ペンローズタイルの幾何学

ペンローズタイルの幾何学
直線の配置と双対図形
非周期的タイル張り
有限個のいくつかの種類の図形を用意し
て、そのコピーをもちいて平面を埋め尽く
すことができるか。
たとえば勝手な4角形(必ずしも凸でなく
てもよい。)をひとつ用意するとこれは、
可能である。
二つの独立な方向で平行移動したとき、
もとのタイル張りとぴったり重なる張り方
を周期的タイル張りという。そうでない時
は非周期的であるという。
どのように平面のタイル張りをしても非周
期的になる有限個の図形の組を非周期
性を強要する、という。
非周期性を強要する図形の組は
Robinsonにより、はじめて発見された。こ
のときの図形の種類の個数は9つ。
Penrose(ペンローズ)により二種類のタイ
ルで非周期性を強要するものが発見され
る。
ペンローズのタイルの不思議
一つ目のペンローズタイル=カイト(凧)と
ダート(やじり)
二つ目のペンローズタイル=ファット(ふと
った菱形)とシン(痩せた菱形)
ファットとシン
下のような二つの菱形を考える。図のよ
うに赤の矢印と緑に矢印がマークしてる
が、タイル張りをする時には、赤の矢印
は赤の矢印同士、緑は緑同士、矢印の
方向が合うようにしてタイル張りをする。
72°と108°
36°と144°
ダートとカイト
ダートとカイトは次の図形である。
ダート
カイト
タイル張りの例(ファットとシン)
二つのペンローズタイルは互いに一方から
他方へ、次の図のように変換できる。以下、
ファットとシンについて説明する。
膨張と縮小
ペンローズタイルには膨張と縮小という二つの操作
が定義される。それは始めにあたえられたタイル張り
に対してそこに張られているファットタイルとシンタイ
ルをそれぞれした図のように分割する
ファットの分割
シンの分割
赤矢印、緑矢印で貼り付けてしまい、あら
たなタイルとすることで再びペンローズタイ
ルを作ることができるのだ。
ファットとシンの個数
ファットの個数とシンの個数の比は領域の
面積が大きくなるに従って(1+√5)/2:1 の比
に近づいて行き、極限として(1+√5)/2:1、
つまり黄金分割に一致する。
この事実からペンローズタイルの非周期性
が導かれる。
タイル張り方はどれくらいあるか
ペンローズタイルの張り方はどれくらいあ
るのだろうか?
じつは張り方の分類はできている。分類の
結果により、無限個(それも非可算無限個
の張り方がある。
4つの実数の組のある同値類による同値
類別によりタイル張りは分類できる。
さらにくわしく…
張り方は分類できる
5つの実数γ1…γ5の5つの実数でパラ
メータ付けされていて、下の同値関係に
おいて同値となるときにのみ同じ配置と
なる。
むかで構造
タイル張りの中の一辺E1を選ぶ。このとき
E1を含む平行四辺形は二つあるのでそ
れをP0、P1とする。P0におけるE1の対辺
をE0、P1におけるE1の対辺をE2とする。
E2を含むP1と異なる平行四辺形をP2とし
て、P2におけるE2の対辺をE2とおく。以下
同様にしてE3,E4…と定める。同様逆の方
にE(-1),E(-2)…を定める。この平行四辺
形の集まりをむかでという。
ひとつの辺に対してむかでが生成される
が、隣り合う辺のそれぞれの中点を結ん
でできる折れ線を背骨という。ひとつのむ
かでの辺の中点の集合をむかでの節とい
う。
互いに異なる二つの背骨は
(1)決して交わらない、(2)一点で交わる
のいずれか。(1)の時、二つは平行であるという。
平行により同値類別すると、5つの同値類がある。
ひとつのせぼねBの集合をいちばんよく近
似する直線LBがただひとつ存在する
むかで構造の双対図形
直線族の双対図形
平面からすべての背骨をぬいてできる図形は無
限個の領域に分割される。ひとつひとつの領域
からひとつ点を選び、背骨をはさんで隣り合って
いる時に線で結ぶ。この操作でえられる図形を
双対図形という。
双対図形1
双対図形2
背骨の集合の双対図形は、位相的にもとのペン
ローズタイル張りと一致している。
背骨の代わりに近似直線族でこの操作を行って
も同じものが得られる。
双対図形
双対図形(もとのタイルの境界をとりさる)
直線族からペンローズタイルを
つくる(ペンタグリッド法)
まえの構成の逆構成ができる。つまり
(1)上手に無限個の直線族を与え、
(2)平面からそれら全てをぬきさり、
(3)各領域対して点を与え
(4)領域がある直線をはさんで隣り合ってい
るときにのみ直線でむすぶ。
このようにしてペンローズタイルを構成で
きる。
このようにしてできたペンローズタイルから
背骨の近似直線族をつくるとはじめにあた
えた直線族がえられる。つまり異なる直線
族を与えると異なるペンローズタイルが生
成されることになる。
はじめに作った直線族が平行移動を除い
て一致するための条件は次のようになる。
さらに実際、赤と緑の矢印が矛盾なく書き
込むことができる。下の図は緑の矢印の終
点の角を黒くぬったものである。
タイル張り方の全て
それではペンタグリッド法で全ての張り方
が得られているのであろうか。これにかん
しては、部分的変更、と言う操作を考えに
入れれば、すべてのペンローズタイルはペ
ンタグリッド法で得られることがしめせる。
この部分がいわば最も興味深い点である。
しかし、証明には、はじめにのべた膨張と
縮小の構成をつかうが、ここでは述べない。
まとめ
ペンローズにより発見された、非周期を強
要する2種類の菱形によるタイル張り
むかで構造と直線の配置
双対図形からペンローズタイルの位相的
な張り合わせが回復される。
ペンタグリッド法によるペンローズタイル張
りの構成
ペンタグリッド法と局所的変形によりすべ
てのペンローズタイル張りがえられている。