虐待高齢者の受け入れ 問題提起と課題 社会福祉法人 松園福祉会 特別養護老人ホームあすなろ園 事務長 中塚 裕之 受け入れ実績 事 例 A B C D E 虐待の種類 介護放棄 経済的 身体的 被虐待者 虐待者 対応内容 子(同居) 入所 子夫婦(同居) 措置入所 身体的 心理的 80代 女性 要介護2 70代 男性 要介護2 90代 女性 要介護1 子(同居) 短期入所生活介 護→入所 心理的 経済的 介護放棄 経済的 60代 女性 自立 80代 女性 要介護1 甥(同一敷地内) 園内宿泊 (超法規的措置) 子夫婦(別居)・ 知人 入所 顕在化している虐待の実態 (実際の相談内容) ・同居の娘、娘婿にきついことを言われてつらい。早く 入所させてほしい。(本人から) ・一生懸命しているが腰も手も痛いのに呼ばれたり、 思うように動いてもらえないと酷いことを言ってしまう。 叩いたり、抓ったりしてしまう。早く入所させてほしい。 (介護者から) ・遠方に住む子が年金を取りに来て、暴れる。怖くて家 にいられない。(本人・近隣住民・警察から) ・顔面や手足に不自然な内出血がある。優先的な入 所を検討してほしい。(ケアマネージャーから) 事例A:経済的虐待が恒常的であり、 介護放棄があり施設入所 • 被虐待者:80代 女性 要介護2 認知症あり • 虐待者:子 被虐待者と同居 • 虐待の内容:通所介護(週2日)、短期入所生活介護(毎 週1泊2日)を利用。サービス利用時以外の食事摂取を確認 できない。掃除・洗濯が行われていない。サービスの利用料 金が支払われない。(子は就労しておらず本人の年金が2人 の生活費となっている)介護が困難なら施設入所を勧めるが、 経済面を事由に拒否される。 • 発見の経緯:ケアマネージャーからの相談 事例A:援助の経過 在宅生活継続の困難性を認めさせ施設入所を勧める *特養施設長が虐待者である子と面談 ・特養入所の意向を確認 ・利用料の支払いについての確認 ・子自身の生活保護受給についての助言 ↓ *特養へ入所 ・身の回りの必要物品、衣類の準備も不十分 ・面会もほとんどなく支払いもなし 事例A:援助の経過 • 子との連絡が困難になる 連絡手段→ 自宅訪問、書き置きなど • 子との面談を行うが飲酒しており話合い難航 • 在所2年間の利用料約160万円未納 • 本人は穏やかに生活し、施設で終末期を迎 える • 葬儀を当施設で執り行う 事例B:身体的虐待で措置入所 <身体的虐待が疑われた事例 > • 被虐待者:70代 男性 要介護2 認知症あり • 虐待者:子夫婦 被虐待者と同居 • 虐待の内容:体中に青あざ、ひっかき傷、噛んだ跡がある 目の内出血、耳に血腫ができるなど暴力 大声で怒鳴る • 発見の経緯:デイサービス職員が身体介護時に不審な傷を 発見する。送迎時に暴言を聞く。 < 困難 > 虐待者が虐待の事実を認めないまま 措置入所→ 契約への移行や家族との関係 事例C:関係機関との連携が課題 <身体的・心理的虐待事例 > • 被虐待者:90代 女性 要介護1 認知症なし • 虐待者:子 被虐待者と同居 • 虐待の内容:戸を釘で打ち付け部屋へ閉じこめる 「死ね」「食べるな」などの暴言(食事ができない) 刃物を突き付け「死んでくれ」「殺す」と脅す 物を投げつけるなど • 発見の経緯:地域包括支援センターからの相談 <困難 > • 行政内での連携ミス 事例D:制度外での受入 <心理的経済的虐待事例 > • 被虐待者:60代 女性 認定無し 認知症 なし • 虐待者:甥 被虐待者と同一敷地内に同居 • 虐待の内容:脅されてお金を取られる • 発見の経緯:地域包括支援センターからの相談 <困難 > • 年末年始の休日中の対応 • 自立のため制度外の対応 さらなる課題と問題提起・・・ • 高齢者虐待防止法 (高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律) 「国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止、高齢者虐待を 受けた高齢者の迅速かつ適切な保護及び適切な養護者に対 する支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民 間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他必要な体 制の整備に努めなければならない。 」 さらなる課題と問題提起・・・ • 国・地方公共団体の責務 • 措置入所の居室確保 さらなる課題と問題提起・・・ • 成年後見人制度の利用 • 社会福祉法人の社会的役割
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