スライド 1 - 北海道医療大学

高齢者の神経障害と精神障害(認知障碍とうつ)
1.認知機能の年齢による変化
2.記憶の加齢変化
3.認知機能のアンチエイジング(運動の効果)
4.認知機能のアンチエイジング(栄養の効果)
5.認知症
6.うつ病
Mini Mental State Examinartion (MMSE)
1.口頭で「今日は何日ですか」「今年は何年ですか」「今の季節は何ですか」「今日は何
曜日ですか」「今日は何月ですか」質問する。
2.「ここは何県ですか」「ここは何市ですか」「ここはどこですか」「ここは何階ですか」「ここ
は何地方ですか」の質問をします。
3.3つの言葉を言い、その後、被験者に繰り返し言ってもらう。
4.100から順に7を繰り返し引いてもらう(5回)。
5.3)で提示した3つの言葉を再度言ってもらう。
6.時計を見せながら「これは何ですか?」、鉛筆を見せながら「これは何ですか?」と聞
く。
7.次の文章を反復させる。「みんなで力を合わせて綱を引きます」
8.何も書いていない紙を渡し、「右手にこの紙を持ってください」「それを半分に折りたた
んでください」「それを私にください」といっぺんに指示をして、そのとおりにしてもらう。
9.「目を閉じてください」と書いたものを見せて、指示に従わせる。
10.何も書かれていない紙を渡して、「何か文章を書いてください」と指示をする。
11.重なった2個の五角形を見せて、それを模写させる。
年齢別MMSE得点分布
23点以下の認知障碍と判断できる割合は加齢によっても目立った増加はない。ただし、加齢
に伴い軽度認知機能低下する人の増加が認められる。
軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment )
健忘期(記憶障害.失計算、失行を中心とした時期)においては、将来認知症へ進行する
のか、加齢に伴う良性の記憶障害なのかの判断は困難である。
MCIと診断されると年間12−15%が認知症に進行しており、認知症の前段階とも考えられ
るが、すべてがそうではない。
環境と運動のアミロイド沈着に対する影響
豊かな環境や運動がアルツハイマーモデルマウスのアミロイド沈着を抑制している。
認知機能のアンチエイジング:運動の働き
認知機能の低下
神経新生の抑制
神経伝達の不活化
過剰なストレス
神経疾患
生活習慣病
(糖尿病)
(高血圧)
運動
血流↑
神経栄養物質↑
神経伝達物質↑
認知機能の維持
神経新生の向上
神経伝達の活性化
適度な運動は、血流の増加などを介して認知機能の低下を抑制し、一方
高血圧などの生活習慣病を予防して認知機能の低下を予防する。
欠乏するとアルツハイマーになりやすい危険因子としては、魚(ω-PUFA)、野菜・果
物などのビタミンCなど抗酸化物、亜鉛や鉄、体重減少などの過剰な痩せ。
過剰になると危険な因子として、カロリー、脂質、糖分など、肥満などは生活習慣病
を誘発して危険。
認知機能のアンチエイジング:栄養の働き
野菜・果物
(ビタミンCなどの抗酸化物)
野菜は1日350g
野菜ジュース200ml
魚
(ω-3多飽和脂肪酸)
エネルギー・糖代謝
(総カロリー摂取過剰
脂質摂取過剰
糖尿病など)
過度の瘠せ
低栄養
過多のカロリー
は活性酸素↑
認
知
機
能
の
低
下
認知症
獲得した脳の機能が病的機序によって持続的に低下し、
そのために日常生活や社会生活が障害されている状態。
1.アルツハイマー型認知症
1)アルツハイマー病(65歳以前発症)
アルツハイマー型認知症の10‐30%
2)アルツハイマー型老年期認知症(65歳以上発症)
アルツハイマー型認知症の70‐90%
2.血管性認知症
1)多発脳梗塞性認知症
2)視床や海馬の脳梗塞
以前は脳血管障害による認知症が多いとされていたが、
最近ではアルツハイマー型認知症が多いといわれてい
る。
アルツハイマー病
アルツハイマー病は物忘れで発症し、認知症が徐々に進行する。神経病理学的に老
人斑、神経繊維変化、神経細胞師を特徴とする。脳の老化、環境因子、遺伝因子が
複雑に関与する。老人斑は、アミロイド蛋白の凝集体が線維状の不溶性蛋白として沈
着したもの。
アルツハイマー病の診断:イメージング
左上段は放射線標識PIBを静注後、PETにてイメージング。左下段はFDG-PET
にてグルコースの取り込み量を比較した。ADで取り込み低下が認められる。
脳血管障害の分類
A 無症候性
B 局所性脳機能障害
1) 一過性脳虚血発作
2) 脳卒中 脳梗塞・機序(血栓性、塞栓性、血行力学性)
・臨床(アテローム血栓性、心原性塞栓性、ラクナ他)
・部位(内頸、前大脳、中大脳、椎骨脳底)
脳出血
くも膜下出血
動静脈奇形からの出血
C 血管性痴呆
D 高血圧性脳症
脳卒中の危険因子
生来性因子
脳卒中の家族歴
年齢(55−61歳隊75歳以上)
2〜3
5
生理的因子
高血圧
低い強制呼気量
肥満
いびき
3
2
1〜2
2
生活習慣
アルコール常飲
喫煙
ビタミンC欠乏
カリウム欠乏
運動の習慣
悲しい出来事(死別、失業など)
2.5〜4
2
1.5
2〜5
0.3〜0.5
2
合併症
心不全
心房細動
頸動脈雑音
糖尿病
5
5〜7
1〜2
2〜3
脳梗塞の特徴
臨床病型
頻度
危険因子
高血圧
心房細動
高脂血症
糖尿病
症状
TIAの有無
発症時の状況
症状の進行
意識障害の有無
神経症状
皮質障害
共同偏視
瞳孔不同
アテローム血栓性梗塞
10−15%
**
**
**
ラクナ梗塞
50−60%
心原性梗塞
20-30%
***
*
**
*
*
*
*
よくある
安静時
緩徐、段階的に進行
軽度のことが多い
時に先行する
安静時
緩徐に進行
ないことが多い
まれ
活動期
突発的
よくある
30-40%
20%
少ない
まれ
まれ
まれ
30-40%
40-50%
20%前後
加齢とストレスと鬱
ストレスによって血圧が上がる、胃潰瘍ができる、便秘する、蕁麻疹が出る、風邪を引きや
すくなる、生理が不順になるなどの病態が出現することはよく知られているが、これはストレ
スを感知する脳と免疫系、内分泌系が相互に密接につながっているからと言われている。
高齢者の精神疾患の特徴
ー心身の相関ー
1.慢性の身体疾患を抱えている場合が多く、合併した身体疾
患の状態の変化が、精神状態の変化につながることが多い。
2.精神症状の一つとして身体症状が出現することもある。
(不眠、頭痛、全身倦怠、胃部不快感、食欲不振、胸部不快感
口渇、手足のしびれなど多彩な症状)
内科を受診する高齢者の多くは不定愁訴を訴える場合が多く、各
種の検査でも異常がないことが多く、仮面うつ病であることも多
い。
高齢者の精神疾患の特徴
ー心理的特徴ー
1.喪失体験などによる悲哀、抑うつ気分
1)自己像の喪失
2)感覚器の喪失
3)社会的存在の喪失
4)家庭における喪失
5)人間関係の喪失
6)精神資産の喪失
2.死の意識
定年、引退、世代交代、配偶者の死などを契機としてしばしば精神
疾患を発症する。
高齢期に発症するうつの危険因子
女性:
女性/男性比、2.5:1
疾病一般
甲状腺機能低下症、心筋梗塞、黄斑変性症、糖尿病、癌、冠動脈疾患
処方箋
b遮断薬、インターフェロン、多くの抗癌薬
中枢神経疾患
パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、脳血管障害、
ハンチントン病、脳の微小血管性病変、MMSEスコア<25
高齢者のうつ病
1.老年期うつ病の特徴
1)身体症状が前面に出て、いわゆる仮面うつ病という病態
を呈しやすい。
2)高齢者では、不安・焦燥感が強いため、じっとしていない。
3)妄想が見られやすい。
4)しばしば認知症と間違われる。
認知症との相違は、外見上より深刻。
自殺念慮がある。
日ない変動がある。
2.有病率
1-3%程度であるが、診断基準を満たさないうつ状態を含
めると、13-27%と高い比率となる。