講義レジュメNo.14 組織再編(各論) 1. 組織再編の手続 2. 組織再編の無効 テキスト(11版):第8章 1 Ⅰ 総論 • 会社法は、組織再編行為(ここでは合併、会社分割、 株式交換および株式移転を総称する語として用いる) に関する手続につき、同じような利害状況に置かれる 当事会社ごとに分類し、それぞれについて株式会社の 手続と持分会社の手続を順に定めている • 吸収合併消滅会社等(吸収合併消滅会社、吸収分割会 社、株式交換完全子会社) • 吸収合併存続会社等(吸収合併存続会社、吸収分割承 継会社、株式交換完全親会社) • 新設合併消滅会社等(新設合併消滅会社、新設分割会 社、株式移転完全子会社) • 新設合併設立会社等(新設合併設立会社、新設分割設 立会社、株式移転設立完全親会社) 2 会社法における組織再編の手続 • 対価の柔軟化 • 事前事後の情報開示の整備 • 略式組織再編制度の新設 • 簡易組織再編制度の整備と規制緩和(総 資産額の20%以下) • 反対株主の株式買取請求権、新株予約権 買取請求権、債権者保護手続等の整備 3 Ⅱ 1 吸収合併消滅会社等の手続 株式会社の手続(5~17) ・吸収合併消滅会社等が株式会社の場合 2 持分会社の手続(18~19) ・吸収合併消滅会社が持分会社である場 合および合同会社が吸収分割会社である 場合(株式交換完全子会社が持分会社で あることはない) 4 (1)事前の情報開示 • 消滅株式会社等は、吸収合併契約等備置開始日から吸収合併等の効 力発生日後6ヶ月経過する日までの間、吸収合併契約等の内容その他 法務省令で定める事項を記載・記録した書面・電磁的記録を本店に備え置 かなければならない(782Ⅰ) • 吸収合併契約等備置開始日:次に掲げる日のいずれか早い日(782Ⅱ) ① 吸収合併契約等について株主総会(種類株主総会を含む)の決議による承認を 要する場合は、当該株主総会の日の2週間前の日(319Ⅰにより株主総会決議が 省略される場合は、同項の提案があった日) ② 吸収合併等の通知をなすべき株主がいる場合(785Ⅲ)は、当該通知の日または 通知に代わる公告(785Ⅳ)の日のいずれか早い日 ③ 吸収合併等の通知をなすべき新株予約権者がいる場合(787Ⅲ)は、当該通知の 日または通知に代わる公告(787Ⅳ)の日のいずれか早い日 ④ 債権者保護手続(789)を要する場合は、同条第2項の規定による公告の日また は催告の日のいずれか早い日 ⑤ これら以外の場合には、吸収分割契約または株式交換契約の締結の日から2週間 を経過した日 • 消滅会社等の株主および債権者(株式交換完全子会社においては株主およ び新株予約権者)は、営業時間内であれば、消滅会社等に対して開示書面 等の閲覧や費用を負担すれば謄本または抄本等の交付を請求で きる(782Ⅲ) 5 (2)吸収合併契約等の承認等 • 消滅会社等は、原則として効力発生日の前日までに、 株主総会の特別決議によって、吸収合併契約等の承認 を受けなければならない(783Ⅰ、309Ⅱ⑫) • 吸収合併消滅会社または株式交換完全子会社が公開会 社であり、かつ合併対価等の全部または一部が譲渡制 限株式等である場合:特殊決議が必要(309Ⅲ②) • 消滅会社等は、効力発生日の20日前までに、その登録 株式質権者(784Ⅲに規定する場合を除く)および新 株予約権(787Ⅲ各号に定めるもの)の登録新株予約 権質権者に対し、吸収合併等をする旨を通知または公 告しなければならない(783Ⅴ、Ⅵ) 6 (2)吸収合併契約等の承認等 • 吸収合併消滅会社または株式交換完全子会社が種類株 式発行会社でない場合において、合併対価等の全部ま たは一部が持分等であるとき:吸収合併契約または株 式交換契約について、消滅会社または完全子会社の総 株主の同意を得なければならない(783Ⅱ) • これらが種類株式発行会社である場合において、合併 対価等の全部または一部が譲渡制限株式等であるとき は、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式 の種類株主総会の特殊決議による承認を得なければな らない(783Ⅲ、324Ⅲ②) – ただし、当該株主総会において議決権を行使することがで きる株主が存在しない場合は、この手続を要しない – 合併対価等の全部または一部が持分等であるときは、当該 持分等の割当てを受ける種類の株主全員の同意を得なけれ ばならない(783Ⅳ) 7 (3)吸収合併契約等の承認を要しな い場合 i. 略式組織再編:存続会社等が消滅株式会社等 の特別支配会社(468Ⅰ)である場合 ⇒消滅会社等においては吸収合併契約等の承 認決議を要しない(784Ⅰ本文) ・ただし、吸収合併または株式交換における 合併対価等の全部または一部が譲渡制限株式 等である場合であって、消滅株式会社等が種 類株式発行会社でない公開会社である場合に は、略式組織再編は認められない(784Ⅰ但 書) 8 略式組織再編の差し止め • 略式組織再編の差止請求権:被支配会社の少数 株主の利益を保護するため • 消滅会社等の株主は、略式吸収合併等において、 ①当該吸収合併等が法令または定款に違反する 場合、②合併対価等やその割当てに関する事項 が当事会社の財産状況その他の事情に照らして 著しく不当である場合で、これにより不利益を 受けるおそれがあるときは、消滅会社等に対し て、吸収合併等をやめることを請求することが できる(784Ⅱ) 9 (3)吸収合併契約等の承認を要しな い場合 ii.簡易吸収分割:吸収分割において、吸収分 割承継会社に承継させる資産の帳簿価額の合 計額が、吸収分割株式会社の総資産額の5分 の1(これを下回る割合を吸収分割株式会社の定款 で定めた場合は、その割合)を超えない場合 ⇒吸収分割株式会社における吸収分割契約の 株主総会決議による承認は不要(784Ⅲ): 分割会社の株主の利益が害されることはほと んど考えられないため 10 (4)反対株主の株式買取請求権 • 吸収合併等に反対の株主(785Ⅱ)は、消滅会 社等に対し、自己の有する株式を「公正な価 格」で買い取ることを請求することができる • ただし、吸収合併等に総株主の同意が必要な場 合(783Ⅱ)、簡易吸収分割の場合(784Ⅲ)を 除く(785Ⅰ) • 議決権を行使できない株主にも買取請求権が認 められ(785Ⅱ①ロ)、買取請求の撤回も会社 の承諾を条件として認められることが明記され た(785Ⅵ) 11 • 価格決定等の手続につき表参照 (5)新株予約権買取請求 • 合併契約等において定められた新株予約権承継の具体 的条件が、新株予約権の発行時に定められた承継の条 件(236Ⅰ⑧)と異なる場合 ⇒消滅株式会社等の新株予約権者は、消滅株式会社等 に対して、自己の有する新株予約権を「公正な価格」 で買い取ることを請求することができる(787Ⅰ) • ただし、吸収分割、株式交換においては、分割契約新 株予約権・株式交換契約新株予約権かそれ以外の新株 予約権であって、発行条件において吸収分割・株式交 換をする場合に承継する旨の定めがあるものに限る • 買取請求の手続に関しては、表参照 • 買取の効力は、新株予約権の区分に応じ、吸収合併等 の効力発生日または代金支払時に生じる(788Ⅴ) • ただし、吸収合併等を中止したときは、新株予約権買 取請求は、効力を失う(787Ⅶ) 12 (6)債権者保護手続 • 会社債権者にとって責任財産に変動を生じる合併およ び会社分割については、債権者保護手続が必要 (789Ⅰ①②) • 他方、株主構成に変動が生じるに過ぎない株式交換に ついては、完全子会社となる会社における債権者保護 手続は原則として不要 – ただし、新株予約権付社債に付された新株予約権が株式交 換完全親会社に承継される場合、当該社債権者にとっては、 債務者の変更となるため、かかる社債権者のために債権者 保護手続が必要とされる(789Ⅰ③) • 債権者保護手続の対象となる債権者は、消滅会社等に 対し、吸収合併等について異議を述べることができる 13 (789Ⅰ) (6)債権者保護手続 ・異議を述べることができる債権者に対して ①吸収合併等をする旨、②存続会社等の商号および住所、 ③消滅株式会社等および存続会社等(株式会社に限 る)の計算書類に関する事項として法務省令で定める もの、④債権者が一定の期間内(1ヶ月を下回ること はできない)に異議を述べることができる旨 を官報に公告し、かつ知れている債権者には、各別の催 告をしなければならない(789Ⅱ) ・会社の定款で公告方法につき官報以外の方法による旨 を定めている場合(日刊新聞または電子公告:939Ⅰ ②③)には、各別の催告を要しない(789Ⅲ) 14 (6)債権者保護手続 • 債権者が期間内に異議を述べなかった場合: – 当該債権者は、当該吸収合併等につき承認したもの とみなされる(789Ⅳ) • 債権者が異議を述べた場合: – 消滅会社等は、当該債権者に対し、弁済するか、相 当の担保を提供するか、当該債権者に弁済を受けさ せる目的で信託会社等に相当の財産を信託しなけれ ばならない – ただし、当該吸収合併等が当該債権者を害するおそ れがないときは、この限りではない 15 (7)効力発生日の変更 • 消滅会社等は、存続会社等との合意により、合 併契約等に定めた効力発生日を変更することが できる(790Ⅰ) • この場合、変更前の効力発生日の前日(効力発 生日を繰り上げるときは、当該変更後の効力発 生日)までに、変更後の効力発生日を公告しな ければならない(790Ⅱ) • 効力発生日を変更した場合、吸収合併等の効力 は、変更後の効力発生日に生じる(790Ⅲ) 16 (8)事後の情報開示 • 吸収分割株式会社または株式交換完全子会社は、 効力発生日後、遅滞なく吸収分割承継会社また は株式交換完全親会社と共同して、承継される 権利義務等または取得される株式等に関する事 項を記載または記録した書面等を作成しなけれ ばならない(791Ⅰ) • この書面等は、効力発生日から6ヶ月間、吸収 分割株式会社または株式交換完全子会社の本店 に備置き(791Ⅱ)、株主、債権者、その他の 利害関係人(株式交換においては効力発生日に 株式交換完全子会社の株主または新株予約権者 であった者)の閲覧等に応じなければならない 17 (791Ⅲ、Ⅳ) (1)吸収合併契約等についての承認 • 持分会社が吸収合併消滅会社である場合 および合同会社が吸収分割会社である場 合(権利義務の全部を承継させる場合に 限る) • 原則として、効力発生日の前日までに、 吸収合併契約等について当該持分会社の 総社員の同意を得なければならない (793Ⅰ) • ただし、定款で別段の定めを設けること ができる 18 (2)その他の手続 • 株式会社を前提とする部分を除き、債権 者保護手続(789)および効力発生日の 変更(790)についての規定が準用され る 19 Ⅲ 吸収合併存続会社等の手続 1. 株式会社の手続(21~30) • 吸収合併存続会社等が株式会社の場合 2. 持分会社の手続(31~32) • • • 持分会社が吸収合併存続会社である場合で、吸収 合併消滅会社の株主または社員が存続持分会社の 社員となる場合 吸収分割により他の会社の事業に関する権利義務 の全部または一部を承継する場合で、吸収分割会 社が吸収分割承継持分会社の社員となる場合 株式交換において、完全子会社の株主が株式交換 20 完全親合同会社の社員となる場合 (1)事前の情報開示 • 吸収合併契約等に関する書面等の備置きおよび 閲覧等:吸収合併存続株式会社等においても、 消滅会社等と同様に吸収合併契約等事前開示書 類を備置き、閲覧等に供することが要求される (794) • 具体的な内容は、存続株式会社等であることの 性質上適用されない部分(新株予約権の買取請 求等)を除き、吸収合併消滅会社等についての 規定と同様 21 (2)吸収合併契約等の承認等 • 存続会社等においても、原則として効力発生日 の前日までに、株主総会の特別決議によって、 吸収合併契約等の承認を受けなければならない (795Ⅰ、309Ⅱ⑫) • いわゆる合併差損等が生じる場合:取締役は、 株主総会においてその趣旨を説明しなければな らない(795Ⅱ) • また、承継する資産に吸収合併存続株式会社ま たは吸収分割承継株式会社の株式が含まれる場 合にも、自己株式の取得となるため、取締役は 株主総会において当該株式に関する事項を説明 22 しなければならない(795Ⅲ) マイナス合併等 • 旧商法:債務超過の会社を消滅会社とする吸収合 併は、存続会社の資本充実を害するため許されな いと考えられていた(合併登記も受理されない) • 会社法:差損が生じる吸収合併、吸収分割、株式 交換を認めた上で、株主総会における取締役の説 明義務を設けた – 債務超過会社を存続会社とする合併は認められている こととの均衡を失する – 債務超過の子会社救済、合併によりシナジー効果が期 待できるなど実務上の要請 – 債務超過の消滅会社の株主、債権者にはメリット 23 存続株式会社等が種類株式発行会 社である場合 • 吸収合併等に際して存続株式会社の譲渡 制限株式を対価とする場合、当該種類の (譲渡制限株式)株主を構成員とする種 類株主総会の特別決議による承認を得な ければならない(795Ⅳ、324Ⅱ⑥) • 譲渡制限種類株式の募集に際して、種類株 主総会の決議を要しない旨の定款の定め (199Ⅳ)がないものに限る 24 (3)吸収合併契約等の承認を 要しない場合 i. 略式組織再編:消滅会社等が存続株式会社等 の特別支配会社(支配している方の会社)で ある場合⇒存続株式会社等における株主総会 の決議は省略できる(796Ⅰ本文) • • ただし、合併対価等の全部または一部が存続株式 会社等の譲渡制限株式である場合であって、存続 株式会社等が公開会社でないときは、非公開会社 における株式の発行となるため、総会決議を省略 できない(796Ⅰ但書) 存続株式会社等の株主のためにも略式組織再編の 25 差止請求権が認められる(796Ⅱ) (3)吸収合併契約等の承認を 要しない場合 ii.簡易組織再編:簡易な組織再編のための要件が資産 割合の基準に統一(旧商法の5%以下から20%以下 にまで緩和:796Ⅲ) • 合併対価等として交付する存続株式会社等の株式数に一株 当たり純資産額を乗じて得た額と交付する株式以外の財産 の帳簿価額の合計額(対価総額)が、存続株式会社等の純 資産額として法務省令で定める方法により算定される額の 20%(これを下回る割合を定款で定めた場合はその割合) 以下である場合⇒存続株式会社等において株主総会決議を 省略できる • ただし、差損が生じる場合(795Ⅱ)、譲渡制限株式の発 行となる場合(796Ⅰ但書)には、簡易組織再編はできない 26 (796Ⅲ但書) 株主総会決議を省略できない場合 • 簡易組織再編の数値要件をみたしても、一定の 数の株式を有する反対株主が、吸収合併等に関 する通知または公告(797Ⅲ、Ⅳ)の日から2週 間以内に吸収合併等に反対する旨を存続株式会 社等に通知したときは、簡易組織再編によるこ とはできず、効力発生日の前日までに株主総会 決議によって吸収合併契約等の承認を受けなけ ればならない(796Ⅳ) • 反対株主が簡易組織再編を阻止できる要件につ いては、会社法施行規則197条参照 27 (4)反対株主の株式買取請求権 • 存続株式会社等においても、反対株主の 株式買取請求が認められる(797Ⅰ) • 価格決定等の手続については、他の組織 再編等と同様(表参照) 28 (5)債権者保護手続 • 会社債権者にとって責任財産に変動を生じる合併およ び会社分割については、債権者保護手続が必要 (799Ⅰ①②) • 他方、株主構成に変動が生じるに過ぎない株式交換に ついては、完全子会社となる会社における債権者保護 手続は原則として不要:ただし、対価の柔軟化によっ て現金その他株式以外の財産による株式交換も可能と なったため、完全親会社となる会社の責任財産が変動 することもあり得る。また、新株予約権付社債に付さ れた新株予約権を承継する場合は、当該社債に関する 債務も承継することとなる(768Ⅰ④ハ) • このような場合、株式交換完全親会社の債権者のため にも債権者保護手続が必要とされた(799Ⅰ③) 29 • 手続の内容は消滅会社等におけるのと同様 (6)事後の情報開示 • 吸収合併存続株式会社は、承継した消滅会社の権利義 務等を、吸収分割承継株式会社(合同会社が吸収分割 会社である場合に限る)は、吸収分割合同会社と共同 して、承継した吸収分割合同会社の権利義務等を、記 載または記録した書面等を • 効力発生日後遅滞なく作成しなければならない (801Ⅰ、Ⅱ) • 存続会社等は、これらの書面等および791条第1項1号 および2号の書面等を本店に備置き、吸収合併存続親 会社においては株主および債権者、吸収分割承継会社 においては株主、債権者その他の利害関係人、株式交 換完全親会社においては株主および債権者(株式交換 対価が完全親会社の株式等のみである場合を除く)の 閲覧等に供しなければならない(801Ⅲ~Ⅵ) 30 (1)吸収合併契約等の承認 • 持分会社が吸収合併存続会社である場合で、吸収合併 消滅会社の株主または社員が存続持分会社の社員とな る場合 • 吸収分割により他の会社の事業に関する権利義務の全 部または一部を承継する場合で、吸収分割会社が吸収 分割承継持分会社の社員となる場合 • 株式交換において、完全子会社の株主が株式交換完全 親合同会社の社員となる場合 • 効力発生日の前日までに、吸収合併契約等について存 続持分会社等の総社員の同意を得なければならない (802Ⅰ) • ただし、定款で別段の定めを設けることができる 31 (2)その他の手続 • 株式会社を前提とする部分(公告関係) を除き、債権者保護手続(799)につい ての規定が準用される(802Ⅱ) • 三角合併等を容易にするための800条も 準用される 32 Ⅳ 新設合併消滅会社等の手続 1. 株式会社の手続(34~42) • 新設合併消滅会社等が株式会社である場合 2. 持分会社の手続(43~44) • 持分会社が新設合併消滅会社である場合お よび合同会社が新設分割会社である場合 33 (1)事前の情報開示 • 消滅株式会社等は、新設合併契約等備置開始日 から設立会社の成立の日後6ヶ月経過する日 (新設合併消滅会社については新設合併設立会社の成 立の日)までの間 • 新設合併契約等(新設合併契約、新設分割計画、株 式移転計画)の内容その他法務省令で定める事 項を記載し、または記録した書面または電磁的 記録を • 本店に備え置かなければならない(803Ⅰ) • その他の手続については、吸収合併消滅株式会社等に おける手続に準じる(803Ⅱ~Ⅲ) 34 (2)新設合併契約等の承認等 • 消滅会社等は、原則として効力発生日の前日ま でに、株主総会の特別決議によって、新設合併 契約等の承認を受けなければならない(804Ⅰ、 309Ⅱ⑫) • 新設合併消滅会社または株式移転完全子会社が 公開会社であり、かつ合併対価等の全部または 一部が譲渡制限株式等である場合:特殊決議に よらなければならない(309Ⅲ③) • 新設合併設立会社が持分会社である場合には、 新設合併消滅株式会社の総株主の同意を得なけ 35 ればならない(804Ⅱ) 種類株式発行会社である場合 • 新設合併消滅会社または株式移転完全子会社 が種類株式発行会社である場合で、合併対価 等の全部または一部が譲渡制限株式等である ときは、当該譲渡制限株式等の割当てを受け る種類の株式の種類株主総会の特殊決議によ る承認を得なければならない(804Ⅲ、324Ⅲ ②) • ただし、当該株主総会において議決権を行使 することができる株主が存在しない場合は、 この手続を要しない 36 登録質権者への通知・公告 • 消滅会社等は、新設合併契約等についての承認 にかかる株主総会決議の(または株主全員の同 意を得た)日から2週間以内に、 • その登録株式質権者(805に規定する場合を除 く)および新株予約権(808Ⅲ各号に定めるも の)の登録新株予約権質権者に対し、 • 新設合併等をする旨を通知または公告しなけれ ばならない(783Ⅳ、Ⅴ) 37 (3)簡易新設分割(805) • 簡易吸収分割同様の基準(20%基準)で 新設分割株式会社における新設分割計画 の承認にかかる株主総会を省略できる • 簡易新設分割の数値基準をクリアした場 合、反対株主の株式買取請求(後述)も 認められない 38 (4)反対株主の株式買取請求権 • 株主全員の同意を要する場合(804Ⅱ)、およ び簡易新設分割(805)の場合を除き、 • 新設分割等に反対の株主には、消滅会社等に対 し、自己の有する株式を「公正な価格」で買 い取ることを請求することができる(806Ⅰ) • 価格決定等の手続については、他の組織再編等 と同様である(表参照) 39 (5)新株予約権買取請求 • 新設合併消滅株式会社等が新株予約権を発行し ている場合、吸収合併等の場合(787参照)と 同様、新株予約権の買取請求権が認められる • ただし、新株予約権者への通知または公告をな すべき時期は、新設合併契約等についての承認 にかかる株主総会決議の日(または株主全員の 同意を得た日、承認を要しない場合(805)は 新設分割計画の作成の日)から2週間以内 (808Ⅱ~Ⅶ、809):787Ⅲと対比 40 (6)債権者保護手続 • 会社債権者にとって責任財産に変動を生じる合 併・会社分割については、債権者保護手続が必 要(810Ⅰ①②) • 他方、株主構成に変動が生じるに過ぎない株式 移転については、完全子会社となる会社におけ る債権者保護手続は原則として不要 – ただし、新株予約権付社債に付された新株予約権が 株式移転設立完全親会社に承継される場合、当該社 債権者にとっては、債務者の変更となるため、かか る社債権者のために債権者保護手続が必要(810Ⅰ ③) 41 (7)事後の情報開示 • 新設分割株式会社または株式移転完全子会社は、新設 分割設立会社または株式移転設立完全親会社の成立 (設立登記)の日後、遅滞なく新設分割設立会社また は株式移転完全親会社と共同して、承継される権利義 務等または取得される株式等に関する事項を記載また は記録した書面等を作成しなければならない (811Ⅰ) • この書面等は、新設分割設立会社または株式移転設立 完全親会社の成立の日から6ヶ月間、新設分割株式会 社または株式交換完全子会社の本店に備置き (811Ⅱ)、株主、債権者、その他の利害関係人(株式 移転の場合の閲覧請求権者は、株式移転設立完全親会社の成立 の日に株式移転完全子会社の株主または新株予約権者であった 者)の閲覧等に応じなければならない(811Ⅲ、Ⅳ) 42 (1)新設合併契約等の承認 • 持分会社が新設合併消滅会社である場合および 合同会社が新設分割会社である場合(権利義務 の全部を承継させる場合に限る) • 新設合併契約等について当該持分会社の総社員 の同意を得なければならない(813Ⅰ) • ただし、定款で別段の定めを設けることができ る 43 (2)その他の手続 • 株式会社を前提とする部分(株式移転に 関する部分・計算書類に関する部分)を 除き、債権者保護手続(810)について の規定が準用される(813Ⅱ) 44 Ⅴ 新設合併設立会社等の手続 1. 株式会社の手続(46~48) • 新設合併および新設分割により株式会社を 設立する場合、株式移転の場合 2. 持分会社の手続(49) • 新設合併または新設分割で持分会社を設立 する場合 45 (1)株式会社の設立の特則 • 組織再編行為により株式会社を設立する場合には、通 常の株式会社の設立に関する規定(会社法第2編第1 章)は適用されない • ただし、定款の記載事項等に関する規定(27(④およ び⑤を除く)、29、31)、設立株式会社が取締役会設 置会社の場合における取締役の員数および監査役会設 置会社である場合における監査役の員数等に関する規 定(39)、設立時代表取締役等の選定等に関する第6 節の規定、および株式会社の成立要件(本店所在地に おける設立の登記)の規定(49)は、適用される (814Ⅰ) • 設立株式会社の定款は、消滅会社等が作成(814Ⅱ) 46 (2)新設合併契約等に関する情 報開示 • 設立株式会社は、その成立の日後遅滞なく、承 継した権利義務その他新設合併に関する事項と して法務省令で定める事項を記載または記録し た書面等を作成しなければならない(815Ⅰ) • 合同会社のみが新設分割をする新設分割設立株 式会社においては、その成立の日後遅滞なく、 新設分割合同会社と共同して、承継した権利義 務その他新設分割に関する事項として法務省令 で定める事項を記載または記録した書面等を作 成しなければならない(815Ⅱ) 47 (2)新設合併契約等に関する情 報開示(815) • 新設合併設立株式会社:第1項の書面等および 新設合併契約の内容その他法務省令で定める事 項を記載または記録した書面等を • 新設分割設立株式会社:第2項または第811条第 1項第1号の書面等を • 株式移転設立完全親会社:第811条第1項第2号 の書面等を • その成立の日から6ヶ月間、本店に備え置かな ければならない(815Ⅲ) 48 (1)持分会社設立の特則 • 新設合併設立持分会社または新設分割設立持 分会社(設立持分会社)には、通常の持分会 社設立手続に関する規定(575条および578 条)は適用されない(816Ⅰ) • 設立持分会社の定款は、消滅会社等が作成 (816Ⅱ) 49 2 組織再編行為の無効 1. 総論 2. 無効の訴え 3. 無効判決の効力 50 Ⅰ 総論 • 組織再編行為が会社に回復困難な損害を与えるおそれ がある場合、株主または監査役は取締役の行為につい て差止請求権を行使できる(360、385) • しかし、組織再編行為の効力が生じた後は、これを前 提として多数の法律関係が形成されるため、組織再編 行為の手続に瑕疵(無効原因)があったとしても一般 原則に委ねることはできない • そこで、会社法は組織再編行為に関する無効の訴えに かかる規定を設け(828)、提訴期間・提訴権者に制 限があり、判決の効力に対世効があり遡及効が否定さ れる無効の訴えによる是正のみを認めることで法的安 定性の確保を図っている 51 Ⅱ 組織再編行為の無効の訴え (1)無効原因(明文の規定はなく、解釈に委ねられる) • 一般には、次のようなものが無効原因とされる 1. 組織再編行為当事会社、存続会社、新設会社としての適格を 欠く場合(474、643、757、762、767) 2. 組織再編契約または組織再編計画(以下組織再編契約等とい う)が作成されない場合 3. 組織再編契約等が法定要件を充足していない場合(合併に関 する大判昭19・8・25民集23・524参照) 4. 組織再編につき株主総会決議を要する場合において、決議が 不存在もしくは無効であるか、または取消された場合(合併 に関する東京地判昭30・2・28下民6・2・361は、合併承認 決議の取消または無効確認のみを訴求することは許されず、 必ず合併無効の訴えを提起すべきであるとする) 5. 情報開示手続、債権者保護手続などに不備がある場合 52 (2)提訴期間・提訴権者 • 組織再編行為の無効の訴えの提起は、組織再編 行為の効力が生じた日から6カ月以内に限られ る(828Ⅰ⑦~⑫) • 提訴権者は、組織再編行為に応じて次のように 制限される。ただし、以下にいう株主等とは、 株主、取締役または清算人(監査役設置会社に おいては監査役を含み、委員会設置会社におい ては執行役を含む)をいい、社員等とは、社員 または清算人をいう(828Ⅱ①) 53 提訴権者 ①吸収合併 効力発生日において吸収合併をする会社の株 主等もしくは社員等であった者または吸収合 併後存続する会社の株主等、社員等、破産管 財人もしくは吸収合併について承認しなかっ た債権者(828Ⅱ⑦) ②新設合併 効力発生日において新設合併をする会社の株 主等もしくは社員等であった者または新設合 併により設立する会社の株主等、社員等、破 産管財人もしくは新設合併について承認しな 54 かった債権者(828Ⅱ⑧) 提訴権者 ③吸収分割 効力発生日において吸収分割契約をした会社の 株主等もしくは社員等であった者または吸収分 割契約をした会社の株主等、社員等、破産管財 人もしくは吸収分割について承認しなかった債 権者(828Ⅱ⑨) ④新設分割 効力発生日において新設分割をする会社の株主 等もしくは社員等であった者または新設分割を する会社もしくは新設分割により設立する会社 の株主等、社員等、破産管財人もしくは新設分 割について承認しなかった債権者(828Ⅱ⑩)55 提訴権者 ⑤株式交換 効力発生日において株式交換完全子会社の株主 等もしくは社員等であった者または株式交換完 全親会社の株主等、社員等、破産管財人もしく は株式交換について承認をしなかった債権者 (828Ⅱ⑪) ※一部の株式交換につき、債権者保護手続が必要 とされたことから、この手続で異議を述べた債 権者も株式交換無効の訴えを提起できるものと された 56 提訴権者 ⑥株式移転 効力発生日において株式移転をする株式会社 の株主等であった者または株式移転により設 立する株式会社の株主等(828Ⅱ⑫) ・株式交換の場合と異なり、株式移転に債権者保護 手続きが必要となる場合に「破産管財人」や「承認 をしなかった債権者」が提訴権者に含まれていない ⇒株式移転完全子会社の新株予約権付社債の社債権 者には828Ⅱ⑪を類推適用して提訴権を認めるべきで あるとする見解もある(江頭) 57 原告敗訴の場合の責任 • 原告が敗訴した場合、悪意または重過失 があったときには、被告会社に対して連 帯して損害賠償責任を負う(846) 58 (3)被告(834条) ① 吸収合併無効の訴え:吸収合併存続会社 (⑦) ② 新設合併無効の訴え:新設合併設立会社 (⑧) ③ 吸収分割無効の訴え:吸収分割契約当事会社 (⑨) ④ 新設分割無効の訴え:新設分割会社および新 設分割設立会社(⑩) ⑤ 株式交換無効の訴え:株式交換契約当事会社 (⑪) ⑥ 株式移転無効の訴え:株式移転完全子会社お 59 よび株式移転設立完全親会社(⑫) 無効の訴えの専属管轄 • 被告となる会社の本店所在地を管轄する地方裁判所 の管轄に専属する(専属管轄:835Ⅰ) • 吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転の無効の 訴えについては、2つ以上の地方裁判所が管轄権を有 する場合が生じうる – この場合は、先に訴えの提起があった地方裁判所が管轄す る(835Ⅱ) – ただし、裁判所が、著しい損害または遅滞を避けるために 必要があると認めるときは、当事者の申立てか、または職 権で、訴訟を他の管轄裁判所に移送することができる (835Ⅲ) • 管轄裁判所に同一の組織再編行為無効の請求を目的 とする訴訟が数個同時に係属するときは、その弁論 および裁判は、併合してしなければならない(弁論 等の必要的併合:837) 60 (4)担保提供命令 • 株主または設立時株主(取締役、監査役、執行 役もしくは清算人である場合を除く)が、組織 再編行為の無効の訴えを提起した場合:裁判所 は、被告の申立てにより、当該訴えを提起した 株主または設立時株主に対し、相当の担保を立 てるべきことを命ずることができる(836Ⅰ) • 組織再編行為の無効の訴えを債権者が提起でき る場合にも準用される(836Ⅱ) • 被告が担保提供の申立てをするには、原告の訴 え提起が悪意によるものであることを疎明しな 61 ければならない(836Ⅲ) (5)無効判決の効力 • 遡及効の否定:組織再編行為の無効の訴えにか かる請求を認容する判決が確定したときは、当 該組織再編行為は、将来に向かってその効力を 失う(839) • 当該行為によって設立された会社や当該行為に 際して交付された株式または新株予約権も無効 となる • 判決の対世効:確定した請求認容判決の効力は、 第三者に対しても及ぶ(画一的処理の要請) (838) 62 (5)無効判決の効力 • 効力発生後、無効判決が確定するまでに吸収合 併存続会社、新設合併設立会社、吸収分割承継 会社、新設分割設立会社が負担した債務につい ては、各行為の当事会社が連帯して弁済する責 任を負い(843Ⅰ)、これらの会社が取得した 財産は、各行為の当事会社の共有(ただし、単独 新設分割の場合は、当該新設分割会社)に属する (843Ⅱ) 63 (5)無効判決の効力 • 株式交換または株式移転の無効が確定した場 合:株式交換または株式移転をする株式会社 (旧完全子会社)の発行済株式の全部を取得す る株式会社(旧完全親会社)が対価として旧完 全親会社の株式を交付したときは、無効判決確 定時における旧完全親会社株主に対し、当該株 主が行為時に有していた旧完全子会社の株式を 交付しなければならない(844Ⅰ) • この場合、旧完全親会社株式を目的とする質権 は、旧完全子会社株式について存在することと 64 なる(844Ⅱ) (6)裁判による登記の嘱託 • 組織再編行為の無効の訴えにかかる請求認 容判決が確定した場合には、裁判所書記官 は、職権で、遅滞なく、各会社の本店所在 地を管轄する登記所に所定の登記を嘱託し なければならない(937Ⅲ) 65
© Copyright 2024 ExpyDoc