自動車事故防止教育 - Cognitive Science Laboratory

Kyushu Univ. ISEE
自動車運転事故防止教育
九州大学大学院
システム情報科学研究院
志堂寺 和則
Kyushu Univ. ISEE
概 略
1. 事故の特徴
2. どうして交通事故は起きるのか
3. なぜ自動車学校で教えた運転方法が
守られないのか
4. どんな教育内容が有効か
Kyushu Univ. ISEE
2.どうして交通事故は起きるのか
ほとんどの事故は起こるべくして起こっている
• 一時不停止
• 速度超過
• 車間距離不足
• 安全不確認
• 脇見
Kyushu Univ. ISEE
一時停止
福岡県内の路上観察(小森ら, 1996)
調査地点
豊前市
八女市
飯塚市
春日市
福岡市
平均
一時停止率
8.4
5.7
1.7
6.1
3.0
5.0
Kyushu Univ. ISEE
一時停止
(志堂寺ら、1998)
商店街
A
B
C
C
商店街
駐車場
停止標識
カーブミラー
Kyushu Univ. ISEE
一時停止位置
一
時
停
止
台
数
(
台
)
5
4
3
2
1
0
0
1
2
3
4
5
6
一時停止線からの距離(m)
7
Kyushu Univ. ISEE
運転意識
[質問5] 見通しのよくない信号のない交差点では、どのようにし
て安全確認をしますか?
1.走りながら(徐行しながら)安全確認する。
2.一時停止線があれば一時停止するが、一時停止線がなけ
れば徐行しながら安全確認する。
3.一時停止して確認する。
無視者
0
20
80
遵守者 8
2
3
92
0
0
1
0
20
40
0
無回答
60
80
100 (単位:%)
Kyushu Univ. ISEE
運転意識
[質問7] 見通しのよくない信号のない交差点で一時停止する場
合、交差点のどの位置で一時停止しますか?
1.一時停止線の位置で1回。
2.一時停止線の位置と見通しが効く位置の2回。
3.見通しが効く位置。
無視者 10
遵守者
70
15
0
20
46
20
40
1
31
60
80
0
2
8
3
無回答
100 (単位:%)
Kyushu Univ. ISEE
速度(高速道路)
夜間
昼間
6
4
割
合
2
(%)
0
60
80
100
120
140
走行速度(km/h)
(中島ら、1983)
Kyushu Univ. ISEE
車間距離(高速道路)
実際
回答
4
3
割 2
合
(%) 1
0
1
2
3
4
5
6-9 10
車間時間(秒)
(中島ら、1983; 太田、2000)
Kyushu Univ. ISEE
運転意識
[質問8] 車間距離は十分ですか?
1.十分。
2.どちらかといえば十分。
3.どちらかといえば不十分。
4.不十分。
無視者
20
遵守者
70
38
0
20
10
47
40
60
15
80
1
0
2
3
0
4
100 (単位:%)
Kyushu Univ. ISEE
3.なぜ自動車学校で教えた運転方法が
守られないのか
• 忘れる
忘却
• 慣れ(自己流にアレンジ)
• 社会的圧力
同調行動
適応行動
Kyushu Univ. ISEE
忘却
忘却曲線
成
績
日数
Kyushu Univ. ISEE
適応行動
強化
消去
成
績
ご褒美あり
ご褒美なし
Kyushu Univ. ISEE
同調行動
アッシュ
7人一組の集団に対する線分比較実験
誤り率
通常
0.7%
6名サクラ
37.0%
Kyushu Univ. ISEE
4.どんな教育内容が有効か
Kyushu Univ. ISEE
ヒューマン・エラー
認知
操作
判断
認知の間違い
操作の間違い
判断の間違い
Kyushu Univ. ISEE
確実
確からしい
60
50
事
故
40
の
割
30
合
( 20
%
) 10
0
認知の間違い
判断の間違い
操作の間違い
(Treat et al. 1975)
Kyushu Univ. ISEE
速度を上げる/車間距離をつめることによる悪影響
• 緊張感
疲労
• 切迫感(焦り)
• 即座の対応
• 有効視野の狭窄
アクション・スリップ
反応時間の限界
対象の見落とし
Kyushu Univ. ISEE
疲労(心拍)
非急ぎ
急ぎ
0
45
90
135
180
225
270
315
360
405
450
495
540
585
630
675
720
765
95
心 90
拍 85
数 80
( 75
回 70
/ 65
分 60
) 55
50
0
30
60
(分)
走行時間(秒)
(峯山、2004)
疲労(血圧)
Kyushu Univ. ISEE
状況(名神高速道路)
時速
血圧変動
並んで徐行するトラックと小型 100
車のために追越できずいらいら
する
+50
(120→170)
左から接近した車との接触を避 85
けるために右側のグリーンベル
トに乗り上げそうになる
+43
(142→185)
追い越し路線に出たとき前方
車も右に出る
90
+40
(180→220)
下り坂で追い越す
75
+35
(120→155)
(万井,1967)
Kyushu Univ. ISEE
状況(京都市街道路)
時速
血圧変動
車両入り乱れて運転する
0-40
+40
(120→160)
大型トラックが右から接近したの
で左に避ける
47
+37
(145→182)
後ろからパトロールカーがサイレ
ンを鳴らして接近してくる
48
+32
(140→172)
信号待ちでイライラする
0
+30
(130→160)
左側の細い道から急に車が現れ
る
40
+32
(130→162)
(万井,1967)
Kyushu Univ. ISEE
アクション・スリップ
急速書字反復法
• 意味飽和
• 運動の抑制
• 運動の自走
• 意図のブロッキング
Kyushu Univ. ISEE
反応時間の限界
0km/h
20km/h
40km/h
60km/h
普通どおり(38km/h)
急ぎ(43km/h)
0
100
200
300
400
平均反応時間(ミリ秒)
500
(Fuse et al., 2004)
Kyushu Univ. ISEE
反応時間の限界
0km/h
20km/h
40km/h
60km/h
普通どおり(38km/h)
急ぎ(43km/h)
0
50 100 150 200 250 300
反応時間の標準偏差(ミリ秒)
(Fuse et al., 2004)
Kyushu Univ. ISEE
有効視野の狭窄
三浦
検
出
反
応
時
間
注
視
時
間
小←混雑度→大
小←混雑度→大
Kyushu Univ. ISEE
有
効
視
野
小←混雑度→大
Kyushu Univ. ISEE
混雑度小
混雑度大
広い有効視野
狭い有効視野
Kyushu Univ. ISEE
混雑度大
混雑度小
処
理
の
深
さ
処理の広さ(有効視野)
Kyushu Univ. ISEE
車間距離をあけることに関する誤解
• 到着が遅れる
• 割り込まれる
• ムカッとくる
• 到着が遅れる
誤解
実際はほとんど変わらない
熊谷ら