多言語社会に貢献する 言語教育学とは? 2007年3月11日 東京女子大学 西原鈴子 多言語社会になる条件 ◆公用語が複数ある。 イスラエル:アラビア語、ヘブライ語 インド:英語、ヒンディー語 シンガポール:英語、タミル語、華語、マレー語 ベルギー:オランダ語、ドイツ語、フランス語 カナダ:英語、フランス語 ◆侵略によって言語が加わる。 第二次大戦時の韓国、台湾 ◆紛争等によって難民が流入する。 アフガニスタン→パキスタン ◆ゲストワーカーが移入される。 トルコ→ドイツ ◆複数の民族が混在する。 イギリス:英語、アイルランド語、ウェールズ語、スコット ランド語、フランス語 多言語状況の要因(1) 地域的に見れば:ダイグロシア(diglossia) 社会に二つの言語、方言、変種が同時に 存在する状況 言語使用の場面ははっきり分かれる 言語(方言)変種の社会的価値が問題 多言語状況の要因(2) 個人的に見れば:バイリンガリズム (bilingualism) 獲得型バイリンガリズム:幼少期に獲得 達成型バイリンガリズム:子ども時代を過ぎてから獲得 産出バイリンガリズム:二つの言語で聞く・読む・話す・書くことができる 受容バイリンガリズム:理解・読解は可能、話す・書くことはできない 一次的バイリンガリズム:学校教育を通さないで、自然に二言語併用 二次的バイリンガリズム:学校で第二言語を習得 理想的な多言語社会とは? 複数言語の社会的な価値を等価と考える ダイグロシア状況(=バイカルチュラル状況) 言語社会の成員によるバイリンガル状況 ↓ 言語教育の目標設定 日本における潜在的多言語要因 居住する外国人の増加 2004年現在、外国人登録者数197万人超 総人口の1.55パーセント 国際結婚の増加 2004年現在、年間婚姻数72万件のうち 国際結婚は4万件(5.5パーセント) 少子高齢化に伴う海外からの労働力の移入 日本語教育界における焦点の移行 言語構造中心の言語教育観 ↓ 言語運用規範への気付き ↓ 教授方法の多様化 ↓ 学習および学習者中心へ 言語学習観の推移⇔教師像の変容 知識・スキル伝授型 ↓ 教師・学習者交流型 ↓ 学習者相互交流型 ↓ 教室を外に、外を教室に 「コミュニカティブ・アプローチ」 解釈の変遷 教材 機能シラバス 話題シラバス 場面シラバス ➷ 教室活動 活動ベース タスクベース ➷ 教師・学習者関係 ニーズ分析 レディネス分析 ➷ 学習者相互関係 ピア・ラーニング 教育支援者としての教師の役割 當作靖彦(編) 2003より 学習者の学習に備えるために 言語に関する知識 「本物」志向 文化に関する知識 言語習得に関する知識 最近接発達領域(ZPD=Zone of Proximal Development) 正統的周辺参加 (LPP=legitimate Peripheral Participation) 学習者に関する知識 ニーズ レディネス 学習者の学習を促進する 学習につなげる多様な方法 カリキュラムと教育のつながり 学習環境 学習素材 学習計画 学習者の学習を支援する 教育の専門家としての成長を内省する 学校、家庭、コミュニテイのネットワーク 教育専門家コミュニテイのネットワーク 学習を継続するためのノウハウ 「ピア・ラーニング」の奨励と そのための教室活動 ペア活動 ロールプレイ インフォメーション・ギャップ課題 グループ活動 相互インタビュー プロジェクト・ワーク ディベート 対話的協働学習 舘岡(2005)より 学習者相互による読解 読みの過程重視の活動 情報のトップダウン処理(期待駆動型処理) 学習者間で筋の展開を予測する 予測の結果を話し合って修正する 筋の展開について感想を述べ合う 参考文献 ヴィゴツキー,L.S.(柴田義松訳) 2001 『思考と言語(新訳版)』 新読書社 岡崎眸/岡崎敏雄 2001 『日本語教育における学習の分析とデザイン -言語習得過程の視点から見た日 本語教育-』 凡人社 河原俊昭(編著) 2002 『世界の言語政策 多言語社会と日本』 くろしお出版 国立国語研究所(編) 2006 『日本語教育の新たな文脈』 アルク 坂中秀徳 2001 『日本の外国人政策の構想』 日本加除出版 シャラン,Y&S著(石田裕久他訳) 2001 『「協同」による総合学習の設計』 北大路書房 田尻英三他 2004 『外国人の定住と日本語教育』 ひつじ書房 當作靖彦(編) 2003 『日本語教師の専門能力開発-アメリカの現状と日本への提言-』 日本語教育学 会 舘岡洋子 2005 『ひとりで読むことからピア・リーデイングへ 日本語学習者の読解過程と対話的協働学 習』 東海大学出版会 むさしの参加型学習実践研究会 2005 『やってみよう参加型学習』 スリーエーネットワーク Lave, J. & Wenger, E. 1991 Situated Learning: Legitimate Peripheral Participation. Cambridge University Press. Ohta, A.S. 2001 Second Language Acquisition Processes in the Classroom Learning Japanese . Laurence Erlbaum. 資料:厚生労働省統計情報部 2005 『平成一六年度人口動態統計』
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