DNA分析によるコンブ類の原産地 判別技術の開発 公益財団法人函館地域産業振興財団 北海道立工業技術センター 研究開発部 食産業技術支援G 研究主任 清水健志 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 食品加工研究センター 食品バイオ部 食品バイオG 研究主幹 八十川大輔* 日本と世界のコンブ生産量 北海道で水揚げされる主なコンブ 世界のコンブ生産量 600 500 リシリコンブ 日本 生産量 2万トン ホソメコンブ ガッガラ コンブ 生産量(万トン) オニコンブ 韓国他 400 中国 300 200 100 ガゴメ マコンブ ミツイシ コンブ ナガコンブ 0 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2011 ・今後、北海道産コンブの競争力を強化していくことが重要 ・産地を証明できる科学的手法の開発は北海道ブランドの維持・向上にも有効 食品ブランドと判別技術 • 消費者が食品を選択する際、ブランド力のある種(品種)や原産地の表 示は価格などを判断する基準のひとつとなっている。 • 近年、日本では品種・産地に関する虚偽表示が問題となっている。 • ブランド価値を「守る・育てる」ことを目的に、表示内容を確認できる判 別技術が開発されている。 タラバガニとアブラガニ 米の品種 ウナギの産地 地域資源の判別技術開発への取り組み 文科省の地域イノベーション戦略支援プログラム(マリン バイオクラスター事業) DNA 【研究体制】 DNA分析による判別技術 その他 近赤外など 高精度な 判別技術 微量 元素 ・工業技術センター ・北大大学院水産科学研究院 ・食品加工研究センター ・農林水産消費安全技術センター 微量元素分析による判別技術 ・工業技術センター 安定 同位体 安定同位体比分析による判別技術 ・工業技術センター ・食品総合研究所 種・産地判別におけるDNA分析の流れ 産地A 産地B コンブ試料 【抽出】 細胞を溶かして DNAを取り出す 【増幅】 分析に必要な量を 複製する 産地A:TAGCCAAAGTCAGGCAT 産地B:TAGTCAAAGTCGGGCAT 【判別】 塩基配列を比較し、異なる配列を確認 【分析】 DNAを解読する コンブに含まれるDNAの種類と特徴 DNAが含まれる場所 葉緑体 核 ミトコンドリア 核 葉緑体 ミトコンドリア 細胞あたりの 個数 1個 数個~数 百個 数個~数 百個 多い→ 抽出しやすい DNAの大きさ (塩基数) 大きい (数十億) 小さい (数万~数 百万) 小さい (数万~数 百万) 小さい→ 調べやすい 早い 遅い 早い 早い→ 違いが多い DNAの 進化速度 ミトコンドリアDNA(mtDNA)をターゲットに判別技術の開発を検討 ミトコンドリアDNA情報の データベース化 コンブ類12種のミトコンドリアDNA ガゴメ、マコンブ、ホソメコンブ、リシリコンブ、 オニコンブ、エナガコンブ、ミツイシコンブ、 ガッガラコンブ、トロロコンブ、チヂミコンブ、 ナガコンブ、スジメ DNAの抽出と解読 様々なコンブ類のミトコンドリアDNA (約38,000塩基)について解読し、 DNAデータベースを構築した コンブ類試料の収集場所 マコンブ系コンブ ・マコンブ ・ホソメコンブ ・リシリコンブ ・オニコンブ 【採集場所】 日本,中国,韓国 その他のコンブ ・ミツイシコンブ ・ナガコンブ ・ガッガラコンブ ・ガゴメ ・トロロコンブ ・チジミコンブ ・エナガコンブ ・スジメ 【採集場所】 全て日本 コンブ類の種類とDNAの違い ガゴメ トロロコンブ チヂミコンブ ガッガラコンブ ・違いが明確 ・輸入コンブと見分けることが 可能 原産国判別に利用 ナガコンブ ミツイシコンブ マコンブ ホソメコンブ マコンブ系コンブ リシリコンブ ・違いが極めて少ない オニコンブ スジメ 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 マコンブ系コンブとして扱うことと した 国内外のマコンブのミトコンドリアDNA情報の データベース化と比較解析 マコンブのmtDNA:環状、約38,000塩基 日・中・韓で異なる塩基が600塩基内に含まれている箇所 中国産のみ異なる塩基(8箇所) 韓国産のみ異なる塩基(19箇所) 通常のDNA分析で読める長さ(600塩基) 一度のDNA分析で各産地を判 別できる(分析に利用しやすい) と考えられる領域を確認した マコンブの原産国判別精度 試料 道南 道央 日本 道北 道東 東北 煙台 中国 韓国 多型パターン 原産国判別率 日本型 日本型 日本型 日本型 100% (377試料) 日本産マコンブを日本産として 判別できる精度 96.5% (201試料) 中国産マコンブを中国産として 判別できる精度 94.7% (75試料) 韓国産マコンブを韓国産として 判別できる精度 日本型 中国型 威海 大連 福建 中国型 日本型 中国型 莞島 韓国型 中国型 日本型 各原産国に特異的な違い(塩基多型)を見出すことができたため、 次に分析法としての評価試験を行うこととした 判別分析法としての評価 工業技術センター 食品加工 研究センター 同一の分析法と試料を 使用して、それぞれで 判別分析を実施 FAMIC 神戸センター (独)農林水産消費 安全技術センター FAMIC 本部 【評価項目】 ・コンブ類の種判別 マコンブ ミツイシコンブ ナガコンブ ガッガラコンブ ガゴメ ・コンブの原産地判別 日本 中国 韓国 全ての機関でコンブ類を正確 に判別できることが確認された また、本判別分析法について、 特許を出願 まとめ コンブの原産国判別方法並びに プライマー及びプライマーを含むキット コンブ産地判別 キット マニュアル マニュアル 従来技術とその問題点 コンブの原産国鑑別については、藻体内の無機 元素組成を指標としたものが開発されているが、 DNA分析を用いた産地判別技術については報告 がない。また、元素組成については ○マコンブ、リシリコンブおよびミツイシコンブ以外の コンブを分析対象とすることができない。 ○判別精度が生育環境変化に影響を受ける等の問 題があり、広く利用されるまでには至っていない。 新技術の特徴・従来技術との比較 • 日本産、中国産および韓国産マコンブの判別が 可能である。 • マコンブ(ホソメコンブ、リシリコンブ、オニコンブ を含む)とミツイシコンブ、ナガコンブ、ガッガラコ ンブ、チヂミコンブ、ガゴメ、トロロコンブのそれ ぞれを識別可能となった。 • 昆布の生育環境変化によらず判別が可能な技 術である。 想定される用途 • 国内で市販されているコンブについて、国産コ ンブと中国産、韓国産の判別が可能であること から、産地の証明や偽装の防止・摘発に有用と 考えられる。 • また、マコンブ(ホソメコンブ、リシリコンブ、オニ コンブを含む)とミツイシコンブ、ナガコンブ、ガッ ガラコンブ、チヂミコンブ、ガゴメ、トロロコンブの 種判別に利用可能である。 実用化に向けた課題 • 現在、判別技術についてはキット化が可能なところま で開発済み。しかし、開発したキットを使用した判別分 析においての妥当性確認が必要。 • 今後、キットを用いた判別分析について実験データを 取得し、標準法的な分析手法とするための条件設定 が必要。 • 将来的には実用化の促進に向けて、調理・加熱等、 加工済みコンブへの適用可能性を追求。 企業への期待 • 未解決の妥当性の確認については、複数の研 究室間での実証試験により克服可能と考える。 • DNA分析技術を持つ、企業との共同研究を希 望。 • また、食品の分析業務を行なっている企業に は、本技術の導入が有効。 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:コンブの原産国判別方法並びにプライマー 及びプライマーを含むキット • 出願番号:特願2014-38204 • 出願人:公益財団法人函館地域産業振興財団 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 • 発明者:清水健志、八十川大輔 お問い合わせ先 公益財団法人函館地域産業振興財団 北海道立工業技術センター TEL FAX 0138-34-2600 0138-34-2601 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 研究企画部知的財産グループ TEL 011-747-2806 FAX 011-747-0211 e-mail h q – r p s @ h r o . o r . j p
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