市民事業の経済倫理としての 商人道

市民事業の経済倫理としての
商人道
市民事業論の三つの段階

第1段階
市民事業論の三つの段階

第1段階──第三の領域発見の段階
市場・営利企
業セクター
行政セクター
NPO・協同
組合・コミュ
ニティ
市民事業論の三つの段階

第2段階
市民事業論の三つの段階

第2段階──バランス論の段階
市民事業
ミッション性
採算性
市場セクター
経営破綻
拝金主義
市民事業論の三つの段階

第3段階
市民事業論の三つの段階

第3段階──アソシエーション概念精緻
化の段階
経営破綻とは別の形での「失敗」
市民事業の腐敗・変質
原因は
閉鎖性
• 執行部独裁、人権抑圧、低所得酷使
• 対外不祥事
↑ミッションがかえって変質を推進
市民事業論の三つの段階

第3段階──アソシエーション概念精緻
化の段階
市場・営利企
業セクター
行政セクター
NPO・協同
組合・コミュ
ニティ
市民事業論の三つの段階

第3段階──アソシエーション概念精緻
化の段階
市場・営利企
業セクター
行政セクター
開放的
アソシエーション
個人の自立
閉鎖的
身内共同体
個人の埋没
市民事業論四段階目の課題

閉鎖集団化をさせないミッション・倫理
観の探求


どんなミッションを掲げてはならないか
アソシエーションの倫理は身内共同体の倫
理とどうちがうのか
「市場かミッションか」ではない!
取引は「汚れ仕事」ではなくそれ自体がミッション
ジェイコブズ『市場の倫理 統
治の倫理』

市場の倫理 (商人道)















暴力を締め出せ
自発的に合意せよ
正直たれ
他人や外国人とも気安く協力
せよ
競争せよ
他人への誠実
契約尊重
創意工夫の発揮
新奇・発明を取り入れよ
効率を高めよ
快適と便利さの向上
目的のために異説を唱えよ
個人主義開放
生産的目的に投資せよ
勤勉なれ
社会の倫理
節倹たれ
楽観せよ

統治の倫理 (武士道)
取引を避けよ
勇敢であれ
規律尊守
伝統堅持
位階尊重
忠実たれ
身内への忠実
復讐せよ
目的のためには欺け
余暇を豊かに使え
見栄を張れ
気前よく施せ
排他的であれ
剛毅たれ
身内集団社会の倫理
運命甘受
名誉を尊べ















両倫理の違い:典型例

1.
2.
あなたが経営者だとします。不祥事が起こ
り、幅広い顧客の信頼を取り戻すためには
個人主義開放
忠実な身内を切り捨てなければならない状
社会の倫理
況におかれたとします。このとき、どちら
の行動が道徳的だと思いますか。
幅広い顧客の信頼を優先することが道徳的
である
あくまで忠実な身内をかばうことが道徳的
である
身内集団社会の倫理
これまでの日本社
会はこちらが主
互いに相容れない倫理観
誰でも身内はかわいい
ものだわ。それは理解
できる。でもそんな私
情を「正義」というの
は偽善だわ。
身内をかばう
のが正義だ!!
互いに相容れない倫理観
客に見放されたら食って
いけないからな。それは
理解できる。でもそんな
私益を「正義」というの
は偽善だ。
顧客を優先する
のが正義よ!!
なぜこんな違いがでるのか
悪意のリスクをどう処理する

方法1:絶対に裏切れない人間関係を固
定して、その中で社会を完結する。
「内は安心、外は危険」(外に出るなら覚悟せよ)
→ 身内集団社会へ
(身内を裏切るのが最大の罪。)

方法2:危険と思ったら場所や相手を変
える。方法を改める。
→ 個人主義開放社会へ(場所や相手の変更は悪
事ではなくむしろいいこと)
従来の日本の身内集団原理

固定的関係による経済システム





日本型雇用慣行
安定株主・企業系列・長期的取引
規制による業界団体の保護
貿易制限による国内産業の保護
身内集団の倫理がふさわしい
日本の身内集団倫理の例

三菱重工爆破テロの外国特派員報道
「けが人を傍観。介抱するのは同僚だけ」

山一証券倒産時の社長
泣いて「社員は悪くありません」

尼崎事故列車に乗っていたJR社員
上司に連絡して指示通り出社

ダグラス=グラマン事件の日商岩井社員
「会社の生命は永遠です」と会社をかばって自殺。
最近の日本の企業不祥事

雪印乳業事件
大阪工場で製造した低脂肪乳で大規模な食中毒が発生

三菱自工事件
ユーザーからのクレーム処理を当局に報告せず隠ぺい






雪印食品牛肉偽装事件
日本ハム牛肉偽装事件
三菱自動車欠陥車事故
ホリエモン・村上ファンド事件
耐震強度偽造事件
パロマ事件
昨年の企業不祥事







不二家期限切れ原材料問題
あるあるねつ造事件
ミートホープ食肉偽造事件
「白い恋人」事件
「赤福」偽装事件
比内地鶏事件
船場吉兆事件・・・
日本では「仲間の目」が神

旧軍兵士による中国大陸での強姦等
「女も犯せないのは腰抜け」と仲間から見られる


死に急ぐ特攻隊員
集団自決→捕虜は対米協力ドイツ人・イタリア人には
ない

抑留下ソ連で簡単に洗脳
ドイツ人・イタリア人捕虜では洗脳に失敗



連合赤軍事件・内ゲバ
オウム真理教事件
少年によるリンチ事件の心理
みんなヤバイと思っているが、仲間から腰抜けとみられるのがい
やで言い出せない
今の若者は個人主義的だから
無軌道なのか?




NO!
ケータイメール族、ジベタリアン、ガ
ングロ・・・
↑
数人の仲間集団のつながりを重視
仲間集団以外の者からの評価は視野外
旧軍・赤軍・オウム・不祥事企業と一緒
(集団の規模が小さくなっているだけ)
某大学大麻事件で

「仲間を売り
たくない」と
口をわらない
身内集団倫理からの脱却を

これらすべての根源は身内集団の倫理



仲間を裏切るな、見捨てるな
仲間以外のことは考えなくていい
しかし身内集団は急速に解体
グローバル化・市場化
→企業共同体、企業集団、国家の枠組み等の解体

個人主義開放社会の倫理への転換が必要
「見知らぬ他人にも誠実に」 商人道
市民事業のミッション価値は
商人道

ボランティアも非営利事業も!
「ボランティア」へのマイナ
スイメージの違い

小沢亘氏の国際比較調査(小沢亘『ボランティア
の文化社会学』世界思想社)


日本とカナダで、「自己犠牲」「強制
的な」「おせっかいな」等にはあまり
違いがない
「偽善的」というイメージが日本の特
徴(日本38.5%、カナダ4.9%)
→なぜか?
利他・利己イメージが違う

開放市場社会の倫理の発想
「取引すればお互いトクをする」
(利己であり利他でもある。商売はそれ自体善行)
→延長線上にボランティア
(広い意味での利己の限りでの利他)

身内集団社会の倫理の発想
「身内へは見返りなき奉仕が正義」
「利己行為は他人相手にするもの」
(そのときは食い物にしてよい)
市場取引を「方便」視する危険

市場取引を「美しいミッションを実現
するためのやむを得ない汚れ仕事」と
位置づけてはならない。
明治の解決(和魂洋才)




武士階級の倫理(身内集団の倫理)を中
心に置く→学校教育で全国民に
市場取引や科学技術は手段。それ自体
に倫理がない。
目的は国家=身内集団を富ませること。
手段は目的からの逸脱。結果として目
的にかなうかぎり大目に見られる。
和魂洋才方式の行き詰まり

目的(国家の近代化)が達成されると、
手段が暴走(それ自体の倫理不在)
(大正自由主義→財閥の暴利・政党の政争)
目的
手段
暴走
市場取引
逸脱
国家
=身内集団
「目的」による引っ張り返し
=昭和の軍国主義
市民事業でも同じ




市場活動の「必要悪」視
↓
「競争に勝つため」低所得で酷使
取引相手の手段視→不祥事
異論や内部告発への抑圧
↑
身内集団倫理によって正当化
引き継ぐべきは商人道