堆積学

堆 積 学
Sedimentology (& Stratigraphy)
地球惑星科学科2年目講義(選択2単位)
レジュメ
Sedimentology & Stratigraphy
Ⅱ.砕屑物の移動-定着プロセス
-地層の初期形成
A.砕屑粒子の移動と定着
運搬機構
① 媒質の流動による力が主要な役割を果たすもの
・懸濁・浮遊(suspension)
例)流れる泥水
・掃流(traction current)
躍動(saltation)
例)バウンドするボール
転動(rolling)
例)風に吹かれて転がるゴミバケ
ツ
クリープ(creep)
例)地面の上の落ち葉
② 粒子に対する重力の作用が主要な役割を果たし,
全体がmassとして挙動するもの
=砕屑物重力流(sediment-gravity flow)
Sedimentology & Stratigraphy
定着機構
・媒質の流速が下がることによる定着.
→ 例: 扇状地(fan)
10 km
上空30, 000mから
水沢段丘
国
道
胆沢川
福原段丘
水沢
堀切段丘
胆沢川
扇頂
扇端
北上川
横道段丘
上野原
段丘
一首坂
段丘
扇頂と 扇端の高度差: 約200m
北
上
北 川
上
川
氾
濫
原
■上位段丘/一首坂段丘
■中位段丘/上野原段丘
横道段丘
掘切段丘
福原段丘
■下位段丘/水沢段丘
日本最大の扇状地 -胆沢扇状地
Sedimentology & Stratigraphy
ストークスの法則
・静的な懸濁からの重力性自由沈下
4 gDp( ρ p - ρ f )
Vt =
3 ρ f CR
Vt:終末速度
g:重力加速度
Dp:粒子直径
ρp:粒子密度ρf:
流体密度 CR:抵抗係数
2.00
1.80
*上の代替式
18 
Stokes Law
Gibbs Formula
Stokes Law (alt.)
1.40
Dp
2
終末速度Vt (m/s)
Vt 
( p   f )g
1.60
1.20
1.00
0.80
0.60
0.40
* ただし泥サイズ粒子の場合,粒子
同士の結合 (flocculation)によるみ
かけの粒径増加の影響が大きい.
0.20
0.00
0.00000
0.00050
0.00100
粒子径 (m)
0.00150
0.00200
Sedimentology & Stratigraphy
砕屑粒子のサイズ・流速とその挙動の関係
1000
500
200
侵食 (erosion)
50
20
10
砕屑粒子の移動・運搬機構
5
運搬 (transportation)
堆積 (deposition)
浮遊・ 懸濁
2
媒質の流動
1
浮力・ 粘性抵抗
0.5
躍動・ 跳躍
500
200
100
50
20
30
10
5
2
3
1
0.5
0.2
0.1
0.05
0.02
0.03
0.01
0.1
0.002
0.003
0.005
0.2
0.001
媒質の流速 (cm/sec)
100
粒子の直径 (mm)
転 動
ク リ ープ
媒質の下底面
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B.砕屑物重力流の分類
流れの中で粒子が支持される(=落ちない・定着しな
い)機構の違いによって以下の4つに区分される.
名
称
粒子支持機構
乱泥流・混濁流
(turbidity current)
流体内部の乱流.
液状化流(fluidized flow)
媒質流体の間隙水圧と,
その結果生じた
上方へ向かう粒子間流.
粒子流(grain flow)
粒子同士の衝突によって
生じる“分散圧”.
土石流・岩屑流(debris flow)
基質の機械的強度と,
粒子に働く浮力.
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C.タービダイト (Turbidite): 乱 泥 流 に よ っ て 形 成 さ れ
た地層.
・乱泥流の発見
1929年,大西洋西部,New Found Land 沿岸で発生し
た地震による『海底ケーブル破断事件』.
乱泥流の厚さ: 数100 m
タービダイトの厚さ: 1 m
タービダイトの体積: 175 km3
流速: 3時間後 222 km 地点 20.3 m/sec
9時間後 467 km
14.4 m/sec
10時間後 474 km
12.8 m/sec
13時間後 545 km
11.4 m/sec
タービダイト
*11.4 m/sec ->
径3 cm の石英球を運搬できる流
速
半深海性泥・シルト
半深海底で形成されたタービダイト
(渡島帯ジュラ紀付加体の例)
海底峡谷
大陸棚
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▲
震源
1929年大西洋 NewFoundLand 沿
岸の地震で発生した乱泥流
地震発生から
ケーブ ル破断ま での
経過時間( 分)
タ ービ ダイ ト の厚さ
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・乱泥流の発生要因:
厚い,重力的に不安定な堆積体の形成(斜面環境)
トリガ: 地震・洪水...
発生頻度...??? 1.5 - 1.7 year/flow という統計もあるが...
*その地域の堆積速度・地震発生頻度などに強くコントロールされる.
室内水槽実験によ る 乱泥流( turbidity current)
neck
head
eddy
body
tail
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1 cm
Td-e
Tc
Tb
・タービダイトの内部構造:
ブーマシーケンス(Bouma Sequence)
Ta
Te:無構造泥岩部
堆積休止期に懸濁状態から堆積した泥.
Td:葉理泥岩部
流れの終息期に沈積した細粒部.
Tc:斜交葉理部
さらに弱まりつつある流れ(lower flow regime)
からの沈積.カレントリップル構造を示す.
Tb:平行葉理部
弱まりつつある流れからの沈積 (upper flow regime).
Ta:無構造砂岩部または級化砂岩部
粗粒部の急速な堆積とそれに引き続く液状化.
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ブーマ
シーケンス
『 ブ ーマシ ーケン ス ( Bouma Sequence) 』
( 次のシ ーケン ス)
半深海性の泥
Te
乱泥流が起き て
いない時の
イ ン タ ーバル堆積物
タ ービ ダイ ト 泥
乱泥流の“ 尻尾” から の
フ ォ ールア ウト 堆積物
Td
斜交葉理部
Tc
乱泥流の速度が低下し た時の
ト ラ ク ショ ン 堆積物
Tb
乱泥流の速度がまだ高い時の
ト ラ ク ショ ン 堆積物
Ta
乱泥流本体から の急速な沈下と
それに引き 続く 液状化によ る 堆積物
シ ーケン スの下底
粒度の増加