となり,JCOG術後
合併症基準,無気肺:Grade Ⅲa である.

ただし,通常の術後管理(無気肺予防)としての気管支鏡
の使用は合併症とは考えないのが通常.






膵体部癌の診断で膵体尾部切除を施行.
POD3,ドレーン排液アミラーゼ値は380 IU/L(基準値:37124 IU/L)であった.POD5,ドレーン排液は混濁のない漿
液性排液であり,ドレーン抜去.POD8,38度以上の発熱お
よび左側腹部痛が出現.
腹部造影CT検査で膵切除断端にair densityを含む被包化さ
れた液体貯留を認め,透視室でUSガイド下穿刺ドレナージ
を施行した(排液中のdAMY高値).
JCOG合併症基準のAE termおよびgradingをすべて述べよ.
局所麻酔下でのIVRであり,JCOG術後合併症基準,膵液瘻
(膵瘻):Grade Ⅲa である.
POD3では,膵液瘻:Grade Ⅰとなる.




下部直腸癌で腹腔鏡下LAR手術を施行(DM既往あり).
POD5.40度発熱を認めるもドレーン排液の性状に混濁なし.
腹部CT検査で,骨盤内に造影効果のある液体貯留を指摘.
ドレーン先端は液体貯留部には到達しておらず,腹腔鏡下
洗浄ドレナージおよび回腸瘻造設術が行われた.術中循環
動態不安定となりカテコラミン使用するも無尿の状態,手
術終了時には酸素化も不良となり,挿管したままIUC管理と
なった.ICU入室後にはCHDFも導入された.
JCOG合併症基準の全てのAE termおよびgradingを述べよ.
全身麻酔下での外科的治療かつであり,JCOG術後合併症基
準,縫合不全・骨盤内膿瘍:Grade Ⅲb →敗血症(複数
の臓器不全):Grade Ⅳb である.