疫学初級者研修 ~精度 と バイアス~ 平成12年2月15日(火) 13:00~ 岡山理科大学情報処理センター ①推定と検定(復習) ②精度 ③バイアス ①推定と検定 (昨日の復習) 2×2表 (疾病の有無) 有症 ( 曝 食べた 露 の 有 食べない 無 ) 健康 a b c d ①推定と検定 推定:ある数値を定量的に 推測すること 検定:ある仮説の正しさを 検証すること 推定の例: オッズ比を求める 検定の例: χ 検定 , t 検定 2 推定・検定の違い ・推定では、信頼区間によって 影響の大きさと、その推定に 固有のばらつきを評価できる。 ・検定では、データと帰無仮説の 整合性をチェックする。 ※オッズ比とχ2値の違い 有症 健康 食べた 7 2 食べない 1 3 8 5 オッズ比=10.5 χ2=3.26(P=0.07) 9 4 13 有症 健康 食べた 42 12 食べない 6 18 48 30 54 24 78 オッズ比=10.5 χ2=19.55(P=0.0000098) ※精度とバイアス 精度とバイアス 正確度 = 精度 誤差 + 妥当性 =偶然誤差 + 系統的な誤差 (バイアス) :的 :射撃の跡 妥当性 ライフル銃の 銃身が正しい 精 度 狙優 撃秀 手な 狙普 撃通 手の 銃身が右に ずれている 誤差=偶然誤差+系統的な誤差 偶然誤差:必然的に起こる誤差 ・調査対象者の記憶の不確かさなどによるもの ・通常は分析に重要な影響は与えない 系統的な誤差(バイアス) :調査する側、調査される側の意図により 生じる誤差 ・一方的な思いこみなどにより生じる ・分析に重要な影響を与えることがある ②精度 有症 健康 計 有症 健康 計 食べた 食べない 計 157 42 199 19 20 39 176 62 238 オッズ比=3.93 95%信頼区間: 95%信頼区間: 1.82<OR<8.54 1.82<OR<8.54 χ2値=15.41 P値=0.00008 食べた 食べない 計 40 10 50 5 5 10 45 15 60 オッズ比=4.00 95%信頼区間: 0.79<OR<20.73 χ2値=4.00 P値=0.045 オッズ比=3.93 95%信頼区間: 95%信頼区間: 1.82<OR<8.54 1.82<OR<8.54 χ2値=15.41 P値=0.00008 オッズ比=4.00 95%信頼区間: 0.79<OR<20.73 χ2値=4.00 P値=0.045 オッズ比:ほとんど変わらない。 信頼区間:幅が広がり、1をはさんでしまった。 データ数が減ったことで、ばらつきが大きくなった ↓ 「精度」が悪くなった データ数が少ないとき 「はっきりと」言うことは難しい。 断定することはできない。 それは、「精度」が悪いため。 精度 オッズ比 データ数 が多い データ数 が少ない 信頼区間の幅 狭い ほぼ 変わらない 広い 精度 χ2 値 P値 データ数 が多い 大きい 小さい データ数 が少ない 小さい 大きい 精度 オッズ比 信頼区間 χ2 データ 多 データ 少 値 P値 精度 狭い 大きい 小さい よい 広い 小さい 大きい 悪い ほぼ 変わら ない ③バイアス 誤差=偶然誤差+系統的な誤差 偶然誤差:必然的に起こる誤差 ・調査対象者の記憶の不確かさなどによるもの ・通常は分析に重要な影響は与えない 系統的な誤差(バイアス) :調査する側、調査される側の意図により 生じる誤差 ・一方的な思いこみなどにより生じる ・分析に重要な影響を与えることがある バイアス=系統的な誤差、偏り ある一定の方向性をもっている誤差 この偏り(例:発症している人を 意図的に「食べた」と見なすなど)が 分析結果に影響を及ぼすことがある バイアスの例 その1 「自己選択バイアス」 食中毒の報道がされた後に、 「自分もその店を利用し、調子が悪い」 などの電話が増える事例 有症 健康 計 食べた 21 6 27 食べない 3 18 21 計 24 24 48 その情報を鵜呑みにすると 「食べた」「有症」の人のみが 増えて (2×2表のaの数値が増え) オッズ比が高くなる バイアスの例 その2 情報バイアス①(「質問者バイアス」) 原因物質が「腸炎ビブリオ」で メニューに刺身が入っている場合 有症者に対して「刺身は食べましたね?」 と質問し関連づけようとしてしまう事例 有症 健康 計 食べた 21 6 27 食べない 3 18 21 計 24 24 48 有症者であれば「食べた」、 健康であれば「食べていな い」、 と見なしがちになり、 2×2表のa、dの数値が増 え)オッズ比が高くなる バイアスの例 その3 情報バイアス ② 実際には食べていなかったが記憶していない ため「食べた」としたり、食べたのに「食べなかっ た」とする場合 有症 健康 計 食べた 21 6 27 食べない 3 18 21 計 24 24 48 食べていないのに「食べた」 →a,bが増える 食べたのに「食べていない」 →c、dが増える これらが混ざると 結局オッズ比は低くなる バイアスの例 その4 情報バイアス ③ 健康な人を「有症者」としたり、症状がある人を 「健康な人」とする場合 有症 健康 計 食べた 21 6 27 食べない 3 18 21 計 24 24 48 健康な人を「有症者」 →a,cが増える 有症者を「健康な人」 →b、dが増える これらが混ざると 結局オッズ比は低くなる 本当は患者でないのに「患者」と 診断されたり、 本当は食べていないのに「食べた」 と思いこむことで、真の値が歪む この場合、原因食品のオッズ比は 過小評価される。 ※交絡バイアス ※交絡バイアス ランチバイキングで食中毒が発生 →オッズ比を計算すると… 「ケーキ」と「コーヒー」の2つのオッズ比が 高いことが判明 今までの考え方 「コーヒーで食中毒が発生することはまずない ので原因食品はおそらくケーキだろう」 ※交絡バイアス 交絡バイアスとは… 喫食(曝露)の有無と発症との関係に 影響を与える別の曝露因子を 「交絡因子」という。 この「交絡因子」により、見かけ上 オッズ比が上昇することを 「交絡バイアス」という。 コーヒー 食中毒 ケーキ 実際には原因食品はケーキであるにもかかわらず ケーキを食べたほとんどの人がコーヒーも飲んだので 見かけ上コーヒーのオッズ比が上昇してしまう 「層別分析」により影響の程度を分析できる ※バイアスに対する考え方 ◆自己選択バイアスを避けるには、報道前の患者群を症例の 定義とするなど、症例の定義を工夫する。 ◆質問者バイアスを避けるには、調査者が先入観をもたず 調査者全員が等しく質問できるような念入な打ち合わせが 必要である。 ◆情報バイアス(本当は患者でないのに「患者」としたり、本当 は食べていないのに「食べた」とする場合)は、結果的にオッ ズ比が過小評価される。 ◆本来の原因食品と同じように見かけ上オッズ比が高くなって しまう食品がある。(交絡バイアス)
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