常流・射流

開水路流れの分類
1 . 目的
開水路流れの分類とその意義を整理し,理解する.実験水路において,常流と射流の違い
を体感し,微小擾乱の伝播速度について測定する.
2.原理
(1)開水路流れと管路流れ
水の流れは,開水路流れ(open-channel flow)と
管路流れ(pipe flow)に大別される.この2つの流
れにはいくつかの相違があるが,決定的なのは,開
Open Channel Flow
Pipe Flow
水路流れは必ず自由水面(free surface)を有する点
Fig.1 管 の
2 種
である.従って,たとえパイプの中の流れでも,パ
イプの断面全部に水が満たされていなければ,開水路流れとして扱わなければならない.
(Fig.1の例参照)
管路流れでは,流水断面の形状や面積が容易に得られるのに対し,開水路流れでは,一般
に水路断面は複雑な形状をしており,さらに水深によって断面積が大きく変化する.また,
管路流れでは,流れの駆動力は圧力のみであるが,開水路流れでは,圧力の他に水路勾配,
流量,水深等が相互に関連して流れを決める.従って,開水路流れの解析は,管路に比べ複
雑である.
(2)開水路流れの分類
流れを時間的および空間的変化に着目して分類すると,以下のようになる.
時間的変化 空間的変化
非定常流(unsteady flow)
時間的に変化する
定常流(steady flow) 等流((steady)uniform flow)
時間的に変化しない 空間のどこでも流れの様子が同じ
不等流(varied flow,non-uniform flow)
場所により流れの様子が異なる
また,非定常流と不等流については,変化が短い距離の間で起こるかどうかにより,さら
に急変流(rapidly varied flow)と漸変流(gradually varied flow)に分類される.急変流
の例としては跳水(hydraulic jump)があり,漸変流の例には洪水波(flood wave)がある.
慣性と粘性の関係からも流れは分類される.
層流(laminar flow) 粘性力>慣性力 Re<500∼12,500程度
(遷移状態(transitional state))
乱流(turbulent flow) 粘性力<慣性力 Re>12,500程度
層流,乱流の判断にはレイノルズ数(Reynolds number)を用いる.開水路流れの場合,レイ
ノルズ数 Re は次のように定義される.
Re =
VL
ν
V:流速,L:代表的な長さ(通常は水深),ν:動粘性係数
通常我々が扱う開水路流れには層流はほとんどなく,乱流状態であると考えて差し支えな
い.
また,慣性と重力の関係からも流れは分類される.
常流(subcritical flow) 慣性力<重力 Fr<1 (V<
限界流(critical flow) gH
)
慣性力=重力 Fr=1 (V=
gH
)
射流(supercritical flow) 慣性力>重力 Fr>1 (V>
gH
)
常流,射流の判断にはフルード数(Froude number)を用いる.フルード数 Fr は以下のよう
に定義される.
Fr
=
V
gH
V:流速,g:重力加速度,H:水深
常流と射流には物理的相違点がある.それは,上流の流れが下流の影響を受けるかどうか
という点である.一般に開水路の微小撹乱の波速は
gH
なので,流速がこれより速けれ
ば,下流で起こった微小撹乱は上流には伝播しない.従って常流では下流の影響が上流に伝
わるが,射流の場合下流の影響は受けないことが分かる.
(3)開水路流れの基礎方程式(basic
(3)開水路流れの基礎方程式
(basic equation)
簡単のために矩形水路の1次元流れを考えると,未知数は流速(v)と水深(h)の2つであ
る.従って,2本の方程式があれば解けるはずである.
まず最初に考えられるのが,質量保存である.これは水理学では連続式(equation of continuity)と呼ばれ,1次元矩形水路では次のように書かれる.
¶h ¶ ( vh)
+
=0
¶t
¶x
次に考えられるのが,運動量の保存である.これは運動量方程式(equation of momentum)
と呼ばれる.
1 ¶v 1 ¶v 2 ¶h
+
+ = (i0 - i f ) i0:水路勾配,if:摩擦勾配
g ¶t 2 g ¶x ¶x
最後にエネルギーの保存も考えられる.既に基礎方程式が2本あるので,不要に思われる
が,特に不等流解析に非常に役に立つ.この式はベルヌイ(Beroulli)の定理として有名であ
る.
v
2
2g
+ z +
p
ρg
=
E = const . p:圧力,E:比エネルギー
上に挙げた3つの式は自分で導けるように.
3 . 実験
下流端を堰上げた開水路中に,測定区間(4∼8m程度)を設定する.インバータの周波
数を設定し,流れが安定するまで待つ.水面変動がなくなったことを確認した後,ポイント
ゲージで水位を測定する.次に,下流端を一瞬堰止め,微小波を発生させ,測定区間を通過
する時間を測定する.1つの水位で最低5回測定し,流量や堰の高さを変えることにより,
5つ以上の水位を設定すること.なお,一回流れを乱すと,上流端で波が反射したりしてし
ばらくの間は振動するので,必ず流れが安定したのを確認してから次の測定を行うこと.
また,流量はインバータの周波数から,以下の式で計算すること.
Q( l / s) = 3.636( f ( Hz ) - 18) 0.6438
4.課題
(1)限界水深または限界流の定義を3通り示せ.
(2)実測した伝播速度と長波の伝播速度 gh を比較し,考察する.
常流・射流
期日
年
月
日
天気
実験者
共 同実験者
水 路幅
測定 区 間長
B(cm)
L(m)
水深
H(cm)
インバー タ
周 波数
f(Hz)
0.6438
Q(L/s) = 3.636× (f (Hz)-18)
流量
時間
遡上 速度
流速
伝 播速度
理論 値
Q(L/s)
T(s)
L/T(cm/s)
V(cm/s)
c(cm/s)
(gh) (cm/s)
平均
平均
平均
平均
平均
0.5