心理学1 第1回 ガイダンスと心理学の考え方

心理学1
第2回 心理学の歴史
4月25日 福田玄明
心理学史
 今日は、心理学がどのような考え、思想
に基づいて発展してきたのかを辿ることで、
心理学の全体像をつかむことを目標とし
ます。
 最近の流れを中心に進めることで心理学
のオーバービューとしたいと思います。
心理学の歴史
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
哲学の時代
心理学の創世期
行動主義
ゲシュタルト心理学
新行動主義
認知心理学
最近
哲学における「こころ」
 アリストテレス
 心は生命と不可分である
 こころを機能的にとらえる
 植物や動物も心を持つ
 植物のこころ・・・栄養と生殖
 動物のこころ・・・感覚と運動
 人間のこころ・・・理性的思考
哲学における「こころ」
 デカルト
 心は生まれつき備わったもの
 心身二元論
 こころは人間ののみが持つ意識
経験
 身体は自動機械のようなもの
哲学における「こころ」
 ジョン=ロック
 経験説
 空白の石版(タブララサ)
 観念の起源はすべて経験による
 モリヌークスの問題
 先天的に目が見えないが、手で触ることで球と立
方体を区別できる人が、開眼手術を受けたのち、
目で見てどちらが球でどちらが立方体かをいうこと
はできるだろうか
 ロックはできないと考えた。のちにロックの答えの
正しさが実証された。
心理学の成立
 ヴント
 1879年、ライプチヒ大学にはじめて心理
学実験室を開設
 心理学を経験科学として哲学から切り離
す
 直接経験される意識内容を研究対象とし
た。
 内観法
 のちに多くの批判を受ける
心理学の成立
 エビングハウス
 はじめての記憶についての実験的測定
 忘却曲線
 無意味つづり
行動主義心理学
 1912年 J.B.ワトソン
「行動主義者の見た心理学」
 心理学は客観的かつ実験的な自然科学
 心理学の目標は行動の予測と統制
 内観法や意識の用語は容認できない
 刺激と反応の法則を突き止めるのが心理
学の研究(刺激-反応)
行動主義心理学
 バックグラウンド
 パブロフ(1902)
 条件反射
 ソーンダイク(1898)
 効果の法則
行動主義心理学
 Watson & Rayner(1920)
Conditional Emotional Reactions
 アルバート(11か月)に白いネズミを見せる。
アルバートは触ろうとする。
 その時、背後で大きな音を出して驚かせる。
 これを繰り返すと、ネズミを見ただけで逃げ
出すようになる。
 白いウサギやサンタクロースのお面からも
逃げるようになった。
行動主義心理学
Conditional Emotional Reactions
 大きな音に対する恐怖は生まれつきであ
るが、ネズミやウサギに対する恐怖は経
験により条件づけられたもの
 人の行動はいくつかの基本的な反応と条
件づけにより獲得された行動からなる。
行動主義への批判
 ゲシュタルト心理学
 部分や要素ではなく、全体性や構造を重視
 機械論的な行動主義に批判的
 ケーラー(1917)
 洞察
 レヴィン
 ツァイガルニク効果
o 状況依存の知識
新行動主義
 刺激-生活体-反応
 ←刺激-反応
 トールマン
 認知地図
 スキナー
 徹底的行動主義
 オペラント条件付け
 バンデューラ
 観察学習
認知心理学の成立
 バックグラウンド
 情報科学の発達
 シャノンの情報理論
 ウィーナーサイバネティックス
 刺激→認知処理→反応
⇒入力→情報処理→出力
刺激がどのように処理されたのかという、認知
処理を中心に研究する
コンピュータと人間は違う処理をしている
認知心理学
 4枚カード問題
 4枚のカードがあり、片面にアルファベットが、
もう片面に数字が書かれている
A
8
P
5
「片面が母音ならば、そのカードの裏は偶数
でなければならない」というルールが成立し
ているかどうかを確かめるには、どのカード
を引っくり返すか?
認知心理学
 4枚カード問題
 正解は
A
8
P
5
 正答率は10%程度といわれる(Waisonら,
1972)
 我々は論理的に考えることができない。
 メンタルモデル
認知心理学
 タクシー問題
 ある町のタクシーの15%は青で85%は緑
である。深夜にひき逃げ事件が起き、目撃
者はひいたのは青タクシーだと証言した。
 この目撃者は事件発生時の状況では80%
の確率で正しい色を見分けられ、20%は逆
の色を言ってしまうことが分かった。
 青タクシーが犯人である確率はいくつか。
認知心理学
 タクシー問題
 正解は41%
 事前確率の無視
 もともとの青タクシーの存在比率の低さを無
視しがち
 我々の思考のバイアスを示している。
生態心理学
 我々の知性は環境の中で適応してきた結
果獲得されたもの。
 我々は必要な情報を環境から直接知覚し
ている。
 アフォーダンス(Gibson, 1976)
⇒身体性認知科学、Putnamの桶の中の脳
生態心理学
 タウ理論
 ボールが自分自身に飛んでくるとき、い
つボールが当たるかはかなり正確に判断
できる。
 原理的には、ボールの速さと距離を知覚
して、いつ当たるかを判断する。
 しかし、我々はボールの速さ、距離の判
断はあいまいにしかできない。
認知神経科学
 脳科学的方法による認知処理の理解。
 近年の神経科学の発展による。
 行動実験ではわかりにくいことが明らかに
できる可能性
 脳の中でこころがどのように実装されてい
るのか
認知神経科学
 フィアネス・ゲージ
 ところが、ゲージは以前と性格が変わって
しまった。
 以前は、敏腕で頭も切れ誰からも信頼され
る人物だったのが、事故後は衝動的かつ冒
涜的で汚い言葉をまき散らし、すぐに怒り出
すようになった。頑固なのに移り気で優柔不
断、行動しようと計画は立ててもすぐやめて
しまう。
 計画性をもって行動することができず、仕
事を次々と変えるようになってしまう。そして、
窮乏のうちに孤独に死んでしまった。
認知神経科学
 準備電位(Libet, 1983)
 画面上に動く点が表示されている
 実験参加者は自分の思った時に指を曲
げるように指示された。
 実験参加者は脳波を計測されており、運
動に先立って運動準備電位という脳波が
計測された。
 実験参加者は指を曲げようと思った時の
点の位置を覚えておくよう指示されていた。
認知神経科学
 準備電位(Libet, 1983)
 覚えている点の位置からいつ指を曲げよ
うとしたのかがわかる。
 結果
運
動
準
備
電
位
0.35秒
意
図
0.2秒
運
動
認知神経科学
 準備電位(Libet, 1983)
 動かそうと思う前に運動準備電位が出て
いる。
 いつ動かすか自分で決めたと思っている
が、無意識に決まっている?自由意思?
運
動
準
備
電
位
0.35秒
意
図
0.2秒
運
動
進化心理学
1.
2.
3.
4.
脳とは自然淘汰によってデザインされた環境
から情報を抽出するするコンピュータである
個々の人間の行動はこの進化したコンピュー
ターによって環境から抽出した情報に応じて
生じる。行動を理解するには、行動を生んだ
認知的プログラムを明瞭にする必要がある
人の脳の認知的プログラムは自然淘汰によっ
て生じた適応物である。
脳は多くの異なる特殊な用途のプログラムか
ら成り立っており単一の構造物ではない。
(Tooby & Cosmides, 2005)
進化心理学
 Cosmides(1995)
 4枚カード問題
 お酒を飲むのは20歳以上というルールが守
られていることを確認するためにどの人を調
べるか。
27歳
酒
を飲ん
でいる
18歳
コーラ
を飲ん
でいる
進化心理学
 Cosmides(1995)
 4枚カード問題
 70%以上の正答率
 我々は他人のズルやルール破りを見抜くこと
に敏感である可能性
27歳
酒
を飲ん
でいる
18歳
コーラ
を飲ん
でいる
ロボットを用いた心理学
ジェミノイド HI-01
ロボットを用いた心理学
 人間らしさとはなにか?
 チューリングテスト
 不気味の谷
 小野(2005)
 道案内ロボット
 ジェスチャーで道
案内の成功率が
上がる
ロボットを用いた心理学
 おまけ
 福田・植田(2011)
 ロボットに接するときと生き物に接する時
では脳活動が異なる
-350/-280msec.
-280/-210msec.
-210/-140msec.
-140/-70msec.
-70/0msec.
0-70msec. 70/140msec. 140/210msec.
210/280msec.280/350msec.
意識の科学
 Crick & Koch,1997
 意識の科学は可能
 意識と相関する神経活動を見つけること
で意識の最小単位を見つけることができ
る
 意識は神経活動から生じる
 「神はハッカーだ」(クリック)
意識の科学
 意識にかかわる諸問題
 クオリア
 知覚にかかわる意識経験
 赤い色の知覚に伴う赤いと感じる経験
 中国人の部屋
 哲学的ゾンビ
 我々と同じようにふるまい物理的に全く違いのな
い、しかし意識経験(クオリア)のないゾンビは存
在しうるのか、またどのように見えるのか、さらに
我々はゾンビではないのか
意識の科学
 意識にかかわる諸問題
 自由意思
 Wegnerの二人羽織の実験
 Libetの準備電位
 自由意志のあいまいさを示した
 バインディング問題
 脳の中で知覚情報は分解されて処理される
が、我々はただ一つの表象のみをもつ。分解
された情報はどのように統合されるのか。