発達障害のある方の 一貫した支援システム

発達障害のある方の
一貫した支援システム
WEコラボ研究2009中間まとめ
(20091212)
加瀬 進
(東京学芸大学)
<研究室ブログ>
http://www.we-collaboration.com/
<最近の本>
『福祉と教育のWEコラボ~障害児の<育ち>を支える』
エンパワメント研究所、2009年10月刊行、1470円
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日本型<ホストセンター>の最前線
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<ホストセンター>とは?
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ライフステージに応じて重きを置くべき主活動を的確に見
据え、暮らしの構成要素(住まう・働く・学ぶ・楽しむ・健康
を維持する等)ごとのニーズを地域の社会資源で充足し
つつ、必要な社会資源を開拓していく機能の中心的な担
い手とネットワーク。
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Cf:スウェーデンにおけるハビリテーション・システム
日本型<ホストセンター>の最前線
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長野県障害者総合相談支援センターの凄み
滋賀県甲賀地域ネット相談サポートセンターと湖南市・甲
賀市発達支援室の協働体制
その上で尚、見えてくる発達障害
対応における課題は何か? 2
早期発見・早期<支援>という課題
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「障害」を見落とさない、放っておかない
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きめ細やかな健診と「選べる(敷居の低い)」療育体制
「合同園訪問」というアウトリーチの成果と普及
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就学から就学後への継続をどのように担保するか
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Cf)スウェーデンにおける「就学前クラス」という制度
Cf)甲賀エリアの「発達支援室」「ここあいパスポート」の取り組み
「子どもの貧困」にどう向き合うか?
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子ども7人に1人が相対的貧困層という現実
追いつめられる母子家庭~貧困率は66%
保育園は<日本型ヘッド・スタート>事業になりうるか?
3
ヘッドスタート(Head Start)
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アメリカ合衆国の健康及び人的サービス省(Department for Health
and Human Services、略称HHS)の行っているプログラムで、低所得
者層の3歳から4歳の子供を対象としたものである。
「ヘッドスタート」という言葉自体は、スマートで円滑な滑り出し、順調な出
発を意味するもので、就学前に少なくともアルファベットが読めるように、
10までの数が数えられるように、というのが目標である。
これは、低所得者層の子供や家族に教育だけでなく、健康、栄養そして
両親をも巻き込んだサービスを提供しようというもので、2005年を例に
とっていえば、6,800億ドルの予算が、905万人以上の子供たちのため
に支出されている。
サービスは、1,604のさまざまなプログラムにより提供され、ほとんどす
べての州、すべての郡にまたがって48,000以上の教室で実施されてい
る。平均して、1人の子供に対して7,222ドルの政府支出がなされてい
るといってよいだろう。これは、連邦政府レベルの事業としては、宇宙開
発に次ぐ予算規模である。
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フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 より
4
学齢期の課題~通常学校との協働
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機能する校内支援体制づくりをどう応援するか
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ユニバーサルデザインの授業づくりが基本
それをリードするホールスクールアプローチ
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<わかった・できた・楽しいね>という通常学級の枠を広げつつ、
特別支援学級・特別支援学校を活用していくという理解。
 Cf)スウェーデンの「リソース学校」と「フリースクールSAGA」
 Cf)NPO法人み・らいずの「塾・ラーンメイト」
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スクリーニング機構としての学校の可能性
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学校でも<障害を見落とさない、放っておかない>
スクールソーシャルワークは誰が、どのように担うのか?
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スクールソーシャルワーカーの新規配置?特別支援教育Coの専
任化?30人学級の実現?児童指導・生徒指導担当教員への支
援?相談支援専門員とのコラボ?
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思春期・青年期の課題
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高校進学時の移行支援不足
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アスペルガー男児の移行支援をした西谷淳先生の実践報告
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「もっと早くこのような会議をもてていたら、もっと早く安心できていた。どこに相
談すればよいのか悩んでいた。同じようなことで困っておられる方がたくさんお
られると思うので、地域に頼れる機関がたくさんあることを広めてほしい。」(母
親の言葉)
どこに、どのようなアクセスポイントをつくるべきか?
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不登校13万人、高校中退者7.7万人という現実の中で。
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青砥恭『ドキュメント高校中退-いま、貧困がうまれる場所』ちくま新書
「障害」ではなく、「困り感」で利用できる<居場所>づくり
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長野市保健所PDDデイケア報告との協議
 SSTを学ぶ場(SSTは素敵、でもすべてじゃない→ホームかなざわ)+安心できる場、
受け入れられる場、成功体験を積む場、相談できる場、同じような仲間に出会う場
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就労生活へ向けた息の長い助走と伴走の保障
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ほくしん圏域障害者就業・生活支援センターの取り組み
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働き・暮らし応援センター‘りらく’(滋賀)の取り組み
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普通高校と連携した就労移行支援
寄り添う生活相談支援の展開
NPO法人み・らいず(大阪)の取り組み
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早期就労体験事業の示唆と課題
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「障害」の告知と開示
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アスペルガー症候群の娘を持つ母親からの質問
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「いろいろあって・・・ようやくこうした会にも出席できるようになって・・・今は普
通の中学で過ごせていますが・・・あの・・・やっぱり「障害者」として生きようっ
て言った方がよいのかどうか・・・何か良いアドバイスをいただけませんか?」
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創り上げた支援のネットワークは、ほぼ<障害者支援ネットワーク>という現実
障害/困り感/生きにくさをめぐって
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手帳を持つことは「レッテル貼り」と考える親に、手帳を持つことで得られるメ
リットを具体的に伝え、使うか使わないか、開示するかしないかは選べばよ
いのでは?というアドバイスは必要。
制度に則った支援のネットワークは障害者福祉ネットになるという現実がある
として、同心円的な支援ネットを外につくり、行き来をサポートしながら、障害
の告知・開示の問題に迫っていけるようにしたい。
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み・らいずのまちづくり・イベントなど敷居の低いアクセスポイントが鍵
「親に障害に対する理解がない」とあっけらかんと指摘する「支援」者には、
「そうした親のしんどさに対する共感的理解がない」という理解も必要。
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