平成25年度 埼玉県障害者虐待防止・権利擁護研修

平成26年度 埼玉県障害者
虐待防止・権利擁護研修
行動障害と不適切な支援について
(障害種別:知的障害)
平成24年度 障害者虐待対応状況調査の結果
○養護者による障害者虐待において
身体障害(27.5%) 知的障害(48.5%)
行動障害がある者 (26.9%) ※重複あり
精神障害(36.0%)
○障害者福祉施設従事者等において
身体障害(19.7%) 知的障害(54.5%)
行動障害がある者(22.7%) ※重複あり
精神障害(39.3%)
○使用者による障害者虐待の状況等において(平成25年度)
虐待を受けた障害者は393人
障害種別は、知的障害292人、身体障害57人、精神障害56人
出典:「障害者虐待防止法の理解」より抜粋 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課地域生活支援室 虐待防止専門官 曽根直樹氏
被虐待者は知的障害の方が受けやすく、また行動障害がある方への割合が高い。
平成24年度 障害者虐待対応状況調査の結果
3
平成24年度 都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)
○平成24年10月1日に障害者虐待防止法施行(養護者、施設等職員、使用者による虐待)
→平成25年3月末までの半年間における養護者、施設職員等による虐待の状況につい て、
都道府県経由で調査を実施。
(※使用者による虐待については、6月に公表済み (大臣官房地方課労働紛争処理業務室))
使用者による障害者虐待
養護者による
障害者虐待
障害者福祉施設従事者等
による障害者虐待
(参考)都道府県労働局の対応
市区町村等への
相談・通報件数
3,260件
939件
市区町村等による
虐待判断件数
1,311件
80件
被虐待者数
1,329人
176人
303件
虐待判断
件数
(事業所数)
133件
被虐待者数
194人
【調査結果(全体像)】
• 上記は、障害者虐待防止法の施行(平成24年10月1日)から平成25年3月31日までに虐待と判断された事例を集計し
たもの。
• 都道府県労働局の対応については、平成25年6月28日大臣官房地方課労働紛争処理業務室のデータを引用。
参考資料1
平成24年度 障害者虐待対応状況調査<養護者による障害者虐待>
市区町村
都道府県
相談
通報
105件
3,260件
主な通報
届出者内訳
●相談支援専門員・
障害者福祉施設従事
者等
(27.4%)
●本人による届出
(27.1%)
●警察
(10.9%)
●家族・親族 (8.6%)
●近隣住民・知人
(5.3%)
虐待者と分離した事例 450件※2
明らかに
虐待でな
いと判断
した事例
76件
事実確認調査
事実確認調査を行った
事例
2,604件
市区町村に連絡
した事例 29件
うち、法第11条に基づく
立入調査 52件
29
件
3,155件
虐待事例に対する措置
事実確認調査を行って
いない事例 656件
3,184件
・明らかに虐待ではな
く調査不要 572件
*都道府県判断の76件を含む
・調査を予定、又は検
討中
84件
虐待の事実
が認められ
た事例
① 障害福祉サービスの利用
42.0%
② 措置入所
10.2%
③ ①、②以外の一時保護
14.4%
④ 医療機関への一時入院
14.7%
虐待者と分離しなかった事例
687件※2
⑤ その他
18.9%
①~⑤のうち、面会制限を行った事
例
1,311件
(死亡事
例:3人
※1)
現在対応中・その他 176件
30.9%
被虐待者数
1,329人
① 助言・指導
45.4%
② 成年後見制度の審判請求
見守りのみ
85件
28.1%
③ サービス等利用計画見直し
15.6% うち、市町村長申立 49件
虐待者数
1,527人
被虐待者入院中、被虐待者・虐待
者の転居等
虐待者(1,527人)
● 年齢
60歳以上(36.7%)、50~59歳(20.6%)
40~49歳(19.1%)
● 続柄
父(22.7%)、 母(20.7%)
兄弟姉妹(20.4%)
被虐待者(1,329人)
虐待の種別・類型(複数回答)
身体的虐待
性的虐待
60.3%
4.1%
心理的虐待 放棄、放置 経済的虐待
34.8%
21.1%
27.2%
● 性別 男性(35.1%)、女性(64.9%)
● 年齢
40~49歳(23.0%)、50~59歳(18.5%)
30~39歳(18.0%)
● 障害種別
身体障害 知的障害 精神障害 発達障害
27.5%
※1 うち1件は、心中事件により発覚した事例のため、1,311件には含まれていない。
※2 虐待者との分離については、被虐待者が複数で異なる対応(分離と非分離)を行った事例が含まれるため、虐待
事例に対する措置の合計件数は、虐待が認められた事例1,311件と一致しない。
48.5%
36.0%
1.9%
その他
2.7%
● 障害程度区分認定済み (53.3%)
● 行動障害がある者
(26.9%)
● 虐待者と同居
(80.4%)
● 世帯構成
両親と兄弟姉妹(12.4%)、単身(11.3%)、両親(11.3%)
平成24年度 障害者虐待対応状況調査<障害者福祉施設従事者等による障害者虐待>
相談
通報
939件
主な通報
届出者内訳
●本人による届出
(29.7%)
●家族・親族
(18.0%)
●当該施設・事業
所職員 (15.1%)
●相談支援専門員・
障害者福祉施設従
事者等
(11.3%)
●設置者
(1.6%)
775件
市区町村
95件(連絡)
虐待の事実
が認められ
た事例
64件
事実確認調査(113件)
※24年度中に報告しなかった事例
等を含む。
さらに都道府県による
事実確認調査が必要と
された事例
27件
市区町村・都道府県によ
る措置・障害者自立支援
法等による権限行使※3
都道府県
事実確認調査 (612
虐待の事実が認められ
件)
た事例
79
件
虐待の事実が認められた事例
33件
6件
都道府県独自調査により、
虐待の事実が認められた事
例
都道府県へ事実確認調
査を依頼
6
件
市区町村による指導
・ 施設等に対する指導
38件
・ 改善計画提出依頼
21件
・ 従事者への注意・指導
28件 障害者自立支援法等
による権限行使
6件
80件
1件
1件
虐待の事実が認められた事
例
9件
164件
9件
参考資料2
被虐待者
176人※1
虐待者
87人※2
・ 報告徴収・出頭要請・質
問・
立入検査
56
件
・ 改善勧告
10件
・ 都道府県・指定・中核市
等に
よる指導
52件
虐待の種別・類型(複数回答)
虐待者(87人)
● 年齢
60歳以上(21.8%)、50~59歳(19.5%)
● 職種
生活支援員 (31.0%)
管理者、その他従事者(12.6%)
サービス管理責任者 (11.5%)
設置者・経営者(10.3%)
※1 不特定多数の利用者に対する虐待のため被虐待障害者が特定できなかった
等の2件を除く78件が対象。
※2 施設全体による虐待のため虐待者が特定できなかった1件を除く79件が対象。
※3 平成24年度末までに行われた措置及び権限行使。
身体的虐待
性的虐待
57.5%
心理的虐待
12.5%
放棄、放置 経済的虐待
52.5%
8.8%
障害者虐待が認められた事業所種別
件数
障害者支援施設
18
構成割合
22.5%
居宅介護
1
療養介護
2
2.5%
生活介護
9
11.3%
短期入所
2
1.3%
2.5%
共同生活介護
10
就労移行支援
1
1.3%
就労継続支援A型
7
8.8%
就労継続支援B型
12.5%
20
4
5.0%
地域活動支援センター
3
3.8%
福祉ホーム
1
1.3%
児童発達支援
1
1.3%
放課後等デイサービス
1
80
● 性別 男性(67.0%)、女性(33.0%)
● 年齢
20~29歳(27.3%)、30~39歳( 21.0%)、
40~49歳(15.9%)
● 障害種別
身体障害
知的障害
精神障害
発達障害
その他
19.7%
54.5%
39.3%
1.7%
0.6%
25.0%
共同生活援助
合計
被虐待者(176人)
7.5%
1.3%
100.0%
● 障害程度区分認定済み
● 行動障害がある者
(63.1%)
(22.7%)
適切なケア
不適切なケア
虐 待
問題行動と言われてしまう行動
・パニック「自傷行為・他害行為」
・不適切な行動 ・かんしゃく
など
環境要因
障害特性
↑
↓
・行動を引き起こす
・様々な状況
・様々な刺激
・複雑で分かりにく
い環境
・いつもと違う状況
障
害
特
性
と
環
境
要
因
と
の
相
互
作
用
・感覚の特異性
・見通しがもてない
・目に見えない事物
を理解しにくい
・一般化することが
難しい
行動障害のある利用者への不適切な支援
ザワザワした場面が苦手な利用者がいます。
施設で日中活動に出掛けるときには、玄関で靴に履き替えな
ければなりませんが、同時に多くの利用者が玄関に集まってく
ると、ザワザワして本人にとっては大変不快な環境となります。
水面下(氷山の下)
しかし、本人はコミュニケーションの困難性から、職員に不快感
を訴えることができません。
どのように解決すれば良いのか方法もわかりません。
そして、イライラが高まってどうしようもなくなり、横にいる利用
者に咬みついてしまいました。
職員は、やめさせるために本人を羽交い締めにして引き離し、
目に見える部分(氷山)
さらにパニックを起こして暴れたため、居室に鍵をかけて閉じ込
めました。
「障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き」より抜粋
行動が生起する枠組み
(要因や背景を探る)
要因
背景
背景
きっかけ
行動
結果
本人が
持ってい
る障害
特性
行動の生
起する
きっかけ
がきっか
けとなり
うる事柄
どういうと
きに誰が
どんなこ
とをした
のか
どんな行
動をどの
位の強さ、
時間、頻
度で行う
のか
行動が生
起した結
果どう
なったの
か
昨夜から
睡眠不足
により、朝
から不機
嫌
ザワザワ
する混み
合った空
間に行っ
てしまった
感覚過敏
の特異性、
コミュニ
ケーショ
ンの困難
性など
横にいる利
用者に咬
みついてし
まいました
職員に羽
交い締め
にされ、鍵
をかけて
閉じ込めら
れた
行動障害のある利用者への適切な支援
行動の前の『きっかけ』や『背景』や『要因』を探
り、事前にその環境を取り除いてあげたり、本
人の障害特性に応じた関わり方でやわらげるこ
とが必要な支援ではないでしょうか?
それは、利用者のひとり一人にあった支援を考
えることで、その方の不安をやわらげだり、解消
することになり、問題行動と言われる行動への
適切な支援へと繋がります
行動制限の廃止に向けて
「問題行動に対処するために、身体的虐待に該当す
るような行動制限を繰り返していると、本人の自尊心
は傷つき、抑えつける職員や抑えつけられた場面に対
して恐怖や不安を強く感じるようになってしまいます。
このような人や場面に対しての誤った学習を繰り返し
た結果、さらに強い「問題行動」につながり、それをさら
に強い行動制限で対処しなくてはならないという悪循
環から抜け出さなくてはなりません。
行動障害に対する知識と支援技術を学び、支援をマ
ニュアル化するなどによって職員全体で共有し、行動
制限の廃止に向けて取り組むことが施設・事業所での
障害者虐待を防止することにつながり、支援の質の向
上にもつながります。
「障害者福祉施設・事業所における障害者虐待の防止と対応の手引き」より抜粋
行動制限(身体拘束)の留意点
身体拘束
行動制限
恐怖・不快
増長
させている
問題行動の誘発
エスカレート
自尊感情の損傷
心的外傷
⇒他のアプローチの可能性も見出していくことが必要。
障害者虐待の防止
身体拘束・行動制限の廃止
支援の質の向上