平成19年度 企業論特論 日米企業間における経営スタイルの 差異に関する考察 経営情報システム専攻1年 07538490 阿部 貴明 1 背景 • 日米企業間には、経営スタイルに大きな差異が存在する • 世界進出を通して更なる継続的発展を目指す企業において、 従来の日本型経営スタイルは通用するのだろうか 目的 • 日米企業間におけるそれぞれが持つ特性を明らかにし、理 想的な経営スタイルを提案する 2 人事制度(日本) – – – – 新卒を中心とした一括採用が主流 他企業から研究者を雇うことは少ない(新規分野進出期等に制限) 短所を補い、平均的な質の高いゼネラリストを育成 年功序列・終身雇用(組織への忠誠心の生成) 社長 子会社・取引先等 重役 中間管理職・専門職 長期的雇用・育成 一般事務職 図1.日本型人事制度概念図 出典:www.scbri.jp/HTMLcolumnNY/17/17-16.pdf 3 人事制度(米国) – – – – – 世代、職歴、学歴を問わず広く異なる人々で構成される 新卒だけでなく中途採用も積極的に行う 各業務を専門化し、スペシャリストを雇う 即戦力を雇い、長所を伸ばす 相互の意思による雇用契約(自己の能力を高める思想) 社長 重役 中間管理職・専門職 即戦力の補強 一般事務職 図2.米国型人事制度概念図 出典:www.scbri.jp/HTMLcolumnNY/17/17-16.pdf 4 評価制度(日本) 業績 総合的評価 礼儀作法 付き合いのよさetc.. 30~40年後 様々な業務を経て… 新卒社員 年功序列・終身雇用 社長(ゼネラリスト) 平均的に能力が高いマルチプレーヤーを育成 5 評価制度(米国) 業績のみで評価 MBO (Management By Objective) ?年後 経営者になるための訓練・実験 幹部候補生 社長(経営のスペシャリスト) 資質試験 優先昇進 アセスメントセンター 専門分野に特化したスペシャリストを雇う(作業分化) 6 従業員意識の比較 企業に対する意識 会社は安定した存在として 雇用を守るべき 会社はいつ潰れるか 分からない 高給与で知名度のある 企業で働きたい 人間関係や仕事の内容を 重視する 基本的には 定年退職するまで働く 数年経ったら 働く会社を見直す キャリアに対する意識 日本 出世コースから れたくない 外 出世コースをステップアップ していきたい 企業内ではどの仕事も 重要度は同じ 米国 自分の得意分野を 極めればよい 出典:http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060609/240539/?ST=start 7 中間キャリア層への訓練教育 表1. 技術教育コースを受ける動機の比較 Q. 技術教育コースを受ける動機として、以下の項目はそれぞれどれくらい重要ですか? 重要度(五段階平均) 動機 日本(n=51) 米国(n=56) 既存の技術を高めるため 4.25 4.00 新たな技術を取得するため 3.71 4.56 昇進の機会を増やすため 2.02 2.77 よりやりがいのある職務に就くため 2.30 3.18 会社から参加命令が出たから 3.32 1.32 引用:Kiyonori Sakakibara,D.Elenor Westney.1992.Japan’s Management of Global Innovation:Technology Management Crossing Borders ※1 = 重要でない 5 = とても重要である 年功序列・終身雇用制度 そもそも、なぜこの制度が成立したのか? ・個人成果の明確化が困難 ・儒教の考え(年少者は年長者に従うべき) ・リスクが少なく確実な選択肢を取ろうとする国民性 利点 欠点 ・チームワークの和を保ちやすい ・事なかれ主義 になる ・組織への忠誠心を高めやすい ・転職者や非正規雇用に不利 ・仕事を教える意識を持ちやすい ・若い人材の流出 ・必要な時期に確実に資金を得られる ・人員配置が硬直的になる ・賃金の査定が容易 ・世の中の変化に対応しづらい 9 年功序列が抱える問題の事例 • 中国の若者が日本企業を敬遠 – 中国の大学生・院生対象の就職人気企業ランキングによると、 上位50位に入った日本企業はソニー26位、松下電器産業46位 のわずか2社にとどまった – 不人気の一因として、「日本の企業は年功序列で自分の能力 を高めにくい」ことが挙げられる – 日本の企業から学ぶことは製造技術や生産管理くらいで、マー ケティング戦略、財務、意思決定などの分野で弱体と見られて いるようである – 日本企業の業務内容が過酷であることも理由の一つである • Ex.サービス残業など 出典:http://www.nikkeibp.co.jp/archives/309/309463.html 10 成果主義 導入背景 90年代以降、従来の年功序列・終身雇用といった職能主義の基盤を成してき た制度が崩壊し、長期不況によるリストラの一環で成果主義を取り入れる企業 が増えてきた 利点 欠点 ・有能な人材を確保できる ・環境変化に着いてこれない社員が出てくる ・評価を受けることに対するモチ ベーションの向上 ・差をつけられた社員の忠誠心が失われる ・効果的な人件費配分・削減がで きる ・短期的で簡単な目標を設定してしまう ・より活発な企業活動が期待でき る ・個人が持つ技術やノウハウが組織に伝わら ない ・評価の公平性、納得性の提示が困難 11 成果主義が抱える問題の事例 富士通 ・目標達成を過度に意識し、目標を超えた業績への挑戦を避けるた めヒット商品が生まれにくくなった ・アフターケアなどの地味な業務がおろそかになり、トラブルが増えた 参考:http://www.kobe-mba.net/life/minipro/2002/materials/5.pdf http://www.asahi-net.or.jp/~PV3N-SITU/fujitsu.html ナムコ ・売上成果の多い作品に関わったスタッフに賞与を与え、売上成果の少ない 作品に関わったスタッフには賞与をカット 高売上作品の制作部署への配属希望が殺到 新規作品がほとんど制作されなくなった 人気作シリーズが短期間に大量制作され、一つ一つの作品レベル低下 参考:http://geimin.net/co/20060212.php 引用日:H19.4.26 12 考察 日本式:年功序列・終身雇用 利点と欠点を持っている 米国式:成果主義 両者の利点を活用した経営スタイルの構築が必要 従来の組織体系に適切な評価制度を導入 社員のモチベーションを高めるために ・社員のスキル獲得を支援する制度を設立する ex.ビジネス関連資格取得支援、コーポレートユニバーシティ ・成果だけでなく、プロセスも評価に入れる ex.成果へのプロセスも企業の財産と考える ・個人の業績だけでなくチームワークも評価に入れる ex.チームでしか成し得ない業績もある、管理職は後継者育成も評価対象に入れる ・公平で透明性のある人事評価制度を設立する ex.キャリアチェンジ制度を設ける、成果の要件と報酬をはっきりと定義する 13 参考文献・URL • Kiyonori Sakakibara,D.Elenor Westney.1992.Japan’s Management of Global Innovation:Technology Management Crossing Borders • • • • http://www.scbri.jp/HTMLcolumnNY/17/17-16.pdf http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060609/240539/?ST=start www.kobe-mba.net/life/minipro/2002/materials/5.pdf http://www.asahi-net.or.jp/~PV3N-SITU/fujitsu.html 14
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