ドイツ留学体験記その1

ドイツ留学体験記その1
自己紹介
千葉医療福祉専門学校理学療法学科を平成14年に卒業した河
合美智子です。PT免許を取得して8年目になります。千葉医
療福祉専門学校卒業後、すぐに横浜福祉事業団で小児疾患リハ
に携わりました。現在、ドイツに留学しています。ここでは、
自分が経験している海外留学への準備と実際を皆さんに報告し
て行きたいと思います。
留学先:ドイツ(ムルナウ「Murnau」バイエルン州の南に位置する町)
病院 URL www.KlinikHochried.de
来てしまいました。ドイツ
実習の許可が下りてから、語学学校、飛行機、宿の手配などバ
タバタ。9月の中旬は、ミュンヘンで大きなフェスティバルが
あるため、宿の手配が一番大変でした。沢山の友人の助けを借
り、宿をおさえました。
9月24日に日本を発ち、9月24日の20時20分(ドイツ
時刻:ドイツと日本の時差は今現在7時間、サマータイムが終
わると8時間)にドイツへ到着し、24日・25日はホテルや、
ドイツ在住の日本人の方の部屋の一角に泊まり、今は語学学校
の寮にいます。明日から5週間のドイツ語レッスンが始り、
実習に向けて期待と緊張が高まります。
なぜドイツ?
自分が勤めていた職場で多く使われていた手技がドイツ生ま
れであったこと。なぜ、ドイツでは沢山の手技が生まれるの
か興味があったからです。
たまたま見た「PTあ!」という理学療法士協会広報誌で、
海外で働くPTの特集記事をみたことも理由に挙げられます。
偶然が呼んだ行動
「PTあ!」
に特集されていたPTの方に話を聞いてみたく、
駄目もとであちこち調べ、連絡を取ったところ、ご本人から
連絡が貰え、直接会ってお話を聞くことが出来ました
(私が連絡を取りたがっているのを知って、その方の知り合
いが連絡してくれたそうです)
。
留学に向けて準備したこと
ドイツへの留学を考え始めてから、準備に3,4年費やしま
した。まずドイツ語講座へ週1回通い始めました。
(仕事を続
けながら)
、その後、個人的にドイツの病院とやり取りし、6
ヶ月間の実習許可を頂きました。その頃から週4回ドイツ語
講座に通い、ドイツ大使館にビザ申請に何度も相談に通いま
した(これが一番大変でした)
。ビザ発行までに、通常は2∼
3ヶ月掛かるそうです。私の場合は熱意が通じたのか通常よ
りも早くビザが発行されました。
実習までの流れ
ドイツ到着(5週間の語学学校)
↓
実習開始11月 6日 ∼ 5月 6日(6ヶ月の予定)
ドイツ豆知識(基本情報)
日本との時差 約7∼8時間
北海道よりも経度が高く、フランスと並ぶEUの中核国
世界第4位の工業製品輸出国
日本と面積はほとんど変わらない。
ドイツ留学体験記その2
実習6週間が無事に終わり12月19日から1月11日
までの長期休暇に突入しました。この6週間は見学が
主でしたが、中盤頃から他のPTと一緒に治療をする
機会をもらえました。10分程度の時間でしたが、久々
にPTをすることはとても楽しかったです。そしてこの
ころからPT同士での意見交換もするようになりました。
実習の後半2週間は一人で治療をさせてもらう機会
を得ることができました。もちろんチーフ立会いのもと
です。チーフが見ているところで治療をするのは緊張
しましたが、今、自分ができることをやるしかないので、
日本で学んできたこと、実施してきたことを治療の中
で展開していきました。治療を始める前にpt(患者)
の歩行を評価し、今回の治療でどこを変えたらptにと
って良いと考えるのかをチーフに伝え、治療後にそ
の変化が得られたかどうか再評価するという流れでお
こないました。治療が終わってptが帰ってからチーフ
と一緒に治療前後の変化のと、変化しなかったことを
確認し、次回はどのような目標を持って治療をするの
かを決め、次に繋げる作業を繰り返していました。日
本で仕事をしていたころも、自分の行う治療を先輩方
に見てもらいアドバイスをもらうこともできていましたが、
経験年数を重ねるごとにそういった機会が減ってい
たので、今回の経験は久しぶりにPTの先輩からアド
バイスや現在の自分自身ができていることを評価して
もらえ、とてもよい経験でした。
※この写真はミュンヘンです。
この6週間は毎日緊張していましたが、とても充実し
ていました。日本で仕事をしていたときは、他のセラ
ピストの治療場面じっくり見学するという機会は少な
かったのですが、今期は見学が主だったので、ほか
のセラピストの治療場面の見学ができたことは貴重な
経験でした。他のセラピストが何を考え、何を目標とし、
それに向けてどのような治療を展開するのか?そして、
治療後に互いの意見を交換し、次回の治療でお互
いの意見が再現されるなど、見学を通して多くの考え
方、治療を学ぶことができ、PTとしての考え方の幅が
広がりました。
また、運動療法士が行うスポーツセラピーを見学
することもできました。私が見学したときは ADHD(注意
欠陥/多動性障害)の子どもたちに対するグループセラ
ピーを実施していました。スポーツを通じて、ADHD の
子どもたちが苦手とする集団行動、行動を起こす前
にじっくり考えることを促す治療でした。運動療法士
はプログラムを始める前に子どもたちに約束事を伝え
ます。「みんなで協力してやりとげる」「じっくり考える」
「意見のある時は勝手に話すのではなく、挙手する」
です。実際にプログラムが進む中で、この約束は必
要な場面に応じて運動療法士と子どもたちの間で何
度も確認します。プログラムの最期は、子どもたちと
一緒に「達成できたこと」「なぜうまくできたのか?」「う
まくいかなかったこと」「次回はどうすればうまくいくの
か?」などを話し合い終了します。もちろん子どもたち
には成功できたことをしっかり認識させてから、反省
につなげ、次回の治療につなげていきます。この治
療の見学は本当に興味深く、また私の治療に繋がる
ことが多かったです。子どもにとって成功体験がどれ
だけ大きな意味を持つのか改めて学ぶことができる
場でした。
この6週間の最終日にチーフに来期に向けての希望
を聞かれました。もちろん私の希望は「一人で治療を
する」ことです。私の希望を実現させるためには、今
以上にドイツ語の知識を深めることです。なので、こ
の長期休暇はドイツ語レッスンの強化期間になりま
す・・・来期に向けて頑張ります!
ドイツ豆知識(健康)
ドイツの医療水準は高く、旅行者が懸念するような健
康リスクはありません。
水道水は安心して飲む事ができるので、ボトル詰め
になった水に固執する必要はありません。
ドイツ留学体験記その3
2010 年 1 月 11 日より2期目の実習が始まり、今日
で一週目が終了しました。1月11日、朝一でチーフ
の部屋に行き、チーフから言われたことは「今期は3
人のpt(患者)を一人で治療してみて。他の2人のpt
は非常勤のPTと一緒に担当で、非常勤のPTがいな
い曜日に一人で治療。残りの6人は常勤のPTと一緒
に治療をして。」と・・・自分の希望だったものの、いざ
一人でやるとなると、かなり緊張しました。
幸いにも担当した子どもたち・親御さんは皆親切で、
私の不十分なドイツ語でも耳を傾けてくれました。も
ちろん言葉で表現しきれないときはジェスチャーや、
実際に親御さんに体験してもらったり、絵を書いたり
して伝えていました。子ども達・保護者の方々が私の
意図をくみ取ってくれることをとても有難く思いました。
だからこそptにとって有意義なPTができるように頑張
ります!
2月16日。今日で今期の6週間の集中治療が終わ
りました。最初はとにかく緊張して、一日が終わると心
身ともに疲れきってしまう日々が続いていました。治
療をしながら、説明する為に頭の中ではドイツ語を組
み立て、同時に治療の進行具合をみながら、今どん
な反応が出ていて、何が足りないのか?何をするとも
っと有効かなどを常に同時進行で考え、終業後には
自分の部屋に戻りドイツ語の勉強や市民大学のドイ
ツ語コースに週二回通ったり・・・気がつくとあっという
間に一日一日が過ぎていました。
治療の進め方は日本と同じだと思います。まず初
めに患者さんに会い評価・目標・問題点・治療方針を
決め、次回から治療を本格的に始めていきます。6週
目が終わるころに最終評価をし、Dr.に報告書を書
き終了という形です。
ド
日本との違いは、治療は個室、またはカーテンで
仕切られた2人部屋で行います。基本的には患者と
セラピスト2人のみで実施します(低年齢の子どもの
場合は保護者が同室で行うこともあります)。親子で
入院している場合は、治療後に今日の治療時の様子、
どのようなセラピーをしたのかなどを伝えて終了しま
す。
ドイツの国民性かどうかわかりませんが、治療の内
容にたいしての納得の有無に関しては即座に反応が
返ってきます。効果がないと感じられた場合は「治療
頻度が少ないのではないか?」「治療の方針が合っ
ていないのでは?」などと直接、もしくはチーフ経由
で伝えられます。このような意見は日本では批判的に
とらえられがちですが、ドイツ人は議論好きなので、こ
ういった意見がでることはお互いの理解を深めるため
の良い機会だと捉えるようで、こういった意見が出た
時に、たとえ自分の方針が保護者の考えと逆のことを
言っていたとしても、その方針を伝えることが重要で
す。そして、お互いに目標を確認し、治療の内容をよ
り深めることに繋げていきます。
振り返ってみると、相変わらず言葉が足りないもの
の、子どもたちや保護者の方から「来年もまた来ます。
そのときも是非担当してほしい。」「ゆっくりドイツ語を
話してくれるから理解しやすかった。」「もっと一緒にP
Tをしたかった。」など、嬉しい言葉を沢山いただきま
した。言葉の面での苦労はまだまだありますが、こう
いった言葉をいただけたことで、私のドイツ語を勉強
する気持も更に前向きになりました。
次回の治療に向けてさらにドイツ語の勉強と、治療
を頑張ります。
ドイツ豆知識(気候)
ドイツは北に位置しますが(赤道よりも北極圏に近い)、
気温は驚くほど穏やかです。低地では、極端な暑さが
続くことはあまりありません。湿った西風のため、夏の気
温は20度中頃まで上がり、冬には氷点下近くまで下が
ります。最も暖かい夏の月の間わずかに多くなるものの
雨量は一年を通して一定しています。