宣教学緒論 -序-

宣教学通論
-序-
中央聖書神学校
2008年度前期
1
使徒達
教会
何を
福音
誰が
宣
何故?
教
如何に
全世界へ
何処へ
遣わされて
出て行って
2
何故宣教なのか?

主イエス・キリストの命令だから
「全世界に出て行き、すべ
ての造られた者に、福音
を宣べ伝えなさい。」(マコ
16:15)
3
何故宣教なのか?

主イエス・キリストの約束だから
聖霊があなたがたの上に臨ま
れるとき、あなたがたは力を受
けます。そして、エルサレム、ユ
ダヤとサマリヤの全土、および
地の果てにまで、わたしの証人
4
宣教の結果は?

主イエス・キリストの保証
信じてバプテスマを受ける者は、
救われます。しかし、信じない者
は罪に定められます。信じる
人々には次のようなしるしが伴
います。
5
宣教の結果は?

主イエス・キリストの保証
わたしの名によって悪霊を追い出
し、新しいことばを語り、蛇をもつ
かみ、たとい毒を飲んでも決して
害を受けず、また、病人に手を置
けば病人はいやされます。」(マコ
16:15-18)
6
宣教の目的は?

主イエス・キリストの勧め
あなたがたは行って、あらゆる国の
人々を弟子としなさい。そして、父、
子、聖霊の御名によってバプテスマ
を授け、また、わたしがあなたがた
に命じておいたすべてのことを守る
ように、彼らを教えなさい。(マタ28:19-
7
宣教の目的は?
形
成
教
会
成
熟
8
宣教の目的は?

使徒パウロの教会論
それは、聖徒たちを整えて奉
仕の働きをさせ、キリストのか
らだを建て上げるためであり、
私たちがみな、信仰の一致と
神の御子に
9
宣教の目的は?

使徒パウロの教会論
関する知識の一致とに達し、
完全におとなになって、キリス
トの満ち満ちた身たけにまで
達するためです。(エペ4:12-13)
10
「序」で問われていること
1.貴方は日本の教会(母教会)をどう見てい
るか。
2.貴方は宣教の対象である地域社会の現
状をどう見ているか。
3.これからの宣教はどうあるべきか。
a.宣教における根本的な問い
b.宣教と文化脈化(Contextualization)
11
『世界の中の日本』
読売新聞社主催シンポジューム
「戦後、日本人はある意味で国
際社会の現実から隔離され、自
分たちで一方的に造り上げた
バーチャルな世界の中で外の現
実を直視せずに生きてきた」
小和田 恒
(ひさし)
12
0歳~30歳
日本の中の日本
13
世界の中の日本
30歳~60歳
14
日本人らしさの再発見
文化的無国籍
15
人口(360万人)
宗 教
8%
1%
14%
4%
14%
43%
9%
77%
15%
15%
中国系
仏教
民衆宗教
マレー系
イスラム教
ヒンドゥ-教
インド系
キリスト教
その他
その他
16
言語民族(100万人単位)
1.2%
2.1
11.8
3.8
0.6%
22.3
宗 教
5.0%
4.3
6.9
タガログ
モスレム
17.7
7.1
セブアノ
部族
キリスト教
イロカノ
その他
ビサヤン
イスラム教
ビコル
93.2%
民族宗教
その他
17
人口(2,200万人)
7.2%
25.4%
9.7%
9.2%
宗 教
5.0% 6.2%
21.6% 中国系
マレー系
インド系
イスラム教
キリスト教
仏教
57.7%
その他
58.0%
ヒンドゥ-教
その他
18
総人口に占める外国人の割合
0.4%
8.9%
1.2%
19.2%
3.8%
23.6%
日本
19
日本人の体質的な弱点
アガペーの愛
グローバル的視野
キリストの心の共有
異文化への接し方
20
日本人の意識(転換)改革
加
被
害
害
者
者
意
意
物理的環境
物理的環境
識
識
広島
東南アジア
キリストにあって一つ
21
Marion
Kong
22
Mrs. Kongのカード
Thank you so much for
showing me through the
Lord that I was such an
ugly person. I really do
appreciate it, hope to
hear more of your
teaching soon. ……
23
キリストの心の共有
あなたがたは皆、信仰により、キリ
スト・イエスに結ばれて神の子な
のです。 洗礼を受けてキリストに
結ばれたあなたがたは皆、キリス
トを着ているからです。
24
キリストの心の共有(その難しさ)
そこではもはや、ユダヤ人もギリシ
ア人もなく、奴隷も自由な身分の
者もなく、男も女もありません。あ
なたがたは皆、キリスト・イエスに
おいて一つだからです。 (ガラ3:2628)
25
日本の教会の現況



何故日本の教会だけがアジアにおい
て取り残されたような状況なのか。
何故ある教会は活気があり、他の教
会は沈滞しているのか。
何故ある教団は成長し、他の教団は
衰退するのか。
26
210

教会数

礼拝出席 10,300

出席平均
41.4
49

教会数

礼拝出席 41,060

出席平均
837.0
2005年度統計
27
世界AG教会の成長
(1993 – 2006)
教会数
 139,119→ 236,022
 教職者数
 48,271→ 231,329
 信徒数
 2,300万人→5,700万人

28
ジャパン・ナンバー・ワン
(Number One)
ジャパン・バッシング
(Japan Bashing-1980年初期)
ジャパン・パッシング
(Japan Passing-1990年後期)
ジャパン・ナッシング
(Japan Nothing-2005年台)
29
『世界の中の日本』
読売新聞社主催シンポジューム
「戦後、日本人はある意味で国
際社会の現実から隔離され、自
分たちで一方的に造り上げた
バーチャルな世界の中で外の現
実を直視せずに生きてきた」
小和田 恒
(ひさし)
30
21世紀の教会
もし日本の教会が





大局に目を向けず
護教的な姿勢に終始し
足下だけをみて生活し
副次的な事柄で足の引っ張り合いを続け
大胆な発想の転換をしないでいると...
世界の孤児に?
31
日本の教会の現況理解(1)

教会の儀式・活動は時代の動
きに適切であるか

時代の流れに受動的であるか

時代の流れに積極的であるか

時代の流れに挑戦的であるか
Transformation
32
日本の教会の現況理解(2)

教会の社会に対する姿勢は聖書
的(宣教的)であるか

傍観的であるか
(Spectator)

関係的であるか
(Participant)


否定的関係

受動的関係
関与的であるか (Participator)
33
日本の教会の現況理解(3)

教会はその宣教活動において日本文化の
深層を聖書的な視点から把握しているだ
ろうか
 日本人の考え方


日本人の行動


価値観・思考パターン・倫理
対人行動・対自然行動・日常的な仕草
日本人の持ち物

芸術・美術・工芸
34
日本の教会の現況理解(4)

教会の神学はその時代のニーズ
に対応しているかどうか

本質的ニーズ(Real Needs)

即時的ニーズ(Felt Needs)
「満足の遅延」-Henry Cloud『境界線』
35
即時的ニーズvs本質的ニーズ
「起きて歩け」
(ルカ5:24)
「罪は許された」
(ルカ5:20)
・体の癒し
・魂の救い
・一時的救済
・永続的救済
36
「序」で問われていること
1.貴方は日本の教会(母教会)をどう見てい
るか。
2.貴方は宣教の対象である地域社会の現
状をどう見ているか。
3.これからの宣教はどうあるべきか。
a.宣教における根本的な問い
b.宣教と文化脈化(Contextualization)
37
政治
社会
宣
教
経済
教育
文化
38
宣教と世界情勢・国内状況
教会の神学
宣教理念
サポート
システム
宣
教
方
策
政治形態
経済状況
社会環境
(人口・文化)
学際的な理解力
39
世界の政治
近代化に押されるかたちで世界政治の舞
台は文化の境界線に沿って再構成されつ
つある。…イデオロギーと超大国との関
係によって規定されていた協力関係は、
文化と文明によって規定される協力関係
に移行しようとしている。
サムエル・ハンチントン『文明の衝突』p.125,1996
40
人々を区別する境界線
文
経済
イデオロギー
化
41
世界の政治
政治的な境界線は次々に弾き直され
て、文化的な境界線、つまり民族や
宗教や文明の境界線と重なっていく。
文化を共有する国家群が登場し、世
界政治の中で、文明の断層線を境界
として紛争が起こるようになってい
る。(ibid)
42
日本の社会の現状と教会

社会
 消費社会ー物質欲の増大
 虚無感-衝動性の倍加
 情報社会-情報格差
 対人関係の希薄-凶悪犯罪
 高齢化-少子化社会

経済機構の危機と労働力の不足
43
日本の将来は明るいか(%):「暗い」
(全国青少年アンケート)
中学生
71%
高校生
78%
大学・短大生
78%
社会人
80%
読売新聞社(03/02/22)
44
人口ピラミッド(総務省統計局001001)
45
若者の存在意識

生まれてこなかった方が良
かった
11%
3%
46
自分の存在に疑問を持つ若者
22%
85%
47
日本に必要な人物
今日本に最も必要なのは、定型化さ
れた考え方の減点主義に強い人々
ではない。先にやるべきことを確定し、
制度が不十分なら新しく作っていく人
間。こうした人々こそ必要だろう。
(岡本行夫-首相補佐官、よみうり寸評、05/10)
48
日本の教会志向性
・
49
日本の社会の現状

教育
競争の激化
 生活のゆとりの欠如
 学級崩壊



教師の質の低下


人格形成の不備
創造的精神育成の欠如
教育の意味の再検討
50
大学教育の不備(100社の企業対象)



「創造力の欠如」-58社
「問題解決能力の欠如」-51社
「一般教養の欠如」-17社
画一的な押しつけ教育の結果
 創造力を抑えてきたこれまでの教育
 特色のあるこれからの大学の必要

(朝日新聞社アンケート、03/01/04)
51
日本の教育
かつての日本人は少なくともいまより
は健全な社会を築いてきたのであった。
本来、教育の3原則は「知育」、「体育」、
「徳育」といわれているのだが、戦後教
育では、この「徳育」だけがスッポリと
抜け落ちていたのである。
(岬龍一郎、『教師の哲学)』 p.14)
52
日本の社会の現状

家庭
結婚観の廃退
 親子関係の価値観の変化
 家庭崩壊


人格形成の場の喪失
DV
 女性の地位の低さ

53
自分の子供に何を望むか
読売新聞社全国世論調査(02/01/16)
13%
1%
3% 2%
33%
21%
28%
幸せな家庭を築く
好きな仕事に就く
人のためになることをする
趣味などを楽しむ
金持ちになる
出世する
有名になる
54
「序」で問われていること
1.貴方は日本の教会(母教会)をどう見てい
るか。
2.貴方は宣教の対象である地域社会の現
状をどう見ているか。
3.これからの宣教はどうあるべきか。
a.宣教における根本的な問い
b.宣教と文化脈化(Contextualization)
55
宣教における根本的な問い

“Am I doing right things?”


正しい「こと」をしているだろうか。
Am I doing things right?

「こと」を正しく(うまく)やっているだ
ろうか。
56
宣教における根本的な問い
“Am I doing right things?”



正しい「こと」をしているだろうか?
目標の設定、優先順位の決定、動機の
照査、人間関係の調整…

私は何のために伝道者として生きて
いるのであろうか?
57
宣教における根本的な問い

Am I doing things right?

「こと」を正しく(うまく)やっているだろうか?



効率、能率、効果…の向上
礼拝出席者を増加するためにどうすれば
よいだろうか?(その動機は?)
間違ったことを効率よく実現する可能性
58
余談
-祝福を呪いに変える6つの法則-
1)成功している牧師の真似をする。
2)その用法を用いて伝道・牧会をする。
3)その人の経験を原則・教理のように思う。
4)「これが唯一正しい道だ」と宣言する。
5)他の方法は罪だと伝える。
6)そのやり方と違うことをする人を批判する。
(福田充男、『宣教学リーディングス』、p.4)
59
これからの宣教

福音が受肉すべき文化と社会の歴史的相対
性を認識すること(福音の宣教の文化脈化)



聖書は何を意味したか。
それが神学的伝統において何を意味するか。
今日の日本の文化と社会においてどのような意
味を持つか。
 日本独自の非キリスト教的文化遺産の理解
 日本人と個性とアイデンティティーの理解
ロバート・リー『日本と西洋キリスト教』p.6
60
これからの宣教
近代の日本の宣教は、近代文
化の「危機」或いは「文明の衝
突」というコンテキストにおいて、
実際に「不確実な未来」に直面し
ている。(ローバート・リー『日本と西洋キリ
スト教』p.17)
61
これからの宣教
日本における宣教の新しいパラダ
イムは、脱構築と文化脈化
(Contextualiza- tion )なしには出来
ないし、少なくとも再構築なしの脱構
築は無意味である。(ローバート・リー
『日本と西洋キリスト教』p.6)
62
Contextualizationの実用的定義

宣教方法におけるContextualization

宣教表現におけるContextualization

宣教態度におけるContextualization
63
宣教における橋掛け作業



同一化


順応化

適応化


土着化
19世紀に提唱された宣教
政策
教会の自給、自治、自伝
文化脈化(文脈化)
対話
64
れ西
た欧
福化
音さ
文化脈化
宣教における橋掛け作業
な日
じ本
む文
福化
音に
65
Contextualization

用語の紹介


Theological Education Fund (1971,72)
会議
Shoki Coe, Director of TEFの発想

宣教学の重要な項目の一つ

訳語:「文脈化」「文化脈化」
66
宣教方法における
Contextualization
「西洋化された知性重視のキ
「日本のキリスト教は、輸
 福音の内容の変革ではないこと
リスト教は、一般大衆の生活実
 外国で通用した方法の直輸入であっては
入されたが移植されること
感とはかけ離れたカプセルの中
ならないこと
のなかった鉢植えの植木」
にいきる人々のものにしか過ぎ
福田充男『文脈化教会の形成』p.16
ない。」

主キリストの宣教方法
67
日本の宣教

日本におけるクリスチャン人口

1.3% Almanac of the Christian World

1.56% Operation World (2000)

0.89% 『キリスト教年鑑』 (2006)

プロテスタント宣教140年

カトリック宣教450年
68
日本の宣教の停滞理由
「民衆の文化から遊離しているから...
人間が人間らしく生きるために作り上げ
てきた文化に日本のキリスト教がうまく
かみ合わない。日本人の生きている現
実から遊離している。」(稲垣久和、「キリスト
教世界観と文化」『福音を生きる』、p.5
69
日本の宣教
歴史的に西洋文明の構成要
素であり続けた現代のキリ
スト教は、日本や他の非西
洋文明に西洋の様式を伴っ
て伝えられた。
(ロバート・リー,p.19)
70
日本における宣教
近代における脱構築に対する宣
教学的な取り組みは、福音が受
肉すべき文化と社会の歴史的相
対性を認識することである。
71
日本における宣教
脱構築こそがポストモダンの
世界におけるキリスト教宣教
の文化脈化を可能とし、新し
いパラダイムの再構築への道
を開くのである。
小林和夫 『日本と西洋キリスト教』 p.6
72
日本の宣教
神学の文化脈化
脱構築:洋から和へ
宣教の文化脈化
西欧の文明
73
二重の脱構築(Deconstruct)


神学の西欧的伝統、信仰表現の非東洋性、
啓蒙主義・科学主義*の影響を受けた聖書
解釈からの脱構築
日本古来の文化と日本民族の伝統理解に
おける脱構築

天皇制の相対化・日本人独自性理論に対す
る批判
74
*科学的vs物語的アプローチ


科学は「説明(explain)」する

External,コンテキスト・フリー

検証によって判定
物語は「理解(understand)」する

説明(検証)なしに、確からしさから判定

Internal
75
アリスター・マクグラス
ポスト・モダンの特称を生かした宣教方法
・ イメージの重要性
-聖書のイメージを黙想
-イメージを抱かせる例話
・ コミュニティーの重要性
-小グループ活動(αコース)
・ 物語の重要性
-概念的議論でなく、個人の物語(証詞)の提示
(Oxford大学歴史神学教授、5月来日講演)
76
日本の宣教
現代日本でのキリスト教宣教
を理解するための第一の責務
は、日本の文化と日本社会に
おける福音の文化脈化である。
(ロバート・リー,p.19)
77
文化脈化への過程
1.聖書は何を意味していたか
2.それがその人自身の神学上
の(宣教師より受けた)伝統
において何を意味するかとい
う批評学的思考
78
文化脈化への過程
3.それが今日の日本の文化と社会
においてどのような意味を持つか
4.日本文化史の批評的理解を含め
て現在における聖霊の導きに対す
るより一層の自由と開放性をもた
らす弁証法的過程
(R. リー、p.199、小林和夫,p.6)
79
文化脈化への過程


日本独自の非キリスト教的な宗教
上の遺産が日本人の個性とアイデ
ンティティーを理解する基本的枠
組みであることを意識すること
そしてそれを批判し続けること

その作業の一つ:古来から日本にある
「和」の思想は変貌される必要があ
ること (小林、p.7)
80
日本人の人間観
個人
和
ひと-人-人間
対人関係の中に内在化された人
81
「和」のデメリット
「金太郎アメじゃダメ。今、科学界に必要な
のは異端者(はみだし)だ。...科学も芸術
と同じく主観的な心の産物。美しさに感動で
ノーベル賞受賞者の少ない日本
第一位アメリカ(241名)
きないような者は科学をやる資格はない。
第二位イギリス(89名)
個性がすべてだ」
第十四位日本 (12名)
「平均値」を重んじるあまり、創造性のある傑出した人物を育てない「輪」の雰囲気
野依良治( 2001年度ノーベル賞受賞者、名大教授 )
82
日本の「和」の文化


画一性を基本とする「和」

相異を認めない「和」

異なったものは排除する「和」
多様性に馴染みにくい「和」

異質なものを変質させ同化させようとする
「和」
83
「和」の神学
(日本は)西洋の個人主義にゆがめられ
た神学ではなく、人間関係における感性
豊かな-実際には、関係の崩壊、対立
的分派主義、差別をもたらす排他性など
に対する真の「和」を必要としている-
日本人に響く日本的神学が求められて
いる。
84
「和」の神学
日本の「和」は、壊れた関係への和
解、反目する派閥への平和、搾取さ
れた周縁に追いやられた人々への差
別ではなく「正義」といった、聖書の伝
える標準を「モデル」として変革されな
ければならない。
ダイム転換』下,p.24
ロバート・リー『宣教のパラ
85
日本文化
型
内
容
86
アジア的パラダイム
包括的・関係論的思考原型(Narrative)
「全体は部分の総和である」という神話の崩壊
部品
機械
1+1=2
87
文化脈化への過程
1.釈義(解剖的)へのプロセス
Decontextualization Process
-何を意味したか
2.解釈(蘇生的)へのプロセス
Contextualization Process
-何を意味しているか
3.説教(宣教的)へのプロセス
Proclamation Process
-何をすればよいのか
88
文化脈化への過程
2テモ2:15
Proclamation Process
Contextualization Process
Decontextualization Process
89
Contextualizationの実用的定義

宣教方法におけるContextualization

宣教表現におけるContextualization

宣教態度におけるContextualization
90
神学の文化脈化


「解放の神学」:福音を経済的、政治的、社
会的、精神的抑圧からの解放と考える立
場(南アメリカのカトリック教会)
「第三の目の神学」:アジア・アフリ
カ、南アメリカの人々の目を通して福
音を見流自己訓練を主張(宗泉盛 )
ソン・チュアンシェン
91
神学の文化脈化

「水牛の神学」:水牛に代表される地域の
文化に即して福音を理解されるように伝達
すべきと主張(小山晃佑
こうすけ

)
「民衆神学」:韓国のプロテスタント神学者によ
る民衆の立場から解釈した神学
92
文化脈化の危険

聖書の中に示された神の啓示の真理を失
う可能性を過小評価すること


福音伝達過程で妥協する危険
人間文化・宗教の中に見出される真理を過
大評価すること

聖書真理が相対化される危険
93
宣教表現における
Contextualization
「聖書の福音メッセージを特定の文化
もしくは民族集団の言語と思想で明
確に表現すること。」
John Davis--Gordon Conwell Seminary

横文字を縦に置き換えた福音ではない。

日本人の生理に即した表現と内容を持つこと

主イエスがアラム語で話されたように

「沢庵臭く」・「線香臭くない」福音
94
宣教表現における
Contextualization
「日本の文化コンテキストにお
ける福音の受肉」
ロバート・リー『日本と西洋キリスト教』p.20

福音が受肉するためには:

日本人の文化的体質の分析

福音の文化的体質の解析

両者の体質的不均衡の調整
95
宣教表現における
Contextualization

ケセン(気仙)語訳聖書
-山浦玄嗣(はるつぐ)医師(63)-岩手県-
「聖書の言葉は、聞いて腹にすっと入るものであるべき」
「原典に忠実であろうとするあまり『現場感覚』を欠いている」
・悔い改めて-心ォ切り換ァで
・聖霊-神様の息
・洗礼-お水くぐり
・敵を愛せよ-敵であっても大事にしろ
・預言者-みごと(御言)もじ
96
マタイ第5章1~8
コテコテ大阪弁「聖書」
イエスはんは、ごっう多い人間を見てか
ら山に登りにいかはったんやと。ほいで、
イエスはんが口を開いて教えをたれはっ
たんや。「心の貧乏なもんは、幸せなん
やで、神はんの国はそん人らのもんやさ
かい。...心のごっつうベッピンなもんは
幸福なんや、そん人らは神はんを見るこ
とができるさかい。…」
97
宣教表現における
Contextualization

福音の実存化

過去に戻り、聖書著者に出合い、得たものを現代
に持って帰り、それに色つけ、味付けをする作業

人々の生活の深層に達するような宣教

生活様式のキリスト教化ではなく人間の新創造

聖霊によるメッセージの実存化

そのために必須の文化理解
98
Contextualization
の実用的定義

宣教方法におけるContextualization

宣教表現におけるContextualization

宣教態度におけるContextualization
99
Contextualizationに
必要な社会学要素

自己の客観化能力


他者の役割取得能力


宣教の基点:己を知る
宣教の対象:隣人を知る
他者の文化の実存的理解

宣教の環境:隣人の価値観、行動規範を知る
100
宣教態度における
Contextualization
宣教態度の重要性


宣教は福音を体験し、知っている者
から、知らない者への流れである故に

宣教が一過性的でないために

宣教が普遍性を持つために
101
宣教態度における
Contextualization

宣教姿勢(態度)における目線の調整

一方通行的宣教を解消

対話ができる宣教姿勢の確立

共感的関係(Empathic relations)の設立

主イエスの目線-サマリヤの女、ザアカイ
102
主イエスの目線の調整
イエスは旅の疲れで、井戸のかた
わらに腰をおろしておられた。時は
六時ごろであった。ひとりのサマリヤ
の女が水をくみに来た。イエスは
「わたしに水を飲ませてください。」
と言われた。
(ヨハ4:7)
103
共感的理解と目線の調整

主イエスの目線の調整
1.「ことば」が人となって(ピリ2:6-8)
2.あわれみ深い「大祭司」となって
(ヘブ 2:17-18、4:15-16)
3. 罪人の救い主となって(ヨハ4:7-26)


使徒パウロの目線の調整(1コリ9:19-22)
聖霊の目線の調整 (使2:7-11)
104
主イエスの目線の調整
ことばは人となって、私た
ちの間に住まわれた。(新改
訳)
言は肉となって、わたしたち
の間に宿られた。(新共同
訳・ 口語訳)
105
使徒パウロの目線の調整
私はだれに対しても自由ですが、
より多くの人を獲得するために、
すべての人の奴隷となりました。
ユダヤ人にはユダヤ人のようにな
りました。それはユダヤ人を獲得
するためです。
106
使徒パウロの目線の調整
律法の下にある人々には、私自
身は律法の下にはいませんが、
律法の下にある者のようになりま
した。それは律法の下にある人々
を獲得するためです。
107
使徒パウロの目線の調整
律法を持たない人々に対しては、――
私は神の律法の外にある者ではなく、
キリストの律法を守る者ですが、――
律法を持たない者のようになりました。
それは律法を持たない人々を獲得す
るためです。 弱い人々には、弱い者
になりました。
108
使徒パウロの目線の調整
弱い人々を獲得するためです。すべて
の人に、すべてのものとなりました。
それは、何とかして、幾人かでも救う
ためです。 私はすべてのことを、福音
のためにしています。それは、私も福
音の恵みをともに受ける者となるため
なのです。
109
聖霊の目線の調整
…炎のような分かれた舌が現われ
て、ひとりひとりの上にとどまった。
すると、みなが聖霊に満たされ、
御霊が話させてくださるとおりに、
他国のことばで話しだした。
110
聖霊の目線の調整
さて、エルサレムには、敬虔なユダ
ヤ人たちが、天下のあらゆる国から
来て住んでいたが、この物音が起こ
ると、大ぜいの人々が集まって来た。
彼らは、それぞれ自分の国のことば
で弟子たちが話すのを聞いて、驚き
あきれてしまった。(使2:3-5)
111
宣教・牧会の基本
メッセージの内容表現
「聖書の福音メッセージを特定の文化もし
くは民族集団の言語と思想で明確に表現
すること。」
John Davis--Gordon Conwell
Seminary
宣教者・牧会者の態度
宣教・牧会活動における目線の調整
KK
福音メッセージの受容
共感的関係の設立
とそれに対する応答
112
宣教の対象に対する態度

同情理解
(Sympathetic Understanding)

共感理解
(Empathetic Understanding)
「対象と共に体験しようとする共体験」と
いわれる自己と対象間の心理的交渉
113
宣教への共同作業
宣教学者
神学者
学際的な理解力
114
これからの宣教
115
これからの宣教
私は、見張り所に立ち、とりで
にしかと立って見張り、主が私
に何を語り、私の訴えに何と答
えるかを見よう。主は私に答え
て言われた。幻を書きしるせ。
116
これからの宣教
これを読む者が急使として走
るために、板の上にはっきり書
きしるせ。この幻は、なお、定
めの時のためである。それは
終わりについて告げ、まやかし
117
これからの宣教
もしおそくなっても、それを待て。
それは必ず来る。遅れることはな
い。見よ。心のまっすぐでない者
は心高ぶる。しかし、正しい人は
その信仰によって生きる。
バ2:1-4-新改訳)
(ハ
118
使徒達
教会
何を
福音
誰が
宣
何故?
教
如何に
全世界へ
何処へ
遣わされて
出て行って
119
宣べ伝えるために
語らねばならない
語るために
聴かなければならない
120
聴いた「ことば」が
伝わるために
聴いてあげなければならない
121
宣教の基本的姿勢
聴
く
耳
人に
耳のある者は聞きなさい。(マタ11:15,13:9,
13:434,マコ4:9,4:23,ルカ8:8:,14:35)
122
私のことばと私の宣教とは、
説得力のある知恵のことばに
よって行なわれたものではなく、
御霊と御力の現われでした。そ
れは、あなたがたの持つ信仰
が、人間の知恵にささえられず、
神の力にささえられるためでし
た。(1コリ2:4-5)
123
「序」で問われていること
1.貴方は日本の教会(母教会)をどう見てい
るか。
2.貴方は宣教の対象である地域社会の現
状をどう見ているか。
3.これからの宣教はどうあるべきか。
a.宣教における根本的な問い
b.宣教と文化脈化(Contextualization)
124
125
ポスト・モダニズムの時代

主知主義・合理主義への挑戦

二元論的枠組みからの脱却

還元主義の回避から相対主義への転換

客観主義的論理体系への不信

非概念的神学の営みへの関心

包括的・関係論的パラダイム
126
ポスト・モダニズムの時代
道徳的価値が多様化している時代



多元的倫理観の許容
倫理・道徳への無関心
普遍的(絶対的)道徳規準への懐疑


相対的倫理・状況倫理の乱立
直接的な利益と結びついている功利主
義的倫理


急速に衰退するキリスト教倫理の影響力
127
128
129
中原順(大阪大学大学院)


これは、Narrativeに関する僕の「私的な研究ノート」に一部です。Narrtiveは近年、社
会科学や人文科学で注目されており、いわ
ゆる「Narrative Turn」なるものが認識され始めるようになりました。しかし、ひとくちで
「Narrative」と言いますが、その主張・目的・含意は様々あって、正直なところ僕も把握
不能になっています。ただ、あえて危険をおかして断言することが許されるとするなら
ば、現在の教育研究において注目されているNarrative approachとは、「世界がどこ
までも客観的に存在すると考えること」へのアンチテーゼと考えてよいと思います。こ
れまでの学問は、自分とはどこか遠く離れたところに、客観的な事実や真理が存在し
ていて、それを「発見」することに邁進してきました。故に、もちろんここで観察される事
実とは、事実を発見する人をぬきにしたものであります。Narrative approachは、こう
した主体抜きの「事実」がそもそも存在すること自体に、異議をとなえます。世界は、そ
れを語る人間によって、構築されるものである、そう考えるのです。つまり、言い換える
のなら、世界は「語られること」によって存在するといってもよいでしょう。「語られる世
界」は、もはや超越論的な「世界」ではなく、複数あるうちの「ひとつの物語(story)」と
言ってもいいですね。ということは、「客観的かつ絶対的な事実」というものは、そもそ
も存在していないのですから。語る人のかずだけ、語られる事実が存在します。ゆえ
に、Narrative approach的な世界解釈は、そういう他の事実や世界のありかた、つま
り「可能世界(possible worlds)」につねに開かれているのです。
130
Narrative Mode(物語様式)

真実味をもたらす。・論理的一貫性をやぶることがドラマの基礎とし
て定式化されている。・良さの基準は、ストーリーの迫真性にある。・
<理解>する様式・物語の様式の想像力に富む適用は、それとは
違って、みごとなストーリー・人の心をひきつけるドラマ・信ずるにた
る歴史的説明などをもたらす。それは人間の人間風の意図・行為、
そしてそれらの成り行きを示す変転や帰結を問題にする。物語は、
人間の意図の変転を取り扱う。・ストーリーは、同時に二つの「光景」
を構築する。一つは、「行為の光景(行為の動作主・意図・目的・状
況・道具・物語文法)」であり、一つは「意識の光景(その行為にかか
わっている人々の意識)」である。・検証可能性、反証可能性の必要
はない。・ストーリーを語る際には、そのストーリーが展開される主観
的風景にふさわしいパースペクティヴをもち、なおかつ生起する行為
を十分に考慮しつつ、主人公の見る目で指示対象を表現するという、
ことばの選択上の制約がある。
131
Paradigmatic Mode(論理-科学
的様式)

・普遍的な真理性を追求する。・論理的一貫性をもとめ
る。・「良さ」の判断は、論理的議論の妥当性や正確さの
判断基準である。・<説明>する様式・paradigmaticな
言語は、一貫性と無矛盾性という必要条件によって規制
されている。そして、原則をもった諸仮説によって推進さ
れるのである。・paradigmaticな様式の想像力に富む適
用は、よい理論・簡潔な分析・論理的証明・妥当な議論・
理路整然とした仮説に導かれた経験的発見などをもたら
す。・理論的な議論は、たんに結論が出るか、それとも結
論に達しないかである。・検証可能性の必要はない。・科
学的かつ論理的な記述は、明快で厳密な指示と文字通
りの意味を確定する目的からことばを選ぶ傾向がある。
132


科学は「説明(explain)」する。それは、コンテキス
ト・フリーであり、externalなものである。それに
対し、文学・人間科学・歴史は、「理解
(understand)」する。それらは何も説明しないが、
心を豊かにする。また可能性の世界を広げる。
・・・科学的な理論は、検証という手段において、
判定されるが、一方、物語は、確からしさを基本
にしてしか判定ができない。
133