認知症を防ぐ ―世界の最新情報― 京都保健会盛林診療所所長 社団法人呆け老人をかかえる家族の会顧問 三宅貴夫 1. いま、なぜ予防か 認知症高齢者がますます増える。 認知症の危険因子等に関する大規模疫学 調査の報告が欧米で多く出る。 認知症予防の可能性が証明されつつある。 アルツハイマー病や脳血管性認知症に有 効な薬が開発されてない。 治療より予防 2. 認知症の要因 1次要因 ① アルツハイマー病 ②脳血管障害 ③ その他(慢性硬膜下血腫、低酸素脳症、ヤコ ブ病など) 2次要因 ① 身体状態 ② 精神状態 ③ 生活・環境状態 3.認知症の予防 1)予防とは 1次予防(発病を防ぐ) 高血圧を治療して血管性認知症を防ぐ 2次予防(早期発見して治す) 初期のアルツハイマー病を見つけてワクチ ンで治す 3次予防(進んだ状態を治す) 正常圧水頭症を脳外科治療で治す 2)予防の研究方法 地域住民を対象とした集団調査 ①前向き調査・後向き調査 ②オープン調査・ブラインド調査 ③非介入調査・介入調査 ④対照調査・非対照調査 臨床研究 基礎研究(動物実験など) 3)認知症の発病因子 -危険因子と保護因子- アルツハイマー病と血管性認知症について (1)コントロールできない危険因子 年齢 アルツハイマー病は加齢と共に増加する 性別 男性より女性に多い 遺伝 一部のアルツハイマー病は遺伝する アポリポ蛋白E4 この蛋白をもっている人はなりやすい(ADの40%ほど) (2)コントロールできる危険因子① 高血圧 アルツハイマー病:2.3倍(フィンランド/2001) 脳血管認知症(アメリカ/2000) 高脂血症 脳血管性認知症(アメリカ/2000) アルツハイマー病:2.1倍(フィンランド/2001) 糖尿病 アルツハイマー病:3.1倍(日本/2005) 脳血管性認知症(スウェーデン/2002) (2)コントロールできる危険因子② 肥満 アルツハイマー病・女性(スウェーデン/2003) メタボリック・シンドローム (内臓脂肪蓄積・高中性脂肪血症・高血圧・高血糖の2つがある) 認知機能の低下(アメリカ/2004) ホモシスティン アルツハイマー病(アメリカ/2002) タバコ アルツハイマー病など認知症(オランダ/1998) (2)コントロールできる危険因子③ 頭部外傷 アルツハイマー病など認知症(アメリカ/2000) 悲観的姿勢 悲観的性格と不安傾向の性格の併せ持っている 人は40%多く認知症になりやすい(アメリカ/2005) アルミニウム? その他 (3)コントロールできる保護因子① 魚 1週間に1回魚または海産物を食べる人は認知症になり にくい(フランス/2002) ビタミン(B、C、 E、葉酸、ニコチン酸) VEとVC併用:アルツハイマー病(アメリカ/2004) 葉酸:認知機能の低下(オランダ/2005) 葉酸:オレンジ、イチゴ、濃緑色の葉もの野菜、大豆など ニコチン酸:アルツハイマー病と認知機能の低下 (アメリカ/2002) ニコチン酸:肉、魚、大豆、ナッツ、コーヒーなど 抗炎症剤 アルツハイマー病(アメリカ/2002) (3)コントロールできる保護因子② 女性ホルモン アルツハイマー病(アメリカ/2002) 飲酒(適量) 認知症:42%(オランダ/2002) 適量:ビール中瓶程度 運動 アルツハイマー病(カナダ/2002) 趣味 認知症(アメリカ/2003) 趣味:読書、ゲーム、楽器演奏、ダンス (3)コントロールできる保護因子③ 教育 10代にIQが高い人は認知症になりにく(アメリカ/2005) 銀杏エキス? ニコチン? セレン? 食品:ウナギ、魚介類、小麦胚芽、レバー、肉類など その他(カレー?野菜ジュース?) 4.予防に関するその他の課題 早期発見・早期対応 発病・発症後軽度の時期の対応 発病・発症前時期の発見と対応 軽度認知障害(MCI) 画像診断 アルツハイマー病マーカー 発症を遅らせる方法 「認知訓練」「学習療法」など 「物忘れ検診」 5.その他 アルツハイマー病の治療研究の現状 治療薬の開発 ワクチン療法の研究 その他 介護保健「認知症の予防介護」 「脳活性化ドリル」など 脳を守るための10の方法① アメリカ・アルツハイマー病協会提唱 1. 頭が第一 健康は脳からです。最も大切な身体の一部である大脳を 大切にしよう。 2.脳の健康は心臓から 心臓によいことは脳にもよい。心臓病、高血圧、糖尿病、 脳卒中にならないように、できることを毎日続けよう。これ らの病気があるとアルツハイマー病になりやすい。 脳を守るための10の方法② 3.自分の値を知ろう 体重、血圧、コレステロール、血糖を望ましい値に保とう。 4. 脳に栄養を 脂肪が少なく抗酸化物(ビタミンEなど)の多い食品を摂 ろう。 5. 体を動かす 身体の運動は血液の流れをよくし、脳細胞を刺激する ことになるかもしれない。1日30分歩くなど心と体を活き 活きさせるためにできることをしよう。 脳を守るための10の方法③ 6.心のジョギングを あなたの脳を活き活きさせ、ものごとに関心をもつことに よって、脳の活力を高め、脳細胞と細胞間のつながりが 生まれます。読む、書く、ゲームをする、新しいことを学ぶ、 クロスワードパズルをしてみよう。 7.他の人とのつながりを 体と心と社会の関係を組み合わせた余暇活動は認知症 を防ぐ最もよい方法かもしれません。人と付き合い、会話 を交わし、ボランティアをし、クラブに加わり、学習してみ よう。 脳を守るための10の方法④ 8.頭の怪我をしない 頭の怪我をしないように注意しよう。シートベルト を使 い、転ばないように家の中を整頓し、自転車に乗るときは ヘルメットをかぶろう。 9. 健康な習慣を 不健康な習慣を避け、タバコを止め、飲み過ぎなように しよう。 10.前向けに考え今日から始めよう あなたの明日を守るために今日からできることをしよう。 付録:認知症予防に関する情報 「ぼけ」なんでもサイト(三宅貴夫編) http://www2f.biglobe.ne.jp/~boke/boke2.htm 「ぼけの予防」(須貝祐一著)岩波書店 三宅訳「アルツハイマー病は予防できる か?」 (Can Alzheimer's Disease be Prevented? By NIA,USA) おわり 社団法人呆け老人をかかえる家族の会 京都府支部公開講座 2005年8月21日
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