2 中国経済

2 中国経済
2.1
2.2
2.3
2.4
「中国型社会主義」の特徴と破綻
経済改革と対外開放
「社会主義市場経済」
体制転換のゆくえ
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2.1a
「中国型社会主義」の特徴
・移行の特徴:半封建・半植民地社会から発達した資本主義の段
階を経ないで移行
*中国はどのような社会主義だったのか
①「ソ連型」重工業優先,工業国有化・農業集団化,中央集権的計
画管理+軍事共産主義に加え,
②農村戸籍と都市戸籍に区分し,移住や職業選択を制限
③都市では,企業体・事業体を「単位」とし,衣食住から年金・医療・福祉・教
育・民生. 農村では,政社合一の「人民公社」
④ピラミッド型中央集権的ヒエラルキー構造,党政一体,政企一体
の行政指令型計画管理体系
⑤カリスマ的指導者としての毛沢東個人の思想に依拠+冷戦,
途上国,伝統的官僚システム,中ソ対立とベトナム戦争→孤立主義
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2.1b 「中国型社会主義」の体制転換
*米ソ2超大国を敵に回しての「備戦体制」,
近隣アジアNIEs,アセアン諸国の経済成長
• 4つの現代化:農業,工業,国防,科学技術
すなわち改革・開放が必要になった
• 体制転換における課題:①高い科学技術,生
活水準の達成,②西欧の近代市民革命の諸
達成,③市民社会の規範的理念の確立
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2.2a 経済改革と対外開放
経済改革の展開 1978年開始
• 経済改革の展開過程 1978年
・各級地方政府→各部門への利益譲渡・権限下放方式 「諸
侯経済」
・漸進的
・農村改革先行,ついで都市・工業改革が本格化
・not目標モデルの提示,but理論と政策の実践過程での深化
• 1980年代改革は市場化政策の漸次的拡大と行政的計画
の漸次的後退
• 1990年代は全面的市場化政策
• 鄧小平の社会主義:人民民主独裁と共産党の指導
• 朱鎔基3大改革: 国有企業改革,金融改革,行政改革
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2.2b 経済改革と対外開放
対外開放の展開 1979年開始
• 直接投資の中国へ誘致(最小生産コスト立地
型,消費市場立地型)
• 1979年以降/1984年沿海14都市が開放都
市に指定/1990年代上海浦東開発
• 中央政府・地方政府による強力な外資誘致
政策と外資の選別政策
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2.2c 経済改革と対外開放
中国のWTO(世界貿易機関)加盟 2001
• 市場経済のグローバル・スタンダードの受け
入れ:「人治」から「法治」へ
• WTO加盟に際しての中国の約束:①関税引き下げ,
②サービス産業開放,③知的所有権
• 弱い部門は淘汰:国営企業,農業,繊維,自動車,金
融,流通
• 強い部門はより強化される:外資系企業+中国現地
企業,低人件費,ローテク+ハイテク
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2.2d 中国の「世界の工場」「世界の市場」化
• 中国3大工業集積の特徴
・珠江デルタ:世界有数の電子産業集積/人材調達メカニズ
ム,部品集積,香港の役割
・長江デルタ:急進するハイテク集積/市場の規模と成長性,
高級な人的資源の豊かさ
・北京中関村:中国のシリコンバレー/100km2 70以上の
大学,専門学校,年3万の学卒,6000院
• アジアにおける影響力の拡大
・怪鳥「鳳」(前を行くものを飲み込み,後ろに譲らない)
・アセアン(10カ国)+3(日・中・韓)における中国のイニシアティブの発揮
• 「世界の市場」化:①内販型直接投資の増大,②資源消費大
国,③世界景気への影響
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2.3 「社会主義市場経済」
a 「社会主義初級段階」
• 社会主義市場経済論:1992年中国共産党第14回大会
• 1997年第15回大会 鄧小平理論=中国の特色をもつ社会
主義
• 社会主義初級段階:1950年代半ば.
・2000年:小康状態(まずまずの生活水準)
・根本的任務:社会生産力の発展.社会主義と市場経済の
結合.先進技術・管理経験の吸収・大衆の創造精神の尊重.
・生産力発展の障害:封建主義,資本主義の腐敗思想,小
生産の習慣の勢力
• 社会主義の現代化段階:21世紀半ば
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2.3 「社会主義市場経済」
b 「中国の特色を持つ社会主義経済」の要点
• 所有制構造:①公有制を主体とし,多種経済要素の発
展.②公有制の実現形態の多様化.③国有経済の主導的
役割,④集団所有制経済,⑤非公有制経済.
・国有企業改革:①財産権の明確化,②政府と企業の分
離,③企業の自主経営,損益自己責任主体
・労働に応じた分配と各種所得再分配の並存
・市場メカニズム
・人民の生活水準の向上
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2.3 「社会主義市場経済」
c 「社会主義経済論」の性格
• ソ連型,毛沢東型からの訣別
• 公有制:資本主義の軌道に沿った運営
• 国家の態度は二元的:
①オープンで公正な競争的市場環境の整備,②国有企業
の国民経済の命脈部部分での支配や国家の福祉的志向
「計画」:not 指令的, but 指導的=誘導的
・ 私的部門の容認による所階級の形成
・ 国有企業もまた二元的
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2.3 「社会主義市場経済」
d 「社会主義経済論」の可能性
• 行政指令型の残滓:①「政企一体化」,②「条々・
塊塊」(縦割り・地域割り), ③「諸侯経済」
・市場メカニズム:ヒト・カネ・モノの効率的流動化
・混合経済:効率性と福利厚生の2元的原理の組込①地球
規模の持続的発展:総対的管理や計画 ②中国自身の資
源・環境,人口,失業など諸問題 ③共産党の指導的立場,
土地・資源は公有,外資契約期間,④市場メカの資源配分
機能には限界
・WTO体制での「混合経済」の発展可能性 ?
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2.4 体制転換のゆくえ
a 市場経済化の到達点
• 経済改革:「市場経済」としての認定 ?
• 対外開放:人民元,資本勘定自由化改革 ?
• 経済構造改革:ボトルネック緩和,サービス
産業の勃興
• 工業:ハイテク・ニューテク,自主技術?
• 経済力の強化
• 生活水準の向上:小康水準
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2.4 体制転換のゆくえ
b 歴史が遺した問題
• 国有企業改革の停滞
• 都市・農村の失業人口膨大.社会的セーフ
ティネットの整備まだ.
• 地域間・産業間・階層間の経済・所得格差
• 地方主義や地域エゴ,官僚支配と腐敗,経済
への行政的干渉
• 環境破壊や資源の略奪
• 急速な高齢化社会
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2.4 体制転換のゆくえ
c 世界経済における中国
• 生産大国化→低価格品の輸出.日本とは工
程間補完分業体制.中国企業の海外進出.
• 世界最大の外貨準備保有国 外貨運用?
• 米中摩擦・協調:人民元,知的所有権
• 資源消費大国化,食料輸入の増大
• アジア外交(ASEANとのFTA),アフリカ資源
外交
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