人工知能の基礎知識

述語論理式の構文と意味

一階述語論理式の構文



述語,限量記号
自然言語文の述語論理式表現
一階述語論理式の意味



解釈
妥当,充足不能
閉式の充足不能性
©2008 Ikuo Tahara
1
述語論理

述語(predicate)の導入
命題論理による表現
「太郎は人間である」
「花子は人間である」
述語論理による表現
p
q
h(Taro)
述語
h( Hanako)
「・・・人間である」という共通する情報が欠落してしまう
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2
述語論理

限量記号(quantifier)の導入

a は p である:
p(a)
全称記号

すべての

ある
x は p である: x. p( x)
x は p である:
x. p ( x )
存在記号
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3
一階述語論理の構文

語彙







個体定数(constant): a, b, c,
個体変数(variable): x, y, z,
関数記号(function symbol): f , g ,
述語記号(predicate symbol): p, q,
論理記号(connective): , , , 
限量記号(quantifier): , 
補助記号(punctuation symbol): (, )
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一階述語論理の構文

項(term)の帰納的定義
(1)個体定数は項である.
(2)個体変数は項である.
(3) f が n 引数の関数記号,t1 , , tn が項
⇒ f (t1 , , tn ) は項である.
(4)項とは(1),(2),(3)を有限回繰り返し適用して得
られる記号列のみである.
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一階述語論理の構文

整式(wff)の帰納的定義
(1) p が n 引数の述語記号, t1 , , tn が項
⇒ p(t1 , , tn ) は整式(素式)である.
(2)  ,  が整式
⇒  ,    ,    ,    は整式である.
(3)  が整式, x が個体変数
⇒ x. , x. は整式である.
(4)整式とは(1),(2),(3)を有限回繰り返し適用して
得られる記号列のみである.
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限量記号の作用



作用域(scope): Qx. の  (ただし Q  {, })
束縛変数(bound variable):Qx. の  に現れる x
自由変数(free variable): 束縛変数以外の変数
束縛変数
束縛変数
x.[ p( x, y)  x.q( x)]
自由変数
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限量記号の作用

束縛関係: Qx. の x と部分式  の自由変数 x
は Q に束縛されるという.
p( x, y )  xq( x)
x.[ p( x, y)  x.q( x)]
自由変数
q( x)
自由変数

閉式(closed formula): すべての変数が束縛され
ている整式で,文(sentence)ともいう.
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自然言語文→述語論理式表現

翻訳の基本パターン




すべてのものが p である.(Everything is p.)
⇒ x. p( x)
p なものが存在する.(Something is p.)
⇒ x. p ( x )
すべての p は q である.(Every p is q.)
⇒ x.[ p( x)  q( x)]
ある p は q である.(Some p is q.)
⇒ x.[ p( x)  q( x)]
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自然言語文→述語論理式表現

なぜ 「ある p は q である」 を 「 x.[ p( x)  q( x)] 」
と表現すべきなのか?
「ある p は q である」
x.[ p( x)  q( x)]
否定
否定
「すべての p は q でない」
x.[ p( x)  q( x)]
 x.( p( x)  q( x))
 x.[ p( x)  q( x)]
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表現の例
① 試験が難しい科目の受験者は皆喜ばない.
② 試験が難しくなければ喜ぶ受験者がいる.
③ 数学の受験者しか喜ばない.
p ( x)
q ( x, y )
r ( x)
m
:
:
:
:
x は試験が難しい.
x は y の受験者である.
x は喜ぶ.
数学.
① x.[ p( x)  y.[q( y, x)  r ( y)]]
② x.[p( x)  y.[q( y, x)  r ( y)]]
③ x.[r ( x)  q( x, m)]
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一階述語論理式の意味

解釈(interpretation): M  ( D,  )


領域(domain): D
割り当て: 
(1)個体定数 c :
(2)関数記号 f :
(3)述語記号 p :

c  D
f  : Dn  D
p : Dn  {T, F}
変数割り当て: 
個体変数 x に対して x  D
 [ x / d ] : x に d  D を割り当て,x 以外には
 による割り当てをする変数割り当て.
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一階述語論理式の意味

( M ,  ) による意味評価






c M ,  c 
x M ,  x
( f (t1, , tn ))M ,  f  (t1M , , , tnM , )
( p(t1, , tn ))M ,  p (t1M , , , tnM , )
( )M ,   M ,
(  )M ,   M ,  M ,

(x. )

(x. ) M ,
M ,


M , [ x / d ]
T:

 T for d  D

F: otherwise
M , [ x / d ]
T:

 T for d  D

F: otherwise
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述語論理式を解釈してみよう
x[p( y)  q( f ( x), a)]
(M , )
M : D  {1, 2}
a  1
p  (1)  T
f  (1)  2
f  (2)  1
p  (2)  F
q  (1,1)  T q  (1, 2)  F q  (2,1)  F q  (2, 2)  T
 : x  1 y  2
T
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充足可能性
 :論理式 M :解釈  :変数割り当て


( M ,  ) は  を充足する( ‘ M ,  ).
 を充足する ( M ,  ) が存在する(しない).
 は充足可能(不能)である.
 M ,  T
任意の  について  M ,  T
M は  を充足する( ‘ M  ).
 M が閉式  (またはその集合  )を充足す
るとき, M を  (または  )のモデルという.

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妥当性
任意の解釈と任意の変数割り当てが論理式 
を充足するとき, は妥当であるという( ‘  ).

 は妥当である.

‘ 
  は充足不能である.
任意の ( M ,  ) について ‘ M , 
任意の ( M ,  ),d  D について ‘ M , [ x / d ] 
任意の ( M ,  ) について ‘ M , x.
‘ x.
閉式
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論理的帰結
 :論理式の集合
 :論理式
 を充足する任意の解釈と任意の変数割り当
てが必ず  を充足するとき,  は  の論理的
帰結であるという(  ‘  ).

{1 ,, n } ‘ 
‘ (1 
 n )  
‘ x.[(1 
 n )   ]
閉式 x.[(1   n )   ]
は充足不能である.
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閉式の充足不能性

閉式 x.[ x] の充足不能性を考える.
M : D  {1, 2, }
一般には決定できない
x.[ x]  T
[1]  [2] 
 [i] 
T
x.[ x]  F
[1]  [2] 
 [i] 
F
ある[i] がFであれば決定できる
命題論理式
[i]が恒偽な命題論理式であれば
任意の解釈 M  で [i]  F
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閉式の充足不能性
x.[ p( x)  p(a)]
M 2 : D2  {
, , , }
M 1 : D1  {1, 2, }
a 1  2
a 2 
p 1 (1)  F
p 2 ()  T
( p1 (1)  p1 (2))  ( p1 (2)  p1 (2)) 
( p2 ()  p2 ())  ( p2 ()  p2 ()) 
恒偽
恒偽
M : D  {a}
a  a
標準的解釈
p  (a)  T, F
p (a)  p (a)  F
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まとめると…


一階述語論理式の充足不能性
閉式の充足不能性
x.[ x] の充足不能性
充足不能であれば決定可能
標準的な解釈の存在
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