雇用延長制度と会社の実務対策 ~2006年4月から義務化される 継続雇用の段階的改正~ 社団法人近江八幡納税協会 講師:社会保険労務士 佐々木誉富 2006/2/9 SR Labo 1 1.改正法に基づく円滑な高齢者雇用を実現 する人事制度設計の考え方と進め方 (1)再雇用制度と勤務延長制度 雇用延長の方法 ① 定年の引上げ ② 再雇用 ・・・60歳定年で一度退職し嘱託等 ③ 勤務延長 ・・・中小企業で普及 ④ 定年の廃止 ・・・エイジレス、エイジフリー T4-9 2006/2/9 SR Labo 2 企業の定年制の現状 定年制の有無 なし (8.5) あり(91.5) 定年の定め方 職種別他 (2.9) 一律定年制(88.6) 59歳以下(0.6) 定年年齢 61~64歳(2.1) 60歳(80.2) 65歳以上(5.8) 0 20 40 60 80 100 % (資料)厚生労働省「雇用管理調査」(2004年1月調査) 勤務延長制度及び再雇用制度の実施状況 制度の有無 あり(73.8) 勤務 延長制度 制度内訳 (13.2) 0 2006/2/9 なし(26.2) 両方 (13.1) 20 (資料)厚生労働省「雇用管理調査」(2004年1月調査) 再雇用制度(47.6) 40 SR Labo 60 80 100 % 3 雇用延長と年金支給開始年齢の引き上げのスケジュール ※ T10-13 高年齢雇用確保措置による雇用期間 ※ 厚生年金(定額部分)受給開始年齢・・・男性の場合。女性は5年遅れ。 ※ 定年を60歳とする場合 2006/2/9 SR Labo 4 定年引き上げの課題 課題があると回答した企業割合 84.0 63.4 給与体系の見直し 43.2 健康面への配慮 【 課 題 と な る 事 項 】 処遇、ポスト等 人事管理の見直し 40.8 37.0 退職金制度の見直し 職務内容、 作業環境の見直し 29.8 作業能率の維持 29.4 勤務時間、 勤務形態の見直し 19.2 9.7 本人の自己啓発の促進 1.9 再教育 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 % (資料)厚生労働省「雇用管理調査」(2003年1月調査) 2006/2/9 SR Labo 5 (2)高齢者雇用と公的給付 雇用保険 ①高年齢雇用継続給付 支給対象者 ◆60歳以上65歳未満の一般被保険者であること。 (短時間労働被保険者を含む) ◆被保険者であった期間が通算して5年以上あること。 (基本手当等を受給したがある場合は、受給後の期間に限ります。) ◆賃金が60歳到達時に比べ75%未満に低下したこと。 支給限度額 ◆上限額 支給対象月に支払われた賃金額が339,484円(平成17年8月1日現在) を超える場合は支給されません。 また、賃金額と支給額の合計が339,484円を超える場合は、 339,484円からその賃金額を差し引いた額が支給されます。 ◆下限額 支給額として算定された額が1,656円(平成17年8月1日現在) 以下であるときは支給されません。 ◆60歳到達時賃金月額の限度額 上限額:452,100円 下限額: 62,100円 (平成17年8月1日現在) ※ これらの額は、毎年8月に変更される予定です。 2006/2/9 SR Labo 6 高年齢雇用継続給付の支給率 2006/2/9 低下率 支給率 75.00%以上 0.00% 72.50% 2.25% 70.00% 4.67% 67.50% 7.26% 65.00% 10.05% 61.00%以下 15.00% SR Labo T31-32 7 厚生年金保険 T33-37 ②在職老齢年金 平成17年4月からは、年金額の2割を支給停止する仕組みを廃止し、受け取る 年金額と給与に応じた在職支給停止を行う仕組みに変更されました。 a. 総報酬月額 = その月の標準報酬月額 + 賞与額 ÷ 12 b. 基本月額 = 老齢厚生年金の年金額 ÷ 12 ★60歳代前半(60歳以上65歳未満の在職老齢年金) 総報酬月額+年金月額 年金月額 総報酬月額 28万円以下 28万円を超える 支給停止額の計算式(月額) 全額支給(支給停止なし) 28万円以下 48万円以下 (総報酬月額+基本月額-28万円)×1/2 28万円以下 48万円超 (48万円+基本月額-28万円)×1/2+総報 酬月額-48万円 28万円超 48万円以下 総報酬月額×1/2 28万円超 48万円超 (48万円×1/2)+(総報酬月額-48万円) ★60歳代後半(65歳以上70歳未満の在職老齢年金) 総報酬月額+年金月額 支給停止額の計算式(月額) 48万円以下 支給停止なし 48万円を超える (総報酬月額+基本月額-48万円)×1/2 2006/2/9 SR Labo 8 継続雇用定着促進助成金 制度の内容 単位:万円 ③定年延長等 以外の 継続雇用制度 ①61~64歳 定年延長等 ②65歳以上 定年延長等 1~4年 1~5年 1~5年 35×1~4年 45×1~5年 30×1~5年 10人~ 99人 75×1~4年 90×1~5年 60×1~5年 100人~299人 150×1~4年 180×1~5年 120×1~5年 300人~499人 185×1~4年 220×1~5年 150×1~5年 500人~ 250×1~4年 300×1~5年 200×1~5年 継続雇用期間 企業規模 1人~ 2006/2/9 T38-39 9人 SR Labo 9 (3)人事・賃金制度の設計 T16-27、44-59 勤務形態、賃金、賞与、諸手当、退職金、役職、モラール維持、 福利厚生等をどうするか ① 勤務形態・・・表1~4 勤務延長制度・・・正社員、嘱託社員 社員と同じ勤務時間、日数 雇用期間の定めなし 再雇用制度・・・・・嘱託社員、パート・アルバイト 1日の勤務時間が短い又は1ヶ月の勤務日数が少ない 雇用期間1年間 *雇用保険短時間、社会保険未加入。中小企業では、社員と同じが多い。 2006/2/9 SR Labo 10 ②処遇、賃金体系・水準・・・表5、6 勤務延長制度 (役職)、資格、仕事の内容変わらない ⇒ 賃金下がる ★賃金水準(中小企業)・・・20~30%ダウン 再雇用制度 役職、資格変わる 仕事の内容変わらない ⇒ 賃金下がる ★賃金水準(中小企業)・・・30~40%ダウン 各社の事例 A社 2006/2/9 B社 C社 D社 賃金体系 変わる (個別対応) 一般は年齢給、勤続給、 職能給だが区分がなく なる 1年目横ばい、 2年目より減額 変わる 家族手当 個別対応 もともと支給していない 支給 もともと支給していない 住宅手当 個別対応 もともと支給していない 支給 もともと支給していない 賃金カーブ 個別対応 勤務延長時点で70~ 80%に減額→上昇 61歳時点で80%に減 額→上昇 勤務延長時の70%に 賃金減額→横ばい 定 昇 減額したものを適 用(同3,500円) なし なし なし ベ ア なし なし(物価上昇は考慮) 一般と同じ なし SR Labo 11 A社 B社 C社 D社 個別対応 組合員平均月数の70% 以内 一般と同じ 一般と同じ 退職金 支給しない 1年に月10万円 支給しない 退職慰労金支給 役 職 職務・人により異なる 職務・人により異なる 変わる 職務・人により異なる 資 格 個別対応 職能等級を下げる 変わる 変わる 適用基準 会社が認めた者 会社が認めた者 会社が必要と認めた者 会社が認めた者 再雇用前の休養 決まっていない なし なし なし 1年ごと 1年ごと 個別対応 1年ごと 身分、組合員資 格 嘱託、喪失 嘱託、喪失 嘱託、臨時、喪失 嘱託、喪失 勤務内容の変化 変わらない 変わらない 変わらない 変わらない 労働時間の変化 変わらない 変わらない 変わらない 変わらない 年次有給休暇 勤続年数を基準に付与 勤続年数を基準に付与 勤続年数を基準に付与 勤続年数を基準に付与 賃金水準と在職 老齢年金の関係 ― 関連付けていない 年金80%受給を前提に 設定 関連付けていない 賞 与 雇用更新 労務行政研究所「企業内高齢層の処遇実態」 2006/2/9 SR Labo 12 60歳まで 60歳以降 本人給+職能給 役割給 「期待する人材」の明確化 「何に対して支払うか」の明確化 職能給 職務給 成果給 (~できる能力) (~する仕事) (~の成果をだした) 人 2006/2/9 仕事 成果 年齢給 責任等級=役割給 勤続給 (・・・を~する責任) SR Labo 360度評価 顧客 13 2.再雇用制度の導入事例 (1)60歳定年後に嘱託再雇用 (2)60歳定年後に短時間勤務または週3日勤務で再雇用 (3)労使協定、雇用契約書例 ①対象者基準 ②職務内容等 ③勤務日数、勤務時間等 ④給与、賞与、退職金等 ⑤雇用契約 ⑥退職 2006/2/9 SR Labo 14 A社事例 フルタイム勤務者 変動時間勤務者 エルダー社員Ⅰ エルダー社員Ⅱ 労働時間 週36時間、5日勤務、1日実働7時 間25分、シフト勤務、フレックス勤務 あり 週20~27時間、3~5日勤務、 1日実働5時間20分~7時間25 分、13種類の勤務パターン設定 職務/配置 販売および特殊技能を要する業務 営業支援、事務、作業業務 再雇用条件 希望者のうち会社が限定して雇用 希望者全員雇用 雇用期間 1年間、更新可、最長65歳 1年間、更新可、最長65歳 賃 給与:月給(定年時の職能資格で2 種類)、賞与:年2回、6ヶ月分程度 給与:時給(定年時の職能資格 に関係なく一律)、賞与:年間2回、 2ヶ月程度 呼 称 金 高年齢雇用継続給付 あり 社会保険関係 2006/2/9 あり 厚生年金保険加入、健康保険加入、 厚生年金非加入、健康保険非加 雇用保険加入(一般被保険者) 入、雇用保険加入(短時間被保 険者) SR Labo 15 「能力・経験」に関する基準の例 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 過去○年間の賞与考課が管理職○以上、一般職○以上であること 過去○年間の平均考課が○以上であること(上位80%以上) 人事考課の平均が○以上であること 業績成績、業績考課が普通の水準以上であること 工事・保守の遂行技術を保持していること 職能資格が○級以上、職務レベル○以上 社内技能検定○級以上を取得していること 建設業務に関する資格を保持していること 技能系は○級、事務系は実務職○級相当の能力を有すること 定年時管理職であった者、又は社内資格等級○以上の者 ○級土木施工管理技士、○級管工事施工管理技士、○級建築施工 管理技士、○級造園施工管理技士、○級電気工事施工管理技士等 の資格を有し、現場代理人業務経験者又は設計者である者 ・ 企業に設置義務のある資格又は営業人脈、製造技術、法知識等の 専門知識を有していること ・ 過去3年間の出勤率が9割以上であること ・ 勤続年数が○○年以上であること 2006/2/9 SR Labo 16
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