生活単元学習

「知的障害児の自立活動ABC」
~自立活動の視点をもとう~
A 自立活動とは
B 自立活動の現状と課題(知的障害)
C 自立活動の進め方
A
自立活動とは
~自立活動の意義~
特別支援学校の目的
幼稚園、小学校、中学
校又は高等学校に準ず
る教育を施す
+
学校教育法72条
障害による学習上又は生活上
の困難を克服し、自立のため
に必要な知識技能を授ける
密接に関連
自立活動
特別支援学校の目的を
達成するために設けられた指導領域
A
自立活動とは
~自立活動の目標~
学習指導要領
個々の児童又は生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生
活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、
態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う
自立~障害の状態や発達の段階等に応じて、主体的に自己の力
を可能な限り発揮し、よりよく生きること
学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服
障害によって生じるつまずきや困難を軽減しようとしたり、障
害を受容したり、つまづきや困難の解消のために努めたりする
こと
調和的発達の基盤を培う
発達の遅れや不均衡を改善したり、発達の進んでいる側面を伸
ばすことによって遅れている側面の発達を促すようにしたりし
て、全人的な発達を促進すること
A
自立活動とは
~自立活動の内容(2つの要素)~
人間として基本的な行
動を遂行するために必
要な要素
障害による学習上又は生活上
の困難を改善・克服するため
に必要な要素
26項目を
6つの区分に分類・整理
健康の保持
人間関係の形成
心理的な安定
身体の動き
環境の把握
コミュニケーション
自立活動の「内容」は「指導内容」の要素であり、一人一人の
実態に応じて必要な項目を選定し、「指導内容」を設定する
ICFの概念
図
A
自立活動とは
~障害の捉え方と自立活動~
生きることの全体像
生命レベル 生きて
生活レベル
生活し
人生レベル
生活機能が低下した状態を
「障害」ととらえる
人生を歩む
3
つ
の
要
素
人の生活機能を3つの要素でとらえ、それらと健康状態や環境因子及び
個人因子が互いに影響し合っている (人の生活を多面的・総合的にとらえる)
A
自立活動とは
~自立活動の内容とICF~
人間として基本的な行
動を遂行するために必
要な要素
食べる、視覚や聴覚を活用する
歩く等はICFの生活機能に当たる
障害による学習上又は
生活上の困難を改善・
克服するために必要な
要素
視覚障害ゆえの見えにくさを改善
する方法を身に付ける、病気の
進行を予防するための自己管理
の仕方を学ぶ等はICFの障害に
当たる
自立活動の内容は、ICFで示されている
「生活機能」と「障害」の双方の視点を含む
A
自立活動とは
~追加になった内容~
3
人間関係の形成
(1)他者とのかかわりの基礎に関すること
(2)他者の意図や感情の理解に関すること
(3)自己の理解と行動の調整に関すること
(4)集団への参加の基礎に関すること
4
環境の把握
(2)感覚や認知の特性への対応に関すること
社会の変化や幼児児童生徒の障害の重度・重複化、
発達障害を含む多様な障害に応じた指導の充実
自閉症・LD・ADHD等の指導の充実を図る
A
自立活動とは
~教育課程上の位置付け~
自立活動の指導場面
(1)教育活動全体を通じた指導
(2)特設された自立活動の指導
(3)自立活動を主とした指導
・自立活動の指導は学校の教育活動全体を通じて行うもの
であり、自立活動の時間における指導はその一部
・自立活動の時間における指導と各教科等における指導と
が密接な関連を保つ
学校の教育活動全体を通じて行う自立活動の指導
(各教科 道徳
特別活動 総合的な学習の時間等)
関連
自立活動の時間
における指導
B
自立活動の現状と課題
~知的障害児教育における自立活動の現状~
・生活を中心として教科内容と各教科等を合わせた
指導で対応することが多く、自立活動との区別が
明確になりにくい(位置付けが曖昧)
・知的障害の主たる障害は知的発達の遅れであり、
それへの対応は各教科等で行われている
・自立活動の内容と、他の領域の指導内容の関連を
整理することや教師の理解に温度差がある
・障害の多様化・重複化に伴い、指導内容の整理が
難しい(専門性が求められる)
自立活動を特設する学校が少ない
B
自立活動の現状と課題
~知的障害児教育における自立活動の必要性~
・障害の重度化・重複化が顕著になった
・運動機能面への支援を必要とする知的障害を合わせ
有する肢体不自由児が増えた
・自閉症児の障害特性に応じた指導がクローズアップ
されてきた
・LD、ADHD、ASD等の発達障害児の入学が増
えてきた
・地域のセンター的機能を果たすために、より高い専
門性が求められてきた
・外部専門家の活用や保護者との連携が大切になった
自立活動を特設して組織的に継続した指導が必要
B
自立活動の現状と課題
~知的障害特別支援学校における自立活動~
全般的な知的発達の程度や適応行動の状態に比較して、言語、運
動、情緒、行動等の特定の分野に、顕著な発達の遅れや特に配慮
を必要とする様々な状態が知的障害に随伴して見られる。そのよう
な障害の状態による困難の改善を図るためには、自立活動の指導
を効果的に行う必要がある。 (随伴する状態への対応)
〈言語・運動面〉
・理解言語の程度に比較して、表出言語が極めて少ない
・全体的な身体機能の発達の程度に比較して、平衡感覚が未熟
〈情緒・行動面〉
・心理状態が不安定になり、パニックになりやすい
・極めて動きが多く、注意集中が困難
・上肢や下肢のまひ、筋力の低さ
・自信欠如 ・固執行動 ・極端な偏食、異食
・てんかんや心臓疾患への対応
B
自立活動の現状と課題
~知的障害児の複数の特別なニーズ(例)~
・発音・発語の困難がある知的障害児(ダウン症児)
・視知覚認知に困難があるために不器用な知的障害児
・不安が強くパニックを頻繁に起こす自閉症児
教育活動全体を通じた配慮や支援
シンプルな教室環境
クールダウンできる居場所 等
「自立活動の時間」に感情の自己コントロールの方法を
身に付けることで、日常的な配慮や支援が少なくなる
例:スケジュール表の活用の仕方 事前に体験できる機会の設定
ソーシャルスキルトレーニング 等
B
自立活動の現状と課題
~自立活動の3つのアプローチ~
1 「障害」に対する直接的なアプローチ
・ダウン症児の発音指導
2 「障害」を補償する手段の学習
・読字障害のある子にパソコンでノートを取る
練習をする
3 「障害」の自己理解
・軽度知的障害児が自分の得意・不得意を認識
する
苦手なことを克服し、「~できた」を目指すだけでなく、「~できるよう
になって楽しく参加できるようになった」という評価をする
B
自立活動の現状と課題
~自立活動の内容と各教科の内容との関係~
〈自立活動〉
・知的発達の遅れに随伴した顕著な発達の遅れや特に配慮を必要
とする様々な状態に対応
〈各教科〉・知的発達の遅れや適応行動の困難に対応
教 科
算数:身近にあるものの形
の違いに気付く
認知面に顕著な困難さがある
自立活動
4 環境の把握(5)
認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に
関すること
空間認知を高める指導(なぞり 粘土遊び等)
双方の明確なねらいと
指導内容の関連を踏まえた効果的な指導
B
自立活動の現状と課題
~指導要領に解説に示されている指導内容(例)~
1 健康の維持 (2)病気の状態や生活管理に関すること
・てんかんのある幼児児童生徒の場合は、生活リズムの安定を図る
こと、過度の疲労をしないようにすること、きちんと服薬することなど
が重要である。・・・自己管理ができるように指導する・・・
3 人間関係の形成 (2)他者の意図や感情の理解に関すること
・自閉症のある幼児児童生徒は、生活の様々な場面を想定し、そこ
での相手の言葉や表情などから、立場や考えを推測するような指
導を通して、相手と関わる際の具体的な方法を身に付ける
5 身体の動き (1)姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること
・知的障害のある幼児児童生徒の中には、基本的な動きの指導から
始め、徐々に複雑な動きを指導すること・・・
ICT活用教育推進事業➟人間関係の形成・コミュニケーションに着目
C
自立活動の進め方
~個別の指導計画の作成~
1 実態把握
・児童生徒の学習・生活面の様子
・担任や担当者の気付きや願い
P 2 目標の設定 ・長期・年間目標の設定
・学期の指導目標の設定(達成可能な目標)
3 指導内容の ・指導内容の選択・配列
・指導方法、指導形態の工夫
設定
・授業実践(指導案作成)、授業の記録
4
指導の展開
D
C 5 評価
・形成的評価(学習活動でその都度評価) A
・学習活動の評価
・年間・学期の目標・内容の評価・改善
個別の指導計画に基づくPDCAサイクル
C
自立活動の進め方
~目標設定のポイント~
1 子ども主体の肯定的な目標にする
友達を叩かない→自分の意思を言葉で伝える
2 実現可能で具体的な目標にする
離席せずに45分間の授業を受ける→15分間は着席して課題に取り組む
3 客観的な観察・評価ができる目標にする
きちんとあいさつをする→相手の顔を見て、「おはようございます」と言う
4 目標に優先順位をつける
短期目標であれば1つか2つに絞る(焦点化)
5 子どもが目的(目標)を意識化できる
子どもが主体的に活動できるように目標を設定する
目標が曖昧になると 指導も評価も曖昧になる
C
自立活動の進め方
~具体的な指導内容設定のポイント~
1 主体的に取り組む指導内容(成功体験を増やす)
・興味をもって主体的に取り組み、成就感を味わうとともに自己を
肯定的にとらえることができる内容を取り上げる
◆解決可能で取り組みやすい内容➟易しすぎず、難しすぎない内容
◆興味・関心をもって取り組める内容➟指導の段階の細分化
興味を引く教材・教具
◆目標を自覚し、意欲的に取り組んだことが成功に結び付いたと
いうことが実感できる内容➟課題を細分化して自己評価の実施
適切なタイミングでの称賛や激励
・振り返りの時間を設定して、頑張っている自分を確認したり、過
去と比較して成長していることを実感したりできるようにする
・本人の意見を取り入れながら自立活動の学習場面を設定する
・先輩の話を聴く機会を設ける
C
自立活動の進め方
~具体的な指導内容を設定するポイント~
2 改善・克服の意欲を喚起する指導内容(内面も育てる)
・障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服しようとする意
欲を高めることができる内容を重点的に取り上げる
◆意欲は座学や抽象的な知識によって育てることは難しく、実際的
経験等の具体的な学習活動を通して指導する
3 遅れている側面を補う指導内容(弱点のみに着目しない)
・発達の進んでいる側面をさらに伸ばすことによって、遅れている
側面を補うことができる内容も取り上げる
4 自ら環境を整える指導内容(他者から依頼を受けて支援する経験も)
・活動しやすいように自ら環境を整えたり、必要に応じて周囲の人
に支援を求めたりすることができる内容も計画的に取り上げる
・自閉症のある児童生徒が,不快に感じる音や光、雰囲気等を避けるために場
所を移動したり、移動することを周囲の人に伝えたりする
C
自立活動の進め方
~評価のポイント~
1 児童生徒の学習状況や指導の結果に基づいて計画の修正を図る
・適切な計画であるかどうかは、実際の指導を通して明らかにする
2 評価を通して指導の改善を行う
・評価は児童生徒の学習評価であるとともに、教師の指導に対する
評価でもある(指導内容・方法の改善に結び付ける)
3 学習過程においても、適宜学習状況を評価する
・児童生徒が目標に近付いているか、教材・教具に関心をもって取
り組んでいるかなど、指導の改善に日ごろから取り組む
4 児童生徒の実態に応じて自己評価を取り入れる
・学習中あるいは学習後において、自己評価を取り入れ、自己理解
を促し、障害による困難を改善しようとする意欲を育てる
※記録の仕方の例~ビデオや写真 実際に書いた文字や絵・作品
発声や会話の録音 変化点の行動記述
C
自立活動の進め方
~指導方法の創意工夫~
個別指導
グループ指導
・一人一人の課題に応じ
たきめ細やかな指導が
可能
・関わり合いを通じて
コミュニケーション能力
の向上が図れる
・刺激の調節等、最適な
学習環境の設定が容易
・個別指導では見えなか
った課題がより明らかに
なる場合がある
実態に応じた組み合わせ、バランスが大切
C
自立活動の進め方
~教材・教具の活用のポイント~
◆子どもの興味・関心を大切にし、子どもが楽しん
で活動したり、子どもの喜びを引き出したりする
ことができる教材・教具を用意する
◆子どもの発達段階に合ったものを選ぶ
◆子どもの生活に身近なものを使用する
◆活動のバリエーションが広がるものを選ぶ
◆個別指導だけでなく、集団での指導にも活用で
きる教材・教具を使用する
C
自立活動の進め方
~ICF関連図の活用~
ICF関
連図
ICF関連図
ICFの概念図を模した図
・対象児の情報を整理して
実態把握などに使われる
ための図 (全体図)
・対象児の課題や指導・支援
の手掛かりを検討するため
に使われる図 (部分図)
子どもを多面的・総合的に捉え、共通理解がしやすくなる
C
自立活動の進め方
~ICF関連図の活用の成果と課題~
○子どものへの理解が多面的・総合的になった
○教職員間の共通理解・連携がしやすくなった
○目標設定がしやすくなった
○子どもの実態から課題の抽出がしやすくなった
○子どもの実態把握がしやすくなった
◆ICFへの基本的理解が難しい
◆子どもについての情報が構成要素のどこに入る
か分類が難しい
◆作業が繁雑である
◆具体的な活用の仕方が分からない
C
自立活動の進め方
~実態把握に絞ったICF関連図~
ICF関
連図
脳性まひ
下肢の
筋力の低下
移動の困難さ
上り坂
車いすの性能の低さ
買い物に
行けない
内向的な性格
C
自立活動の進め方
~指導の手立てを検討するICF関連図~
ICF関
連図
脳性まひ
下肢の運動
まひの軽減
移動の困難さの軽減
少ない力で進める
車いすを用意する
買い物に行く
意欲的に外出したい
という意欲をもたせ
る
C
自立活動の進め方
~生徒本人によるICF関連図(マイノウト)~
生命レベル
生きて
からだのこと
元気
緊張するとお腹が
痛くなる
環境因子
生活レベル
生活し
人生レベル
人生を歩む
生活や学習のこと
社会生活のこと
大きな声であいさつ
をすること
緊清掃関係
人の気持ちを考え
ること
個人因子
本人の願い
まわりの人やものごと
わたしは
想い(感じていることや考えていること)
祖父母 父 母 弟
名前 ・・・
生年月日・・・
年齢 16歳
性別 男
就職できるようにし
たい
校長先生 ○○先生
C
自立活動の進め方
~ICFとキャリア教育~
◆両者の概念は、障害の有無・程度・種類にかかわらず、
すべての児童生徒を対象としてている
これらの理論を踏まえ、「本人の願い」に基づき、環境を
整えることも含めて、よりよく「いま」を生きること、希望を
もって主体的に活動に取り組めるようになるための指
導・支援の充実が求められている
ICF➟校内外の関係者と支援方法を共有
横をつなぐ
キャリア教育➟目標や内容を明確化し共有 縦をつなぐ