地磁気が気候に与える影響の検証 -古気候学的視点から- 北場育子*1・兵頭政幸1,2・加藤茂弘3・松下まり子4 1神戸大学大学院 理学研究科・2神戸大学 内海域環境教育センター 3兵庫県立人と自然の博物館・4奈良文化財研究所 宇宙線が誘起する雲の効果とその検証 宇宙線が誘起する雲(スベンスマルク効果)は、 気候に影響を与えるか? 銀河宇宙線強度と低層雲量 南半球磁気異常における負の放射フラックス + Svensmark (2007) - Vieira & da Silva (2006) 宇宙線が誘起する雲の効果とその検証 過去80万年間の地磁気強度 Present intensity 10-20% MBB Guyodo and Valet (1999) マツヤマ-ブリュンヌ地磁気逆転期の気候を復元し、 古気候学的視点から地磁気強度と気候の関連を検証する 試料の概要と分析手法 大阪湾1700 m コア M-B 地磁気逆転トランジション ステージ19の海成層中に 6 mにわたって記録されている ★ (Hyodo et al. 2006) half lock-in depth <1 cm (Hyodo et al. 1984) 分析 地磁気逆転トランジションを中心に 約200年の時間分解能で花粉分析 Kitaba et al. (2009) 年代モデル (Hyodo et al., 2006) Hyodo et al. (2006) Bassinot et al. (1994) MBB Marine 海水準 上昇 花粉分析結果 海水準変動と気候変化 地磁気強度変動と気候変化 寒冷化の規模 ステージ19の気候の記録 房総半島 イタリア南部 低率のカシ類 高率のトウヒ属と 低率のアカガシ亜属 Capraro et al. (2005) Okuda et al. (2006) ★ ★ ★ This study ★ 大阪湾 コロンビア ブナ属の増加と アカガシ亜属の減少 森林限界高度の低下 Hooghiemstra & Ran (1994) ★ 南極 Dome C 寒冷化は、中・低緯度域で起こった 可能性が高い 気温低下は見られない Jouzel et al. (2007) まとめ 地磁気逆転期における気候変化を復元した。 1.ステージ19の最高海面期に起こった寒冷化は、 軌道強制力では説明できない異常な現象である。 2.寒冷化は、マツヤマ-ブリュンヌ地磁気逆転期の 地磁気強度が大幅に減少した期間に限られる。 その後、地磁気強度の回復にあわせて温暖化が起こる。 以上の結果は、 地磁気が宇宙線量の変動を介して、 気候に影響を与える可能性を示唆している。
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