200万都市が有機野菜で 自給できるわけ

200万都市が有機野菜で
自給できるわけ
【都市農業大国キューバ・リポート】
Ⅱ.園芸都市ハバナ、かく誕生せり
5.コンサルティング・ショップ
6.人気を呼ぶ野菜直売所
7.危機を救った緑の薬品
06A2140C 馬場文也
5.コンサルティング・ショップ
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ミミズ堆肥から苗木までを市民に販売
国の直営から独立採算での自主運営に
市民たちへの農業教育の拠点
ミミズ堆肥から苗木までを市民に販売
植民地支配による、プランテーション栽培
→本来あるはずの作物品種が失われる。
 都市農業を軸とした野菜自給→在来品種の復活
+新品種の導入(厳しい経済危機)
→市民に趣旨や対比を販売する店を開設
 ハバナ・ミラマルのコンサルティング・ショップ
→ミミズ堆肥、生ゴミコンポスト化器、種子、農具、
ガイドブックなど
→学校帰りの小学生も来店

国の直営から独立採算での自主運営に
ショップの数・・・1996年3店→2002年48店
 農業省の直営→独立採算へ
→経済危機に伴う赤字の増加が原因
 閉店続き、赤字経営に陥るショップが出現
→農業省によるトラック購入、人員投入。また、固
定給から変動給へ
→仕事量の増加による、フルタイム従業員の新採
用


店長主導による自主経営がなされている。
市民たちへの農業教育の拠点
ショップに「冷蔵貯蔵装置」がない
→経済危機の影響がいまだに残る
 都市農業・持続農業支援センター
→ハバナで最も大きいショップ
→「都市農業の教育センターにしたい。」
→生産資材の供給のみならず、専門家による相談、
ワークショップの開催などの教育的機も兼ねてい
る。・・・技術サービスと教育

サービスに応じた対価・・・指導員を呼ぶと5ペソ、
植物の病気の点滴に10ペソなど
→指導員の給料:平均600ペソ、最大で5000ペソ稼
ぐ者も
 指導員の数・・・将来的には148人→400人へ
→農業技術専門学校の学生を3年生のうちから運
動に参加させるプラン

コラム3 在来品種の復活
種子バンク・・・・コンサルティング・ショップと違い、
専業都市農家向け
→キャベツの種子が1ペソ65g、外国の種子も廉価
 近代農業を進める中、遺伝子の多様性が重要視
される
→熱帯農業基礎研究所らが、各地域の農家と提携
し、在来品種・役に立つ品種を収集している
→都市農業グループにより、種子保存のワーク
ショップを開催、種子保存ネットワークも立ち上が
る

種子の保存、有益な品種の増加・・・・国全体の
遺伝資源の確保、生態系の安定強化、生産者の
自立に繋がる
→「土地相応」「天候時候相応」な品種を選抜して
植える敵地適種(日本の江戸時代にも)
→優良品種への単一化よりも、はるかにエコロジカ
ルで合理的

6.人気を呼ぶ野菜直売所
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三〇個の卵が給料二月分
全国で一〇〇ヵ所以上の農民市場をオープン
農産物販売自由化への長き道のり
ハバナでの暴動を契機に流通改革に乗りだす
野菜消費の半分をまかなう都市農業の直営
直売を通じて廉価で市民に野菜を提供
ボランタリーな寄付の文化
三〇個の卵が給料二月分
1968年 自営業の禁止、中小企業の国営化によ
り、市場が存在せず
 月当たりの配給量・・・コメ2.3kg、塩220gなど
→闇市の誕生・・・コメ1kg当たり100ペソ、卵30個が
平均月給の倍など、破格の値段で売買される
 ペソのレートが下落し、ドルが高騰。1994年中頃
より、闇市ではドルでなければ利用できなくなる
→国の配給所の物不足により、闇市が拡大、取り
締まることが困難になった

全国で一〇〇ヵ所以上の農民市場
をオープン
1994/9/19、国会で直売所開設の許可法が成立
→全国で農民市場の開設、個人農家の自由販売
を許可
→農民市場数が29から65へ増加・・・農業者の生産
意欲を刺激し、生産者の動機付けとなる
→コメや豆などの農産物の価格が下がる(表3)・・・
闇市価格の下落に成功
→1ドル120ペソ(1994年7月)から1ドル21~23ペソ
(1996年春)まで低下

農産物販売自由化への長き道のり
かつてのキューバ・・・「アコピオ」が農産物の流
通を一手に引き受ける
 自由化政策の推進、農業省などの支持により、
1980年5月、「農民自由市場」がオープン
→協同組合農場の生産者たちが反対、結果として
も消費者のメリットはさほどなし、後に閉鎖
 経済危機の中、自由市場の議論が再燃
→反対意見、懸念の声などを考慮したカストロの宣
言により、議論は凍結

ハバナでの暴動を契機に流通改革
に乗りだす
1989年、国民食料計画により、食糧増産を図る
→サトウキビ畑の一部で野菜の生産、自給農園
「アウトコンスモス」の促進
→深刻な食糧危機、農業生産の低下により失敗に
終わる
 1994年8月、ハバナでの暴動
→政策転換により、農民市場開設に踏み切る
→かつての国営農場では、固定給による不満から、
生産効率が低下していた・・・自由市場の導入へ

自由市場を推進する一方、野放図な規制緩和は
認めず
→販売の時期、場所などを制限、一部の生産物の
自由販売を禁止
→農業省、国内商業省など、国の機関による管轄、
査察官による厳密なチェック
↓
 社会保障保持のため、国家統制とのバランスを
とりながら、ゆるやか経済の活性化を進める

野菜消費の半分をまかなう都市農
業の直営
自由市場の価格はいまだに高く、国民の生活を
きちんと保障できているとは言えない
→競争相手がいないため、市場価格が下がらず
→低所得者が購入できず、社会階層分化に繋がる
 現在、都市で消費される農作物の多くが、都市
農業から供給される・・・直売スタンドでは、農民
市場価格の40~50%の値段で販売
→野菜スタンドは、ハバナ市内に505も存在

直売を通じて廉価で市民に野菜を提供
家庭菜園と市民菜園・・・「家族が自給する
ための食べ物を作る」ことが第一目標。概
念的には「コミュニティ・ガーデン」に近い
→収穫量の増加により、余剰生産物が店に
並ぶようになる(市場を介さず、菜園の近く
で売られることが多い)

小規模都市農業・・・多くが農場の近くで直販を
行う
→協同組合の会員でお金を出しあい、直売所を設
立、プラヤ地区だけで40ヵ所の直売所が存在
→自由販売により、都市農業の家計は大きく潤うこ
ととなった
 畑で直売される農産物には税金がかからない代
わりに、農民市場よりも20%ほど安く売る条件が
付される
→都市農業の生産物の価格低下に成功

アウトコンスモス(自給農園)・・・元々は食堂や給
食用の農作物の生産が目的
→生産増加により、余剰生産物を直売するように
→格安の「配給価格」で従業員に販売、直売所で
一般市民にも売られる
 ヘオ・クバ社では、薬草となるハーブも栽培
→市民が治療用のハーブを買えるようになる
 オルガノポニコ・・・直売をするだけでなく、情報提
供センターとしての機能も果たす

ボランタリーな寄付の文化
規制緩和により、農家の生産意欲が高まり、生
産量の増加に成功
→市場の活性化により、社会的弱者への打撃に
 しかし、キューバの農家は、単なる経済利益だけ
を求めていない
→都市農業や市民農園、園芸クラブなどは、地区
の施設に寄付を行っている
 キューバの助け合いと団結の心
→食糧危機の中でも、一人の餓死者も出さずにす
んだ

7.危機を救った緑の薬品
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アメリカよりも進んだ福祉医療大国
輸入医薬品を代用したハーブ薬品
非常時用にオルターナティブ医療を研究
していた国防軍
東洋医学の全国的な普及
近代医療と伝統医療を統合する
アメリカよりも進んだ福祉医療大国
先進国に匹敵するほどの医療・福祉制度を持つ
→乳幼児死亡率千人当たり6.4人、平均寿命76歳
→総合病院248、住民168人当たりに1人の医師
→すべての医療が無料、難病の場合には、給料が
支払われ続ける
 「国民は無料で治療を受け、健康になる権利を
持つ」(憲法第49条)
→「アメリカよりも進んだ医療福祉」とユニセフも評
価

輸入医薬品を代用したハーブ薬品
近代的な薬品に代わり、豊富なハーブ薬品がス
トックされ、使用されている。
→都市農業の農園を含め、全国で1000ヵ所以上の
農場で栽培
→各地域には、ハーブ用の加工処理センターも
 ハーブ薬品の増産キャンペーン+伝統的な家庭
両方の復活→「緑の薬品」の誕生
→ソ連崩壊とアメリカの貿易封鎖により、国内資源
活用を強いられていた

→現在では、安全かつ効果的な60超の薬草が特
定されている
 「緑の薬品」は決してプラシーボではない、医薬
的な効果がある
→風邪、下痢などの普通の病気のほとんどはハー
ブで治療できる
→薬用植物ごとの詳しい情報を記載したガイドブッ
クを出版し、配布
「緑の薬品」→優れたヘルスケアシステムの
維持に成功した最大の理由
非常時用にオルターナティブ医療を
研究していた国防軍
革命以降のキューバ・・・近代医療の推進により、
ハーブなどの伝統医療は衰退していた
→1980年代、ラウル・カストロ国防大臣の命により、
オルターナティブ医療の実験研究に着手・・・・受
け入れられず
 しかし、経済危機に直面する中で状況は一変
→医療に関して、「様々な選択肢を持つ必要があ
る」
→1990年医療植物部局設立、91年国防軍による
ハーブ医療についての書物の出版

東洋医学の全国的な普及
全国的に、ハーブだけではない「オルターナティ
ブ医療」が展開・・・・鍼、ホメオパシー、温熱療法
など
→アコスタ院長のクリニックなど、伝統・自然医療の
専門クリニックも存在
 東洋医学を学んだ医師たちにより、鍼や指圧が
伝えられる
→「神経性疾患治療国際センター」では、東洋医学
やハーブ療法も行われる
→鍼治療は、1996年には「ヘルスケアシステム」に
も組み込まれた
→麻酔のみならず、不妊治療にも用いられる

近代医療と伝統医療を統合する
伝統・自然医療が、キューバ各州の16の全医学
校のカリキュラムに組み込まれる
→6年間の医学教育+3年間のインターン経験
(コースではさらに4年間)、全コースを受講しても
経費は無料
→全国169の各市に、臨床・教育センターも設けら
れている
 1995年、保健省内に伝統・自然医療局が開設、
組織充実が図られる
→副作用がなく、様々な通常の病気に効果のある
「緑の薬品」が推奨される

→政府も伝統・自然医療を推進・・・・持続可能で、
かつ経済的な医療
 伝統・自然医療は、人間や環境にもほとんど害
を及ぼさない
→どのようにして近代医療と伝統医療を組み合わ
せるかのモデルの一つを提示している
出典:http://www.caribnationtv.com/links.html
まとめ
農業・園芸のための店舗が一切なかったが、現
在では、ショップとしてだけではなく、「情報提供
の場」として存在
 農産物の自由販売により、国民は市場で購入す
るよりも、身近で容易く農作物を入手できるよう
になった
→農業生活が、全てにおいて、より国民ベースのも
のになった
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先進国アメリカよりも充実した医療制度・福祉制
度を持つ
→化学薬品に頼らず、伝統的な自然療法を応用し
た「緑の薬品」の活用
→医療費・教育費がほぼ全て無料・・・・優秀な人材
を教育し、彼らが国内で医療等に従事する循環
があることで、これらの制度を実現させている?
