人工知能特論2009 No.6(前半部分は前回と同じ) 東京工科大学大学院 亀田弘之 まずは、復習から。 2 論理体系構築の手順(復習) 字母の決定 (論理式を記述するための記号群を決める) Syntax (記号の意味ある並びを決める。論理式であ るための条件、論理式の表現規則を決める) Semantics (論理式の意味の取り扱いを決める) その後、推論へと話を進める。 3 確認 字母 定数: 変数: 関数記号: 述語記号: 結合子: 限量記号: 補助記号: a, b, c, d, … x, y, z, w, … f, g, h, … P, Q, R, ~, ∧, ∨, →, ↔ ∃, ∀ ( ) , 4 定義4.2 項(Term) 1. 2. 3. 定数は項である。 変数は項である。 もし f が arity n (n変数)の関数記号であ り、t1, t2,… tn が項であるならば、 f( t1, t2, … , tn ) は項である。 5 定義4.3 ( well-formed ) 論理式 1. 2. 3. 4. Pはn変数の述語記号であり、 t1, t2,… tn が項であるならば、P(t1, t2,… tn ) は論理式 である。アトムあるいは原始式と呼ぶ。 φが論理式ならば、~φは論理式。 φとψが論理式ならば、 (φ∧ψ), (φ∨ψ), (φ→ψ), (φ↔ψ) は論理式。 φが論理式、xが変数ならば、 ∃x φ , ∀x φ は論理式。 6 定義4.8 pre-interpretation J 1. 2. 3. 集合D:解釈のための領域(非空集合) 定数記号に対して、Dの要素を割り当てる。 関数記号f (n変数関数)に対して、Dnから Dへの写像を割り当てる。 つまり、集合Dに基づいて、定数記号や 関数記号の意味(実体)を決める。これが、 pre-interpretation。 7 定義4.9 変数割り当てV 変数記号に領域Dの要素を割り当てる。 (variable assignment) V: 変数記号の集合∋x → d∈D 8 定義4.10 項割り当て 定数記号に対して、pre-interpretation Jに 基づいてDの要素を割り当てる。 変数記号に対して、変数割り当てVに基づ いてDの要素を割り当てる。 t1, t2, …,tn がd1, d2, … ,dn に割り当てられ るとき、f(t1, t2, …,tn )は、 Jf(d1, d2, … ,dn )に割り当てられる。 9 定義4.11 解釈I Pre-interpretation J が定められているとき、 述語記号Pに対して、Dnから{ T, F } への 写像を割り当てることを解釈という。 10 11 述語論理言語L1 字母 定数: 変数: 関数記号: 述語記号: 結合子: 限量記号: 補助記号: a, b, c, d, … x, y, z, w, … f, g, h, … P(arity=2), Q, R, ~, ∧, ∨, →, ↔ ∃, ∀ ( ) , 論理式を表記する記号群 12 論理式を表記するための記号群 記号の並べ方の規則(Syntactic Rules) Well-formed な論理式 Pre-interpretation 定数記号と関数記号に意味を与える。 項の割り当て、変数の割り当て 解釈 述語に意味を与える。 論理式の真偽が決まる 13 例: 論理式 P( x, a ) → Q( x ) これの真偽は? (解釈Iを決めれば決まる) ・ 定数 a ・ 変数 x ・ 述語PとQ 14 解釈の例 P( x, a ) → Q( x ) 解釈の領域 D = { 赤い箱R, 白い箱W, 青い円錐B } Pre-interpretation 定数 a = R 関数記号 なし 変数の割り当て V(x) = W 解釈I P(x,y): x が y の上に載っている。 Q(x): x は青い円錐である。 真偽: P( x, a ) → Q( x ) は__ 15 Prenex Conjunctive Normal Form Literal Clause PCNF 16 Leteral Literalの定義: 1. 2. アトムはリテラル (例: P(x), Q(3,5,8) ) アトムの否定もリテラル (例: ~P(x), ~Q(3,5,8)) 上記の1を正リテラル(positive literal)、 2を負リテラル(negative literal) という。 (例: P(f(x)) は正リテラル, ~P(f(x)) は 負リテラル) 17 Clause Clauseの定義: ゼロ個以上かつ有限個のリテラルからなる選 言のこと。 例: 1. 2. P(a) v Q(x,b,f(s)) ~Q(x,y) <=1個のリテラルの選言! 18 Clauseの集合による表記法 1. 2. P(a) v Q(x,b,f(s)) {P(a) , Q(x,b,f(s))} ~Q(x,y) {~Q(x,y) } 19 Prenex Conjunctive Normal Form q1x1 qn xn (C1 Cm ) qiはかであり、 x1, x2 ,, xnはすべて論理式に現れる変数 20 Prenex Conjunctive Normal Form Clause q1x1 qn xn (C1 Cm ) Prenex Matrix qiはかであり、 x1, x2 ,, xnはすべて論理式に現れる変数 21 PCNFの例 xy ((P ( x) ~ Q ( x, y )) (~ R (a, b) ~ P (a ))) xyz ( S ( x, y, z ) P ( y, z )) x((P (a ) P (b)) ~ Q (a, x) P ( x) (~ P (b) Q ( x, x))) x ~ y ( P ( y ) Q ( y, a )) x( P ( x) Q ( x, a )) ~ y (Q ( y, a )) 22 PCNFへの変形 任意の述語論理式はPCNFに変形すること ができる。その際、その論理式の真理値は 保存される。 例: xP( x) xQ( x) ~ xP( x ) xQ( x ) ~ xP( x ) yQ( y ) x ~ P ( x ) yQ( y ) x (~ P ( x ) yQ( y )) xy (~ P ( x ) Q ( y )) 23 定理 任意の論理式φに対して、φと真理値が等 価な論理式ψでかつPCNFのものが1つ 存在する。 24 変形の手順(その1) 1. 論理式φの中の→と↔を次の規則を用いて 取り除く。 1. 2. 2. (A→B) を (~A v B) に置き換える。 (A↔B) を (~A v B)^(A v ~B) に置き換える。 分離された変数がそれぞれ異なるように変 数名を書き換える。 25 変形の手順(その2) 3. すべての~がアトムの直前に来るように次 の規則を用いて変形する。 1. 2. 3. 4. 5. ~∀x ψ を ∃x~ψ に置き換える。 ~∃ x ψ を ∀x~ψ に置き換える。 ~( φ ∨ ψ ) を ( ~φ ∧ ~ψ ) に置き換える。 ~( φ ∧ ψ ) を ( ~φ ∨ ~ψ ) に置き換える。 ~~φ を φ に置き換える。 26 変形の手順(その3) 4. すべての限量子∀と∃を論理式の先頭部分 へ移動させる。 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. ∃x φ∨ψ φ∨∃x ψ ∀x φ∨ψ φ∨ ∀x ψ ∃x φ∧ψ φ∧∃x ψ ∀x φ∧ψ φ∧∀x ψ => => => => => => => => ∃x (φ∨ψ) ∃x (φ∨ψ) ∀x (φ∨ψ) ∀x (φ∨ψ) ∃x (φ∧ψ) ∃x (φ∧ψ) ∀x (φ∧ψ) ∀x (φ∧ψ) 27 変形の手順(その4) 5. Matrix部分をCNF形式に変形する。 1. 2. ((A∧B)∨C) を ((A∨C) ∧(B ∨C)) に ((A∨B)∧C) を ((A∧C) ∨(B ∧C)) に 28 PCNF導出の例(練習問題) x( P( x) P( f ( x))) ~ x(Q( x) R( x, a)) x(~ P( x) P( f ( x))) ~ x(Q( x) R( x, a )) x(~ P( x) P( f ( x))) ~ y (Q( y ) R( y, a)) x(~ P( x) P( f ( x))) y ~ (Q( y ) R( y, a)) x(~ P( x) P( f ( x))) y (~ Q( y ) ~ R( y, a )) x((~ P( x) P( f ( x))) y (~ Q( y ) ~ R( y, a ))) xy ((~ P( x) P( f ( x))) (~ Q( y ) ~ R( y, a))) xy ((~ P( x) P( f ( x)) ~ Q( y )) ((~ P( x) P( f ( x)) ~ R( y, a ))) 29 PCNFの曖昧性 1つの論理式から得られるPCNFは1つと は限らない。 例: xyP( x, y ) xQ(a, x) xyz ( P( x, y) Q(a, z )) xy( P( x, y) Q(a, x)) (注)ΑとβはともにΦのPCNF! 30 確認問題 次の置き換えは、真理値を保存することを 確かめよ。 D {a, b, c} I {P(a, c), P(c, b), Q(a, a), Q(a, c), Q(b, a)} xyP( x, y ) xQ(a, x) xyz ( P( x, y ) Q(a, z )) xy ( P( x, y ) Q(a, x)) 31 確認問題 次の置き換えは、真理値を保存することを 確かめよ。 D {a, b, c} I {P(a), P(c), P(c)} xP( x) yP( y) xy( P( x) P( y )) 32 Skolem Standard Form 33 Skolem Standard Form Clause q1x1 qn xn (C1 Cm ) Prenex Matrix qiはだけであり、 x1, x2 ,, xnはすべて論理式に現れる変数 34 PCNF => SSF への書き換え 限量記号(存在記号)∃を除去しなければな らない。そのために、スコーレム定数やス コーレム関数を導入する。 例: xyP( x, y) xP( x, f ( x)) yxP( x, y) xP( x, a) 35 大切な注意事項(その1) 任意の論理式はPCNFに変形可能 任意のPCNFはSSFに変形可能 任意の論理式とそれから導かれるSSFとは 論理的に等価であるとは限らない(真理値 は必ずしも保存されない!)。 36 大切な注意事項(その2) BUT 充足不可能な論理式は充足不可能なSSF に変形される。 元の論理式がモデルを持つための必要十 分条件は、SSFがモデルを持つことである。 (これは重要な定理の1つ) 37 Herbrand Models 次に、フランスの論理学者Jacques Herbrand が考案した解釈(interpretation)を導入する。 この解釈を特に、Herbrand interpretation とよ び、この解釈に基づくモデルを Herbrand model と呼ぶ。 38 Herbrand universe U Herbrand base B Herbrand pre-interpretation J Herbrand interpretation I Herbrand model M 以下、例で説明する。 39 例: {P(a), Q(a, f (b)),x( P( x) Q( x, x))} 40 Herbrand Universe U {a, b, f (a), f (b), f ( f (a)), f ( f (b)),} 41 Herbrand Base B {P(a), P(b), Q(a, a),Q(b, b), P( f (a)), P( f (b)),} 42 Herbrand pre-interpretation 43 Herbrand interpretation 44
© Copyright 2024 ExpyDoc