始めてみよう介護予防 通所サービス事業 ~ 事業開始のために~ 佐藤 司 介護予防が求められる背景 要支援者(要支援1・2)の増加。 これらの軽度者は廃用症候群(生 活不活発病)が多い。 早い時期から、ポイントを抑えて集 中的に予防対策、対応をとる。 これらは通所サービスで行う 選択的サービス 運動器の機能向上 栄養改善 口腔機能の向上 アクティビティー 基本的視点 自分でできることはできる限り本人 が行う 目的指向型のサービス提供 外出機会の確保 「体力・活動」と「意欲」の重視 運動器の機能向上とは 新予防給付は、要介護認定にお いて要支援1、要支援2と判定され、 運動器の機能向上が必要と判断 されたものに対し、運動器の機能 向上に関するサービスを提供して、 これにより自立した生活機能を維 持し、要介護状態に陥ることを予 防します。 サービスの流れ(提供前) ①地域包括支援センターから依頼 ②地域包括支援センターから 介護予防ケアプラン原案の提供 ③サービス担当者会議の開催 (運動器機能向上サービスに関する ご本人・ご家族の希望の聴取) サービスの流れ(提供時) ①介護予防ケアプランの提供 ②事前アセスメント (サービス担当者の解決すべき課題の把 握、利用開始時におけるリスクの確認) ③運動器機能計画票および 通所介護計画書の作成 ④利用者、家族への説明、同意 ⑤運動器機能向上サービスの提供 ⑥実施上の問題点の把握(モニタリング) ⑦事後アセスメント(3ヵ月後) ⑧本人・家族への説明、同意 ⑨地域包括支援センターへの報告 事前アセスメント 利用者の運動を実施する際に考 慮するリスクの評価 体力水準の評価 生活機能拡大のための課題等を 把握する 医療従事者によるリスクの評価 介護予防ケアプラン、利用者等か らの聴取により、全般的な状況(現 病歴、既往歴、家族歴、服薬、転 倒経験、めまい・動悸・息切れ等 の自覚症状の有無、血圧・脈拍の 状況など)を評価する。 機能訓練指導員による 運動器の機能の評価 体力測定、関節可動域、筋力、感 覚、痛み、身体アライメント、日常 生活活動能力等について評価す る。 体力測定項目 運動機能領域 筋力の領域 種目 評価内容 握力 筋力 下肢伸展筋力 筋力 柔軟性の領域 長座体前屈 柔軟性 バランスの 領域 開眼片足立ち時間 静的バランス能力 フアンクショナルリーチ 動的バランス能力 5m最大歩行速度 歩行能力 歩行の領域 Timed Up &Goテスト 機能的移動能力 握力‐‐‐筋力 ① 両足を開いて安定した基本的立位姿 勢をとる。 ② 握りは示指の近位指節間関節がほぼ 垂直になるように握り幅を調節する。 ③ 握力計の指針を外側にして、体に触れ ないように肩を軽く外転位にし、力いっ ぱい握らせる。 ④ 測定の際は、反対の手で押さえたり、 手を振ったりしないように注意する。 下肢伸展筋力‐‐‐筋力 ①椅子に座り膝が90°屈曲位になるよう に下腿を下垂する。上肢は椅子の両端 をつかむ。 ②筋力測定器を下腿下部前面にあて軽く 力を入れ、痛み、姿勢を確認する。 ③利き足(ボ-ルを蹴る足)あるいは強い 方の足の等尺性膝伸展筋力を3 秒程 度、2 回測定する。 開眼片脚立ち時間‐‐‐ 静的バランス能力 ①両手は側方に軽くおろし、片足を床から 離し、次のいずれかの状態が発生するま での時間を測定する。 ②測定者は対象者の傍らに立ち安全を確 保する。 ③測定時間は60 秒以内とし2 回測定する。 ④教示は「目を開けたまま、この状態をでき るだけ長く保ってください」に統一する。 長座位体前屈‐‐‐柔軟性 ①対象者は背筋を伸ばし、壁に尻をぴった りとつけ長座位姿勢をとる。 ②肘を伸ばして、そのまま下ろし、手のひら が台の中央にくるように調節する。 ③指針が0点にあることを確認する。 ④対象者は両手を台から離さずにゆっくりと 前屈し、できるだけ遠くまで測定機器を滑 らせる。 ⑤ 最大前屈した後、台から手を離す。 ファンクショナルリーチ‐‐‐ 動的バランス能力 ①壁に体側を向けて立つ。 ②手は軽く握り、両腕を90°挙上させる。そ の際、体幹が回旋しないよう注意する。 ③肩の高さに挙げた拳の先端をマークし、 壁に遠い方の手をおろす。 ④拳は同じ高さを維持したまま、足も動かさ ずにできるだけ前方へ手を伸ばさせ最長 地点をマークする。この際、踵を上げて爪 先立ちになっても可とする。 ⑤元の状態に戻れないなどの場合は再度 測定する Timed up & go テスト‐‐‐ 機能的移動能力 ①椅子から立ち上がり3m 先の目印を折り返 し、再び椅子に座るまでの時間を計測する。 ②スタート肢位は椅子の背もたれに背中をつ け、肘掛けに手を置いた姿勢とする。 ③ 測定者の掛け声に従い、対象者にとって快 適かつ安全な速さで一連の動作を行わせる ④回り方は被験者の自由とする。 ⑤教示は「できるだけ速く回ってください」に統 一する。 5m最大歩行時間‐‐‐歩行能力 ①予備路2m ずつ、測定区間5m の歩行路を 教示に従い歩いてもらう。 ②遊脚相にある足部が測定区間始まりの テープを越えた時点から、測定区間終わり のテープを遊脚相の足部が越えるまでの所 要時間を計測する。 ③ 教示は「できるだけ速く歩いて下さい」に統 一する。 主観的健康感または 健康関連QOL 主観的健康感:あなたの健康感は? ①よい②まあよい③ふつう ④あまりよくない⑤よくない SF-36:健康関連QOL尺度のひとつ、 健康状態を本人の視点からとらえ評価 するもので、36の項目からなり、8つの 下位尺度がある。 トレーニング開始前と3ヵ月後に調査 利用者自身の目標(二一ズ) 「どのような生活」の改善を期待している かを明らかにし、取り組むことが重要。 地域包括支援センタ一で作成される介護 予防ケアプランとの整合性をとる。 「日常生活において、どのような効果や生 活の変化を必要とするのか」という利用者 自身の目標を設定する。 目標は、具体的で、概ね3か月程度で達 成できるレベルのものを取り上げる。 利用者自身の目標(ニーズ) 例1 バスに乗って友人の家まで行き たい。 例2 近くのスーパーまで歩いて、1人 で買い物をできるようになりたい。 例3 階段の昇り降りが楽になり、洗濯 物を2階に干したい。 運動器機能向上計画票 原案の作成 長期目標 概ね3か月程度で達成可能な目標。 短期目標 概ね1ケ月程度で達成可能な目標。 目標は、ケアプランや地域包括支援セ ンターで作成される介護予防ケアプラン と、整合性が図れたもの。 長期目標 (概ね3ヵ月程度) 例1.バスに一人で乗れるようになるため に、歩行能力、階段昇降能力の向上を 計る。 例2.1人で買い物ができるようになるた めに、歩行能力、歩行バランス能力の 向上を図る。 例3.2階に洗濯物を干せるようになるた めに、階段昇降能力、立位での機能的 な動作能力の向上を図る。 短期目標 (概ね1ヵ月程度) 第1期 歩行能力を高めるための下 肢,体幹筋を中心とした基本的な運 動を習得し運動の習慣化を図る。 第2期 家の近所の散歩が楽にできる。 第3期 30分程度の散歩ができる。バ スの階段を楽に昇降できる。 運動機能向上計画票の作成 利用者に係わる長期目標および 短期目標を踏まえ、機能訓練指導 員、介護職員、生活相談員その他 の職種の者が共同して、利用者ご とに、実施する運動の種類、実施 期間、実施頻度、1回当りの実施 時間、実施形態(個別・集団)等を 記載した運動器機能向上計画を 作成する。 利用者及び家族への説明と同意 プログラムの内容、進め方、運動 器機能向上サービスの提供による 効果、リスク、緊急時の対応等を 利用者および家族に説明し、同意 を得る。 運動器機能向上サービス提供 運動器機能向上計画票に基づき、 利用者毎に運動器機能向上サービ スを提供する。 運動を実施する際には毎回必ず、 血圧・脈拍の測定、体調のチェック (痛みの有無、睡眠状況、服薬の確 認、食事の状況など)を行い、状況に よっては、運動量の調整を行う。 参加の事前注意事項 ①運動直前の食事はさける。 ②水分補給を十分に行う。 ③睡眠不足、体調不良の時には無理をし ない。 ④顔面蒼白、冷や汗、吐き気、嘔吐、脈 拍・血圧、感冒、胸痛、頭痛、めまい、 下痢など身体に何らかの変調がある場 合には、従事者に伝える 運動禁忌事項 安静時に収縮期血圧180mmHg以上、 または拡張期血圧110mmHg以上であ る場合。 安静時脈拍数が110 拍以上、または40 拍以下の場合。 いつもと異なる脈の不整がある場合。 その他、体調不良などの運動中の留意 事項に述べた自覚症状を訴える場合。 事後アセスメント 目標の達成と客観的な運動器の機 能向上の状態を評価する。 ①機能訓練指導員による評価 ②体力測定(身体機能評価) ③主観的健康感又は健康関連QOL 地域包括支援センターへの報告 事前アセスメント、事後アセスメン トの結果を整理し、目標の達成状 況、客観的な運動器の変化(体力 測定の結果等)、主観的な健康感 の変化等を報告する。
© Copyright 2024 ExpyDoc