企業システムの進化と多様性 清水耕一

企業システムの進化と多様性
清水耕一
第4講
量戦略とフォード・モデル
4-1 「量」戦略
 「量」戦略の目的
 需要変動に対して直接に調整できない費用(固定費や開発費な
ど)を可能な限り多くの車に配分して一台当たりの費用を低下さ
せる
 戦略の理想
 ただ一つの車種を可能な限りの長期にわたって大量生産するこ
と
 T型フォード、VW(Volkswagen)のビートル(1949~73)
 「量」戦略を展開するための条件
 同質的であり、単一もしくは少数の標準化された車種で満足する
市場(装備市場)
 単調で画一的な生産のために十分な量の労働力を雇用できる
労働市場
 大衆乗用車市場が現れ始める初期の自動車市場(装備市場)や
、旧ソ連のような中央集権的で管理された平等主義的経済体制
においてのみ可能
4-2 T型フォードの大量生産
 T型フォードの製造開始:1908年
(1927年まで、15 458 781台製造)
 最初は手作り生産システムで
 T型フォードの大量生産(フォード・システ
ム)
 1910年より実験開始
 1913年に部品の搬送および組立工程にベルト・コン
ベアを導入
 1914年にエンドレス・チェーンで作動する本格的な
移動組立ラインを完成⇒流れ作業の完成(1915年)
 価格の劇的低下
 1908年825ドル、1914年440ドル、1916年345ドル
2つのタイプのコンベアー
T型フォード (トヨタ博物館)
(参考)歴史上初めてのガソリンエンジンを搭載した
ベンツの自動車、1886年(トヨタ博物館)
4-3 大量生産を可能とした条件
 製品と部品の標準化による互換性部品の大量生産
 精密計測機器の開発
 精密な専用工作機と治工具の開発
 加工作業の単純化
 工程細分化と再編成
 テーラー主義による時間・動作研究⇒作業の標準化
 組立作業を1km以上に及ぶ組立ラインに効率的に配置する必要
 単調な繰り返し作業に耐える労働者の存在
 不熟練工
 移民労働者(英語教育⇒合格者のみを採用)
 しかし高賃金による労働者定着政策
4-4 フォード・モデル
 製品戦略
 単一商品の大量生産:T型フォード⇒A型フォード
 CG妥協
 家父長的管理
 CG妥協無し
 1941年6月になってやっと全米自動車労組(UAW)を承認
 GMに習って労使間妥協が成立
 生産組織
 フォード・システム
 労使関係(労働管理)
 「日給5ドル」⇦高離職率(380%)に対する対策
 1908年1ドル90、1913年2ドル50、1914年5ドル
 日給5ドルをもらえるには一定の条件が満たされる必要
 1日8時間労働
4-5 フォード主義
 「金持ちの取引はたった一つの産業を生かすの
にさえ不十分である。われわれのところで買うの
は労働者階級である。もしわれわれがわれわれ
の巨大な生産をさばこうと思うなら、労働者階級
がわれわれの富裕な階級になる必要がある。」
 フォード主義的好循環
 生産性上昇→高賃金→販路拡大→生産(および投資
)拡大→生産性上昇
 大量生産と大量消費の結合、しかし・・・
 社会全体の賃金=所得が上昇する必要があるが、そ
れはどうして可能になるのか?