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第17回 日本禁煙推進医師歯科医師連盟総会
シンポジウム「禁煙外来で使える心理療法」
「SAT療法」
~禁煙の自己決定を支えるために~
瀬在 泉
(筑波大学大学院体育研究科
スポーツ健康マネジメントシステム専攻研究生)
宗像 恒次
(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
こういう場面はありませんか
禁煙したくても、自分では
どうしようもないとあきら
めている。
本当に禁煙したくて受診
したのかよくわからない。
そのうち来なくなる。
こちらのアイデアを
提供しても反応が
自信満々の反面、
実行できない。
うつ状態で、行動を
起こす気力がない。
今ひとつ。
こちらの枠組みを脇に置き、相談者の世界・心の様子を観察する。
事柄のコミュニケーション→気持ちや感情のコミュニケーション
行動の脚本を本人の脚本の中で変更する。
相談者の世界・心の様子とは
理屈でわかっていること
(2003.橋本)
タバコをやめたい。
嫌悪系情報の脚本
人との会話のない状況は 寂しくて耐えられない。
会話のない寂しさを埋める行為がタバコ
一人っ子で、親子3人でいてもあまり
会話が続かなかった。
シーンとしているのは嫌なので、自分
はいつもそのシーンとした雰囲気を紛
らわそうと話題を出したり、テレビをつ
けて色々努力した。
周りから愛されている実感が持
てないので、他者に察しや助力、
受容を過剰に求めて行動したり、
反応する。
寂しさ
(本当は明るく楽しい会話を家族で
したい、親から大切にされたい。)
隠れた気持ちや
感情
SAT療法(Structured Association Technique)

1990年代に宗像により開発された、問題解決や生き
方変容のための心理療法。

構造化された問いかけにより、右脳を活性化させ、
ひらめき、直感、連想を促すことが特徴。

潜在的な記憶情報や自己の欲求・感情に焦点を当て、
嫌悪系情報脚本を報酬系へと変更する、イメージ変更
法。

がんを含めた生活習慣病、うつ等に成果を挙げている。
自己決定の原則

相談者自身が本当の自分の要求に気づき、そ
の要求に基づいた行動決定を行う

行動の動機が、他者の評価はどうであれ、自
己が満足できるかどうか、また他人を愛するた
めの欲求に基づく動機であること
自己報酬型の動機
他者報酬型の動機
保健行動と自己イメージの関係
動 機
負 担
自己決定力と社会的支援
<報酬系自己イメージ>
<嫌悪系自己イメージ>
・自分に自信がもてる
・無力感・あきらめ・不安・怒り
・問題解決が具体的にできる
・自分は幸せになる価値がない
・行動が他者依存的でない
・自分改善に関心・興味がない
・周りから情緒的支援がある
・周りから支援がない
宗像;1996に追記
喫煙による自殺リスク(男性)
(2005.津金ら)
相対危険度
4.0
3.0
2.1*
2.0
1.0
1.3
1.3
1.0
0.0
吸わない 30未満 30以上 60以上
60未満
喫煙指数別
(Pack-years)
嫌悪系自己イメージが及ぼす影響
非情緒的支援認知(家族)
大学3年生男子 約400人
非情緒的支援認知(家族以外)
R2=.30
.81
非情緒的な
支援認知イメージ
.58
-.48
-.15
R2=.45
.58
ストレス源
認知イメージ
.71
.95
日常苛立ち事
嫌悪系自己
イメージ
.33
R2=.46
(2007.瀬在)
.47
.92
不安傾向
.24
喫煙経験・
喫煙仲間の数
.43
友人喫煙者数
.92
自己否定感
.49
特性不安
R2=.22
喫煙経験
-.44
GIF=.989,AGFI=.967
RMSEA=.027
誤差変数は省略・ 全て5%有意
禁煙外来の場面で応用できるSAT法
気持ちや感情の背後にある要求の明確化
<感情>
「その背後には、どのよう
な感情がありますか。」
<気持ち>
悲しさ・あきらめ
<期待の内容(要求)>
「本当はどうだったら
よいのですか。」
禁煙外来にさえくれば
きっと禁煙出来る。
「今、どのような
お気持ちですか。」
禁煙なんてもう
やめました…。
怒り・自己嫌悪
怒り
自分の決めたことはき
ちんと実行できる自分
でいたい。
そんなに健康に悪いも
のならば、国が規制す
るべき。
感情に関するガイドライン表
自己イメージ法
嫌悪系自己イメージ
報酬系自己イメージ
Q1.禁煙しようと思うと気になることは何ですか?
開いた質問
家で夫が喫煙している。夫も一緒にやめてくれたらよいと思うが、それは多分無理。
自分も禁煙できないと思う。
禁煙実行自信度 10%
Q2.その気になることで、一番強い気持ちは何ですか?不安・怒り・悲しさ・苦しさの
うちどの感情がありますか。
感情の明確化
悲しさ・あきらめ・孤独感
Q3.そのような気持ちや感情を持つ自己を少し距離をとって自己観察すると、どのよ
うな自分にみえますか。
自己イメージ法
小さくうずくまっている。八方ふさがり。1人ぼっちで耐えている自分
Q4.その自己イメージに対して、何と声をかけてあげたいですか。
1人で可哀想、出口を一緒に探そうと言いたい
背後の気持ちの
明確化
Q5.では、これからどうすればよいですか。考えずひらめきで言ってください。
行動目標化
出来ることから始めたい、2日後相談にまた来る
実行自信度 100%
SAT法目標化支援の効果
ヘルスカウンセリング学会ベーシックプログラム参加者(n=5193)
10
(点)
10
***
8
8
6
***
6
4
後
前
4
2
2
0
0
前
後
自己価値感
10
***p<.001
(点)
60
(点)
***
8
対人依存型行動特性
50
(点)
***
40
6
前
後
30
前
後
4
20
2
10
0
0
情緒的支援認知(家族)
特性不安(STAI)
(2007.橋本)
未来自己イメージ法
21才男性 毎日3本喫煙 自分自信度 20%
(自己否定感・苛立ち度・問題回避高い)
報酬系自己イメージ
嫌悪系自己イメージ
Q1.先祖代々子どもが親に愛され、両親も祖父母に愛され、自分の満足した生き方
ができたと仮定し、それを映像化してください。
あなたに強力なスポンサーがいて、無制限に金銭や生活を支援してもらえるとすると、
あなたがこれからやってみたい、「楽しいこと、リラックスすること、幸せなこと、元気が
出ること」はなんですか。
無条件に欲求を
叶えるイメージ
(家庭や職場、学校のことも一切考えず、現実から離れる)
新車を買い、日本一周旅行。地元ならではの美味しい食事を食べる。
Q2.それを1週間、1ヶ月、半年、1年、どれくらいやれば満足した気持ちになりますか。
具体的な映像のイメージをつくってください。
幸せですか、楽しいですか、リラックスしますか。満足できたら、次の数年間、自分に
自信がつくように、何かチャレンジすること、学習するなど開始してください。 自分に自信が
つくイメージ
弓道の道場を作って同輩、後輩、全国の人を呼ぶ。海外に行って英語の勉強をする。
Q3.すべて終わると、どのような自分になっていますか。元気ですか、楽しいですか。
自分に自信がついていますか。
自己イメージ法
人間の価値が上がった。見識が広がっている。元気、幸せ、楽しい、自信がある。
Q4.その自信を持った自分から今の自分を見ると、どのように見えますか。
見識が狭い。価値が低い。
背後の気持ちの
明確化
Q5.では、元気で自信のある自分に1歩でも2歩でも現実的に近づけるためには、
どのような自分になっていき、具体的にはどのような行動を取る必要があると思い
ますか。
<大目標>当たり前のことをする。
行動目標化
・大学には登校し、必修の授業には出る。→ 実行自信度90%
・寝坊しないために、目覚ましをかける。→実行自信度100%
<経過>必修の授業に出たり、目覚ましをかけることは継続できる。心理尺度も
やや改善傾向みられる。問題回避傾向がある。更に深いレベルでのイメージ
変更法を行う。喫煙は週1本になり、それほどタバコを欲しくなくなったと。
SAT法を禁煙外来に応用するメリット

相談者の世界・脚本の理解ができる。

相談者が、自己イメージ・感情や要求を自覚化でき、
ストレス耐性や精神健康が改善する。

具体的なイメージを伴った禁煙行動の目標化が
出来る。

恐怖や不安の代償行動としての喫煙をやめること
ができる。
参考文献・サイト
『SAT法を学ぶ』 2007.金子書房
『SAT療法』 2006.金子書房 他
ヘルスカウンセリング学会
ヘルスカウンセリングインターナショナル