障害者虐待の現状と課題 - 青森県社会福祉協議会

平成26年度 青森県障害者虐待防止・権利擁護研修
障害者虐待の現状と課題
平成27年1月15日
青森県 障害福祉課
障害企画・精神保健グループ
中村 尚吾
1.平成25年度 障害者虐待対応状況調査の結果
2
平成25年度 都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)
○平成25年度の1年間における養護者、施設職員等による虐待の状況につい て、厚生労
働省の依頼に基づき、市町村・ 県が集計調査を実施。
(※使用者による虐待については、7月に公表済み)
使用者による障害者虐待
養護者による
障害者虐待
障害者福祉施設従事者
等による障害者虐待
(参考)都道府県労働局の対応
市区町村等への
相談・通報件数
4,635件
(3,260件)
1,860件
(939件)
市区町村等による
虐待判断件数
1,764件
(1,311件)
263件
(80件)
被虐待者数
1,811人
(1,329人)
455人
(176人)
628件
(303件)
虐待判断
件数
(事業所数)
253件
(133件)
被虐待者数
393人
(194人)
【調査結果(全体像)】
• 上記は、平成25年4月1日から平成26年3月31日までに虐待と判断された事例を集計したもの。カッコ内は前回の調査
(平成24年10月1日から平成25年3月31日まで)のもの。
• 都道府県労働局の対応については、平成26年7月18日大臣官房地方課労働紛争処理業務室のデータを引用。
参考資料1
平成25年度 障害者虐待対応状況調査<養護者による障害者虐待>
市区町村
都道府県
相談
通報
虐待者と分離した事例 735件※2
明らかに
虐待でな
いと判断
した事例
41件
事実確認調査を行った
事例
3,879件
市区町村に連絡
した事例 64件
うち、法第11条に基づく
立入調査 95件
105件
4,635件
●相談支援専門員・
障害者福祉施設従事
者等
(27.6%)
●本人による届出
(24.9%)
●警察
(14.6%)
●当該市町村
行政職員
(7.2%)
●家族・親族 (7.2%)
虐待の事実
が認められ
た事例
事実確認調査
青森23
主な通報
届出者内訳
虐待事例に対する措置
64
件
1,764件
青森6
(死亡事例:
4人 ※1)
事実確認調査を行って
いない事例 840件
4,530件
被虐待者数
1,811人
虐待者数
1,990人
・明らかに虐待ではな
く調査不要 725件
*都道府県判断の41件を含む
・調査を予定、又は検
討中
115件
虐待者(1,990人)
● 性別
男性(65.6%)、女性(34.1%)
● 年齢
60歳以上(32.9%)、50~59歳(22.6%)
40~49歳(19.9%)
● 続柄
父(20.6%)、 兄弟姉妹(19.7%)
母(18.6%)
虐待の種別・累計(複数回答)
身体的虐待
性的虐待
心理的虐待
放棄、放置
経済的虐待
63.3%
5.6%
31.6%
18.9%
25.5%
※1 うち2件は、心中事件により発覚した事例のため、1,764件には含まれていない。
※2 虐待者との分離については、被虐待者が複数で異なる対応(分離と非分離)を行った事例が含まれるため、虐待
事例に対する措置の合計件数は、虐待が認められた事例1,764件と一致しない。
① 障害福祉サービスの利用
39.3%
② 措置入所
11.3%
③ ①、②以外の一時保護
18.6%
④ 医療機関への一時入院
13.9%
⑤ その他
16.9%
①~⑤のうち、面会制限を行った事例
31.7%
虐待者と分離しなかった事例 834件※2
① 助言・指導
53.4%
② 見守りのみ
25.5%
③ サービス等利用計画見直し 15.0%
現在対応中・その他 198件
被虐待者入院中、被虐待者・虐待者
の転居等
成年後見制度の審判請求
うち、市町村長申立 54件
被虐待者(1,811人)
● 性別 男性(37.1%)、女性(62.9%)
● 年齢
40~49歳(20.9%)、50~59歳(19.5%)
30~39歳(19.4%)
● 障害種別
身体障害
知的障害
精神障害
発達障害
その他
25.8%
50.6%
36.0%
1.7%
2.0%
● 障害程度区分認定済み (51.7%)
● 行動障害がある者
(25.1%)
● 虐待者と同居
(79.8%)
● 世帯構成
両親と兄弟姉妹(13.5%)、単身(10.8%)、
配偶者(10.0%)
138件
参考資料2
平成25年度 障害者虐待対応状況調査<障害者福祉施設従事者等による障害者虐待>
113件(連絡)
相談
通報
1,860件
青森23
主な通報
届出者内訳
1,625件
市区町村
事実確認調査(1,168件)
224件
虐待の事実が認められ
た事例
229件
事実確認調査(143件)
さらに都道府県による
事実確認調査が必要とさ
れた事例
39件
虐待の事実が認められた事例
18件 18件
76件
都道府県独自調査により、虐
待の事実が認められた事例
5件
●本人による届出
(33.0%)
●家族・親族
(16.5%)
●当該施設・事業
所職員 (11.7%)
●相談支援専門員・
障害者福祉施設従
事者等
(8.4%)
●設置者
(5.2%)
市区町村・都道府県によ
る措置・障害者自立支援
法等による権限行使※3
都道府県
都道府県へ事実確認調
査を依頼
37件
市区町村による指導
263件
・ 施設等に対する指導 142件
・ 改善計画提出依頼
100件
・ 従事者への注意・指導 65件
青森3
障害者自立支援法等
による権限行使
5件
虐待の事実が認められた事例 16件
16件
235件
虐待の事実
が認められ
た事例
被虐待者
455人※1
虐待者
325人※2
・ 報告徴収・出頭要請・質問・
立入検査
151件
・ 改善勧告
25件
・ 指定の全部・一部停止 4件
・ 都道府県・指定・中核市等
による指導
162件
虐待の種別・累計(複数回答)
虐待者(325人)
身体的虐待
性的虐待
心理的虐待
放棄、放置
経済的虐待
56.3%
11.4%
45.6%
4.6%
6.8%
● 性別
男性(66.8%)、女性(33.2%)
● 年齢
40~49歳(20.9%)、50~59歳(19.1%)
60歳以上(17.5%)
● 職種
生活支援員 (43.7%)
その他従事者(16.3%)
管理者(9.5%)
設置者・経営者(6.2%)
サービス管理責任者 (5.8%)
※1 不特定多数の利用者に対する虐待のため被虐待障害者が特定できなかった
等の10件を除く253件が対象。
※2 施設全体による虐待のため虐待者が特定できなかった9件を除く254件が対象。
※3 平成25年度末までに行われた措置及び権限行使。
被虐待者(455人)
障害者虐待が認められた事業所施設
障害者支援施設
居宅介護
重度訪問介護
行動援護
療養介護
生活介護
短期入所
共同生活介護
自立訓練
就労移行支援
就労継続支援A型
就労継続支援B型
共同生活援助
移動支援
地域活動支援センター
児童発達支援
放課後等デイサービス
合計
71
2
2
1
2
36
5
35
1
4
16
51
10
3
6
3
15
263
27.0%
0.8%
0.8%
0.4%
0.8%
13.7%
1.9%
13.3%
0.4%
1.5%
6.1%
19.4%
3.8%
1.1%
2.3%
1.1%
5.7%
100.0%
● 性別 男性(62.2%)、女性(37.8%)
● 年齢
20~29歳(25.3%)、40~49歳( 21.5%)、
30~39歳(20.9%)
● 障害種別
身体障害
知的障害
精神障害
発達障害
その他
29.2%
79.8%
14.1%
6.4%
1.8%
● 障害程度区分認定済み
● 行動障害がある者
(74.1%)
(21.3%)
平成25年度「使用者による障害者虐待の状況等」
【ポイント】
○ 使用者による障害者虐待が認められた事業所は、253事業所※1。
虐待を行った使用者は260人。使用者の内訳は、事業主215人、所属の上司29人、
所属以外の上司2人、その他14人。
○ 虐待を受けた障害者は393人。
障害種別は、知的障害292人、身体障害57人、精神障害56人、発達障害4人※2。
○ 使用者による障害者虐待が認められた場合に採った措置は389件※3。
[内訳]
① 労働基準関係法令に基づく指導等 341件(87.7%)
(うち最低賃金法関係308件)
② 障害者雇用促進法に基づく助言・指導 37件( 9.5%)
③ 男女雇用機会均等法に基づく助言・指導 2件( 0.5%)
④ 個別労働紛争解決促進法に基づく助言・指導等 9件( 2.3%)
※1 障害者虐待が認められた事業所は、届出・通報の時期、内容が異なる場合には、同一事業所であっても、複
数計上している。
※2 虐待を受けた障害者の障害種別については、重複しているものがある。
※3 1つの事業所で使用者による障害者虐待が複数認められたものは、複数計上している。
6
2.虐待事例の報道から考える
ケース1
障害者施設入所者に虐待
障害児者支援施設の男性職員(40)が50歳代の男性入所者の頭をたたき、
翌日には20歳代の男性入所者の頭をたたいた上、罵倒したという。2人にけが
などはなかったという。
別の職員が目撃して発覚、同施設の職員数人で構成する虐待防止委員会で
調査し、虐待と認定した。
施設は市に報告。市は同日、施設を調査した上で、県に報告した。男性職員
は市の調査に対して「間違いない」と話しているという。
市は今後、施設に対し、再発防止策をまとめて書面で提出するよう求める。
施設の事務長は「入所者に申し訳ない。再発防止に向け、職員研修などを通
して虐待や暴力についての指導を徹底させたい」としている。
(2012年読売新聞)
●虐待防止委員会を設置し、正しく機能している
●職員が虐待を報告できる組織風土
●施設内調査に留めず、施設自らが行政に通報
●事実を認め、誠実に対応
ケース2
障害者虐待で調査 「不適切な行為把握」
知的障害者施設で入所者への暴力、罵声が続いているとの通報を受け、自治
体は施設職員らへの聞き取り調査を始めた。担当課長は「不適切な行為を把握
している。人権意識に欠ける面がある」と話している。
問題になっているのは、社会福祉法人が運営する定員五十人の知的障害者
更生施設。障害者虐待防止法に基づき、関係者が自治体に通報、受理された。
自治体は立ち入り調査を始め、関係者に事情を聴いている。
自治体によると、不適切行為には命令口調や罵声、暴力を含むさまざまなレ
ベルがあるとみており、調査結果が出次第、適切に対応するという。
施設側の担当者は取材に「すべて弁護士に任せているのでノーコメント」と語っ
た。
(2012年 東京新聞)
ケース3
介護福祉士が入居者を殴る
県警などは、身体障害者支援施設に入所中の男性(76)を殴り骨折させたとし
て、傷害の疑いで介護福祉士の容疑者(29)を逮捕した。
男性は骨折など複数のけがを繰り返しており、県警は日常的に虐待があった
可能性もあるとみて慎重に調べている。
逮捕容疑は、2007年に個室で寝たきりの男性を介助中、男性が言うことをき
かなかったため右腕などを拳で数回殴り、約80日間の右尺骨骨折の重傷を負
わせた疑い。
「わざとけがをさせたわけではない」と容疑を否認しているという。
県警によると、約1カ月前に関係者からの相談で発覚同施設を家宅捜索した。
同施設を運営する社会福祉法人は男性の骨折を把握していたが、虐待ではな
く「事故」として処理していた。
同法人は「逮捕容疑が事実であれば、当時の内部検証は甘く、管理体制につ
いても問題があったということになる。入所者本人や家族におわびするしかない」
としている。
(2012年 長崎新聞)
ケース4
虐待否定する文書、入所者・職員に署名させる
精神障害者グループホームの傷害事件で、逮捕された社会福祉法人の元理事
長の容疑者(70)が、入所者と職員全員に「虐待の事実はなかった」とする文書
に署名、押印させていたことが施設関係者への取材でわかった。
県警は隠蔽を図ろうとした疑いがあるとみて調べている。
容疑者は、女性入所者(50)に暴行し、打撲などの軽傷を負わせたとして傷害
容疑で逮捕された。
施設関係者によると、容疑者は、女性が同署に被害届を提出したことを知り、
「虐待の事実がなかったことを職員、利用者ともに承認いたします」などとする文
書への署名、押印を求め、入所者10人と職員5人が応じたという。
(2012年 読売新聞)
●虐待の事実を隠蔽しようとした疑い → なぜ、職員が署名に応じてしまったのか?
ケース5
福祉施設の暴行、施設長が上司に虚偽報告
知的障害のある児童らの福祉施設で、入所者の少年(19)が職員の暴行を受けた後に
死亡した事件で、同施設の施設長が2年前に起きた職員2人による暴行を把握したが、
上司のセンター長に「不適切な支援(対応)はなかった」と虚偽の報告をしていたことが分
かった。
県は、同施設の指定管理者の社会福祉法人に対し、障害者総合支援法と児童福祉法
に基づき、同園の新規利用者の受け入れを当分の間停止する行政処分と、施設長を施
設運営に関与させない体制整備の検討などを求める改善勧告を出した。
県によると、施設長は立ち入り検査時には「暴行の報告はなかった」と説明。しかし、そ
の後の県の調査に「報告があったことを思い出した。聞き取り調査したが虐待はなかっ
た」と証言を覆した。
さらに、県が詳しく事情を聴くと、施設長は「もう1つ報告があったことを思い出した」とし
て、平成23年に職員4人が虐待をしたとの報告があったと証言。このうち2人が暴行した
と判断し、口頭注意したことを認めた。その後、施設長はセンター長に「不適切な支援は
なかった」と事実と異なる報告をしたが、県は理由について「現時点では施設長に聞いて
いない」としている。
県はこれまでに、同施設の元職員5人が少年を含む入所者10人を日常的に暴行して
いたことを確認。別の職員3人も暴行した疑いが判明している。3回目の立ち入り検査で
は、新たに職員1人の暴行が確認されたほか、同施設や関連の障害者施設の職員計2
人が入所者に暴行した疑いも浮上した。
(2013年 産経ニュース)
ケース6
「ベッドから落ち骨折」
昨年11月、青森市内の障害者支援施設で入所者男性に暴行したとして、今年7月30
日、警察署が当時の職員2人を逮捕。両容疑者は、入署男性の脇腹を足蹴りしたり拳で
殴打し、左右のあばら骨を折るなどの重傷を負わせた。
同施設は、昨年12月青森市に対し「(男性が)ベッドから落ちて骨折した」と報告してい
た。施設側は「当時の職員から『男性がベッドから落ちていた』との報告があり、男性も
『ベッドで転んだ』と言った」と述べ、暴行の事実は分からなかったと説明。
青森市は3月、事件の男性とは別の入所者に対して不適切な対応があったとして施設
に対し障害者総合支援法に基づく改善勧告を出した。
8月19日、青森区検は、当時の職員2人を暴行罪で略式起訴し、青森簡裁は罰金20
万円の略式命令をした。
11月19日、青森市は施設に対し、新規入居者の受入れを1年間停止する行政処分を
出した。
(2014年 東奥日報ほか)
●被害者男性の『ベッドで転んだ』との報告によって、市の事実確認が困難になった。
3.支援の質の向上
虐待防止・身体拘束廃止の観点から
(参考)
千葉県袖ヶ浦福祉センターにおける虐待事例について
【事案の概要】 25年11月 上記センター(千葉県社会福祉事
業団が指定管理者として運営)の強度行動障害を有する利用者
が、職員から暴行を受けた後、病院に救急搬送され死亡
(※本年3月11日:当該職員は傷害致死容疑で逮捕)
※ 確認された状況
(平成16年度から平成25年度まで10年間)
○ 身体的虐待(暴行)
職員 11人
○ 性的虐待
職員 2人
○ 心理的虐待
職員 3人
合計(実人数) 虐待者 15人
被虐待者17人
被虐待者 2人
被虐待者 4人
被虐待者 23人
(*この他に、虐待を行った疑義のある者3人)
15
15
千葉県社会福祉事業団問題等第三者検証委員会最終報告書(26年8月:抜粋)
1 人材育成や研修、職場環境、職員配置
(1)職員の資質や職場環境の問題
虐待(暴行)の原因の一つには、個人の問題として、支援スキルが不十分で
あり、また、虐待防止についての基礎的知識がない、と言うことが挙げられる。
このため、支援に行き詰まり、行動障害を抑えるために暴行に至った面がある
ことは否定できない。
例えば養育園第2寮の暴行した5人は、更生園で実施されているような行動
障害に係る専門研修や、虐待防止に関する研修をほとんど受けていなかった。
また、支援に行き詰まりかけていた段階で、初めは緊急避難的な過剰防衛と
しての力を行使していたと考えられるが、だんだんとその方が通常の支援より
楽だと思い、通常の適切な支援の実施に努めずに、安易に暴行を行うことを繰
り返していた。
さらに、このような支援方法が、何人かの新たに配属された職員に容易に伝
達したと考えられる。周りが安易な方法(暴行)を採っているから自分も安易な
方法を、と、つまり、周りがやっているから自分がやっても大丈夫だ、と感覚が
幼稚化、そして麻痺し、負の連鎖が発生したものと考えられる・・・
16
障害保健福祉関係主管課長会議資料 平成25年2月25日
強度行動障害を有する者等に対する支援者の人材育成について
強度行動障害を有する者は、自傷、他害行為など、危険を伴う行動を頻回に示すことなどを特徴としており、こ
のため、現状では事業所の受け入れが困難であったり、受け入れ後の不適切な支援により、利用者に対する虐
待につながる可能性も懸念されている。
一方で、施設等において適切な支援を行うことにより、他害行為などの危険を伴う行動の回数が減少するなど
の支援の有効性も報告されており、強度行動障害に関する体系的な研修が必要とされている。このため、平成25
年度に、研修の普及を通じて、適切な支援を行う職員の人材育成を進めることを目的として、指導者を養成するた
めの研修を独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園において実施することとした。また、平成25
年度予算案において、都道府県が実施する強度行動障害を有する者等を支援する職員を養成するための研修
事業を都道府県地域生活支援事業のメニュー項目として盛り込んだところであるので、積極的な取り組みに努め
られたい。
障害保健福祉関係主管課長会議資料 平成26年3月7日
強度行動障害支援者養成研修について
強度行動障害を有する者に対する支援については、平成25年度に、支援者に対する研修として、強度行動障害
支援者養成研修事業(以下、「基礎研修」という。)を都道府県地域生活支援事業の」「メニュー項目に盛り込んだ
ところである。この基礎研修の指導者を養成するための研修を独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞ
みの園(以下「のぞみの園」という。)において実施しているところであるので、活用を図られたい。
また、各事業所での適切な支援のために、適切な支援計画を作成することが可能な職員の育成を目的とし、
サービス管理責任者等に対するさらに上位の研修(以下「実践研修」という。)を実施するため、平成26年度予算
案において、各都道府県の支援者に対する実践研修を都道府県地域生活支援事業のメニュー項目に盛り込んだ
ところである。実践研修についても、平成26年度より、指導者を養成するための研修をのぞみの園で実施する予
定であるので、積極的な取り組みに努められたい。
17
障害者虐待の防止
身体拘束・行動制限の廃止
支援の質の向上
4.虐待を受けた方の声
身体障害者Aさん(男性)
• 介護する者は精神的・肉体的に疲労する、一方で介護される者は
より思いどおりの介護を受けようとなり、要求が高くなってくる
• 家族は遠慮のない関係のため、感情がむき出しになる。言い合い
をするようになると、力ずくでくる気配を察し、障害者は納得できなく
ても介護する側の意に沿うようにならざるを得ない
• 施設職員は、言葉の暴力など力によって職員側の思いどおりにさ
せている場合が多い
• 訴えることができるとわかっていてもほかに行き場がないのでいえ
ない
• 介護する側・される側の二者ではなく、地域社会と様々な関わりを
もつことが大切
精神障害者Bさん(男性)、Cさん(男性)
2人は他の利用者も含め施設長(苑長)から長期にわたって執拗に虐待を受けてきた。
• 毎日のように水風呂に入れさせられた
• 4ヶ月休みがなく仕事させられた
• 正座をさせられ床に頭をぶつけ謝るよう命令されそのぶつけ方が弱いと殴られた
• 家族からの振込が本人に渡っていない
◇以下は他の利用者(女性)のメモ(原文ママ)
私は苑長先生にたたかれています。
8月12日午前11:30分 顔・おなかをたたかれ、けられました。
8月14日午後9:30分
カラオケ屋で顔に水をかけられ、顔をたたかれました。午後
22:00、まごの手で顔と右耳をたたかれました。
8月20日午後22:00、ひじでわきばらを、ぶたれました。
• 我慢せざるを得なかったのは、ほかに行くところがない。施設職員
も苑長の言いなりで頼りにならなかった
• 家族には心配をかけたくなかった、苑長が怖かった
• 地域で孤立している施設には何か問題がある可能性がある
5.虐待への行政の対応
行政における体制整備
・「早期発見」を、地域のなかで、
⇒啓発
○支援関係者個人に正しい知識と、動きを明確に
○地域住民に、何に気づいてもらうのか
○関係機関への早期発見に向けた連携を働きかける
⇒窓口の明確化
○どこに言えばいいのか、電話番号は?夜間休日?
⇒通報者保護と、個人情報保護の例外
○通報後の動き ○連携関係機関の理解
市町村の責務と役割
1)法の規定する責務と役割
2)通報・届出受理窓口の設置と周知
休日、夜間対応の体制
3)虐待発見・対応ネットワーク体制整備
4)判断と協議の場の設定
5)要綱、マニュアル、帳票類の整備
6)専門的人材の確保
7)関連制度の要綱整備、予算化
虐待の通報等があった場合
→起こっている「事実」に着目
*障害者本人の虐待されているという、
「自覚」は問わない
*養護者、従事者、使用者の虐待しているという
「自覚」は問わない
⇒どれだけ、一生懸命世話をしている家族でも
⇒どれだけ、評判のよい事業所でも
*起こっている事実に着目し、
⇒判断は、必ず組織で行う(虐待の有無、緊急性)