脳脊髄液減少症の病態の研究 とくにMRI所見について - 仙台医療

脳脊髄液減少症の病態の研究
とくにMRI所見について
国立病院機構仙台医療センター脳神経外科
同 放射線科*
鈴木晋介、上之原広司、栗原玲子*、桜井芳明
臨床研究セミナー2005.10.27
はじめに
► 脳脊髄液減少症(以下CSF減少症)の診断、スク
リーニングに際し、頭部MRI所見が重要である
特発性低髄液圧症候群で特徴的な髄膜の有意
な造影所見を示す典型例はそれほど多くないよう
である。
► 当科のCSF減少症の症例の頭部MRI画像所見
を検討し、さらに、その問題点に関しても言及した
い。
脳脊髄液減少症について
► 脳脊髄液が減少することにより慢性的な頭痛、頚部痛、め
まい、嘔気、視力障害、倦怠、集中力・思考力・記憶力低
下など様々な症状が出現します。
► 原因の多くは鞭打ちや転倒等、比較的軽微な外傷です。
► 外傷で一時的に脊髄液圧が上昇した際に神経根部で髄液
が漏れ出しそれが持続して徐々に髄液が減少すると考え
ています。
► これまでも特発性低髄液圧症候群は慢性起立性頭痛の原
因として知られていました。
► しかしながら鞭打ち症後遺症による不定愁訴の原因の多く
がいわゆる低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)によること
がわかったのは最近のことで病態はまだよく解明されては
いません。
► 約20万人∼80万人程度患者さんがいる推定されます。
脳脊髄液減少症≒低髄液圧症候群
髄液圧が低値でない
ことが多いため 裁判
で係争する場合、低
髄液圧症候群では合
わないため名称を変
更することとしたもの。
むち打ち症=≒低髄液圧症候群
不定愁訴が主なので、
これまで原因不明とさ
れ、精神的なものとさ
れることが多かった。
低髄液圧症候群の画像について
従って症状は髄液の漏れの
部位と一致しない
髄液の漏れにより脳や脊髄が
下降して発症する
硬膜外ブラッドパッチ治療
18G 硬膜外針使用 硬膜外腔穿刺は傍正中法で行う。
陰圧法で硬膜外腔を推定した後、透視下に硬膜外腔撮影を行い
硬膜外腔を確認する。 この後に自家血を硬膜外腔に注入するようにしている。
(男性:30~40ml、女性:20∼25ml )
慢性的には髄液漏出部
がシールされ脳の下垂等
が元にもどる。症状が改
善し安定化する。再発が
あるとまた症状が出現す
る。
腰椎硬膜外腔より注入した血液
腰椎硬膜外腔より注入した血液
はC2,3からS2広がる。
はC2,3からS2広がる。
対象・方法
► 平成15年6月より平成17年8月までの間に当科で
経験した脳脊髄液減少症例は73例(男性29例、
女性44例、平均年齢39.1歳)あり、これらを対象
としこれらのMRI所見を検討した。
► 原因の91%(67例)が外傷。ほか5例が原因不
明、1例手術
► 当科のCSF減少症の診断はRIcisternographyで
の3時間後(grade1)、あるいは1時間後の早期膀
胱像陽性(grade2)及び髄液漏の所見(grade3)を
有する症例とした。
► MRI上の髄膜造影、小脳扁桃下垂像、神経根周
囲のう胞像等を強疑所見とした。
RI grading for CSF hypovolemia
Grade 1(3H only)
Grade 2 (1H positive)
Grade 3 (leak positive)
SIH特発性低髄液圧症候群 で典型とされるdural enhance case
はどの程度か
また放射線科診断医の有意ととる髄膜造影とはどの程度か?
31才男性、スポーツ外傷例
SSS周囲の隙間陽性だが髄膜
造影はないと診断された
硬膜造影陽性像に関しては硬膜が全周性に造影されること
等、放射線科診断医も納得させるようなクライテリアが必要
MRI findings of CSF hypovolemia
SSS周囲の隙間
Para SSS space sign
Chiari like sign
小脳扁桃の下垂
放射線科医が有意ととる
dural enhance例は少な
い
傍矢状洞付近の脳の隙間
下垂体の腫大をどの程度とるかも難しい
【結果】
► 73例のMRI所見は有意な硬膜造影を示した症例は
4例(5.5%)、SSS周囲での大脳と硬膜との隙間があ
り大脳の下垂を疑わせる所見を有するもの73例
(100%)、小脳扁桃下垂像43例(53.9%)、下垂体の
腫大を示したもの15例(20.5%)であった。
► 後頭蓋の狭い傾向があったもの28例(38.3%)であっ
た。
► 単純XPで頚椎前屈時にADIが4mm以上の症例が
15例認めた(20.5%)。
64才女性、
主訴:頭痛、倦怠感、意識障害
CSH合併例で原因不明
26才男性 交通事故(追突)
病悩期間6ヶ月。一回のブラッドパッ
チで軽快した症例
56才女性、8年前鞭打ち損傷
1回のブラッドパッチで軽快した例。ただし未破裂脳動脈瘤が精
査で見つかり、この治療どうすべきか?。
【考察】
► 脳脊髄液減少症(以下CSF減少症)の診断に際し、頭部
MRI所見にてスクリーニングすることが重要であるが、特
発性低髄液圧症候群の典型とされる髄膜の有意な造影
所見を示す例は多くない。異なる病因があるのではない
かと思われた。
► RIstudyで髄液の漏れが明らかに認められる場合(RI
grade3例)にMRI3Dミエロを行っている(当院ではMRI予
約の都合上MRIを専有できない故)。
► 下垂体の腫大をどの程度有意にとるかも困難である。2
次性の高プロラクチン血症が2例認められた(1例はドグ
マチール服用にてPRL442↑を示した。) 。
► 大脳や小脳の下垂を疑わせる所見がある場合にCSF減
少症の存在を疑いRI検査等で診断するのが現段階では
よいのではと考えている。
当科での現状とCSF減少症の今後の展望について
► 当院では入院待ちの患者様は約30名でさらに増
加する見込みである。
► 厚生労働省にての研究班を設置して治療方法
(ブラッドパッチ)の保険適応の認可、及びこの病
態の解明を行う必要がある。
► 厚生労働大臣に陳情の機会があった
► 司法の判決でこの疾患単位が確立されつつあり
脳脊髄液減少症診断ガイドライン
診断
1.症状
1)痛み :頭痛、頚部痛、背部痛、腰痛、四肢痛
2)脳神経症状 :めまい 、聴力障害、耳鳴り、視力障害、複視、嗄声、咽頭違和感、顎
関節症、味覚障害、嗅覚障害
3)自律神経症状:微熱 血圧障害 脈拍異常、動悸、胃腸障害(腹痛、腹満、便秘、下
痢)手足冷感、レイノー症状、発汗異常
4)大脳機能障害 :記憶力低下、思考力低下、集中力低下、睡眠障害 、うつ
5)その他 :倦怠、易感染症、リンパ節腫腸、内分泌障害
●3項目以上3ヶ月以上持続
2.画像診断
1)Gd造影脳MRI: ①硬膜下く腔拡大、②小脳扁桃下垂③硬膜造影効果④脳静脈拡
張⑤脳下垂体腫大
⑥脳幹扁平化⑦脳室狭小化
●3項目以上陽性
2)RI脳槽・脊髄髄液シンチグラフィー①3時間以内早期膀胱内RI集積②髄液漏出③
早期クリアランス
●いずれか1項目以上陽性
3)MRミエログラフィまたはCTミエログラフィ:漏出像
宮城県脳脊髄液減少症患者の会の活動
浅野県知事に署名提出
ブラッドパッチ治療保険適応等に関して坂口大臣に陳情